| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十七話 コンクリュージョン

              第三十七話 コンクリュージョン
「そうか、あいつ等がかよ」
「ああ、そうらしい」
イライジャがロウにそう答えていた。
「連邦軍やザフトからな。来るそうだ」
「また随分と連邦軍も奮発したな」
「それだけじゃないぞ」
イライジャはまたロウに言う。
「何でもティターンズの系列からも人が出るそうだ」
「ティターンズからもかよ」
ロウはそれを聞いてまた複雑な顔になった。
「また随分と気前がよくないか?」
「それだけ大変だということだろうな、今は」
「戦力の集中ってわけかよ」
「簡単に言えばそうだ」
それなら話が通じるのであった。
「何しろ今は俺達が地球圏防衛の切り札だからな」
「随分こき使われているけれどな」
「それは俺達だけじゃない」
イライジャの言葉は冷徹なまでに現実を見据えたものであった。
「今はどの部隊もだ」
「そうなのかよ」
「それはわかっていると思うがな」
「まあな」
ロウもそれは否定しなかった。
「今の洒落にならない御時世だとな」
「最初はこちらに送られるのは十二人程度のパイロットと戦艦が一隻だった」
「それがどうなったんだ?」
「ティターンズから八人、ついでに四人追加でパイロットは二十四人」
「戦艦はどうなんだ?」
「そちらも一隻追加だ」
また随分と話が大きくなっていた。
「かなりの規模になっているのがわかるな」
「戦艦が二隻か」
「あいつ等ともう一隻だ」
ここであいつ等と言ってみせる。
「ハガネやクロガネだけじゃまだ戦力は不充分だというのが上の判断だ」
「まあそれはわかるぜ」
これはロウも実感していることであった。
「毎度毎度十倍かそこいらの数の相手をしているからな」
「辛いものがあるのは事実だな」
「全くだぜ。さっきの戦いにも間に合ってくれればよ」
「それは言うな。今間に合っただけでもいい」
イライジャはそれはよしとするのだった。
「何しろまたすぐにバルマーが来るからな。月を狙ってな」
「そうだな。それじゃあよ」
ロウは応えた。
「その助っ人の合流地点は何処なんだよ」
「月の上空だ」
イライジャはそれも知っていた。
「そこに行くぞ。いいな」
「わかったぜ。それじゃあな」
「行くか」
こうしてまたロンド=ベルに新たな戦力が加わることになった。ロンド=ベルはその合流ポイントに来てそこで彼等を迎えるのであった。
「全くねえ」
助っ人はもうそこにいた。何とそこにいるのは。
「あんた達と一緒に戦うなんてね」
「貴女は・・・・・・!」
エマは彼女を見て思わず声をあげた。
「ティターンズと聞いてまさかと思ったけれど」
「まあ腐れ縁ってやつだろうね」
そこにいたのはライラ=ミラ=ライラであった。
「こっちに転属になったよ」
「転属なの」
「あたしだけじゃないしね」
「よお、カミーユ」
ヤザンもそこにいた。三機のハンブラビで。
「活躍は聞いているぜ」
「ヤザン、あんたもか」
「それでこいつもだ」
「全く。御前と一緒に戦うことになるとはな」
ジェリドもいた。彼はジ=オに乗っている。
「何がどうなるかわからないものだ」
「全くだ」
カクリコンもいる。彼とライラはバウンド=ドックに乗っている。
「だがこれも何かの縁だろう。宜しくな」
「うむ」
ブライトはカクリコンの姿を見て複雑な顔をしていた。
「わかった」
「ジェリド」
マウアーが乗っているのはガブスレイであった。
「サラはいるわね」
「ああ、来ているぜ」
「えっ、サラもいるんだ」
カツはサラと聞いて思わず声をあげた。
「何処にいるの、それで」
「私はここよ」
ボリノーク=サマーンから声がした。
「戻って来たのよ」
「ハンバーガーショップはどうしたの?」
「ちょっと友達に替わってもらってね」
くすりと笑ってカツに答える。
「それでなのよ」
「そうだったんだ」
「けれどティターンズで二個小隊なのね」
「ああ、そうだ」
ジェリドがエマに答えた。
「過去は色々あったがな。それでも今は同じ部隊だな」
