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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第八十一話 脱出へ

               第八十一話 脱出へ
「やはり」
デュミナスはまた一人呟いていた。
「私はデュミナスなのか。存在時代が許されないデュミナスなのか」
思うことはやはりこのことだった。
「創造主を滅ぼした私を周囲の者は危険だと言い攻撃してきた。私を否定し存在を消そうとした」
このことを呟き続ける。
「私は存在したかった。だから私の存在を消そうとする者と戦い滅ぼしてきた」
それが彼の今までの生き方だったのだ。
「私以外は全てなくなった。私は宇宙を漂い様々な生物と出会いながら考えてきた」
彼は常に考え続けてきたのだ。
「創造主は私をデュミナス、間違いだと言った。間違いとは何なのだ」
このことも同じだった。
「予定とは異なる結果が出ることを言うのか。そして間違いならば存在を消していいのか」
「私はそれを知るべき様々なものに間違いを起こさせてみた。存在とは異なる結果が出るように干渉した。間違いを起こしたものがどうするかを見たかった」
そうした行動も取ってきたのだ。
「何万、何十万をという間違いを起こさせた。その結果あるものは滅びあるものは滅ぼされた・。そうならないことも多々あった。だが」
ここで言うのだった。
「私の求める答えは出なかった。そして考えた」
次に考えることはこのことだった。
「私はどうして間違いなのだろうか。創造主は私でなく何を作り出したかったのか。何故私は間違いなのか、それを知るのは創造主だけだ」
それはわかっていたのだ。
「しかし創造主は私が滅ぼし既に存在しない。だが私は答えを得る手段を手に入れつつある。時を越える」
今の彼の夢だ。
「時を超え創造主に会えれば何故私は間違いなのか」
また呟く。
「何故私の存在は間違いでなければならないのか。もうすぐ答えがわかる」
彼がそんなことを考えているその時ラージとミズホは神殿を脱走しようとしていた。
「ラージさん」
「はい」
二人は神殿の廊下を駆けている。そのラージにミズホが声をかける。
「急ぎましょう」
「ええ」
「動力室はもうすぐですよ」
「そうですね。捕まっている間に内部構造を調べておいて正解でした」
「そうですね」
「ですが」
しかしここでラージは言うのだった。
「こんなに広いとは」
「ええ。けれど」
ここでミズホは前の扉を開いた。
「あそこですよ」
「ええ、やっとですね」
「フレームを自動操縦に切り替えて」
扉を開けるとその中は複雑な機械で満たされていた。ミズホはそこにあるうちのとりわけ大きな一つに近寄ってラージに声をかける。
「動力室に突っ込ませて自爆させましょう」
「そうですね。ただ」
ラージは言う。
「こんな手しかないというのが悲しいですね」
「ええ。それでも方法があるだけましですね」
「確かに」
あらためてミズホの言葉に頷いた。
「それにしてもミズホさん」
「何ですか?」
「時流エンジンと通常動力の両方に対応できるフレームを設計するとは恐れ入りましたよ」
「そうなんですか」
「よし、目標固定!」
ラージはさらに言う。
「脱出しますよ!」
「はい、じゃあ」
ここで脱出しようとする二人だった。この時ラウルとフィオナは真ゲッター2に誘導されひたすら前に進んでいた。地中を突き進んでいるのだ。
「もうすぐね」
「ああ」
ラウルはフィオナの言葉に頷いていた。そこにはトウマの大雷鳳と五機のガンダムもいる。
「到着したらすぐにやるぞ」
「わかってるわよ」
「じゃあ一気にやるぜ」
彼は意を決して声をあげた。
