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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第七十三話 招かれざる異邦人 前編

               第七十三話 招かれざる異邦人 前編
バグダットでの戦いを終えたロンド=ベル。まずは彼等はまたアレクサンドリアに戻ることになった。
「またあの街なのか」
「嫌か?」
「いや、別にそれはな」
リュウセイはライに言葉を返した。
「ただな。アフリカっていうと絶対にあの街だよな」
「それは仕方ないわ」
アヤがリュウセイに対して答える。
「だってアレクサンドリアは港にも恵まれているし」
「港か」
「そうよ。元々海軍の基地が置かれていてそれが発展したから」
さらにリュウセイに説明する。
「だから基地としても設備が整ったのよ。地球では多分北アフリカ随一ね」
「確かに設備は凄いよな」
「宇宙で言うとゼダンだ」
ライもかなり絶賛している。
「それだけの規模と価値のある街だ」
「そうね。だからあの街を拠点にしているのよ」
「だから今回もってわけかよ」
「そういうことになる」
今度はライが答えた。
「わかったらすぐに入港準備だ。いいな」
「了解。じゃあ行くぜ」
「それでリュウセイ」
アヤがまたリュウセイに声をかける。
「今度は何だ?」
「貴方今度の当直士官だけれど」
「おっと、そうだったか」
「アレクサンドリアには敵のスパイが紛れ込んでいるって噂があるわ。気をつけてね」
「スパイっていうとだ」
リュウセイはスパイと聞いて少し考える顔になった。
「またあれか?シャドウミラーか何かかよ」
「だとしたら厄介な相手だ」
ライの顔が真剣なものになる。
「シャドウミラーは工作戦が得意だ。だからな」
「そうだよな。ここは気合入れていくか」
「御願いね。タケル君も残ってくれるから」
「あいつがいるっていうのは心強いな」
タケルの名を聞いて笑顔になるリュウセイだった。
「超能力者がいるとやっぱり違うぜ」
「リュウセイも念動力があるしね」
「頼むぞ」
二人はここではリュウセイを信頼していた。
「俺達は街に出なければならないからな」
「何か用事でもあるのか?」
「少しね。レビもヴィレッタ隊長も一緒よ」
このことをリュウセイに対して述べる。
「アレクサンドリアの連邦軍の基地にね。行かなくちゃいけないから」
「連邦軍か」
「SRXの後継機に関するデータが来ているのよ」
「何っ、SRXの」
SRXと聞いてリュウセイの顔が一変した。
「マジかよ。そりゃ凄いな」
「けれどここで頭が高いとか言わないようにね」
アヤはここでは少しふざけていた。
「わかってるわね」
「俺、そんなの言いそうか?」
「声を聞いていたらね」
また笑ってリュウセイに述べる。
「そう思えるのよ。ついつい」
「ついついってよ」
「御前の声は色々と聞こえる」
「ライまで言うのかよ」
「俺もそうだからわかる」
実は彼もそうであるらしい。
「声で何かと言われることがあるからな。俺も」
「そういやレビもだったな」
「そうね。私も結構あるし」
何かと声では色々とあるSRXチームであった。
「特にリュウセイの声はそうなのよ。満を持して降臨とか言うことあるわよね」
「そりゃまあ」
否定出来ないリュウセイだった。
「好きな言葉なのは確かだよ」
「やっぱりね。そう言うと思ったわ」
「レイがクライマックスって言葉好きなのと同じだな」
「そういえば最近アスランは蝿がどうとか言うな」
ライはアスランにも気付いた。
「声は。不思議なものだ」
「まあ声のことは一度話すとどうしても皆色々あるわね」
「最初に言ったのはアヤじゃねえか」
「あらっ、そうだったかしら」
「そうだったかしらじゃねえよ。とにかくだよ」
リュウセイは話を戻しにかかった。
「俺はタケルと一緒に残るぜ。それでいいよな」
「御願いね。多分アムロ中佐もおられるし」
「あの人も外出しねえなあ」
今だにインドア派のアムロであった。
「トレーニングも中だし飲むのもブライト艦長と艦内でだしな」
「あの人はあの人よ」
アヤは明るく笑って述べた。
「けれどトップガンがいざっていう時に中にいてくれると有り難いじゃない」
「まあな。じゃあよ」
「ええ。そろそろ入港よ」
「入港準備だ」
それぞれの口で言う。
「身体をしっかりと固定しておくようにな」
「おうよ」
こうしてロンド=ベルはアレクサンドリアに戻った。アレクサンドリアに戻ると殆どの人間が外出し当直以外はアムロが残った。リュウセイは残った面々と話をしていた。
「残ったのは意外な面子だな」
「そうかな」
彼の言葉にタケルが応えた。
「俺はそうは思わないけれど」
「いや、アムロ中佐がいるのはわかるぜ」
アムロのことはもう皆わかっていた。
「ただよ。それ以上に」
「それ以上に?」
「この人が残っているなんて思わなかったぜ」
「この人って?」
「あんただよ」
少し呆れた顔でそのエクセレンに対して言うのだった。
「あんただよ。当直だったっけ」
「一応はそうよ」
笑ってリュウセイに応えてきた。
「宜しくね」
「このメンバーってよ」
あらためてメンバーを見る。見れば他にはブンタやボルフォッグ、レイ、マックスといったかなり冷静な面子が揃っている。リュウセイとは正反対だ。
「俺以外は皆落ち着いた奴ばかりだからよ」
「落ち着いた面々の中に一輪の花」
エクセレンはにこにこと笑いながら述べる。
「かなりいい組み合わせよね」
「いや、そういう意味じゃねえんだけれどな」
リュウセイは今のエクセレンの言葉も否定した。
「俺はさ。ただ」
「ただ?」
「中尉が心配なんだよ」
不安そうな顔でエクセレンを見ていた。
「酒飲み過ぎないようにして欲しいな」
「あら、言ってくれるわね」
今のキョウスケの言葉はかなり不満なようであった。
「私はお酒飲む時は夜だけよん」
「だったらいいけれどよ。とにかく」
リュウセイはまた言う。
「スパイもいるかも知れないし気合入れていくか」
