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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第七十八話 還るべき処へ

                第七十八話 還るべき処へ
 アレクサンドリアに戻ったロンド=ベルはまた休養に入っていた。とりあえずは出られる者全員で海水浴場で休暇を楽しんでいた。今のところは。
「久し振りってやつか?」
「そうだね」
リョーコの言葉にレッシィが応える。リョーコはスイカ柄のビキニにレッシィは赤いビキニだ。二人のプロポーションが見事なまでに出ている。
「海で泳ぐのもね」
「プールばっかりだったからな」
リョーコはこうレッシィに言葉を返すのであった。今彼等はアレクサンドリアから地中海の海にいる。そこで海を楽しんでいるというわけなのだ。
「泳ぐにしろな」
「プールもいいけれどね」
「まああれはあれでな」
一応はレッシィの言葉に頷きはする。
「けれどな。どうもな」
「海は海でいいからね」
「そうだよな。しかもここは地中海」
珍しく目を細めさせて笑うリョーコだった。
「何か雰囲気が違うよな。いい感じだよ」
「ハワイとはまた違うね」
「ああ」
その笑顔でまたレッシィに応える。
「この澄んだ海がいいんだよ」
「太平洋って何か雑多なイメージないかい」
レッシィはこうも言う。
「どういうわけかわからないけれどね」
「あっ、それあるわよね」
ミレーヌが彼女の言葉に頷く。ミレーヌは黒の競泳水着だ。シンプルであるが彼女の年齢の割には見事なプロポーションをよく浮き立たせている。
「太平洋って。波もかなり強いし」
「そうだろ?ドラゴノザウルスなんてのも出たしな」
このことも思い出すのだった。
「あれも随分とてこずったしな」
「太平洋には日本があるからねえ」
アムは黄色のビキニである。胸はレッシィ程ではない。
「どうしても敵も多いわよね」
「最近日本の辺りは敵少ないわよ」
ミサトは水着を着ず完全武装で日笠までしている。
「今はこっちの行く先々に出ているからね」
「それはそれで日本にはいいですね」
ヒカルがミサトの今の言葉に笑顔で応える。
「復興に力を入れられますから」
「復興でフッカーーーーツ」
またイズミがギャグを飛ばす。
「いっぱーーーーーーーつ」
「本当に段々無理があるどころか無茶苦茶になってきてるよな」
リョーコの呆れる様子も鈍いものになっている。いい加減イズミのネタも強引に過ぎるようになってしまっているのだった。見ればヒカルは白のワンピース、イズミは赤と黒のセパレーツである。二人のスタイルも中々のものであると言えた。
「どうにもよ」
「どうにもこうにもじゃなくてよ」
ここでミサトがまた言う。
「それでね。助っ人が来ることになったから」
「助っ人ですか」
「そうよ。正直マクロス7が入っても戦力は多ければ多い程いいじゃない」
「確かにそうですね」
「同感です」
青いワンピースの美穂と白いビキニのサリーがミサトの言葉に応える。
「パイロットだけじゃなくて通信関係も」
「かなり欲しいです、正直」
「うちのネルフもねえ」
ミサトはサングラスの奥から述べる。サングラスの上からは麦藁帽子である。
「二人助っ人来るから」
「二人ですか」
「けれどあれですよね」
ここでヒカルとアムがミサトに言う。
「エヴァはもう四機で」
「全部来ているんじゃ」
「そうよ。だからわからないのよ」
ここでそのうちの弐号機のアスカが出て来た。何とスクール水着だ。
「もうエヴァは全機あるのにそれでどうしてなのよ」
「まあすぐにわかるわ」
しかしミサトはこう答えるだけだった。
「すぐにね。悪いようにはならないから」
「どうかしら。ミサトの言うことってあまりあてにならないからね」
「そうかしら」
アスカのこの言葉には惚けるのだった。
「私は常に的確な指示を出してるつもりよ」
「何処がよ。変態爺さんだって放置してるし」
「あの人敵じゃないじゃない」
「今はね」
確かに今はそうである。
「それでも。チャンスは幾らでもあったのに」
「そこまで嫌なんだ」
シンジが横から突っ込みを入れる。
「あの人のこと」
「頼りになるけどな。味方やったら」
トウジはそれで割り切っていた。
「だからええんちゃうか?」
「そうよね」
「五月蝿いわよ、トランクスコンビ」
見れば二人の水着はどちらもかなり派手だ。だからトランクスだというのだ。
「あの爺さんだけは放置できないのよ」
「それにアスカあの人に勝てるの?」
「あの人だけは無理やろ」
「無理ていって諦めるのはそれだけで戦士失格よ」
ここではアスカは正論を言うのであった。
「いい?どんな相手でもね、敵だったら」
「じゃあ倒すの?」
「あの人をかいな」
「また敵になったらね」
やはりそのつもりであった。
「やっつけてやるわよ。あんな非常識な相手許さないわよ」
「素敵な方なのに」
レイもスクール水着である。
「そんなことを言ったらいけないわ」
「大体ね、死んだと思っても死なないし」
そう簡単に死ぬ人物でもない。
「そのうち宇宙空間でも高笑いで生身で出て来かねないわよ」
「ああ、それは普通にありそうだよね」
「そやな」
シンジとトウジはアスカの今の言葉に頷く。
「だってあんな凄い人だし」
「BF団かてやったしな」
「BF団もねえ」
BF団と聞いて苦い顔になるアスカであった。
「あれもかなりのものだったわね」
「御前あの連中も嫌いなのかよ」
「好きになれる方が珍しいわよ」
むすっとした顔でリョーコに言葉を返す。
「あの連中だって変態さん揃いじゃない」
「変態かよ、あいつ等は」
「変態じゃなかったら何なのよ」
アスカの言葉は続く。
「あの連中。せめていなくなってほっとしてるわよ」
「まあいたらね」
「大変だったなんてものじゃないですよね」
ヒカルとシンジが言い合う。
「私は直接は知らないけれど」
「凄かったんですから」
シンジはバルマー戦役での彼等の暴れ様をよく覚えているのであった。
「手がつけられなかったし。素手で使徒にも立ち向かうし」
「挙句には素手で使徒を一撃で倒した爺さんまで出たしねっ」
アスカはまたマスターアジアに話を戻してきた。
「全く。世の中どうなってるのよ」
「どうなってるって言われても」
「あれがガンダムファイターやしな」
「ガンダムファイター、それよ」
アスカが今度言うのはこれについてだった。
「全く。変態さんばかり出て来てどうなってるのよ」
「けれどこれで言えるじゃない」
ここでミサトは冷静にアスカに言葉を返した。
「何が?」
「世の中色々な人がいるのよ」
「それはわかってるわよ」
「ニュータイプもいれば強化人間もいる」
「ええ」
これはわかる。
「聖戦士もいれば超能力者もサイボーグもね」