「ラージ、待ってろよ」
「いよいよだ」
デュミナスは今度は三人を前に呟いていた。
「私はこれから時を超える。後は頼みますよ」
「わかりました」
デスピニスがそれに頷く。三人が留守を守ることになった。しかしここで異変を察知した。
「!?ティス」
「ええ」
ラリアーの言葉に頷くティスだった。
「動力室ね」
「すぐに行こう」
「わかってるわ」
三人はすぐに動力室に向かう。しかしここでラージとミズホが戻って来た。
「!?あんた達」
「何時からここに」
「何かね」
ここでティスは二人の顔を見て言った。
「嬉しそうな顔したらどうよ」
「心中複雑でしてね」
こうティスに答えるラージだった。
「どうにも」
「そうでしょうね」
ラリアーはラージの気持ちを察して述べた。
「やっぱり」
「時流エンジン」
デュミナスは呟いた。
「それがもう私の中に」
「そうです」
デスピニスがそのデュミナスに対して告げる。
「いよいよ」
「それにしてもよ」
ティスは顔を顰めさせていた。
「ロンド=ベルの連中遅いわよね。あんなに速い連中が」
「すぐに来るよ」
ラリアーはこう呼んでいた。
「すぐにね」
「そうだといいけれど」
「むっ!?」
ここでデュミナスは突然声をあげた。
「デュミナス!?」
「どうしたんですか!?」
「時流エンジンが勝手に」
「勝手に!?それじゃあ動力室のは」
またティスはそのことに気付いた。
「若しかして」
「!?そんな筈が」
ラージがここで出て来た。
「見せて下さい、すぐに」
「何処かが壊れている!?」
「まさか」
ラリアーもデスピニスも顔を青くさせる。その間にラージは動いていた。
「これでいい!」
「なっ!」
「デュミナス!」
三人は顔を青くさせる。
「このままエンジンもととも滅べ!」
「あんた、まさか!」
ティスは三人に飛び掛ろうとする。
「これで暴走だ!」
「させないわよっ!」
ティスは咄嗟にラージを殴り飛ばしてデュミナスから離した。
「ぐはっ!」
「こいつ、エンジンをわざと」
「エンジンが停止した・・・・・・」
デュミナスは無念そうに呟く。
「時流エンジンが」
「皆さん」
地下を進む一行にルリから通信が入って来た。
「時流エネルギーの反応をキャッチしました」
「遂にですね」
「はい。もう少しです」
こう一行に告げる。
「ですから」
「よし、行くぜ!」
「もうすぐだ」
デュオとウーヒェイが声をあげる。
「ここから奇襲を仕掛け」
「ラージさんとミズホさんを救出しましょう」
トロワとカトルも言う。
「一気にやるぜ!」
「その通りだ」
トウマとヒイロの反応は正反対だが意図しているのは同じだった。
「けれどそこにデュミナスがいる」
「そうね」
フィオナはラージの言葉に頷いていた。
「やってやるわよ、一気にね」
「ああ」
「総員スタンバイです」
ここでユリカが指示を出した。
「何時でも神殿に入られるようにして下さい。決戦です」
「了解!」
彼等も戦いの決意を固めさせていた。そして神殿の奥ではティス達がラージとミズホを見据えていた。
「これは」
デスピニスがラージの懐から出て来たあるものを見て言う。
「外部コントローラー」
「やってくれるじゃない」
ティスは忌々しげにそのコントローラーを見ていた。
「エンジンがデュミナスに組み込まれたのを狙って始動させるなんてね」
「調整させると見せ掛けて近付き」
デュミナスも言う。
「そのまま暴走、爆発させる算段か」
「無茶だよ」
ラリアーはそれは否定する。
「成功したら君達も消えるんだよ」
「これ位しないと」
ラージはティスに殴られた唇の血を拭いながら立ち上がり言ってきた。
「僕には時流エンジンの製造者としての責任がありますからね」
「責任が?」