「いきなり後ろから撃たないでくれよな」
「そんなこと言えばかえってわからねえぜ、おい」
ヤザンは笑いながらジュドーに言ってきた。
「少なくとも演習じゃあな」
「何かやばいのを連れて来たんだな」
ジュドーは本気でそう思っていた。
「大丈夫なのかね、この人達」
「少なくともあんた達を撃ったりはしないよ」
ライラはそれは保障してきた。
「味方はね」
「だといいけれどよ」
「それにあれは」
セシリーはここであるモビルスーツに気付いた。
「何かしら、あれ」
「あれだよね」
シーブックもそのモビルスーツを見ていた。
「マントを羽織ったガンダムって」
「一体何だ、あれは」
「クロスボーンガンダムです」
そのガンダムから少年の声がしてきた。
「子供!?」
「トビアです」
金髪の少年が答えてきた。
「トビア=アナロクス。宜しく御願いします」
「海賊のガンダムがいるって聞いていたけれど」
シーブックは一応はそんな噂を聞いていた。
「君だったんだ」
「はい、そうなんです」
そのトビアが元気に答えてきた。
「まさかロンド=ベルに入れてもらえるなんて思いませんでした」
「そこの三人は何なんだ?」
ビルギットはトビアと一緒にいる三人に気付いた。
「何か見たことのない奴等だけれどよ」
「僕達もティターンズだったんだよ」
別の少年が答えてきた。
「僕はギリ。これはクァバーゼ」
「バーンズ=ガーンズバック。これはトトゥガだ」
「ローズマリーよ。アビジョよ」
「こいつ等はティターンズの特殊部隊にいた」
ジェリドがそうロンド=ベルの面々に説明する。
「それで殆ど名前が知られていなかった」
「そうだったんですか」
「ああ、これからはこいつ等もロンド=ベルだ。宜しくな」
「はい」
ファはジェリドの言葉に応えた。
「わかりました」
「しかしだ」
カガリがここで言う。
「御前まで来たのか」
「ちゃんと話は通している」
鋭い感じの美女がいた。何とそこにいるのはロンド=ミナ=サハク。オーブの重鎮であった。
「だから安心しろ」
「そうだったのか、ユウナ」
「いや、僕も初耳だけれど」
ユウナもキョトンとした顔になっていた。
「そうなっていたなんて」
「そうだよな。しかもうちのエースまでいるぞ」
「はじめまして」
オーブのエースであるバリー=ホーまでいた。
「バリー=ホーです。宜しく御願いします」
「しかし。ホー君のストライクダガーはいいとして」
ユウナはミナの乗っているマシンを見て複雑な顔になっていた。
「まさかそれに乗って来るなんて」
「駄目なのか?」
「いや、それは別にね」
ユウナは何か言いたそうだったがそこから先は言わなかった。
「けれどねえ。アストレイGフレームなんて」
「アカツキはもう彼女が乗っている」
「私のことね」
「他に誰がいるんだ」
カガリがフレイに突っ込みを入れた。
「いないだろうが」
「それもそうね」
「ザフトからもオールスターで来たんだな」
「そうですね」
ディアッカにシホが答える。
「ミハイル=コーストにグリアノス=エディン」
白髪の男と中年の男がいた。
「ジン=ハイパーマニューバにザクに乗って」
「その二人は俺も知っているけれどさ」
トールがここでザフト系の仲間達に聞いてきた。
「はい」
「何か?」
フィリスとエルフィがそのトールに応えてきた。
「そっちのグフの人は誰なのかな」
「私か」
そのグフに乗るパイロットが応えてきた。
「はい、そうです」
サイが彼に応える。
「貴方は一体」
「ユーレク」
彼はそう名乗った。
「ユーレク=ケルビム。傭兵だ」
「傭兵、ですか」
「先の戦争ではザフトに雇われていた」
本人の弁ではそうである。
「今回ロンド=ベルに配属されることになった。宜しくな」
「はい、それじゃあ」
「宜しく御願いします」
カズイとミリアリアがそれに応える。続いてジャックが言った。
「連邦軍のエースもいるなんて」
「よお」
褐色の肌の男がいた。二機あるソードカラミティのうちの一機に乗っている。
「エドワード=ハレルソン。エドって読んでくれ」
「モーガン=シュバリエ」
ガンバレルに乗る髭の男だった。