「あとコーディネイターもね」
アスカも続く。
「タケルさんみたいに他の星の人もいるし」
「そういえば」
「何だ?」
シンジがリョーコの言葉に顔を向ける。
「アスカってタケルさんには優しいんですよ」
「そうだよな、あと一矢にもな」
二人にはかなり優しいのである。
「誰彼なしに噛み付くあいつがな」
「どうしてなんでしょうか」
「あの人達は見ていて違うのよ」
微妙な顔で本心を語る。
「何か。必死に頑張ってるし」
「そうだよね。一矢さんもタケルさんも」
「一矢さんは立派な方です」
ピンクのビキニのルリが述べる。スタイルはまだ未発達だ。
「あの方は見ていて純粋に応援したくなるのです」
「そういうことよ。私もね」
その微妙な顔で一同に語るアスカだった。
「あの人は最初無理だと思っていたわよ」
「エリカちゃんのことね」
「そうよ。幾ら何でも敵味方でしかもバーム星人との間でなんて」
アスカもそうした意味でピートと同じ考えだったのだ。
「それでもあんなに一途で。果たしたんだから」
「だから立派なのです」
またルリが言う。
「あの人は。だから」
「タケルさんも同じよ」
アスカはここでタケルについても言及する。
「あんなに一途にお兄さんのこと思って」
「だよね。あれは本当に凄いよ」
「立派の一言やわ」
シンジもトウジも異論はなかった。
「だからきっとね」
「できると思うわ」
「絶対にあの人はやるわよ」
アスカは彼を信じていた。
「どんな困難があってもね」
「アスカって本当にタケルさんを認めてるんだね」
「悪い?」
「いや、それは」
こう言われるとシンジも弱かった。
「確かに。素晴らしいことだから」
「正直言ってね」
アスカはここでまた言った。
「最初は馬鹿にしてたわよ。できるわけないって」
「無理だって思ったんだね」
「一矢さんもそうだったし」
また一矢のことも話に出す。
「できっこないって思ったわよ。けれど」
「あまりにも一途だったからだね」
「一矢さんね、凄かったじゃない」
その時のことを思い出しての言葉であった。
「絶対に諦めないで。エリカさんを何度も呼んで」
「うん」
「そうして最後はあれで。だからね」
「タケルさんも同じだよね」
「あの人は絶対にやってくれるわ」
タケルを完全に信じている言葉であった。
「何があってもね。やってくれるわ」
「そうだね。僕もそう思うよ」
「俺もや」
トウジもタケルは認めていた。
「あの人やったら絶対にな。やってくれるわ」
「その時は何があってもタケルさんの願い果たさせてあげるから」
アスカは完全に本気であった。
「いいわね、そこんところ」
「その時には一肌脱げってこと?」
「命かけなさい」
こうシンジに告げる。
「あたしだってね。その時は命張ってやるつもりだからね」
「そうだね。いつも命懸けだけれど」
それがロンド=ベルの戦いである。
「その時はいつもより余計に戦うよ」
「いつもよりなのね」
「うん。絶対にタケルさんの望みを適えてあげたいから」
こうした考えにおいては彼もアスカも全く同じなのであった。
「やらせてもらうよ」
「私も」
レイもぽつりと述べる。
「タケルさん、絶対にやれるわ」
「そうだよね。何があっても」
「いざって時は盾になるわよ」
アスカの今の言葉は本気であった。
「バカシンジ、アホトウジ、あんた達もね」
「ATフィールドで?」
「それがなくてもよ」
また随分と無茶なことを言うアスカであった。
「タケルさんの盾になるから。いいわね」
「アスカもねえ」
ミサトはそんなアスカを見て苦笑いを浮かべる。
「そこまで気合入れることないじゃない」
「けれど。いい感じに変わりましたね」
その横で黒い競泳水着のマヤが言う。いささか小柄だがプロポーションは結構均整が取れていい感じである。意外なことにだ。
「アスカも」
「そうね。少なくとも仲間ってことがわかってきたみたいね」
「タケル君や一矢君からですか」
「彼等だけじゃないわ」
しかしミサトはこう言い加えるのだった。
「彼等だけじゃね」
「といいますと」
「皆よ」
そして言った。
「皆から影響を受けているわね」
「ロンド=ベルの皆からですか」
「ケーン君とか甲児君とかディアッカ君とかシン君とかいるじゃない」
「ええ」
「イザーク君にしろ。アスカの喧嘩友達だけれど」
「あの子達もからですか」
「そうよ。いい感じで影響を受けているわ」
にこやかな笑顔でマヤに述べる。
「凄くいい感じでね」
「そうですか」
「わからない。あのアスカがかなり変わって」
「はあ」
「優しくなってきているわ。元々筋はよかったけれどね」
「けれど何か」
こう言われても今一つはっきりしない感じのアスカであった。
「喧嘩したりするのは相変わらずじゃないんですか?」
「わかってないわね」
サングラスの奥でマヤにウィンクして右手の人差し指を振りつつ述べる。
「問題なのはその中身よ」
「喧嘩のですか」
「そういうこと。前はもう完全に牙を剥いていたけれど」
「今もじゃないんですか?」
「今はじゃれ合いみたいになってるじゃない」
言ってる側から海の中でシンと取っ組み合いになっている。
「この雌猿!今日こそ引導渡してやる!答えは聞いてねえ!」
「あんたこそ!タツノオトシゴと一緒に泳がせてやるわよ!」
「誰がタツノオトシゴだ!」
「あんたよ!」
髪の毛やら腕やら掴んで派手にやり合っている。
「この噛ませ竜!」
「誰が噛ませだ、誰が!」
「悔しかったら鬼より強くなってみせなさい!」
アスカはかなり訳のわからないことを言っている。
「クライマックスまでね!」
「俺は最強だつってんだろ!」
「銃使いはいつもへたれるじゃない!」
「そんなの知るか!誰のことだ!」
「あんたよ!」
「俺は接近戦が得意なんだぞ!何で銃使いなんだよ!」
「・・・・・・あれでですか?」
周りが呆れるのも気にせずシンとやり合っている彼女を見てミサトに問う。
「あれで。変わったんですか」
「わからないかしら。もう別人じゃない」
「別人って」
「昔のアスカだったらひっかいたり噛み付いたりもしてるわよ」
「完全に猫ですね」
「猫っていうか猛獣だったわ」
何気にかなり酷いことを言っている。
「今は猫ってところね」
「そうですか」
「シン君も結構猫っぽいけれどね」
「あっ、それは確かに」
マヤは今のミサトの言葉にはすぐに頷くことができた。
「そんな感じですね。カガリちゃんといい」
「猫はお互いに喧嘩するのよね」
「そうですね、確かに」
「そういうことよ。それに対してキラ君は」
「犬ですね」
これもすぐにわかった。
「あの子は」
「そう、犬よ」
ミサトも微笑んで彼女の言葉に頷く。
「ドキドキ愉快なね」
「スマイル満開じゃないのがちょっと残念ですね」
「それ言ったらヒロインじゃない」