「そうですね。それは」
タケルはリュウセイの今の言葉に頷いた。
「警戒して行きましょう。過去そういうこともありましたし」
「昔を思い出すな」
リュウは静かに述べた。
「ランバ=ラルがホワイトベースに侵入した時のことをな」
「ああ、あれですね」
話を聞いて加わってきたのはシーブックだった。
「あの時はかなり大変だったんでしたよね、確か」
「リュウさんは負傷されたしな」
アムロがこう答えた。
「俺も。あの時は」
「アムロさんのそうした時って」
「何か。どうもイメージが」
つかないのだった。今彼等が知っているアムロはロンド=ベルのエースとしてのアムロだからだ。他のアムロは知らないのである。
「つかなくて」
「おいおい、イメージできないっていうのか」
「だってなあ」
「ええ」
またタケルがリュウセイの言葉に応える。
「アムロさんっていえばロンド=ベルの押しも押されぬトップガンですから」
「そうですよ」
このイメージは不変というわけである。
「そのアムロさんの昔なんて」
「話に聞いたことはありますけれど」
「俺だって最初からトップガンだったわけじゃないさ」
アムロは笑ってリュウセイ達に対して述べた。
「最初はな。酷いものだったよ」
「その時っていうと一年戦争の時ですよね」
「ああ、その時だ」
アムロは公こう一同に対して述べた。
「その時の俺はな。誰も信じられなくていつも俯いていたな」
「いつもですか」
「そう、いつもだ」
笑って答えるアムロだった。
「いつもな。苦労したものさ」
「アムロ中佐が苦労って」
「何が何だか」
「そんなに信じられないのならブライトに聞くといい」
「ブライト艦長に」
「あいつとも長い付き合いだしな」
「長い付き合いですか」
このこともやはり彼等はよく知らないのだった。
「やっぱり一年戦争の時は」
「どうも」
「ザクやドムは知ってるよな」
「まあそれは」
「前の戦いにも出て来ましたし」
この問いにはリュウセイとシーブックが答えた。
「正直俺達から見たら旧式でしたけれど」
「あの時は」
「特にゲルググが強かったな」
アムロはここではゲルググの名前を出した。
「最後の方に出て来てな」
「ゲルググが」
「あいつも乗っていた」
あいつという言葉が出て来た。
「シャアもな。乗っていたな」
「クワトロ大尉もですか」
「あれっ、これは知らなかったか」
「ああ、あれですね」
タケルがここで思い出したのである。
「赤いゲルググですよね」
「知っていてくれたか」
「何か赤いザクよりはマイナーですけれど」
当時のシャア、つまりクワトロといえばザクというイメージが強いからである。だから皆この赤いゲルググのことを忘れてしまっていたのである。
「そうですね。クワトロ大尉の最後の方の機体ですね」
「他にはズゴックもあったんだ」
アムロは懐かしむ顔でそのことも話した。
「あれはジャブローだったな」
「ジャブロー降下戦ですよね」
「ああ。あそこでもあいつと戦った」
さらに懐かしむ顔になるアムロだった。
「激しい戦いだったよ。あの時も」
「そうだったんですか」
「当然宇宙でもな」
エクセレンの言葉に応えていた。
「激しくやり合ったさ。今はゼダンの」
「ア=バオア=クーですね」
「シーブックもあそこで戦ったな、そういえば」
「バルマー戦役で」
彼もその時にジオン軍と戦っていたのだ。だから知っているのである。
「あの堅固な場所でですか」
「行く直前で隕石に巻き込まれて戦いは流れたけれどな」
そこまで行かなかったのである。
「けれどその直前で。あいつとは何度も戦ったさ」
「何度もですか」
「今では懐かしいと言うべきかな」
とはいっても表情は微妙なものになっていた。
「あいつとのこともな」
「それで中佐」
リュウセイが彼に声をかけてきた。
「どうした?」
「その頃から大尉も大尉だったんですね」
「いや、かなり変わったな」
だがアムロは今の彼の言葉には首を捻った。
「あの頃のあいつと今のあいつはな」
「違いますか」
「あのままだと下手をすればギレン=ザビやジャミトフ=ハイマンと同じになっていたな」
「まさか」
「いや、俺はそう思う」
真顔で一同に告げるのだった。
「あいつは純粋過ぎるところがある。それに昔のあいつは選民思想も強かった」
「選民思想が」
「というよりかは潔癖過ぎた」
流石に彼のことがよくわかっているのだった。
「それが悪い方向に出ていただろうな」
「そうなんですか」
「そうだな」
ここで新たにもう一人出て来た。
「あのままではあいつは。いずれはな」
「ハマーン」
「ハマーンさんも残っておられたんですか?」
エクセレンが姿を現わしたハマーンに対して言った。
「またどうして」
「ミネバ様がテレビゲームをしておられてな」
表情を変えずにエクセレンの問いに答えた。
「それでだ。私もお付き合いさせて頂いたのだ」
「ゲームですか」
「恋愛育成ゲームだがな」
なおも表情を変えない。
「攻略本も買って。楽しまれておられるのだ」
「そうですか」
「それで私はアドバイスさせて頂いている」
何処までもミネバに世話を焼くハマーンだった。
「ミネバ様が真剣にやっておられるのなら私が側にいなくてはなるまい」
「それでだったんですね」
「そういうことだ。今ミネバ様はお昼寝中だ」
どうやらゲーム疲れらしい。
「それでこの部屋に来たのだが面白い話をしているようだな」
「面白いとは思わないがな」
「少なくとも私には興味がある」
ハマーンはこうアムロに言葉を返した。
「シャアの話はな」
「そうですか」
「後だ。ブロウニング少尉」
エクセレンに顔を向けて声をかけてきた。
「はい?」
「貴官は二十三歳だったな」
「そうですけれど」
「では私より年上だ」
これは誰もがついつい忘れることであった。
「私はまだ二十一なのだからな」
「あっ、そういえば確かに」
「ハマーンさんはまだ」
「あの少年はすぐに何かと言うがな」
シンのことである。
「よくも懲りずに」
「けれどハマーンさんもやり過ぎだよな」
「ああ、いつもいつもな」
