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さまよえるオランダ人

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第一幕その二


第一幕その二

「憧れの心もて海の淵に身を投じたことも行くたびか。帆の恐ろしき墓である浅瀬に船を追いやっても死ぬことは許されぬ。命知らずの海賊達に戦いを挑んでも彼等は十字を切って逃げる。これが悪魔が私に与えた恐ろしい呪いなのだ。私の忌まわしい運命なのだ」
 ここで彼は上を見上げた。暗澹たる空を。
「讃えられるべき天使よ、我が救済の条件を与えてくれた天使よ」
 空に向かって問う。
「御前が私に救済の手立てがあると示してくれたのは私を御前の嘲笑の道具をする為だったのか!?無駄な希望!恐ろしくも甲斐なき妄想!」
 叫びだした。
「地上の永遠なる貞節は終わりを告げた。ただ一つの希望よ不動であれ私に残されてあれ!」
 心の叫びであった。彼の儚い心の。
「地に萌芽がある限りその萌芽も滅んでいく。新盤の日よ最後の日よ、御前は何時私の前に姿を現わす、この世の終わりを告げる殲滅の音は何時響く。全ての死人が蘇るその時に私は救われるのだ。宇宙よ、御前の運行を止めよ!」
 そして最後に言う。
「とこしえの壊滅よ、私をとらえてくれ!」
「とこしえの壊滅よ、我々をとらえてくれ!」
 船の中からも声が響く。それが終わってから船の中からダーラントが出て来た。そして眠っている舵取りに声をかけてきたのだった。
「おい舵取り君」
「はい!?」
「寝ていたのかい?」
「いえ、私は」
 飛び起きて彼に応える。
「何も」
「しかしだね。見てくれ」
 彼はここで舵取りに対して言う。
「あの船を」
「あの船!?」
「見えるだろう」
 こう言って先程出て来た船を指差してみせる。
「あの大きな船が。見えているな」
「あの船は」
「やっぱり寝ていたのか」
 戸惑う舵取りを見て顔を顰めさせる。
「全く」
「申し訳ありません」
「まあいいか。本来ならわしが見張るべきだったしな」
 自分にも負い目があるからこれ以上は聞かないのだった。
「それはな。ところでだ」
「はい」
「あの船は何処の船だろう」
「さて」
 ダーラントの問いに対して首を捻る。
「私にもさっぱり」
「わしもだ。全く知らん」
「そうですか」
「かなり古い船のようだな」
 ダーラントはその船の外観を見て述べる。
「それはわかるが」
「そうですね。やけに不気味な感じです」
「うむ。おや」
 ここでダーラントはあることに気付いた。
「あそこにいるのは」
「どうしました?」
「あそこだ」
 こう言って岩場を指差すのだった。
「人がいるぞ。あの船の者かな」
「そうですかね、やっぱり」
「うむ。おおい」
 ダーラントは早速彼に声をかけた。
「君は誰だ?何処の国から来た?」
「私か」
 彼はダーラントの言葉に応えて顔を向けてきた。
「私を呼んだのか?」
「そうだ。君は何処から来たんだい?」
「遠くから来た」
 まずはこう答えたのだった。
 
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