こう突っ込みを入れるミサトであった。
「キラ君はヒーローなんだから。そこは気をつけなさい」
「そうでした」
「とはいってもねえ」
ミサトは苦笑いと共に溜息を出したのだった。
「私も。何か最近は」
「最近は?」
「ヒロインって柄じゃなくなってきたから」
「そうですか?」
「歳だからよ」
その理由はこれであった。
「もう二十九だからね」
「まだまだじゃないんですか?」
「甘いわね」
こうマヤに言葉を返す。
「いい?二十九でヒロインは」
「はい」
「もうマダムよ」
いきなり雰囲気が退廃的になる。
「メロドラマの世界よ。お昼の家族ドラマとかね」
「何か急に所帯じみてきますね」
「そういうものよ。だから」
「ヒロインじゃないですか」
「強いて言うのなら司令ね」
何処かの正義の味方そのままである。
「ほら、マリューだってね」
「ラミアス艦長も」
「そんな感じになってるじゃない」
「葛城三佐がラミアス艦長のことを話されると凄いリアリティがありますね」
「よく言われるわ」
「何か。同じ人みたいで」
こうミサトに答えるのだった。
「私がスレイちゃんやイズミさんに感じるのと同じですね」
「似た者同士だからかしら」
自分ではこう言うミサトであった。
「感性がね。近いのよ」
「そうなんですよね。私だってそうですし」
「アークエンジェルだとサイ君と勇君とかね」
「はい」
この二人も同じであった。
「馬が合うのよね」
「私もそうですし。ところで」
「ええ。今度は何かしら」
「ネルフから新たなスタッフですよね」
これに話を戻してきたマヤであった。
「誰ですか、本当に」
「それは来てみてのお楽しみよ」
こう言って今は答えようとはしないのであった。
「もうすぐだからね」
「そうなんですか」
「多分シンジ君達が一番驚くわ」
「一番ですか」
「そう、一番」
こうも告げる。
「驚くわよ。それが楽しみなのよ」
「何かそれを聞いたら私も楽しみになってきました」
「だったら待ちなさい」
そのうえでマヤに告げた。
「じっくりとね。いいわね」
「じっくりってもうすぐですよね」
「ええ」
今の問いにははっきりと答えるミサトであった。
「その通りよ」
「じゃあじっくりじゃないんじゃ」
「すぐでもじっくりとよ」
ちょっとだけ聞くと矛盾している言葉であった。
「そこんところはしっかりとね」
「わかりました。じゃあとにかく」
「待ちなさい。いいわね」
「はい」
こんな話をしながら休息を楽しんでいた。その次の日。ロンド=ベルにその新加入の二人がやって来たのであった。
「君達だったの」
「まさかな」
シンジとトウジは彼等の姿を見てまずはこう言った。
「ここで出て来るなんてな」
「それで僕達に参加するんだ」
「ああ、そうだよ」
「宜しくね」
その二人相田ケンスケと洞木ヒカリは笑顔で彼等に応える。紛れもなく彼等であった。
「こっちに配属させられることになったんだ」
「それでなのよ」
「それでって二人共そもそも」
シンジは怪訝な顔で二人に問うてきた。
「何時の間にネルフにいたの?」
「そや。俺はじめて聞いたで」
トウジも言う。
「御前等がネルフにおるってな」
「まあ今はね」
「基地にいるのは冬月さんだけだし」
二人もこう言うのだった。
「僕達も研修だったんだよ」
「それやってる時にこっちに配属になったのよ」
「そうだったんだ」
「じゃあ研修終わったらすぐにこっちか?」
「最初はずっとネルフにいる予定だったんだけれどね」
一応はこう述べるケンスケだった。
「まあ予定は予定だから」
「こっちになったのよ」
「事情はわかったけれど」
「ネルフは司令一人かいな」
「まあスタッフの人は何人か残ってるけれどね」
「主だったメンバーはまあ」
そういうことであった。とにかく今のネルフは人を殆どロンド=ベルに出払ってしまっているのである。思えばかなり寒い状況である。
「冬月司令も寂しいだろうね」
「そやな。ホンマに一人かいな」
「一人であんな広い場所って」
「どんなんや」
「そもそも今ネルフって何してるのよ」
アスカは実に率直に尋ねてきた。
「もう使徒も全然出ていないわよね」
「そやな。あと八卦衆もおらんし」
「バウドラゴンはネルフの裏組織だったわよね」
「そや」
トウジがアスカに答える。
「マサトさんが言ってるやろ」
「ゼオライマーね」
アスカはここで難しい顔を見せる。
「あれもあれで色々とあるマシンよね」
「そうやな。グレートゼオライマーになったっちゅうてもや」
「冥王計画は補完計画が失敗した時の予備の計画だったそうだけれど」
シンジも話に入っていた。
「それも何かよくわからないし。全部謎?」
「謎が多過ぎるわよ、最近」
アスカはまた実に率直に述べた。
「変態爺さんだけじゃないから余計に腹が立たない?」
「またマスターアジアさんのことを言うんだね」
シンジも少し呆れていた。
「本当に気になるんだ」
「理解不能なのよ」
とかくマスターアジアには激しい拒絶反応を見せるアスカであった。
「とにかくね」
「まあ謎が凄く多いのは確かだね」
「例えばデュミナス」
アスカはデュミナスのことを話す。
「あの連中も何が目的か今一つっていうか全然わからないわよね」
「修羅と手を組んでるのはあれだよね」
シンジは戦略を語る。
「多分。利害関係だよね」
「それしかないでしょ」
アスカもそう読んでいた。
「どう見ても。ただ手を組んでるだけ」
「だよね。それはわかるけれど」
「それにあの三人の子供」
ティス達についても話される。
「何者なのよ。人間よね」
「そうとしか思えないけれど」
「変態爺さんは人間じゃないわよ」
またしてもマスターアジアを出すアスカであった。
「少なくともあれは」
「まああの人は置いておこうや」
トウジはここ話を強引に戻してきた。
「とにかく。デュミナスやな」
「そうよ、あの鼻タレ三人」
鼻タレとまで言うアスカであった。
「あの三人違う世界から来てるわね」
「デュミナスの世界からね」
「こっちの世界の人間じゃないのよ」
このことも言うアスカであった。
「それに。何か」
「何か?」
「人造人間っぽいのよ、何処となく」
考える顔で皆に述べるのだった。
「そう思わない?あの連中」
「そういえばそうだな」
「ええ」
アスカの今の言葉にラウルとフィオナが応えた。
「性格がかなり極端だな」
「それで一面的よね」
「まるでコピーされたみたいにな」
「アスカに言われるまではっきりとはわからなかったけれど」
「そうでしょ?あたしも今気付いたのよ」
アスカにしろそうであるのだった。
「前から人造人間っぽいかしらとは思っていたけれど。性格がかなり誇張されているようなのはね」
「ああ。明らかにおかしい」
「そもそもデュミナスは何なのかしら」
フィオナはそれについても考える。
「名前だけで。何なのかもよくわからないし」
