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第三章

「興味ないから」
「そうか、じゃあいいけれどな」
「それだったらな」
 周りはいつもそれで下がる、俺は一人のままだった。
 毎日一人で暮らしていた、それも悪くないと自分に無理に言い聞かせていた。
 その俺にあのツレが言って来た。
「ゆっくりと過ごせばいいさ」
「そうか」
「御前が気が済むまでな」
 それまでだというのだ。
「一人で過ごせばいいさ」
「俺が落ち着くまでか」
「それまでか」
「ああ、それまでな」
「何時までになるかわからないな」
 俺は遠い目になって答えた。
「それはな」
「じゃあ何時までもな」
「そうしていいんだな」
「そうだよ、ゆっくりしろよ」
「本当に女々しいな、俺も」
「女々しくていいんだよ」
 俺はこう言った、だが。
 ツレはまた微笑んで俺に言ってくれた。
「女々しいのも悪いことじゃないさ。だから心の傷ってのはな」
「中々癒されないか」
「そうだよ、本当にゆっくりとな」 
 癒していけ、ツレが言うのはそういうことだった。
「いいな」
「何か急に奇跡でも起こってな」 
 俺は自嘲と冗談を交えて笑ってこうも言った。
「それでな」
「恋愛復活か」
「そうなったらいいのにな」
「そうだな、そうなったらな」
 ツレも俺に合わせて言ってくれた。
「いいよな」
「本当にな」
「ハッピーエンドってあるのかね」
 俺はその笑いのままこうも言った。
「それってな」
「あるんじゃないのか?俺は見たことないけれどな」
「あればいいな」
「奇跡ってな」
「それが来ることを願うぜ」 
 俺は言った。
「ちょっとだけな」
「ちょっとか」
「そうそうないだろうからな」
 それがわかっていての言葉だ。
「だから奇跡だよ」
「今日家に帰ったら、とかか」
「そういうのあればいいな」
「じゃあ犬か猫でもどうだ?御前のアパートペットいいだろ」
「犬か猫か」
「そういう相手もいいだろ。どうだよ」
「ちょっと考えてみるな」
 俺はこのことについては真剣に返した、そしてだった。
 その日実際にペットショップに通ってから帰った、すると。
 奇跡だった、俺の部屋の扉の前にあいつがいた。
 別れた時と殆ど同じ格好だった、だが。
 その手には子猫がいた、その子猫を抱きながら俺に言ってきた。
「久し振り」
「久し振りって何だよ」
「ちょっといい?」
 俺に申し訳なさそうに言ってくる。
「実はね、今ね」
「ああ、どうしたんだよ」
「部屋、追い出されたの」
 苦笑いもそこにはあった。
「そうなったの」
「部屋から?」
「そう、あんたと別れて自分で部屋借りたじゃない」
 それまでは俺の部屋に同棲していた、最初は俺が出て行くつもりだったが何度も話をしてこいつが出て行った。
「それでだけれど」
「その子猫か」
「うん、拾ったのよ」
 捨て猫だったらしい、どうやら。 
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