「レナ=イメリア」
もう一機のソードカラミティに乗っているのは女であった。そして何とディープ=フォピドゥンまであった。それに乗っているのも女であった。
「ジェーン=ヒューストンよ」
「連邦軍やザフトのエースが揃ったということか」
イザークはここまでの紹介を受けて言う。
「顔触れは見事だな」
「そうだな」
ミゲルがそれに頷く。
「これだけ来るとは思わなかった。俺にとっても懐かしい人が多い」
「それとあの戦艦だが」
ハイネは二隻の戦艦のうち一隻を見ていた。
「どうやら輸送艦のようだな」
「そうだな」
それにレイが応える。
「どうやらな」
「ええ、その通りよ」
その輸送艦から声がしてきた。
「これはリ=フォーム」
大人の女の声であった。
「私はその艦長のプロフェッサーよ」
「教授か」
「まあそうなるわね」
レイの言葉に頷いてみせる。
「そう呼んでもらってもいいわ」
「山吹樹里です」
「リーアム=カーフィールドです」
「ジョージ=グレンです」
彼女の後で三人のクルーが名乗り出てきた。
「宜しく御願いします」
「まさかロンド=ベルに来るなんて思わなかったけれど」
「どうか今後共」
「何か凄くなってきたわよね」
「本当」
アサギとマユラは彼等を見てそう話をする。
「それに見て」
ジュリは二機のマシンに気付いていた。
「あれは」
「ドラグーンだね」
アスランとキラがそのうちの一機を見て言う。
「間違いないな。何だあれは」
「Xアストレイです」
そのガンダムに乗る金髪の美少年が言ってきた。
「連邦軍で新たに開発されたドラグーン装備のガンダムです」
「そんなものまで作っていたのか」
ムウはこれを聞いて正直驚いていた。
「何でもかんでも作っているんだな」
「それはザフトも同じだ」
ここでもう一機のガンダムに乗る少年が言ってきた。
「このドレッドノートイータは連邦のものだがな」
「そういう御前は」
シンはそのドレッドノートイータに乗る少年を知っていた。
「カナード=パルスだな」
「シン=アスカだな」
「ああ」
シンは彼の言葉に応えた。
「御前まで来るなんてな」
「話は聞いている」
少しキラを見た後でシンに言葉をかけてきた。
「ロンド=ベルでも活躍しているそうだな」
「何だ?俺も有名になっているんだな」
シンはそれを聞いて少し機嫌をよくさせた。
「ザフトのトップエースだからな。しかし」
「しかし。何だよ」
「随分滅茶苦茶なやり方もしているそうだな」
シンの荒っぽい戦い方はもう聞いているのだった。
「それもかなりな」
「かなりかよ」
「御前らしいとは思うがな」
「否定はしないさ」
シンもそれは否定しないのだった。
「それにしても。何か随分とまた大所帯になったな」
「そうだな。それに」
カミーユがここで言う。
「もう一隻の戦艦は」
「あれよね」
セシリーがその戦艦を見ていた。
「また随分と変わった形の戦艦よね」
「戦艦、っていうか」
シーブックはそれを見て複雑な顔をしていた。
「何かあれは海賊船みたいだな」
「そうよね」
そうなのだった。見るからにそうした感じの船だったのだ。
「はっはっは、海賊ですか」
その戦艦から声がしてきた。
「その通りですね。言われてみれば」
「誰なんだ、あんた一体」
ビルギットがそれに突っ込みを入れる。
「私ですか?私はカラスといいます」
見れば白髪で怖い顔をした男であった。片眼鏡が印象的である。
「元はティターンズにいました」
「元ティターンズねえ」
「そういえばそんな顔だよな」
一矢と豹馬がそう話をする。
「それでこの度マザー=バンガードの艦長になったのですよ」
「それで我々も来た」
「宜しくな」
ザビーネとドレルもいた。
「我々はモビルスーツには乗らずに艦の指揮に専念する」
「そういうことだ」
頭の禿げた老人もいた。
「ウモン=サモンじゃ。宜しくな」
「何か大所帯も一層凄くなってきたっていうか」
「これって」
皆そう言い合う。
「もう個性派なんてものじゃないわよね」
「そうだよな」
セシリーの言葉にシーブックが頷く。
「けれど戦力にはなるな」
「ええ、それは」