リュウセイとケーンがひそひそと話をする。見ればドラグナーの面々もいる。
「シンを残骸にしちまうからな」
「あいつも言わなくていいこといつも言うしな」
「とにかく私はまだ二十一だ」
これを本人も強調する。
「それは覚えておくようにな」
「はあ」
「わかりました」
タップとライトもそれに頷きはする。だが。
「まあこれ以上は言わないでおこうな」
「俺達も命が惜しいからな」
「そういうことだな」
「聞こえているがな」
その二人にハマーンが突っ込みを入れる。
「げっ、やっぱり」
「けれど俺達は何も」
「口に出さなければいい」
意外と寛容なハマーンであった。
「出せば容赦はしないがな」
「そうだったのか」
ケーンが今知った衝撃の事実であった。
「だからシンの野郎はいつもいつも」
「またあいつは言わなくていいこといつも言うからなあ」
「口は禍の元だよね」
リュウセイとタケルも容赦がない。
「本人幾ら言ってもわからないけれど」
「とにかくだ」
リュウセイは話を戻してきた。
「ハマーンさんもあの人はそうだったって思ってるのかな、やっぱり」
「うむ」
静かに頷いたそれは肯定の証であった。
「私が知っているシャアそのものだ」
「そうなんですか」
「ニュータイプという存在にこだわり過ぎていた」
そしてこう答えた。
「私もそうであったがな」
「ニュータイプですか」
「思えばどうということはないのだ」
ハマーンの今の言葉には達観があった。
「ムウ=ラ=フラガにしろフレイ=アルスターにしろ」
「ええ」
本来は別系統の筈の二人である。ハマーンがここであえて二人の名前を出したのにはやはり理由がある。その理由がまた語られるのであった。
「ニュータイプだ。だがその心は普通の人間と変わらない」
「まあそうだよな」
「フレイは我儘なところがあるけれど」
リュウセイとライが言い合う。
「まともな人間だよな」
「そうだね」
「そしてタケルだったな」
ハマーンは今度はそのタケルに声をかけてきた。タケルもそれに応える。
「俺ですか」
「そうだ。御前はバルマー人であり超能力者だ」
「はい」
ハマーンのその言葉に頷く。これは否定しようのない事実だ。
「だが。それでも地球の為に戦っているな」
「確かに俺はバルマー人です」
これは彼も認める。
「けれど地球で育ちました。そして」
「心は人間のものだと言うのだな」
「そう、その通りです」
ハマーンに対して答える。
「俺は人間です。地球にいる」
「超能力があってもだな」
「そんなことは関係ありません」
こうまで言うのだった。強い声で。
「俺は人間です。だからこのロンド=ベルで戦うんです」
「そう、それだ」
ハマーンはそれだと言った。
「そういうことだ。ニュータイプも超能力もさした問題ではないのだ」
「ただの力ですか」
「力に過ぎない。しかも微々たるな」
ハマーンの目はここで微かに下を向いた。一瞬だが。
「コーディネイターにしろサイボーグにしろ。他の星の者にしろだ。この戦いでわかってきたのだ」
「クワトロ大尉もそれは同じだと」
「何度かあいつの口から聞いた」
アムロがまた言ってきた。
「今はクワトロ=バジーナだとな。シャア=アズナブルではないと」
「そうですか」
「そしてだ」
アムロはさらに言葉を続けた。
「キャスバル=ズム=ダイクンでもないと言った」
「キャスバル=ズム=ダイクン!?ああ」
ケーンはそれが誰なのかわかった。
「クワトロ大尉の本名だったよな」
「ああ、その通りだ」
「俺ちょっと忘れていたぜ」
ライトとタップもそれに続いた。
「今はクワトロ=バジーナでしかないとな」
「アズナブルでもダイクンでもないですか」
「そうだ。わかるな」
シーブックに対して言葉を返す。
「この意味が」
「ええ、よく」
そしてシーブックはアムロの今の言葉にはっきりと頷いた。
「そういうことでしたら」
「そういうことだ。だから今のあいつは問題ないんだ」
「クワトロ=バジーナはですね」
「クワトロ=バジーナは地球の為に戦場にいる」
そうした意味においてシャア=アズナブルではないのであった。
「皆を守る為にな」
「皆を守る為に」
「ニュータイプに凝り固まってもいない」
これもまた重要であった。
「人間として戦っている。ただの人間としてな」
「それは私もだ」
ハマーンも言うのだった。
「さっきも言ったがニュータイプなぞ些細なことだ」
「では今のハマーンさんは」
「そうだ。あの男と同じだ」
彼女もまたはっきりと言った。
「ミネバ様の為。ひいては地球の為にここにいるのだ」
「そこでミネバちゃんが出るのがハマーンさんなのよね」
エクセレンはこっそりと茶々を入れた。
「意外と子煩悩なんだから」
「変なことを言うな」
何故か少し照れ臭そうなハマーンであった。
「私はただミネバ様のお側にいることが責務だからな」
「けれどそれはザビ家の為じゃないな」
「無論だ」
またアムロに対して答えた。
「ミネバ様御自身にお仕えしている。それだけだ」
「そうか、ならいい」
「ミネバ様のお食事も作っているしな」
「ああ、そういえばそうでしたね」
タケルはこのことを知っていた。彼だけでなくロンド=ベルでは有名な話だ。
「ミネバちゃんのお料理はハマーンさんが」
「これでも料理には自信がある」
意外なハマーンの才能である。
「和食でも洋食でも中華でも何でも作ることができる」
「それはいいですね」
「ミネバ様は好き嫌いが少なくてな」
ここで少し微笑むハマーンだった。
「それが助かるな」
「そうですか」
「ついでに私の分も作っている」
かなり家庭的な話になってきていた。
「おかげでお金が浮いて助かる」
「本当にハマーンさん変わったよな」
「ああ」
ここにいる面々は今の話を聞いて言うのだった。
「最初はおっかない感じだったけれど」
「今は何か。別のものが入って来て」
「シャアだけが変われるわけではないのだ」
うっすらと笑ったハマーンであった。
「私も。変わることができるということだ」
「そうですね。確かに」
「ブロウニング中尉」
またエクセレンに声をかけてきた。