「今度出た時でわかるかしら」
アスカはまた考えながら述べた。
「今度あの連中が出て来た時にね」
「さあな。どちらにしろだ」
「どうしたの?ラウル」
「そろそろ。敵を各個撃破といきたいな」
これがラウルの考えであった。
「このままだとよ。俺達の方が消耗しちまうぜ」
「けれど敵の正体も本拠地もわからないのよ」
アスカが言うのはそこであった。
「どの敵も」
「デュミナスに修羅にシャドウミラー」
異世界からの敵はこの三つであった。
「そもそもどうやって倒すかだな」
「シャドウミラーはあれじゃない?」
アスカが言う。
「あのヴィンデルっていう博士を倒せばそれでかなり違うわよね」
「ああ。連中はそやな」
トウジがアスカのその考えに賛同して頷く。
「それでいけるわ。ボスははっきりしとるんやし」
「けれど後の二つは?」
それがわからないのであった。
「デュミナスと修羅は。あの連中はどうすればいいかしら」
「異世界にまで乗り込む」
キラが言う。
「それは・・・・・・やっぱり無理だよね」
「次元を超えられるマシンはないですね」
ニコルもそれは知らなかった。
「ゴーショーグンは何か時間は超えられるようですけれど」
「それはそれでかなり凄いんだがな」
ディアッカはそれは認めた。
「けれどよ。異世界になるとよ」
「ああ。こちらは打つ手がない」
アスランはこのことをはっきりと認めた。
「サイバスターや魔装機神もラ=ギアスとこの世界を行き来できるだけのようだしな」
「このまま地道にやってくしかないの?」
ルナマリアはそれがかなり不満なようであった。顔がむくれている。
「どんどんこっちが消耗しちゃうんだけれど」
「今は耐えるしかないな」
レイの言葉はその現状を認めるものだった。
「進展がない限りはな」
「進展ねえ」
レイの言葉を聞いたメイリンが実に懐疑的な顔になっている。
「今本当に何かお互い消耗し合ってるわよね」
「このままじゃかなりまずいわ」
エマの言葉は正鵠だった。
「どうにかして打開したいのだけれどね」
「けれど今は目の前の戦いを勝っていくしかないですね」
ファの言葉もまた正論であった。
「それしか。今は」
「まだるっこしいわね」
アスカはそれが実に不満であった。
「頭ではわかっていてもね」
「とにかく今は整備と補給を進めていくわよ」
一同にミサトが告げた。
「今は。いいわね」
「了解」
「じゃあ骨休みも兼ねて」
彼等は静かにしていた。暫くはこれといった動きがなかった。だが一週間程経つと。ギリシア方面から敵軍の報告があがったのだった。
「今度の敵は?」
「デュミナスです」
早速ケンスケがミサトに応える。彼は通信を担当していた。
「スパルタ近辺に展開しているようです」
「また随分と面白い場所にいるわね」
「連邦軍から出撃要請が出ています」
今度はヒカリが告げる。
「すぐにギリシアに向かって欲しいと」
「了解と答えておいて」
ミサトはこうケンスケに言葉を返した。
「いいわね」
「はい」
「それでヒカリちゃん」
ミサトはケンスケへの指示を終えるとヒカリに声をかけた。見れば彼女はレーダーを担当している。
「レーダーの実戦だけれど」
「ミノフスキークラフトですか」
「ええ、それよ」
言うのはそれについてであった。
「そのせいでレーダーが意味ない場合もあるから気をつけてね」
「わかりました」
「そういう場合は人に頼って」
そしてこうも言う。
「それでいいわね」
「人?」
「うちの部隊には勘がいいのが揃ってるのよ」
微笑んでこう答えるのだった。
「アムロ中佐とかね。こういう人達に頼めばすぐに何処に敵がどれだけいるかわかるから」
「すぐにですか」
「特にアムロ中佐ね」
やはり彼であった。
「あの人とクワトロ大尉なら何でもわかるから」
「連邦軍の白い流星とジオン軍の赤い彗星ですか」
「その通り名は伊達じゃないから」
「何か凄い部隊に来たんだな」
ケンスケはこのことにあらためて感嘆する。
「僕達って」
「そうね。けれど」
ここでヒカリは自分の服を見る。
「私達学校の制服よね」
「そうだね。そういえば」
ネルフの制服は着ていないのである。
「別にいいって言われたけれど」
「ああ、それは気にしないで」
これはミサトも言うのであった。
「シンジ君達も同じだしね」
「そういえばそうですね」
「うちは制服ってないから」
ロンド=ベルの特色である。
「皆めいめいそれぞれの服着てるわよね」
「まあ連邦軍でも」
「凄いバリエーションがありますし」
その辺りの統一は全く為されていないのが今の連邦軍である。
「それを言ってしまうと」
「何か訳がわからなくなって」
「だからいいのよ」
あらためて二人に言う。
「服に関してはね」
「そうですか」
「わかったらじゃあ早速」
「はい」
「初陣だけれどいいわね」
くすりと二人に笑って問うのであった。
「ギリシアに行くわよ」
「わかりました。それじゃあ」
「すぐに」
「ギリシアで戦うのも久し振りね」
ミサトはふと思い出したように言った。
「考えてみれば」
「そうですね」
それにエレが応える。今ネルフの面々はゴラオンにいるのである。
「かつてはあの場所で赤い髪の女と戦いました」
「ジェリル=クチビ」
ミサトは彼女のことを思い出す顔を少し暗くさせた。
「あの戦いははっきり覚えています」
「ハイパー化」
かつて彼等が見た力の暴走である。
「力の恐ろしさを知りました」
「そうですね。あの時のことは忘れられません」
ミサトも何時になく真剣な面持ちになっている。
「決して」
「今度は何があるでしょうか」
「わかりません。ですが」
「ですが」
「行かなければなりません」
その真剣な面持ちで語る。
「そこに戦場がある限り」
「そうですね。それでは」
「全軍発進です」
ミサトが指示を下した。
「行く先はギリシア、スパルタです」
「わかりました」
「それでは」
彼女の言葉に従いロンド=ベルはアレクサンドリアを発った。そしてスパルタに向かうが途中のカイロネイアにおいてヒカリが言う。
「レーダーに反応です」
「迎撃ですな」
それを聞いてエイブが言う。
「我々の動きに気付きましたか」
「おそらくは」
ミサトが彼に答える。
「では出撃ですね」
「そうですな」
「ヒカリちゃん」
ミサトはここでヒカリに尋ねる。
「数はどれ位かしら」
「四千を超えています」
「今回も多いわね」
まずは数を聞いてこう述べる。
「方角は?」
「北です」
「そう、北」
「あの戦いと同じみたいね」
ここでゴラオンのモニターにマリューが出て来た。
「場所が場所だし」
「カイロネイアの戦いね」
「そうよ。あの戦いよ」
ギリシアの歴史に名を残す伝説的な戦いだ。精強を誇るスパルタ軍にテーベ軍が立ち向かうその斜線陣による集中攻撃で無敵とまで言われたスパルタ軍を破った戦いである。