「そうです。作ったら後はどう使われようと知らないなんて」
デスピニスに応えて言う。
「僕は言えません」
「わかったわ」
ティスは怒気を孕んだ声でラージに応えた。
「あんたの言う通りよ」
「ティス・・・・・・」
ラリアーが彼に声をかける。
「どうするんだい」
「決まってるわ」
その声でラリアーに応える。
「自分のしたことに責任を取ってもらうだけよ!」
「うわあああああああああっ!!」
「ラージさん!!」
「だらしないわね」
怒りに満ちた声でラージに対して告げる。彼を気遣うミズホをまずは無視して。
「大の大人が両足を砕かれた位で情ない悲鳴挙げるんじゃないわよ」
「けれどティス」
「ちょっとこれは」
ラリアーとデスピニスがここでティスに対して言う。
「やり過ぎだよ」
「幾ら何でも」
「大丈夫よ」
しかしティスはその二人に言葉を返す。
「こいつの肝心の頭には何もしてないわよ」
「何も?」
「殺しはしないわよ」
それは保障するのだった。
「殺しはね」
そしてまたラージを痛めつける。今度は左手を潰したのだった。
「後は右手だけよ。どうするの?」
「ぐぐぐ・・・・・・」
「殺したりはしないけれどね。デュミナスの怨みは晴らさせてやるわよ」
「ラージさん!」
しかしここでミズホがラージに声をかけてきた。
「ミズホさん、一体」
「こんなこともあろうかと呼んでおきました!」
「何っ!」
「まさか!」
部屋の扉を破って出て来たのはマシンだった。
「これは実験用のフレーム!?」
「こんな短期間で通常動力を組み込んだなんて」
「早く乗って下さい!」
先にミズホが乗り込んでラージに声をかける。
「早く!」
「逃がさないわよ!」
ミズホは何とかラージを引き込み脱出しようとする。その二人をティスが追おうとするがここで神殿の中に警報音が鳴るのだった。
「!?今度は一体」
「何なの?」
「ロンド=ベルだ」
ラリアーがここで言った。
「遂に彼等が来たんだ」
「ふんっ、こんな時に」
ティスはそれを聞いて忌々しげに声を挙げた。
「何てタイミングなのよ」
「いや、いい」
しかしここでデュミナスがそのティスを制止する。
「あの二人の用は済んだ。放っておくのだ」
「それでいいのですね?」
「それよりも今は」
今度はデスピニスに応える。
「ロンド=ベルを」
「わかりました」
「ティス」
ラージがここでティスに声をかける。
「僕達も行こう」
「わかってるわよ」
憮然としながらも彼に応える。
「さっさとロンド=ベルやっつけちゃってね」
「そういうことだよ」
「行こう」
デスピニスも誘う。当然それについて行くが行く間際に呟くのだった。
「命拾いしたわね、あの二人」
「元々殺すつもりはなかったんじゃなかったのかい?」
「まあね」
それは否定しないのだった。
「それはね」
「ティスらしいよ」
「らしいかしら」
「うん、まあね」
微かに笑ってティスに述べるラリアーだった。
「じゃあ行くよ」
「ええ」
こうして三人は出撃する。その頃ラージとミズホはフレームで脱出していた。廊下を進みながらミズホは助手席にいるラージに対して言ってきた。
「ラージさん、大丈夫ですか?」
「意識はあります」
生きているのだった。とりあえずは無事だった。
「全く。あんなこと無茶過ぎます」
「ですがあれしかなかったんですよ」
「あれしかなかったって」
「はい、エンジンとデュミナス両方を一緒に滅ぼすのはあれしか思い付きませんでしたから」
「それでも」
ミズホはラージに対して言う。
「成功したらラージさんも死んじゃうんですよ」
「だからこそですよ」
「だからこそ?」
「自分も滅びるからこそ彼等の油断を誘えます」
それが彼の狙いだったのだ。
「とにかく、ここから脱出しないと」
「ええ、すぐに」