「はい?」
「貴官もそれは同じだと思うが」
「うふふ、確かに」
ここで否定しないのがエクセレンであった。
「私も自分がこれからどんなふうになるのかすっごく楽しみ」
「それでいいと思う。きっといいふうに変わる」
「確信なんですね」
「元々がいいからだ」
自分の言葉の根拠を彼女に向けていた。
「だからだ」
「じゃあ今日からかなり変わって」
「どうするんだ?」
アムロがそのエクセレンに問うた。
「何を変えるつもりなんだ?」
「お酒もう一杯」
こう来た。
「御願いします」
「全然変わってねえんじゃねえのか?」
そのエクセレンにリュウセイが突っ込みを入れた。
「相変わらず酒好きだしよ」
「お酒は妙薬よん」
やはり変わっていないようであった。
「飲めば飲む程心が奇麗になって」
「そうなのか?」
「さあ」
リュウセイはタケルに問うたが彼の返答も要領を得ないものだった。
「俺はそんなこと聞いたことはないけれど」
「そうだよな。どっからそんな言葉が出たんだか」
「私の口よん」
にこにこと笑っての言葉である。
「私が今考えた言葉よ」
「じゃあ余計に信じられねえじゃねえか」
「そうだよな、何かって思えば」
「いつものパターンか」
ドラグナーの面々も呆れた顔で言う。
「まあそれでもだ。変われるっていうのはよ」
「やっぱりいいことだよな」
「それは確かにな」
「そうよん、変わるわよ」
やはりいつもの調子である。
「いつもよりもっとお酒を飲んでね」
「やれやれ。困ったことだ」
苦笑いを浮かべるが止めはしないアムロだった。
「まあいいか。エクセレンはこれが持ち味だからな」
「流石は白い流星」
アムロの通り名だ。
「その心意気頼りにさせてもらいます」
こんな調子で彼等は艦内の休養を楽しんでいた。飲み会が終わりエクセレンはクロガネに置いた自室に入った。するとその時だった。
「!?」
不意に誰かの気配を感じたのだ。酔ってはいるがそれは察した。
「何、この気配は」
(エクセレン)
声が聴こえてきた。
(エクセレン)
「!?何、この声」
その声は己の頭の中に直接声をかけてきていた。明らかに普通の声ではなかった。
「誰なの、そういえば」
ここで己の記憶を辿る。
「この声は確か」
(来て欲しいんですの)
「私に!?」
(はい)
彼女の問いに答えてきた。
(その通りですの)
「この声、この話し方」
彼女はこの二つで相手が誰かわかった。
「間違いないわ、貴女は」
(はい、そうですの)
そして向こうからもそれを認めてきたのだった。
(私は)
「アルフィミィね」
向こうが名乗りよりも早くエクセレンの方から言ったのだった。
「貴女、どうして今ここに?」
(ですから来て欲しいんですの)
言葉は少し繰り返しになっていた。
(私の所に)
「・・・・・・そうね、わかったわ」
彼女の声に応えての言葉だった。
「私もあんたには聞きたいことがあったの」
(そうですの)
「そもそもあんた何者!?」
最初に聞くことはこのことだった。
「最初はバルマーにいて今は単独行動をしているけれど。何なのよ」
(私はアインスト)
「アインスト!?」
エクセレンがはじめて聞く言葉だった。そのせいで普段は誰にも見せない顔になっていた。
「何なのそれは。組織なの!?」
(組織ではありません)
アルフィミィはそうではないと述べた。
(これは私の)
「あんたの?」
(ですからいらして下さい)
これ以上は話そうとせずこう言って来たのだった。
(私の所に。ですから)
「どちらにしろ来いってことね」
もう覚悟はできていた。
「それなら。そちらに行ってあげるわよ」
(御願いします)
返答はそれを肯定するものであった。だがエクセレンはそれを聞いても驚くことはなかった。最初から向こうが誘ってきているからだ。
(貴女は)
「私は!?」
(私の・・・・・・)
ここで声が消えた。後に残されたのはエクセレン一人だった。だが彼女はすぐに部屋を飛び出した。そしてそのまま格納庫に向かうのあった。
「!?エクセ姉様」
「エクセレンさん」
丁度廊下でラミア、ラトゥーニ、ラーダと擦れ違ったのだった。乱暴に駆けている為に危うく彼女達にぶつかりそうになるがそれは何とか助かった。
「一体どうしたんですか?」
「そんなに慌てられて」
「別に。何でもないわ」
呼び止めた彼女達の方を振り向いて答えた。
「けえど。行かなくちゃいけないのよ」
「行かなくちゃいけない!?」
「ええ」
珍しく真剣な面持ちでの返事だった。
「そうよ。今すぐにね」
「!?エクセレン中尉」
ラトゥーニは今の彼女を見て怪訝な顔を浮かべた。
「何かおかしいです」
「別におかしくはないわよ。ただ」
「ただ!?」
「行かなくちゃいけないだけよ」
「!?お姉様の御様子が」
「ええ」
ラーダはラミアの今の言葉に応えて頷いた。
「おかしいですわよ、このことは」
「待って、エクセレン!」
ラーダは駆けて行くエクセレンを呼び止めた。
「行っては駄目よ、待って!」
だがこの声は彼女の耳には届かなかった。ハガネの艦橋では警報が鳴っていた。
「何だ!?」
当直士官であったテツヤが声をあげた。彼は艦橋にいたのだ。
「何があったんだ!?」
「第三ハッチが強制開放されました!」
「何だと!」
エイタの報告に驚きの声をあげる。
「それは本当か!」
「間違いありません!ヴァイスリッターです!」
「ヴァイスリッター!?馬鹿な」
またそれを否定するのだった。
「そんな筈がない!」
「ですが間違いありません!」
しかしエイタはさらにテツヤに報告するのだった。
「既に発進シーケンスに入っています!」
「出撃命令は出していない!」
これはテツヤが最もよくわかっていることだった。
「それでどうしてだ!パイロットは誰だ!」
「待って下さい!今すぐに!」
「ああ」
応える間のそのほんの一瞬だったがその間にもテツヤもエイタの己の頭脳を必死に回転させていた。今出ようとしているのが誰なのかおおよそわかったのだ。
「ヴァイスリッターだな」
「はい」
これは間違いなかった。
「その通りです」
「ではあいつか」