「あの戦いの再現になるかしら」
「面白そうね」
マリューの言葉を聞いて楽しそうに笑う。
「場所を見たら私達が勝つ方よ」
「テーベね」
「そう。勝つつもりでしょ?」
「勿論よ」
マリューの笑みはそれ以外の考えはないという笑みであった。
「戦うからにはね。じゃあ」
「ええ。総員出撃」
この指示はもう規定路線であった。
「北の敵を撃破します」
「了解」
マリューがそれに応える。こうしてカイロネイアでの戦いがはじまったのである。
「また会ったわねロンド=ベル!」
「やっぱり手前かよおい!」
「いい加減顔見飽きたんだよ!」
「うっさいわね!それはこっちだって同じよ!」
ティスは早速ケーンとタップに言い返す。
「何でこういつもいつも出会うのよ!冗談じゃないわよ!」
「って手前が俺達のところに来るんじゃねえか」
「また随分勝手なこと言うよな」
「全くだ」
ライトも言う。
「そんなことじゃいい加減皆から嫌われるぞ」
「あんた達に嫌われても全然平気なんだけれど」
ティスもいつもの調子である。
「あたしとしてはね」
「とにかくよ、このピンクガキ!」
甲児がティスをこう呼ぶ。
「また俺達とやるんだよな!」
「そうよ!今度こそギッタンギッタンにしてやるわよ!」
「それは俺の台詞だわさ!」
ボスも甲児に続く。
「幾ら子供でも今度は容赦しないだわさ!覚悟しやがれ!」
「そうだそうだ!」
「もう許さないでやんすよ!」
ヌケとムチャもいつもの調子だ。彼等は既に戦闘態勢に入っている。
ロンドベルは全軍で陣を組んでいる。しかしそれに対してデュミナスは四千を超える兵のうち千を後方に置きそれぞれ千を三人が率いていた。
「ティス」
ラリアーがティスに声をかけてきた。
「わかってるよね」
「ええ」
ティスは憎々しげに甲児やケーンを見据えながら彼に応えた。
「勿論よ」
「デスピニスは?」
「わかってるわ」
彼女はここでも気弱な感じであった。
「それは」
「勝つことも大事だけれど手に入れることも大事なんだ」
ラリアーは真剣そのものの顔だった。
「ここはね。じゃあ進軍だ」
「わかったわ」
「行きましょう」
デュミナスの軍勢はその千をそれぞれ動かしてきた。ミサトは敵のその布陣と動きを見て思わずあの戦いのことを思い出したのであった。
「同じね」
「そうね」
またマリューがモニターから彼女に応える。
「何もかもね」
「さて、じゃあどうしようかしら」
「あの戦いは敵の本陣を集中攻撃したけれど」
「今回は本陣はないわね」
指揮官はあの三人である。本陣というものはなかった。
「敵にはね」
「じゃあどうするの?」
「それでも集中攻撃よ」
こうマリューに答えるのであった。
「まずは左翼を集中攻撃」
「あそこね」
それはデスピニスの軍であった。
「それから中央、右翼ね」
「その順番ね」
「それでどうかしら」
あらためてマリューに問う。
「あの戦いとは随分違うけれど」
「いいと思うわ。じゃあ」
「ええ。全軍進撃開始です」
ここでもミサトが指示を出す。
「攻撃目標は敵の左翼、中央と右翼は最低限の部隊で足止めです」
「了解」
「じゃあ早速」
ロンド=ベルは左翼に戦力を集中させそこから攻撃を浴びせた。これによりデスピニスの千はすぐに壊滅状態に陥ってしまった。
「確かに数は多い」
先陣を切るのはマイヨであった。その青いマシンが戦場を舞う。
「しかし。それだけで我々には勝てはしない」
言いつつ左右にいる敵を次々と切り伏せていくギガノスの蒼き鷹がまずはその雄姿を見せていた。
それに続くのはグン=ジェム隊だった。マイヨの華麗とも言っていい戦い方に対して彼等のそれは実にワイルドかつ破天荒なものであった。
「ほら、死ね!」
ミンがチェーンソーを振り回し周りの敵を木を切るように薙ぎ倒していく。
「あたしの前に出たのが運の尽きだよ!」
「し、し、し、死ね」
「遅いんだよ!」
ゴルとガナンもここにいる。それぞれ接近戦と遠距離戦で倒していく。
「おで、勝ってる」
「数を相手にするのは大の得意でよお!」
「このまま勝つ」
「纏めて俺の撃墜数にカウントしておいてやるから感謝しな!」
「いいねえ、この感じ」
勿論ジンもいる。彼は的確に敵を撃ち抜いている。
「先陣が一番いいな。ピカピカの敵ばかりだよ」
「ははははははは!その通りだ!」
「大佐」
そしてグン=ジェムもいた。彼は敵の中に飛び込むと当たるを幸い縦横無尽に潰していく。最早それは斬るという類ではなかった。
「敵は多い方がいい!倒しがいがあるわ!」
「だからさ大佐!」
「こ、ここは暴れよう」
「派手なパーティーといこうぜ」
「豪勢にな」
「そうよ!グン=ジェム隊恒例の戦場パーティーよ!」
四天王の声に応えてまた叫ぶ。
「どんどん倒してやるわ!覚悟せよ!」
「ってあの連中ばっか目立ってるじゃねえかよ」
「おいライト!」
タップとケーンがライトに言う。
「俺達も行くぜ!」
「遅れたら出番がなくなるぜ!」
「ああ、このままじゃかなりまずいな」
見ればマイヨとプラクティーズ、それにグン=ジェムと四天王だけでかなりの数を倒している。当然他の面々もいる。躊躇していては彼の出番がない状況であった。
「ここはな」
「行くぜ!」
「遅れるなよ!」
「わかった。さて、と」
ここでジャミングを入れる。
「これでよし。敵の攻撃は滅多に当たらないっと」
「よっし!」
「じゃあ怖いものなしだぜ!」
三人もまた突っ込みバズーカを派手に乱射する。彼等の活躍が大きなものとなりロンド=ベルに大きく傾こうとしている戦局だった。
しかしそれを見て。中央のラリアーが右のティスに声をかけた。
「いいね」
「救援ね」
「デスピニスが危ない」
こうティスに告げる。
「だから今は」
「わかってるわ。じゃあ」
「後方の予備兵力も投入する」
このことも決断した。
「全軍で救援するよ。いいね」
「わかったわ。じゃああたし達もね」
「行こう」
「ええ」
二人もまたデスピニスの方に向かう。その軍勢を連れて。デュミナスは総勢をあげてロンド=ベルに向かいとりあえずはデスピニスを救うのだった。
しかしそれでも。戦局はロンド=ベルに大きく傾いていた。そしてそれを覆すことは不可能になっていた。
「幾ら数が多くてもね!」
さやかが叫ぶ。
「勢いに乗ったら違うのよ!この戦いもらったわ!」
「さやか今日は乗ってるわね」
そのさやかにマリアが声をかけてきた。
「またどうしたの?」
「甲児君の影響かしら」
ここでふと甲児の名前を出す。
「ああした風に大暴れするの見てきたから」
「あいつはまた滅茶苦茶でしょ。ほら」
「確かに」
見れば今も派手に暴れている甲児だった。迫り来る敵を縦横無尽に倒している。
「邪魔する奴はどんどん潰すぜ!」
マジンカイザーを圧倒的なまでに暴れさせている。それを見て言うのはひかるだった。