「はい」
こうして彼等は何とか脱出しようとしていた。そして遂にラウル達が神殿に潜入したのだった。
「よし!来たぜ!」
「ラージ!ミズホ!」
「いることはいるわよ」
地下から出て来た彼等を出迎えたのはティス達だった。
「ただし、その前にあたし達が相手してあげるわよ」
「ちっ、気付いてやがったのかよ!」
「まあアイディアは認めるわ」
既に彼等も展開していた。
「それでもね。そう簡単にはやらせないわよ」
「まあいい」
「そうだな」
だがデュオとウーヒェイは平気な顔だった。
「こういう時だって今迄普通にあったじゃねえか」
「ならば戦うだけだ」
「あんた達、凄く余裕ね」
フィオナは彼等の平気な様にかなり驚いていた。
「こんな状況なのに」
「いつものことですから」
「対策はもう考えてあった」
「そうなのか」
ラウルもまた冷静な彼等に少し驚いてはいる。
「この状況でもか」
「おいおい、かなりの数だぜ」
トウマは周囲を見回していた。完全に囲まれている。
「幾らいるんだよ、おい」
「トウマ、一分だけ待って」
ミナキが大雷鳳に通信を入れてきた。
「そうすれば私達もそこに辿り着くことができるから」
「そうか、一分か」
「では一分だけ耐えるとしよう」
ヒイロがとりわけ冷静だった。
「一分だけでいい」
「よくそんなに冷静でいられるな」
「本当よね」
ラウルとフィオナは彼等を見てまだ驚いている。
「一分でもこんな数なら」
「死ぬかもね、本当に」
「大丈夫だ」
やはり冷静なヒイロだった。
「一分だ。行くぞ」
「ああ、わかったさ」
「なら一分ね」
何はともあれ彼等は一分だけ耐えることにしたのだった。デュミナスの攻撃はかなり激しい。しかし彼等は攻撃を避け続けていた。ティスがそれを見て苛立ちを覚える。
「何なのよ、あの連中」
「ティス、どうしたんだ」
ラリアーが苛立つティスに対して声をかける。
「焦ると駄目だ、今は」
「けれどね。それでも」
「気持ちはわかる」
それを聞いてもまずはこう言うラリアーだった。
「しかし焦っても何にもならない」
「ちっ、頭に来るわね」
「僕達の戦力も残り少ないんだ」
「ええ」
確かにその通りだった。今出ているデュミナスの軍勢は普段よりその数が少なかった。
「だから。迂闊な攻撃を避けよう」
「・・・・・・わかってるわよ」
「最後の戦いなのね」
デスピニスは言った。
「いよいよ」
「ちっ、時間よ」
ここでデュミナスは舌打ちした。
「来るわよ、奴等が」
「レーダーに反応だ」
ラリアーが二人に言う。
「ロンド=ベルが来る」
「決戦ってわけね」
「よっし!来たぜ!」
最初に声をあげたのは豹馬だった。
「御前等、生きてるか!」
「勿論だ!」
「全員無傷よ!」
ラウルとフィオナが彼の声に応える。
「生きてるからな!」
「丁度来てくれたってわけね」
「ああ、時間は守る主義なのは知ってるよな」
「嘘つけ、嘘」
誇らしげに言う豹馬に十三が突っ込みを入れる。
「御前の何処が時間守るねん」
「豹馬どん、嘘はよくないでごわす」
「大作、手前まで」
「けれど計算通りでよかったですよ」
小介はこのことに満足していた。
「丁度一分です」
「全くでごわすな」
「とにかく皆早く出ましょう」
ちずるが皆に声をかける。
「行くわよ、早く」
「ああ、別のお客さんも来てるしな」
豹馬が言ったその瞬間だった。今度は修羅達が出て来たのだった。
「!?修羅まで?」
「レーダーに反応があったんだよな」
彼は笑ってこう述べた。
「まあ来るだろうなってのは思ってたさ」
「そうだったの」
「勘ってやつさ」
「全く。それでねえ」
ここでフィオナは呆れた目で豹馬を見て述べた。
「何で気付かないのかしら」
「俺でも気付いてるぜ」
「!?何だよ御前等」