「あの人が何故」
「わからん。しかしだ」
それでも彼は言うのだった。
「モニターはまだか?」
「今つきました」
その瞬間にもうモニターは稼動していたのだった。そこに映し出されたのは。
「やはりな。間違いない」
「中尉、どうして」
テツヤもエイタも己の予想が当たり歯噛みするしかなかった。
「ブロウニング中尉!」
「何ですか?」
「これは一体何の真似だ」
咎める顔で彼女に問うた。
「一体何を考えている。スクランブル要員でもない筈だが。それに」
「出ます」
これ以上テツヤの話を聞くつもりはなかった。もう出撃に入るのだった。
「お話は後で」
「待て!」
「いえ、行きます!」
「くっ!」
ヴァイスリッターが発進した。こうなってはもう止めることは不可能だった。
「ヴァイスリッター出ます!」
「待て、どういうことだ!」
「ヴァイスリッター発進しました!」
エイタの言葉が空しく響く。もうエクセレンは出撃していたのだった。
「おい!」
カイがモニターに出て来た。彼も当直だったのだ。
「こちらカイだ!」
「カイさん!」
「エクセレンが出たな!」
「はい!」
エイタが彼に応える。
「その通りです!今!」
「追うぞ!」
彼はすぐに判断を下した。
「すぐに皆を呼び寄せろ!そして今ここにいるメンバーと足の速い機体に追跡させてくれ!」
「わかりました!では!」12
今度はテツヤが応える。
「クロガネも出ます!」
「頼む!」
こうしてエクセレンを追って皆出た。一時の休息はこれで破られたのであった。
エクセレンが来たのはサハラ砂漠のほぼ中央だった。見渡す限りの砂漠である。
「ここね」
レーダーに反応はある。だからわかっていた。
「来てあげたわよ」
そして周りに対して言う。
「姿を現わしなさい。お客さんを待たせるのは失礼よ」
その言葉に応えてか。早速あの植物達が姿を現わしたのであった。だがエクセレンはその植物達を見てつまらなそうに言うのだった。
「あんた達じゃないのよ、御呼びなのは」
こう告げる。
「あの赤いのとお嬢ちゃんよ。早く呼んで来て」
「・・・・・・・・・」
だが返答はない。返答の代わりに前に出て来たのだった。
「そういうことね。それじゃあ」
それを見てエクセレンもまた戦闘態勢に入った。
「真打ち御登場まで暇潰しをさせてもらうわよ」
こうしてアインスト達との戦闘に入った。射撃を主体に戦い瞬く間に彼等を退けてしまった。
それが終わるとまた。アインスト達が出て来たのだった。先程より数が多い。
「また御到着、けれど真打ちはまだなのね」
「・・・・・・・・・」
「しかも相変わらず御喋りはなしなのね」
アインスト達からの言葉はない。エクセレンはそれにも突っ込みを入れる。
「わかっているけれど。普段は訳わからないこと言う時もあるのに。まあいいわ」
話しているうちにまた前に出て来たアインスト達であった。
「やる気はあるってわけね。じゃあまた付き合ってあげるわ」
こうしてまた戦闘に入る。これまた瞬く間に終わった。だがまた出て来たのだった。
「今度はグリーンサラダってねえ」
結構うんざりとした顔になっていた。
「どういうつもりよ。出て来るのなら一度にってねえ」
すると今度はこれまで以上のアインスト達が出て来たのであった。
「言ったら出て来てくれるのね。サービスいいじゃない」
(けれど)
ここでエクセレンはあることに気付いた。
(ホネホネの次は植物。じゃあいよいよってやつかしら)
アルフィミィの登場を察していたのだ。それを察しながら敵を迎え撃つ。戦闘自体は速やかに終わるがそれでもエクセレンは察したのだった。
また敵を倒す。すると今度現われたのは。
「じゃあ今度はいよいよ」
「エクセレンさん!」
「来たぜ!」
「ほら、早速来たわね!」
突然現われたマシンを見て声をあげる。
「待っていたわよ!覚悟しなさい!」
「ってちょっと」
「何言ってるんだよあんた」
「口止めされてるのかも知れないけれどね」
エクセレンは彼等の言葉を聞いてはいなかった。
「女ってのは退屈が嫌いなのよ。お喋りするつもりがないのならさっさと来なさい!」
「あんた、何言ってんだよ」
「あんまりしつこいとあちこちに手突っ込んで奥歯ガタガタ言わせるわよ!」
「だから何言ってんだよ」
リュウセイから突込みが来た。
「あのな、俺達は」
「あらっ、あんた達」
ここでやっと気付いたエクセレンだった。
「どうしてここに」
「どうしてここにってな」
「あの、エクセ姉様」
ラミアもここにいた。
「口以外からどうやって奥歯に触れるのでございますです?」
「ラミアちゃん!?」
「人が心配して追いかけて来たってのにな」
マサキもいた。
「一体何なんだよ、そんなに荒れてよ」
「いや、別に」
「とにかくだ」
アムロもいた。やはり彼も来ていたのだった。
「エクセレン、どうしたんだ?」
「ちょっとね」
バツが悪い顔でアムロに言葉を返す。
「ちょっと戦闘をね」
「それはわかっているが」
それはもう見ればわかることだった。
「だが。何故ここでいきなり戦闘を」
「まあ何ていうか」
「ったくよお」
マサキの声は怒ったものだった。
「勝手に飛び出してこんな砂漠のど真ん中で大立ち回りかよ。何考えてんだよ」
「説得力ないニャ」
「そうニャ」
クロとシロがマサキに突っ込みを入れる。
「それってマサキの専売特許ニャから」
「それを言ってもニャあ」
「まあそうだけれどね」
アイビスもいた。彼女が二匹の言葉に頷く。
「しかもその後で迷子になるから」
「最悪ニャ」
二匹の言葉はさらに続く。
「困ったことニャ」
「しかも自覚がないニャ」
「おい!」
言われ放題のマサキがここに反撃に出る。
「余計なこと言うんじゃねえ!」
「それはいいとして」
エクセレンがここで皆に問うてきた。
「何でしての?」
「うちのダーリンは?」
ラミアに対して問い返す。
「まだなのかしら」
「隊長なら間も無くこちらへ着くことですことよ」
(若しかして)
エクセレンはここでまた考えた。
(あのお嬢ちゃんが出て来ないのはキョウスケがいないせい?)
