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ドラゴンシティ

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第六章

「いや、どの種族ともだ」
「人間以外ともですか」
「我々は友好的な関係でありたいのだ」
「ドラゴンの様な強大な種族が」
「我々は強大ではない」
 このことを否定するドラゴン王だった。
「確かに身体は大きく息を吐くことができ魔法も使える」 
「それでどうして強大などと」
「強大な力は使えばそれだけ多くのものを消耗する」 
 ドラゴン王はドラゴンもまた然りだと話した。
「そして我々はその都度長い間眠らなければならないのだ」
「そうだったのですか」
「君達人間等ヒューマノイド達とは違うのだ」 
 彼等も疲れるがそれでも長い間眠らなくていいというのだ。
「我々はそれこそ百年や二百年は眠らなければならないからな」
「それは初耳ですが」
 司祭が答える。
「知っていると思ったがな」
「ドラゴンの強いことと賢明なことは知っていました」
 それはだというのだ。
「ですがそうしたことは」
「そうか。だがこれは事実だ」
「ではドラゴンにとっても戦は」
「出来ない。しかも我々は農業や牧畜をはじめたばかりだ」
 人間達が行って生業としているそうしたことをドラゴン達もはじめたというのだ。
「我々も狩りをして生きるのではなくそうして安定して生きていくことにしたが」
「その技術蛾ですか」
「政治も学びはじめたばかりだ」
 ドラゴン王は今度は書記に答えた。
「それ故にだ。これからは人間達の世界に入り生きていくつもりなのだ」
「だからですか」
「そうだ。我々はこの町に住み君達と友好的な関係を築きたいのだ」
 ドラゴン王は厳かな声で五人に述べる。
「そうしたいのだ」
「信じられませぬな」
 騎士はまだいぶかしんでいる。
「ドラゴンが農業や政治をするとは」
「今はじめたばかりだがな」
 それでもだというのだ。
「色々と教えてもらいたい」
「ドラゴンにも苦手なものや知らないことがあるんですね」
「そうだ」
 騎士にもこう答える。
「そのことはな」
「でですか」
「そもそも私達は人間に対して何もしない」
 ドラゴン王はこのことも話した。
「誤解をしているかも知れないがな」
「いや、それは違うのでは」
「ドラゴンといえば」
 司祭と騎士がドラゴン王に反論する。
「人間を襲い喰らうもの」
「違うのですか」
「違う。我々は確かに肉を喰らうが」
 このことはドラゴン王も認める。だがそれでもだというのだ。
「しかしそれでもだ」
「人間は食べないのですか」
「そうだと」
「牛や馬、羊は食う」
 こうしたものはだというのだ。
「しかし我々は見ただけでその生き物が自分達にとって美味いかそうでないかがわかるのだ。だからこそだ」
「人間はですか」
「食べないと」
「そういうことだ。安心してくれ」
 ドラゴン王は言う。
「ヒューマノイドは決して口にはしない。成敗はするがな」
「では人間の町を襲うことも」
「中には不心得者もいる」
 ドラゴン王は総督にも答える。
「人の町を襲い財宝を狙う輩はな」
「それは強盗ですね」
「我々の世界にも強盗はいるからな」
 人と同じだというのだ、そのことは。
「だがそうした者も取り締まっている」
「安心して宜しいのですね」
「少なくとも我々の町のことはな」
「ここまでお聞きして安心しました」
 総督はドラゴン王に対して答えた。
「それではです」
「返答は如何に」
「宜しくお願いします」
 これが総督の答えだった。彼は微笑んでドラゴン王に答えた。
「これから親しい友人として」
「我々も教えてもらいたい」
「色々とですね」
「そうだ、色々と教えてもらいたい。そして共に生きていこう」
 こうしてメルキドとドラゴンの町、ひいては人と彼等の同盟が結ばれた。そして互いに教え合い助け合うことになった。そのことから学者はこう言った。
「いや、ドラゴンは全てが優れていると思っていましたが」
「一概には言えませんね」
「そのことは」
 司祭と騎士が答える。彼等は今ドラゴン達を町に招いたうえでの宴の用意をしている。
 そしてその中でこう話していたのである。
 書記も色々と書類の整理をしながら彼等に話す。
「彼等は古いことを知っていますが新しいことには疎いところがありますし」
「魔法もですね」
「我々の知っているものも多いですし」
 人間達が、というのだ。
「彼等だけが知っていることもまた」
「多いですね」
 学者も述べる。
「そうですね。何かと」
「全くです」
「文明自体もですね」
「それもまた」
 司祭と騎士も述べる。
「それぞれいい部分と悪い部分がある」
「進歩している部分とそうでない部分がありますね」
「どうやら同じ物差しでは計れないものだな」
 場には総督もいた、彼も言うのだった。
「種族、そして文明や技術というものは」
「そうですね、そのことがわかってきました」
 四人も総督の今の言葉に答えて言う。
「そして偏見で相手を見てはいけない」
「それもまた、ですね」
「人間とドラゴンが違うのは姿形だけだ」
 総督はこう看破した。
「寿命と繁殖力も違うが心は同じだ」
「はい、それは同じですね」
「変わるところがありません」
 四人もこう述べる。彼等はドラゴン達、そして自分達のことがわかった。彼等と隣同士になったことをそのはじまりとして。


ドラゴンシティ   完


                2012・11・25 
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