「確かに強いけれど」
「どうしたの、ひかる」
「あれだけやっていたらすぐにエネルギーがなくなるんじゃなかしら」
彼女が危惧するのはこのことだった。ジュンに応える。
「甲児君の戦い方っていつもね。それが気になるのよ」
「確かにね」
彼女の言葉にジュンが頷く。
「鉄也や大介さんと違って甲児はそれが心配なのよ」
「ちょっと甲児君」
ここでさやかがその甲児に声をかける。彼は相変わらず暴れ回っている。
「そんなに飛ばして大丈夫?エネルギー切れは?」
「おっと、そうだった」
しかも言われてからそのことに気付く甲児だった。
「いけねえいけねえ、見たらもう全然残ってねえぜ」
「ちょっと。本当に大丈夫?」
「大丈夫だって。エネルギータンクあるからよ」
「そうなの」
「ああ。だからさ、心配無用だって」
しかしここで。鉄也から注意されるのだった。
「いや、待て甲児君」
「鉄也さん」
「エネルギータンクはもう使ったのじゃないのか?」
「あれっ、そうだったっけ」
「確か使った筈だ」
鉄也はまた言う。
「それで大丈夫なのか?今は」
「ああ、見たらもう一個あるな」
随分といい加減な返事だった。
「よかったよかった。一瞬焦ったぜ」
「全く。甲児君らしいが」
大介も彼に言う。
「それでも。気をつけてもらいたいものだ」
「悪い悪い」
「また狙われたらどうするのよ」
さやかの言葉は少しきつめになっていた。
「捕まったら目も当てられないでしょ。気をつけてよ」
「わかったよ。さやかさんも厳しいな」
「少なくとも甲児君は頼りになるからね」
これは間違いなかった。
「だから。しっかりしてよね」
「悪い悪い」
「まあとにかくだ」
鉄也がここで言う。
「今は俺達にとっていい流れだ。このまま行こう」
「そうだな。じゃあ鉄也君」
「はい」
今度は大介の言葉に頷く。
「僕達も行くか」
「そうですね。その方が甲児君が暴れなくても済みますし」
「一人よりも二人、二人よりも三人だ」
大介の言葉はチームを意識したものだった。
「だからだ。行こう」
「わかりました」
こうして甲児に合流してマジンガーチームの力を見せつける。彼等の行動もありロンド=ベルはその優位性をさらに確かなものにさせる。デュミナスは今度も敗色が濃厚になってきていた。
「またなの!?」
ティスが忌々しげに声をあげる。
「また奴等に負けるの!?もううんざりよ」
「けれどティス」
ラリアーがいつものように冷静に彼女に声をかける。
「今の状況は僕達にとっては絶望的だよ」
彼が言うのはここでも今までと同じだった。
「だから。諦めることも」
「これで何回目かしらね」
ティスノ忌々しげな口調は変わらない。
「全くね。どうしたものかしら」
「じゃああのエンジンを手に入れるのは」
「諦めるしかない」
ラリアーはデスピニスに対しても述べる。
「今はね」
「そうなの」
「じゃあさっさと撤退しましょう」
今度のティスの言葉はふてくされたものだった。
「帰るわよ。それでいいのよね」
「うん。それじゃあ」
ラリアーがそれに頷く。しかしここで。新たに何かが出て来た。
「!?」
「何だこのプレッシャーは!?」
ショウとアムロが同時に声をあげた。
「尋常じゃない、悪しきものではない。けれど」
「この巨大なプレッシャーは何だ!?」
「えっ、まさかこれって」
ティスもまた驚きの表情を見せていた。
「まさかとは思うけれど」
「いや、間違いない」
しかしラリアーが彼女に述べる。
「この気配は」
「デュミナス」
デスピニスが言う。
「どうしてここに」
「子供達よ」
ここで謎の声が聞こえてきた。
「今までよく頑張ってくれました。ですが」
「ですが!?」
「これからは貴方達にだけ我慢はさせません」
こう三人に告げるのだった。
「私もまた」
「けれどそれは」
ラリアーがその声に対して言う。
「貴方が。出られることは」
「いえ、もう苦労ばかりさせません」
しかしまた声は言うのだった。
「ですから。ここに」
「そうですか」
「ではデュミナス」
デスピニスがその声に問う。
「貴方もまたなのですね」
「時が来ました」
今度はデスピニスに告げた。
「今ここで」
「何だありゃ」
ジュドーは突如として姿を現わした赤と青の四本の腕を持つマシンを見て言った。
「また見たことのねえマシンだな」
「そうよねえ」
「何なのだ?」
プルとプルツーもそれぞれ言う。
「あのマシン」
「プレッシャーはあそこから感じるところを見ると」
「あいつかよ」
ジュドーにもわかった。
「あいつがデュミナスのボスだな。そうよな」
「私の名はデュミナス」
その四本の腕のマシンからの声であった。
「存在自体が間違いだと言われた者」
「何故だ!?」
この声を聞いたアムロがいぶかしむ顔になった。
「邪気はあるが悪意はない」
「!?そういえばそうだな」
ジュドーはこのことにも気付いた。
「妙な感触だな。こんなのって」
「そもそもあれは」
カミーユも言う。
「生き物かのか?それとも機械なのか?」
「その質問には答えられない」
しかしデュミナスは彼等の言葉には答えようとしない。
「何故なら私自身も知らないからだ」
「!?知らない」
「どういうことだ、それは」
今のデュミナスの言葉に竜馬と隼人が顔を顰めさせる。
「自分と知らないというのか」
「またおかしなことを言うな」
「そもそもよ」
「あいつは一体」
武蔵と弁慶も言う。
「何者なんだよ」
「デュミナスって組織の名前じゃなかったのかよ」
「そう、私は知らないのだ」
「また知らないというのか」
アムロが今の彼の言葉を聞いて呟く。
「やはりおかしいな」
「私は生き物なのか、機械なのか」
こうロンド=ベルの面々に告げる。
「それとも別の何かなのか」
「自分で自分がわからないの?」
「どうやら間違いないな」
チャムの言葉にショウが答える。
「あれを聞いていると」
「けれどそんなことって。あるの?」
「あるさ。けれどそれは」
ショウはここで首を傾げるのだった。
「人間の考えることだ。それでどうして」
「じゃああいつは」
「しかしわかっていることがある」
デュミナスの言葉は続いていた。
「それは私がデュミナスということだ」
「!?どういうことだ」
万丈がここまで聞いたうえで顔を顰めさせた。
「それだけがわかっているっていうのは」
「デュミナス」
自分の名前を名乗る。
「地球の言葉に訳せば間違い、失敗、誤り」
否定の言葉ばかりであった。
「私はそう呼ばれた。だから私はそう名乗っている」
「一体誰が」
今度はシーラが彼に問うた。
「誰がそう呼んだのですか」
「私の親」
返答はこうだった。
「私の創造主」
また答える。
「それがこの世に生まれた私に対して創造主は言った」
「何とだ?」
今度問うたのはカワッセだった。
「その創造主とやらは何と御前に対して言ったのだ」