「おい、それよりもだ!」
リュウセイがここで叫ぶ。
「今いる連中片付けるぞ!」
「ええ!」
これには皆同意する。少なくとも敵を放置するわけにはいかないのだ。
こうしてロンド=ベルとアインストの戦いになった。今回の戦いも瞬時に終わった。やはりロンド=ベルの戦力は圧倒的なものだった。だが敵を倒し終えた彼等の前に。今度はあのマシンが姿を現わしたのだった。
「お、おい!」
「あれは!」
皆そのマシンを見て驚きの声をあげる。
「ありゃ何の冗談だ!」
「けれどあれは!」
「まさかあれって・・・・・・」
「アルトアイゼン」
エクセレンが呻く様に言った。それはまさにキョウスケの愛機であるアルトアイゼンだったのだ。見間違える筈もないそのマシンだった。
「正解ですの」
ここでまた声が聞こえてきた。その声は。
「お嬢ちゃんね」
「はいですの」
返事が返って来た。これで間違いがなかった。
「私ですの」
「どういうつもりなの!?」
顔を顰めさせてそのエクセレンに対して問う。姿を見せない彼女に。
「アルトアイゼンの偽物を作り出すなんて。何を考えているの!?」
「キョウスケ」
ここでアルフィミィは思わぬ言葉を出して来た。
「えっ!?」
「今何て」
「キョウスケ」
また彼女は言って来た。
「あの人のことを考えると胸がもやもやするんですの」
「!?まさか」
「そんなことが」
誰もがまずはその言葉を信じなかった。
「彼女がどうして」
「そもそもキョウスケのことを」
「私はあの人のことを知らない」
アルフィミィもそれは認める。
「ですからその殻しか作ることが出来ないんですの」
「殻?」
エクセレンは今の彼女の言葉に反応した。
「どういうこと?あの子が」
そのうえであらためて考える。
「アインストシリーズを作り出しているとでも!?」
「そうかい、わかったぜ」
だがここでマサキが言った。
「あいつがとっておきの奴か!偽物のアルトといい一体何者なんだ!?」
「まさか」
「ちょっとエクセレン」
ここでアイビスがエクセレンに声をかける。彼女はまだ考えていたのだ。
「なにボーッとしてんのさ」
「あの娘の声が聞こえたわよね」
「あ、ああ」
アイビスもそれは認めた。
「けれどそれが一体」
「どういうことかしら」
エクセレンはまた考えだした。
「殻を作り出す。じゃあアインストは」
「貴女とは」
「!?」
今度は直接エクセレンの脳裏に語り掛けて来た。
「貴女とはこうして話すこともできるんですの」
「私の頭の中に直接・・・・・・」
「貴女が必要ですの」
アルフィミィはエクセレンに直接告げる。
「貴女が。貴女こそが」
「もう!」
だがエクセレンはここで切れた。
「訳わかんないことばかり言わないでよ!」
頭の中で言い返すのだった。
「訳のわからないこと?」
「そうよ!」
また言い返す。
「あんたと私、そしてキョウスケ」
三人に何かあるのはわかった。勘で。
「どういう関係かまだわからないけれど」
そしてさらに言う。
「あんたが倒さなければならない敵なら容赦はしないわよ!」
「キョウスケ」
だがそれでも彼女は呟くのだった。
「もうすぐ、ここへ」
「来たな」
ここでアムロが言った。
「アインストの本隊が」
「こっちもだ」
今度はカイが言った。
「ハガネだ。それに」
アインストの大軍の向こうに。彼等がいた。
「我々の本隊もな」
「遅れて済まん」
まずはダイテツが謝罪する。
「戦力を集結させていたのだ」
「いえ、大丈夫です」
その彼にカイが答える。
「本格的な戦闘はこれからですから」
「そうか、それならいいが」
「それにしてもねえ」
エクセレンは余裕のある態度にもう戻っていた。その態度でアルフィミィに対して言うのである。
「キョウスケねえ」
「はいですの」
「どうもね」
ここでくすりと笑ってみせる。そのうえでまた言う。
「キョウスケって恋のライバルにしちゃ物騒な相手ね」
「エクセレン」
そのアルフィミィはまたエクセレンの名前を呟いた。
「私はまだ貴女のことを」
「総員攻撃開始」
ダイテツが指示を出す。
「いいな、攻撃目標はアインストの部隊だ」
「了解」
「行くぜ!」
カイとリュウセイがそれぞれ応える。
「じゃあやってやるぜ。思う存分な!」
「御前だけは変わらないが」
「それが悪いのかよ」
「いや」
ライはそれを悪とはしなかったのだった。
「それでいい。御前は御前で頼むぞ」
「ああ、じゃあやってやるぜ」
「それじゃあ」
「ああ」
アヤとレビも来た。SRXチームが今揃った。
「今回は合体なしだけれど」
「それでもだ。チームで行くぞ」
「ああ。やってやらあ!」
彼の言葉が合図となった。ロンド=ベルは全軍を挙げてアインストに向かう。エクセレンはアルフィミィに。こうして本格的な戦闘となったのであった。
エクセレンのヴァイスリッターがアルフィミィを撃つ。一撃が当たったところで戦場にまた一機到着した。そのマシンこそは正真正銘の。
「エクセレン!」
「わあお、キョウスケ!」
エクセレンは彼の姿を見て声をあげる。
「ようやく真打登場ねん!」
「それはいい」
まずはいつも通りエクセレンの言葉をかわした。
「遅れて済まん。エンジントラブルだった」
「それでか」
「ああ。だが何とか間に合ったな」
見れば激しい戦闘の真っ最中だった。丁度いいタイミングと言えた。
「では俺も」
「来ましたのねキョウスケ」
ここでまたアルフィミィが言ってきた。
「!?御前は」
「アルフィミィですの」
こうキョウスケに告げた。
「そしてこれは」
「馬鹿な、アルトアイゼンだと」
もう一機己のマシンが戦場にあるのを彼も見たのだった。
「どうしてここに。まさか」
「まあ人は乗ってはいないでしょうね」
エクセレンはこう予想はした。
「けれどあれは」
「キョウスケ」
またアルフィミィが彼の名を呼んだ。