フィオナとラウルの言葉にやはり気付かない豹馬だった。
「ったくよお、わかんねえな」
「ちょっとはすぐ隣見ることね」
「それでもわからねえだろうがな」
「とにかくだ。総力戦だ」
リーも気付いているがそれは言わなかった。
「総員先発隊と合流し敵を倒せ。いいな」
「了解!」
こうして神殿の中での両軍の戦いがはじまった。神殿の中はかなり巨大でしかも柱が立ち並んでいる。その白亜の中で両軍は乱戦に入った。
修羅も来る。しかしロンド=ベルはここで意地を見せた。
「正面だ!」
ブライトが叫ぶ。
「正面にメガ粒子砲を集中砲火しろ!てーーーーーーーっ!!」
それに従い主砲が放たれる。それにより多くの敵が薙ぎ倒される。
その穴にさらに波状攻撃を浴びせる。デュミナスも修羅も彼等の気迫の前に圧倒されている。
「あいつ等、あたし達を見捨てにかかったわね」
ティスは忌々しげに修羅達を見て言う。
「主立った奴は一人もいないじゃない」
「そうね」
デスピニスもそれに気付く。
「やっぱり。もう私達を」
「いや、それでも」
ラリアーは落ち込むデスピニスを励ましてきた。
「退くわけにはいかない、ここでも」
「そう思いたいけれどね」
ティスがここでまた言う。
「それでも。今は」160
「負ける。このままだと」
デスピニスは怯えた声を出した。
「けれど。もう」
「安心するのです」
しかし何かの声がした。
「三人共。御前達が気に病むことではありません」
「その声は!」
三人とロンド=ベルの面々が同時に声をあげた。
「デュミナス!」
「出て来たか!遂に!」
「私はデュミナス」
そのデュミナスだった。彼が遂に姿を現わしたのだった。
「存在自体が間違いだと言われたもの」
「やっと大ボスの登場かよ!」
甲児が彼等を見て叫ぶ。
「間違い野郎!」
「デュミナス!」
ラウルもまたデュミナスに対して叫ぶ。
「二人は何処だ!?」
「無事なようだ」
デュミナスはこう彼に答える。
「無駄なあがきはしているようだが」
「無駄なあがき?」
「逃亡中だ」
こう答えるのであった。
「男の方は怪我をしているようだがな」
「怪我!?」
フィオナはそれを聞いて顔を青くさせる。
「まさか。そんな」
「見つけて連れて帰るといい。二人はその役目を既に終えた」
「役目!?」
「まさかそれは」
「そうだ」
二人に対して答えるデュミナスだった。
「時流エンジン」
やはりそれであった。
「私の新たな力。私は時を超える」
「させるか!」
「させないわよ!」
だが二人はそれを止めようとするのだった。
「時流エンジンを御前なんかの勝手にさせてたまるか!」
「あんたに時を超えさせたりなんかさせないわよ!」
「しかし」
デュミナスはその二人にまた言った。
「御前達とはもう会うこともない」
「デュミナスのエネルギーが増大しています」
ルリがナデシコから述べる。
「さらに」
「まずい」
アキトはそれを聞いて言う。
「このままじゃ」
「さらばだ」
デュミナスはロンド=ベルの面々に別れを告げた。
「時間跳躍!」
「くっ、待て!」
「待ちなさいよ!」
「もう遅い」
デュミナス追いすがろうとするラウルとフィオナに対して言った。
「今から私は」
「くっ、手遅れか!」
「ここまで来て!」
歯噛みするしかない、そう思われた。しかしこの時だった。
「むっ!?」
デュミナスの動きが突然止まった。
「!?」
「どうしたの!?」
「これは・・・・・・」
驚く二人の前でさらに言葉を出す。
「そんな・・・・・・」
「時間を超えない!?」
「それだけじゃないわ」
「ぐわああああああああああああああああああっ!」
「デュミナス!」
それを見た三人が慌てて彼の側に集まる。もう残っているのは三人だけである。
「ううう・・・・・・」
