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仮面舞踏会

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第二幕その二


第二幕その二

「実は多くの者の幸福を生まれる方ではないですかな」
「さて、それは」
 王はあくまでとぼけてみせた。
「そして未来を指し示されている。立派な方です」
「買い被りですよ。僕が考えているのは魚だけ」
「幸福という人々の魚を」
「夜には松明を手に漁に出て」
「世の中を照らす松明を持たれて」
「海に出るだけです」
 そう述べるのであった。
「左様ですか」
「そう、それ以外の何者でもありません」
「わかりました。それでは次は貴方を」
「はい」 
 占おうとする。だがここで一人の女性が入って来た。
「あの」
(あれは)
 王はその女性を知っていた。アンカーストレーム伯爵家の侍女の一人である。しかも夫人付きの。
(アメーリアの)
 だが気付いているのは彼だけのようであった。他の者はその女性の巧みな変装に気付いてはいないようであった。見れば侍女の服ではなくみすぼらしい服を着ていた。
「占って欲しいのですが」
「少しお待ち下さいね」
 夫人はその侍女に対してこう言った。
「今こちらの方を占いますので」
「いや、待って下さい」
 だが王はここで女性を立てることにした。彼は女性に対しても紳士的であった。
「ここはこちらの女性を先に」
「いいのですね」
「はい」
 王は頷いた。
「私は構いませんから」
「わかりました。それでは」
 夫人はそれを受けて皺だらけで痩せた顔を侍女に向けた。
「それではこちらへ」
「いえ、私ではなく」
 だが侍女は占ってもらうのは自分ではないとした。
「貴女ではなく?」
「はい、友人でして」
(まさか)
 王はそれを聞いて心の中で呟いた。
「悩んでいることがあるそうなので」
「何か深刻な話みたいですね」
「はい」
 侍女はそれを認めた。
「わかりました。ではここに来られるようお伝え下さい」
「占って頂けるのですね」
「ただ個人的なお話のようですので」
 夫人はここで客達に対して顔を向けた。
「今よりここは教会の懺悔室と同じになります」
「はい」
 彼等はそれに頷いた。
「洞窟の奥に部屋を用意しております。そこにお下がり下さい」
「わかりました。それでは」
「だが気になるな」
 王はそれが自分の想い人のことかも知れない、と思っていた。そして逸る気持ちを抑えられなくなってきていた。
 彼は一緒に部屋に向かうふりをして物陰に隠れ何が起こるのか見守ることにした。
「では来られるようにお伝え下さい」
「わかりました」
 侍女はそれに従い洞窟を後にした。そして入れ替わりになる形で赤いマントとヴェールに身を包んだ女性が現われた。
(あれは)
 王には今現われた女性が誰なのかすぐにわかった。思わず声を出しそうになったがそれは止めた。
「貴女ですね」
「はい」
 その女性はこくりと頷いた。
「ようこそおいで下さいました」
 夫人はまずはその女性に挨拶をかけた。
「悩んでおられることがあるとのことですが」
「そうです」
 彼女はそれを認めた。
「私には夫も子供もおります」
「はい」
「ですが別の方を好きになってしまい。それを忘れてしまいたいのです」
「忘れたいのですね」
「はい。どうすればよいでしょうか」
「暫くお待ち下さい」
 彼女はここでテーブルの下から何かを取り出してきた。それは数枚のカードであり、そこには何か奇妙な文字が書かれていた。
「あの、それは」
「昔あった文字です」
 夫人はこう答えた。
「昔にですか」
「以前はこの国でも使われていましたが。今では忘れ去られている文字です」
(ルーン文字か)
 王はそれが何であるかわかった。かつてこの国や隣国ノルウェー等北欧で使われていた文字である。かって彼等が信仰していたオーディン等北欧の神々が作ったと言われる文字であり魔力が備わっていると言われている。これを使えるということはこの夫人がかなりの術の持ち主であるということでもあった。少なくともキリスト教徒の術ではない。だが王はそれはよいとしている。
 
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