「貴方は一体何者なんですの?」
「それはこっちの台詞だ」
キョウスケはアルフィミィを見据えつつこう言葉を返した。
「何故御前は俺達を狙う。そしてあのアルトアイゼンの偽物は何だ?」
「偽物とは違いますの」
しかし彼女自身はこう言う。
「これは」
「では何だ?」
「もっと異なるもの」
これが彼女の言葉であった。
「貴方のことが知りたくて」
「俺のことが知りたくて」
「それで作ってみましたの」
そういうことであるらしい。
「けれど」
「けれど?」
「殻だけでは」
また殻と言うのだった。
「殻だと!?」
「もっと」
キョウスケを見てまた言う。
「貴方のことが知りたいですの。貴女が何なのか」
「わからん」
キョウスケにも誰にも今の彼女の言葉は理解しかねるものであった。それでキョウスケは顔を顰めつつアルフィミィに対してまた問うのであった。
「それはどういう意味だ」
「私を乱す」
またしても奇妙な返答であった。
「それが貴方だから」
「何が言いたい」
「大体よ」
ここでエクセレンがまた出て来た。
「何で私やキョウスケにこだわるのよ。何でなのよ」
「キョウスケ」
やはりこの問いにも答えない。かわりにまたキョウスケの名を呼ぶのだった。
「一緒に来るですの」
「えっ!?」
「一緒に。私と」
キョウスケに対してなおも言う。
「来るのですの」
「何処へだ」
そのアルフィミィに対して冷静に問い続けるキョウスケであった。
「俺を。何処に連れて行くのだ」
「新しい宇宙」
今度は答えはしたがそれでも奇妙な答えであった。
「はじまりの地を捨てる為に」
「何だと!?」
「はじまりの地!?」
「何だそれは」
それを聞いてマサキ、リューネ、ヤンロンがそれぞれ声をあげた。
「聞いたことがねえぞ」
「一体何なのか」
「何者かが言った気もするが」
それでも三人にもわからなかった。彼等は首を捻るばかりであった。
「キョウスケ、わかる?」
「いや」
言われたキョウスケにもわからない。エクセレンの問いに対しても首を捻るばかりである。
「何を言っているかわからん」
「そうよね、やっぱり」
「言っておこう」
彼は今度はアルフィミィに顔を向けて告げた。
「俺が御前の言う通りに動くと思っているのか?」
「はい」
静かにキョウスケの言葉に頷いてみせてきた。
「動いてもらいますの」
「無理だな」
キョウスケは今のアルフィミィの言葉を一言で切り捨てた。
「俺にはそのつもりはない。だから」
「それでしたら」
「むっ!?」
ここで不意に。キョウスケを異変が襲った。それは。
「なっ!?頭が」
「キョウスケ!」
エクセレンが突然苦しみ出したキョウスケに慌てて声をかける。
「これは・・・・・・あっ!?」
「おい、どうしたんだよ!」
リュウセイは二人が苦しむのを見て慌てて声をかけた。
「何があったんだよ。いきなり」
「まさか」
ここでタケルがあることを察した。
「精神攻撃!?ひょっとして」
「何っ、じゃああいつも超能力者だっていうのか?」
「可能性はあるよ」
こうリュウセイにも答える。
「それはね。やっぱり」
「機体が動かん」
キョウスケが言う。
「どういうことだ、これは」
「ヴァイスリッターも」
それはエクセレンのものも同じだった。
「何故なの。これって」
「何だこの波長は」
ハマーンが顔を顰めさせていた。
「この波長ははじめてだ。しかも通信妨害まで仕掛けている」
ニュータイプの力でこれを察したのだ。
「あの娘のものか。そうとしか考えられんな」
「ハマーン!」
ミネバが慌てた様子でハマーンに声をかける。
「ミネバ様、何か」
「キョウスケとエクセレンを助けて」
二人のことを気遣っての言葉であった。
「あのままじゃ二人は」
「畏まりました」
ミネバに頼まれて動かぬハマーンではなかった。すぐに頷く。
「お任せ下さい。それでは」
「ハマーン!」
キュベレイを動かしだしたハマーンをカミーユが問う。
「どうするつもりだ!?今は」
「私に任せろ。行けっ!」
今戦っている敵をまずは放置してファンネルをアルフィミィに向かって放ったのだった。
「ファンネル!これなら!」
「あうっ!」
それがアルフィミィを撃った。するとそれで彼女の動きが止まった。
「邪魔をしないで欲しいですの・・・・・・」174
だがまだ生きていた。そしてなおも呟く。
「キョウスケ、さあ私と」
さらに何かを仕掛ける。それと共にキョウスケは呻く。だが今度の呻きは先程までとは違っていた。
「ぐうっ!?」
「!?」
そしてアルフィミィもそれをすぐに察知したのであった。
「拒絶した」
すぐにわかったのだった。彼が拒んだことに。それであらためて彼に問う。
「何故・・・・・・ですの」
「言った筈だ」
肩で息をしながら言葉を返すのだった。
「御前の思うようには動かんとな!」
「どうしてですの?」
そんなキョウスケを見てわからないといった顔を見せる。
「貴方の身体は私達の」
「また訳のわからんことを」
「ナンブ大尉!エクセレン中尉!」
アイビスがここで二人に声をかけてきた。
「大丈夫かい!?」
「戦えますか!?」
ツグミも二人に声をかけてきた。だが二人からの返事は無事なものであった。
「ああ、何とかな」
「一時はどうなることかと思ったけれど」
エクセレンも言う。
「大丈夫よん」
「よし!雑魚はあらかた潰したぜ!」
ここでカチーナが叫ぶ。
「ざまあ見やがれってんだ!」
「ではあとはあの」
「ああ、赤い奴だ」
続いてラッセルに答える。
「わかったら行くぜ。いいな!」
「はい。攻撃を集中させます」
「ああ!」
「俺が行く!」
「私もよ!」
キョウスケとエクセレンの二人がまずアルフィミィに突っ込んだ。
「ここは何としても」
「あんたに聞きたいことがあるしね!それも山程!」
「キョウスケ、何故ですの?」
まだアルフィミィはわからないといった顔を見せていた。
