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最期の祈り(Fate/Zero)

作者:歪んだ光
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始まりの一歩 3/11改訂

 
前書き
同タイトルですが、少し士郎寄りのもので改訂してみました。 

 
泣かないで……切嗣。
例え、誰もが貴方を否定しても、私は……
泣かないで、切嗣。
例え、夢に裏切られても、貴方は何かを救ったのだから……
泣かないで、切嗣。
貴方は、●●を救え無かったけど、私は……

泣かないで、切嗣。
……だから、笑って、幸せになって。



「……さん、おい、爺さんってば」
士郎の声で夢から引き戻られた。
「そんな、とこで寝てたら風邪引くぞ」
「ああ、いや……大丈夫だよ……」
何もない静寂の中、男の声が運命を揺らす……
「……子供の頃、僕は正義の味方に憧れてた」
哀しき独白……夢に裏切られ、敗れ去った者の悔恨だけが世界を支配する。
男の身にただよう雰囲気を的確に表現するとしたら「虚無」が良いだろう。それほどまでに、男は儚かった。

「何だよソレ、憧れてたって……諦めたのかよ?」
「うん。残念ながらね」
今、衛宮切嗣は最期の償いをしている。どうか、この子だけは抱いた夢に泣くことが無いように……と。それだけが救い。自分が背負ってしまった業だけは誰にも背負わせたくない。待ち受けるものなど……
「そっかぁ、それじゃあしょうがないか」

本当にしょうがない。
哀しいが、士郎は叶わぬ夢に涙する事は無いだろう……
空を見上げる。そこには、いつか、アイリと見た、銀色の月が浮かんでいた。
隣に座る赤毛の子供も、一緒に空を見上げる。しかし、その目は閉ざされている。眠るためでは無い。
「しょうがないから、俺が代わりになってやるよ」
時間が止まった。まじまじと士郎の顔を見る。
彼が目を閉じたのは、これより待ち受ける最も鮮烈で……人生で最も儚い2週間を闘うためだろう。その決意を鈍らさないため、彼はその光景を追憶と共に焼き付ける。自分を助け出したときに見せた、隣に座る男の笑顔(夢)と共に……
「……ああ」
不意に悟る。士郎なら、大丈夫だ。少なくとも、僕のように「夢」に嘆くことは無い。だから……
「安心した」


そして、一人はこの世を去った。しかし、気高き光に当てられた男の歩みは、誰にも知られず、また開始された。
「私は、貴方のおかげで、人になれた。人形の哀しみから解き放ってくれた。だから」
「私は、切嗣を幸せにし(救って)てみせる」
たった一人、彼を愛した者を除いては。 
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