「おい、デュミナスの奴」
「ええ」
エルがビーチャの言葉に頷く。
「ボロボロだよな」
「そうね。どうしてまた」
「俺達まだ戦っていないのに」
「ここではね」
モンドとルーも言う。
「それでどうしてなんだ?」
「何かあったの?」
「あっ、見て」
ここでイーノがあるポイントを指差した。
「あそこに」
「ふう、やっとですね」
「ええ」
戦場に一両のマシンが来たのであった。
「あれは」
「ラージ!ミズホ!」
フィオナとラウルが最初に二人に気付いた。
「無事だったのね!?」
「しかしどうしてここに」
「うっ・・・・・・!」
「ラージさん、大丈夫ですか!?」
苦痛に顔を歪めるラージをミズホが気遣う。
「御免なさい、私運転は」
「いえ、いいです」
そのミズホに対して答える。
「大丈夫ですから」
「おい、しかしよ」
既にラウルとフィオナは既に二人の側に来ていた。そのうえでラージを気遣っていたのだ。
「どうしたんだよ、その傷」
「誰にやられたの!?」
「あのピンク色の髪の女の子にです」
ミズホが答える。
「あの娘に」
「手前!」
「よくもラージを!」
「別に殺しちゃいないでしょ」
開き直ったように二人に言い返すティスだった。
「全く。ふざけるんじゃないわよ」
「ここまでやって言う奴の台詞かよ!」
「覚悟はできてるでしょうね!」
「安心しなさい、後遺症はないから」
これは言うティスだった。
「殺すのはあたしだって嫌いだしね」
「手前、よくも」
「何考えてるのよ!」
「いえ、それはどうでもいいです」
しかしここで他ならぬラージが言うのだった。
「借りは返しましたよ、デュミナス」
「あれ御前がやったのか」
「あんたが」
「デュミナスが時流エンジンを使ってのライムワープを試みることを知りまして」
ラージが言うのだった。
「それで細工を」
「欲気付かれなかったな、おい」
「確かに」
二人はそれを不思議がる。しかしラージはそれについても説明する。
「時流エンジンにかけては僕の方がプロです」
「それでか」
「ええ、それに」
「それに?」
「通常のエンジンとして使う分には何の問題もないようにしておいたんです」
「何っ、それじゃあ」
「ひょっとして」
二人はここであることにわかった。
「時空を超える時だけにか」
「爆発するように」
「ええ、タービンの回転数がある限界を超えると」
ラージはそれに応えて説明する。
「エネルギーが乱流して爆発するようにしておいたのです」
「無茶です」
ミズホが横で言う。
「そんな仕掛けをしたらわざわざあんなことをしなくても」
「二段構えですよ」
しかしラージはこうミズホに言うのだった。
「さっきの僕の行動が成功すればそれでよし」
「それでですか」
「失敗するにしても」
「するにしても?」
「彼等を信じさせていたでしょう」
彼はそこまで考えていたのである。
「こんなことをする位だと」
「する位だと」
「あの時流エンジン自体に問題はないと思い込ませられます」
「やっぱり無茶です」
ミズホはまた言うのだった。
「貴方死んじゃうんですよ」
「敵を油断させる為です」
それでも言うラージだった。
「これ位はしないと」
「あのな、御前な」
「何考えてるのよ」
ラウルとフィオナはここまで聞いたうえでまたラージに言う。
「何でそう勝手に決めるんだ!」
「そうよ。殴ってやりたいけれどその怪我じゃ」
「できねえだろうが!」
「ちょっとは周りの迷惑も考えなさいよ!」
「それは申し訳ないことをしました」
ラージはこのことは謝る。
「それよりもです」
「それよりも?」
「最後の仕上げです」
ここであらためて言うラージだった。
「デュミナスを倒しましょう」
彼は遂にこのことを提案するのだった。