「私は。貴方のことを」
「俺が・・・・・・どうしたというのだ」
今アルトアイゼンが野前に来た。そして闘いに入ってからも彼女は言うのだった。
「私が私である為に」
「御前が御前である為に」
「そうですの」
アルフィミィは言う。
「キョウスケ、貴方が必要ですの」
「私である為にだと」
「はいですの」
また答えるのだった。
「ですから。私は貴方を」
「どういう意味だ」
これはキョウスケにも誰にもわからない言葉だった。
「御前が御前である為とは。一体」
「・・・・・・・・・」
だがキョウスケのこの問いには答えない。キョウスケはそんな彼女を見てかえってその疑念を膨らませざるを得なかったのであった。
「何を俺に伝えたい」
こう考える。
「この娘は」
「キョウスケ!」
だがその考えは中断せざるを得なくなった。エクセレンも来たからだ。
「来たわよ!」
「エクセレン!」
「あのさ、言っておくわよん!」
言いながらオクスタンライフルを放つ。それが赤いマシンを撃つ。
「私思わせぶりってあまり好きじゃないのよ」
「そうですの」
「そうよ。だから今日こそお姉さんに教えてもらうわよ」
キョウスケと動きを合わせさらに攻撃を浴びせながらの言葉であった。キョウスケもまたその拳をアルフィミィの赤いマシンに打ちつけている。
「あんたの正体と目的をね」
「それは貴女も!?」
「!?私も」
「はいですの。わかる時が来ますの」
穏やかな声での言葉であった。
「目覚めさえすれば」
「目覚める」
これまたわからない言葉であった。
「私が!?」
「それでですの」
ここでアルフィミィは話を切ってきた。そのうえでまた言う。
「今日はここまでに致しますの」
「何っ!?」
「何ですって!?」
「それに今頃は」
驚く二人に対してさらに述べるのだった。
「今頃!?」
「何かあるっていうの!?」
「キョウスケ。貴方の周りの方々を」
「俺の周りを」
「ええ。守護者・・・・・・もう一つのルーツ」
そう語る。
「その力を。それ等のそんざいさえ抹消すれば貴方は」
「何が言いたい」
「さよなら。私のキョウスケ」
こう言って姿を消そうとする。
「今は」
「ちょっと、待ちなさいよ!」
だがここでエクセレンが追いすがるようにして問う。
「あんたの、いえあんたの目的は」
こう問うのだった。
「私やキョウスケとはどういう関係が」
「先程も申し上げましたの」
こう言って答えようとはしない。
「貴女にもわかる時が来ますの。目覚めさえすれば」
「またその言葉」
やはりわからないのだった。エクセレンにも誰にも。
「何が何なのよ」
「では今は」
「あっ、まだ!」
止めようとするが無駄だった。やはり姿を消す。
こうしてアルフィミィは姿を消した。同時にアインスト達も。後には呆然とするロンド=ベルの面々だけが残されることになってしまった。
「何だっていうんだよ」
「さあ」
ラウルに対してフィオナが応える。
「キョウスケさん達にもわからないのにあたし達がわかったら凄いわよ」
「それはそうだけれどよ」
「ただ。引っ掛かるわね」
フィオナはここで眉を顰めさせた。
「今までのあの娘の言葉。何だか」
「訳わかんなかったぜ」
「だからよ」
フィオナはそこにこそ引っ掛かっていたのだ。
「絶対に何かあるわ」
「訳わかんねえこと書いてある本は大抵中身はねえぜ」
「それは日本の思想家や小説家のことですね」
ラージがすかさず突っ込みを入れる。
「ですからあまり参考には」
「おっ、そうなのか」
「まああたしは哲学は知らないけれど」
ここがフィオナらしい。ラウルも同じだが。
「今回はそういうのじゃなくて。あからさまに何かありそうよ」
「裏があるってのかよ」
「そうよ。それもかなりのがね」
語る目が光っていた。
「まだそれが何なのかは全然見えていないけれど」
「訳わかんねえままってことかよ」
「ええ。果たして何を考えてるかよ」
それをまた兄に語る。
「それも全然わかっていないけれど。それでもね」
「それとだ」
今度はリーが口を開いた。
「すぐにアレクサンドリアに戻るぞ」
「えっ、もう!?」
「もうですか」
「あの娘の言葉を思い出せ」
リーはその持ち前の鋭さを遺憾なく発揮していた。
「言っていたな。今頃は、と」
「あっ、それですか」
「そうだ、それだ」
ミヒロに対して答える。
「おそらく今頃アインストが向かっている。早く戻らなければ大変なことになる」
「連邦軍の部隊は?」
「当てにしてもねえ」
シンジにアスカが突っ込みを入れる。
「正直荷が重いでしょ。相手はアインストよ」
「やっぱりそうなんだ」
「当たり前のこと言う暇あったらさっさと戦艦に戻りなさい」
アスカは少し急いていた。
「とにかくすぐに戻らないといけないんだからね」
「そうだね。それはね」
「そういうことよ。それじゃあ」
「全機すぐに戻って下さい」
マヤが伝える。
「そのうえでアレクサンドリアに戻りますので」
「了解」
「それじゃあすぐに」
「してやられたか」
キョウスケはハガネに入りながら呟いていた。
「今回は。あの女に」
「いえ。これは策略じゃないわ」
だがその彼にエクセレンが言うのだった。二人は同じ艦に戻っている。
「これはね。おそらくあの娘は」
「本音を語っているか」
「私はそう思うわ。けれど今はそれよりも」
「ああ。アレクサンドリアに戻る」
まずはこれであった。
「あれこれ言うよりも先にな」
「そういうことよ。それじゃあ」
「戻るぞ」
「了解、マイダーリン」
最後はいつものエクセレンであった。しかし。謎がまた謎を呼んでいた。それはロンド=ベルを薄く、だが何重にも囲んで包み込んでいたのであった。

第七十三話完

2008・8・17  
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