「御前を生み出したのは間違いだ」
言葉には悲しみと怒りがあった。
「御前は存在していること自体が間違いなのだと。デュミナスなのだと」
「それでか」
「そうだ。だから私はデュミナスだ」
また答えるのだった。
「それが私だ」
「ではあらためて聞こう」
クレフが彼に尋ねる。
「御前の目的は。何なのだ」
「それは」
「それは!?」
「私が求めていることに他ならない」
またしても妙な返答であった。
「ロンド=ベルに質問する」
「何だ!?」
「私の目的は何だ」
こうロンド=ベルに問うのだった。
「私の目的は。一体何だ」
「何だって俺達が知るかよ」
すぐにジュドーが答える。
「御前が知らないことなのに何で俺達が知ってるんだよ」
「そうよ」
「考えてみればそうだ」
プルとプルツーもここで言う。
「私達が知ってるわけがないじゃない」
「御前が知らないことをな」
「大体俺達は御前のことを何にも知らねえんだぞ」
ジュドーはまた彼に言う。
「それで何で答えられるんだよ」
「おかしいじゃない、それって」
「矛盾しているぞ」
「そうか。それではだ」
三人の言葉を聞いたデュミナスはここで動いてきた。
「それではだ。私は答えを求める」
「また訳のわからねえこと言ってるな」
アラドもジュドーを同じことを言う。
「何言ってるんだ?あいつは」
「欲わからないけれどあれみたいよ」
そのアラドにゼオラが姉の様に述べる。
「また動きだしたみたいよ、連中」
「何っ!?」
「来るわ」
ゼオラは言った。
「敵が。迎撃ね」
「ちぇっ、結局こうなるのかよ」
「文句言わないの」
またアラドを叱る。
「ぶつぶつ言ってたらそっちに注意がいってやっつけられるわよ。いいわね」
「わかったよ。じゃあよ」
「来るぞ」
オウカが二人に告げてきた。
「敵がな」
「わかった。だが」
今度はクォヴレーが言ってきた。
「!?どうしたのクォヴレー」
「新手の敵か?」
「違うな、これは」
彼はアラドとゼオラに対して冷静に言葉を返してきた。
「味方からだ」
「味方!?」
「誰だよ、今皆出てるぜ」
「!?待って下さい!」
驚いた声をあげているのは美穂だった。
「どうして空いているメッサーがいきなり」
「誰が出たの!?」
サリーも言う。
「いきなり出て来て。誰が」
「ちょっと待って!」
今度はアカネが叫ぶ。
「ラージとミズホがいないわ!何処なの!?」
「何処も何もない」
リーは忌々しげに呟く。
「あのメッサーに乗っている。間違いない」
「えっ、そんな」
「あの二人がまさか」
アカネだけでなくホリスも驚きの声をあげる。
「どうして」
「戦闘機の運転なんてとてもできない筈なのに」
「自動操縦だな」
ブレスフィールドはこう憶測を立ててきた。
「それだな」
「自動操縦か。しかし」
リーはここでさらに顔を顰めさせる。
「何故あの二人が出る。非戦闘員であるあの二人が」
「それはわからんな。しかしだ」
ブレスフィールドはここでまた言ってきた。
「あの二人が向かう先はだ」
「デュミナスです」
美穂はこう述べて顔を曇らせる。
「間違いありません、この方角は」
「デュミナスの方に」
ミズホはそう聞いてから首を傾げさせる。
「そう言われても。またどうして」
「考えることは後回しにした方がいいな、この場合は」
リーは普段の冷静さを取り戻していた。
「それよりもだ」
「それよりも?」
「あの二人を止めるのだ」
彼は言う。
「今はな。その方を優先させるべきだ」
「二人をですか」
「あの二人ではデュミナスを倒すことは不可能だ」
リーの判断は妥当なものだった。
「それはわかるな」
「戦闘機一機じゃそりゃ無理よ」
アカネはこうリーに答えた。
「あんなでかいのはとても」
「だからだ。今向かえる者に告ぐ」
こうした場合のリーの動きは早い。
「二人の乗るメッサーを止めろ。いいな」
「言われなくても動いてらあ!」
既にカズマが動いていた。
「ラージさん!ミズホ!」
「俺も行く!」
トウマも動いていた。
「行くな!やられちまうぞ!」
「ここは俺達に任せてくれ!」
「残念ですがそういうわけにはいかないのですよ」
しかしラージはその彼等に答えるのだった。
「ここはどうしても」
「そうです」
ミズホも同じ答えであった。
「ですから今は」
「任せておいて下さい」
「馬鹿言え、そんなことできるかよ!」
「そうよ!」
ラウルとフィオナも来たのだった。
「俺もそっちに今から行くからな!」
「ちょっと待っていて!」
「御前等は安心して後ろに下がれ!」
「わかったわね!」
「ミズホ」
だがラージは彼は彼等の話を聞くことなくまたミズホに声をかけた。
「行きますよ」
「はい」
静かに頷いて答えるミズホだった。
「今こそです」
「わかっています」
こう言い合いメッサーをさらに進ませる。もうロンド=ベルの面々では追いつけない場所にまで来ていた。
「あの二人、何を考えている」
リーはそんな二人を見て顔を顰めさせている。
「戦闘機一機でデュミナスを倒せるとでもいうのか?」
「御前さんでもわからんか」
「愚かにも過ぎる」
また述べるのだった。
「ましてだ。これが兜甲児ならばともかくだ」
「俺かよ!」
甲児は思わずリーに抗議する。
「何で俺なんだよ、おい!」
「自覚ないんだ」
シンジが横で呆れている。
「甲児さんって。ずっと」
「流石はロンド=ベルの誇る大馬鹿者ね」
アスカもまたいつものように言う。
「自分がやってきてることわからないんだから」
「御前等フォローしねえのかよ!」
「フォローって言われましても」
「事実じゃない」
また言うのであった。
「本当にね」
「だから僕達には」
「ちぇっ、何か踏んだり蹴ったりの気分だぜ」
「あの二人だ」
リーは甲児を気にすることなく話を進めていた。
「だからこそ。何故だ」
「!?敵が!」
美穂が叫んだ。
「敵がメッサーに!」
「来ました!」
「迎撃の用意を」
エキセドルはまずは冷静に指示を出す。
「御願いします。二人を守りましょう」
「ですが艦長」
しかし美穂はその彼に対して言う。
「マクロスの攻撃では二人も巻き添えにしてしまいます」
「ですから」
「・・・・・・そうですか」
それを聞いてさしものエキセドルも沈黙してしまった。
「では」
「何か全然訳がわからないけれどね」
メッサーに近付いているのはあの三人であった。まずティスが言う。
「あんた達、生け捕りにさせてもらうわ」
「安心してくれ。殺したり危害を加えるつもりはない」
ラリアーがそれを保障する。
「ただ捕虜にするだけだ」
「これで何かわかればいいけれど」
デスピニスも言う。
「デュミナスのことが」
「ティス、ラリアー、デスピニス」
そのデュミナスが三人に声をかける。
「ここは御願いしますね」
「わかりました」
「それじゃあ彼等を捕虜にして」
「それで私達も」
「そうです」
