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星河の覇皇

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第六部第五章 処刑その三


 その頃地球では一つの儀式が行われていた。解放軍への処罰である。
 解放軍の今までの罪状は事細かに調べ上げられた。そしてそのかなりの数が死刑を宣告された。
 連合においては凶悪犯に対する処罰は極めて厳格である。特に山口や小泉、田代、ネゴロツキーには極刑が宣告された。
 その内容に市民達は噂話をしだした。
「猛獣の餌にされるんじゃないか」
「いや、串刺しだろう」
「逆鋸引きかも知れないぞ」
 いずれも凶悪犯に対して行われる処刑方法である。これ等の処刑は公開で行われるのである。
 判決は当然死刑であった。そして裁判官は彼等に対して全財産没収の末稜遅刑を宣告した。稜遅刑とは少しずつ寸刻みにしていく刑罰である。古代中国において最も過酷な処刑方法であった。
 処刑はまずは下っ端からはじめられた。彼等は串刺しや猛獣の餌にされた。断末魔の叫びが刑場に木霊した。山口達はまずはそれをまじまじと見せつけられた。
 それが全て終わってから彼等の番であった。まずは彼等の財産を没収する光景からはじめられた。
「お、俺達の金が」
 彼等は自分達の今まで溜め込んだ金が没収されていく様を見て涙を流した。何よりも大事なものを奪われる苦しみを今味あわされていた。
 それで終わりではなかった。彼等の家や会社のビルも爆破された。悪行への処罰は徹底されなければならない。連合はそれを忠実に守っているのだ。
 爆破された後はすぐに片付けられ後には空き地だけとなった。それから彼等への処刑執行であった。
 数人の刀を持った男達が姿を現わす。そしてそれぞれの罪人につきおもうぞんぶん刀を振るう。連合においては死刑執行人は大切な職である。悪人を成敗する職業として尊敬されている程だ。
 後には細切れになり八つ裂きにされた山口、小泉、田代、ネゴロツキー達の屍が転がっていた。彼等は最後まで命乞いをし、互いの責任を擦り付け合ったあげくこうして処刑された。悪人に相応しい末路であった。
 その屍は糞尿と共にゴミ箱に入れられブラックホールに捨てられた。悪人に墓なぞ必要ないからだ。
 こうして連合の中に巣食う悪虫達は成敗された。その光景は全て実況中継された。連合市民達はそれを見て悪が成敗されたことを喜び喝采を送った。

「連合の処刑は何時見てもすごいな」
 それは他の勢力、国々からも見ることができる。エウロパはこれを連合の残虐性、異常性だとして批判する。マウリアは特に何も言わない。
 サハラにおいてもそれは同じである。だが彼等はそこに自分達とは相容れぬものを感じていた。
「処刑はコーランにのっとってするべし」
 それがサハラの考えであった。彼等は極端に残酷な処刑を好まないのだ。
「だが俺にはどうもわからない」
 アッディーンはそれを旗艦アリーの司令室で見ていた。
「何がでしょうか」
 そこにいたラシークが尋ねた。
「いやな」
 そして彼はそれに応えた。
「ここまでする必要があるのかと。幾ら何でもやり過ぎではないかと思うのだが」
「それはサハラの者殆どの考えだと思います」
 ラシークはその言葉に賛同した。
「私もそうした考えです」
「やはりな」
 アッディーンはそれが当然のように感じられた。
「俺も同じ意見だ」
「そうですね。彼等があそこまで徹底的にやるのか私にはよくわからないです」
「犯罪を減らす為だというがな。実際に連合の凶悪犯罪は少ない」
「そのようですね」
「つまり見せしめなのだろう。それがいいか悪いかは別としてな」
「それも治安の為ですか」
「少なくとも彼等はそう考えているようだな」
「そうなのですか」
「そしてそれは成功しているようだ」
「一概にどれがよくてどれが悪いかは言えませんね」
「そうだな。一つの事柄に対しての対処の仕方も人それぞれだ。そしてその結果もな」
「言い換えると対処を誤ると大変なことになりかねない」
「何事も。それは今の俺達もそうだ」
 アッディーンはここで目の光を変えた。
「今の戦況はかなり有利なようだがな」
「はい」
 ラシークはそれに頷いた。
「今我が軍はさしたる戦闘もなく敵の首都に向けて順調に進んでおります。そして外務省も彼等と交渉をはじめております」
「降伏のか」
「はい。地位や財産は保障し、オムダーマンの市民の権利を約束するとのことで交渉を行っているようです」
「そうか。それで話が進めばいいな」
「進むでしょう。実際に彼等の戦力の大部分が我等に投降しているのですから」
「そうだったな。やはり俺の採った方法は正解だったようだな」
「同じサハラの者ですから。それで充分だと思います」
「ふふふ」
 アッディーンはそこで笑った。
 
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