「このデュミナスを。時が来ました」
「くっ、やらせないわよ!」
「デュミナスは僕達が守る!」
「それだけは」
しかし三人はそれを必死に否定するのだった。
「やらせないからね」
「デュミナス、ここは」
「逃げて下さい」
彼等は何とかデュミナスを逃がそうとする。
「ここを去れというのですか」
「そうよ」
必死な顔でデュミナスに言うティスだった。
「一旦逃げましょう。奥にまで」
「奥にまで」
「あたし達が何とかするから」
また言うティスだった。
「だから。逃げて」
「ここは僕達が引き受ける」
「ですから」
「わかりました」
三人の言葉を受けてデュミナスは退くのだった。
「御前達の心、受けさせて頂きます」
「ええ、御願い」
「貴方だけは死なせない」
「絶対に」
三人は強かった。そうしてデュミナスを逃がす。三人はそのまま戦場に残るのだった。
「さあ、相手してやるわよ」
「僕達はデュミナスの為に生きている」
「だから」
「ふん、今は勘弁してやるぜ」
「ええ、いいわ」
ここでは手を出さないラウルとフィオナだった。
「御前等がそこまで言うんだったらな」
「今はいいわよ」
「・・・・・・再戦ってわけね」
「ああ、そうさ」
ラウルがティスに答える。
「次だ。それでいいな」
「そのかわり次はね」
今度はフィオナが言う。
「覚悟しなさいよ、いいわね!」
「御礼は言わないからね」
こう返すティスだった。
「こっちはデュミナスを守らないからいけないからね」
「行こう、ティス」
ラリアーがティスに声をかける。
「デュミナスが心配だ。あれだけの傷だから」
「ええ。何かあったらその時こそ私達が」
デスピニスもまたデュミナスを気遣っていた。
「デュミナスの為に」
こう言い残して戦場を離脱するのだった。彼等も戦場を離脱し次の戦いに向かうのだった。
戦いは終わった。ラージとミズホは無事救出された。まずはそのことを喜ぶのだった。
「それでラージよ」
「どうやって脱出したの!?」
ラウルとフィオナは二人、特にラージに対して言う。
「本当に心配したんだぞ」
「よく生きていたわよね」
「何とかでした」
ミズホが二人に対して言う。
「皆が攻撃を加えてくれて」
「それでかよ」
「よかったわ、本当に」
「ですがまだです」
ラージはここで言ってきた。
「まだデュミナスは健在です」
「かなりボロボロだけれどな」
ジュドーがこう答える。
「けれど、あんたやったな」
「何とか。成功しました」
このことを微笑むラージだった。
「それはよかったです」
「あんたもかなり根性あるよな、その外見とは違って」
「褒め言葉ですよね」
「その通りさ」
ジュドーは笑ってラージに述べる。
「やったな、本当にな」
「有り難うございます」
「とりあえずラージさん」
「安静にしておくんだ」
プルとプルツーがここで彼に告げる。
「両足と左手よね」
「今は早く回復させるんだ」
「ええ、では今は」
「さてと、出番だな」
サコンが出て来た。
「治療だ。安心してくれ、すぐに終わらせるぞ」
「私も協力させてもらうわ」
リツコも名乗り出る。
「任せて。すぐに全治させてあげるから」
「すぐにですか」
「私を誰だと思っているの?」
笑ってラージに告げる。
「赤木リツコよ。任せなさい」
「そうですか。それでは」
「よし、じゃあよ」
「ええ」
ラウルとフィオナがあらためて気合を入れる。
「行くぜ、いよいよな」
「デュミナスとの決戦ね」
彼等は遂にデュミナスとの最後の戦いに赴くことになった。ここで一つの戦いが終わろうとしていたのだった。そして一つの謎と悲しみも。

第八十一話完

2008・9・25  
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