静かに語るのであった。
「それではこのまま。撤退しましょう」
「了解です」
メッサーを捕獲したラリアーが答える。それと共に彼等は姿を消し後には誰も残ってはいなかった。二人は謎の行動により捕虜となったのであった。
「これでよし、ですね」
「ええ」
二人だけがこのことに満足しているだけであった。ロンド=ベルの誰もがこの行動を理解できはしなかった。できる筈もないことだった。
「だからさ、全然わかんないんだけれど、おいら」
サイシーが言っていた。
「何でラージさん達が出撃したんだよ」
「特攻!?全然違うな」
ヂボデーも難しい顔になっている。
「あんまりにも行動がクレイジーなんでかえってわからねえぜ」
「しかもあの二人だ」
アルゴはラージとミズホ自体について述べる。
「ああした行動を取るとはとても考えられない」
「ですが御二人は捕虜になりました」
ジョルジュが述べるのは事実であった。
「これは間違いありません」
「何か全然筋が通っていないのよね」
アレンビーは首を捻るばかりであった。
「今回のあの二人。何が何だか」
「それはそうとしてよ」
レインが言うのは別の問題であった。
「二人を助け出さないといけないけれど」
「どうするかですぞ」
キアラが言う問題もまた実に困難な性質のものであった。
「何しろ彼奴等は別の世界にいるのですからな」
「そうなのよね。どうすれば」
「!?待て皆」
だがここでドモンが言った。
「来たぞ」
「来た!?」
「一体誰が」
「あいつだ」
険しい顔で言うのだった。
「あいつが来た、この気配は」
「この気配・・・・・・むっ!?」
ここでアムロも感じた。
「間違いない、この気配は」
「レーダーに反応です」
サエグサが報告してきた。
「一機こちらに来ます」
「敵か?」
「いえ、これはネオグランゾン」
「ネオグランゾン!?」
「どういうことだ」
皆ネオグランゾンと聞いて驚きの声をあげずにはいられなかった。
「シュウ=シラカワが」
「何故ここで」
「あいつの考えだけは訳がわからねえけれどな」
マサキもまた顔を顰めさせていた。
「けれどよ、これだけは言えるぜ」
「これだけは?」
「あいつはいつもここぞっていうタイミングで出やがるよな」
こうシモーヌに答えるのだった。
「いつもな。普段は影も形も見せねえのにな」
「そうね」
話を聞いたシモーヌもそれに頷いた。
「そしてそういった時はいつも」
「ああ、そうだ」
さらに言うマサキであった。
「謎を解き明かしやがる。ということはだ」
「今度のデュミナスもまた」
「有り得るだろう?やっぱりよ」
「そうね。タイミングとしては確かに最高だし」
「それでサエグサさん」
マサキはサエグサに尋ねてきた。
「あいつは今何処にいるんだ?」
「もうすぐここに来る」
サエグサはこう彼に答えるのだった。
「ここにな」
「そうか。じゃあ」
「やあ、皆さん」
早速モニターが開きシュウが出て来た。
「お久し振りですね。お元気そうで何よりです」
「このタイミングで来るなんてな」
マサキは真顔でモニターのシュウに応えていた。
「手前、やっぱり」
「お気付きのようですね」
真顔のマサキに対して涼しいいつもの表情で述べるのであった。
「その通りです。デュミナスに関してですが」
「知ってるんだな、奴等のことを」
「ええ、それに」
シュウはここでさらに言ってきた。
「修羅のことも。少しですが」
「言え」
今言ったのはマサキではなくラウルだった。フィオナもいる。
「デュミナスについて知ってるんだな!?」
「だったら早く言いなさいよ」
二人で同時にシュウに問う。
「知ってることを全部な!」
「隠すとためにならないわよ!」
「まあまあお待ち下さい」
激昂している二人に対してシュウは冷静なままであった。
「私とて隠すつもりはありませんよ」
「じゃあ早くだ!」
「いいなさいよ!」
「まずはそちらにお伺いして宜しいでしょうか」
シュウが今言うのはこのことだった。
「そちらに。如何ですか」
「あ、ああ」
彼に応えたのはブライトであった。
「是非な。来てくれ」
「わかりました。それでは今からそちらに」
「上等の稗か黍を用意しておいたら嬉しいな」
チカもモニターに出て来た。
「黍団子でも」
「何だ、あの小鳥」
「青くてやけに態度でかいけれど」
ラウルとフィオナは今度はチカを見て言う。
「シュウ=シラカワと関係があるのか?」
「まさかと思うけれどファミリア?」
こう皆に尋ねるのであった。
「全然違うじゃねえか」
「それもそうか」
「んっ!?そうだけど」
その彼等に答えたのはベッキーであった。
「知らなかったのかい?ひょっとして」
「有名ですけれど」
ザッシュも彼等に言う。
「このことはね」
「ロンド=ベルじゃ常識ですよね」
「あれがあいつのファミリアかよ」
「全然個性が違うじゃない」
「だがまことだ」
今度はティアンが言う。
「これもまた真実」
「いやあ、私も最初は驚きましたよ」
デメクサは今日も呑気な感じだ。
「まさかねえ。あのチカちゃんがだなんて」
「人には色々あるものだ」
アハマドもいつもと変わりない。
「あの男もまただ」
「しかし。ここで出て来るとはな」
「話が動くか」
ジノとファングは戦いのことを考えていた。
「シュウ=シラカワ、果たして」
「何を持って来たか」
「それで黍団子よね」
ロザリーが気にしているのはこれだった。
「あったかしら。そういえば」
「んっ!?これちゃうんか?」
ロドニーが丁度今それを食べていた。
「ごっつ美味いでこれ」
「そうですね」
リリスもそれに頷く。
「このお団子。とても」
「三個位残しておきましょう」
プレシアが気を使って言う。
「あの子の為に」
「やれやれ。また何か賑やかになってきたな」
マサキがこの中でぼやく。
「只でさえごたごたしてるってのによ全く」
「ごたごた!?そうではあるのではないのでございましょうか」
モニカがここでマサキに言ってきた。
「シュウ様がここに来られるわけでもないというのは」
「だから姉さん、文法が滅茶苦茶だよ」
「もう何言ってるか完全にわからないわよ」
テリウスとセニアが突っ込みを入れる。
「まあとにかくクリストフがここに来たからには」
「絶対に何かあるわね」
「だってシュウ様ですもの」
サフィーネのこの言葉には何故か絶対の説得力があった。
「きっと。よくなりますわ、事態が」
「多分このまま激戦地だな」
「それは間違いないわね」
「まっ、それもヒーローの務めってわけだな」
最後にグッドサンダーチームが言う。シュウの来訪で確実に動きつつあるのは皆感じていた。その中で次の戦いに備えるのであった。

第七十八話完

2008・9・12
 
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