「それで戦力が揃ったところでですね」
カラスが一同に言ってきた。
「皆さん、敵ですよ」
「バルマーか!?」
「もう来たのかよ」
皆それを聞いて声をあげる。
「月面に今向かっていますよ」
「よし、それならばだ」
グローバルはカラスの言葉を聞いてすぐに判断を下した。
「ここからすぐに彼等に向かう。それでいいな」
「了解」
「それじゃあ今から」
皆それに頷く。こうして合流もそこそこにロンド=ベルはバルマー軍に向かう。見れば彼等の大軍はまだこちらに気付いてはいなかった。
「よし、いい具合だな」
「そうだな」
一矢の言葉に京四郎が頷く。
「このまま側面を突けば戦いが有利に進められるな」
「その通りだ。このまま敵の右側面を突く」
グローバルがここで言ってきた。
「全軍でだ。いいな」
「そうですね。丁度いい具合に」
見ればそこにはグラドス軍がいる。彼等の多くが憎悪してやまない。
「グラドス軍がいますし」
マリューも彼等を睨んでいた。
「このまま突撃して一気に敵陣を崩せますね」
「そう。だから」
グローバルはまた言う。
「全軍このまま全軍で突撃を仕掛ける。いいな」
「了解!」
こうしてロンド=ベルはバルマーの軍勢に急襲を仕掛けた。彼等が気付いた時にはもうロンド=ベルはすぐそこまで迫っていた。
「あんた達のことはもう知ってるよ」
ライラがその先頭にいた。
「そのえげつないやり方はね。だから」
「手加減するつもりはない!」
ジェリドも突っ込む。
「一人残らず撃墜してやる!」
ジ=オの素早い動きを活かして照準を合わせる。そうして敵のコクピットを次々と撃ち抜いていくのであった。
「やっぱり凄いわね」
「そうだな」
それを見てファとカミーユが話す。
「敵だと手強いけれど味方だと」
「頼りになるか」
「カミーユ、私達も」
ファはここでカミーユに声をかける。
「行きましょう、いいわね」
「わかっている。グラドスは許せない!」
彼もまたグラドスにはいい感情を抱いてはいなかった。だからこれは当然であった。
「行くぞファ!」
「ええ!」
彼等もまたグラドス軍に切り込む。ヤザンはラムサス、ダンケルを率いていた。
「ラムサス、ダンケル」
「はい」
「いつも通りですね」
二人はそうヤザンに応えてきた。
「あの小隊を囲むぞ、いいな!」
「了解!」
「喰らえっ!」
目の前のSPTの小隊を囲んでそこから蜘蛛の巣攻撃を仕掛ける。それで彼等を瞬く間に一掃してみせた。
「生憎俺も御前等は嫌いでなあ!」
その戦いに餓えた目でヤザンは叫んでいた。
「手加減も何もしねえから覚悟しやがれ!」
「プラントでのことは知っている!」
ミハエルもそこにいた。
「だからだ。死ね!」
「はっはっは、このまま砲撃をして下さい」
カラスはマザー=バンガードの艦橋から指示を出す。
「そうして敵を倒していくのです」
「わかった」
「一斉射撃だ!」
ザビーネとドレルはカラスのその指示に応えた。そうしてその指示を伝える。
マザー=バンガードの砲撃がそのままグラドス軍を貫く。それで敵を一斉に倒すのだった。
グラドス軍はロンド=ベルの攻撃を受けて混乱状態に陥る。彼等の中には無様に逃げようとする者達すら出てきていた。
「に、逃げろ!」
「このままじゃやられるぞ!」
そう言って戦線を離脱しとうとする。だがそこには。
「逃げるというのなら」
「味方でも容赦はしないわ」
キャリコとスペクトラがいた。彼等はそのままグラドス軍の逃げる者達を斬るのだった。
「う、うわああっ!」
「み、味方を!」
「確かに味方だ」
キャリコはグラドス軍のSPTを切り捨ててから言う。
「だが。逃げる者は切れとのハザル司令の御言葉だ。そういうことだ」
「逃げるのも死よ」
スペクトラも言う。
「さあ、死にたくなければ戦いなさい」
「け、けれど」
「地球人達は」
「では俺達に斬られて死ぬか」
そう言いながらまた一機斬り捨てるのだった。
「どうするのだ」
「選ぶのは自由を」
「う、うう・・・・・・」
「こうなったら」
彼等に選択肢はなかった。選べるのは一つしかなかった。
「やってやる!」
「こうなったら!」
「グラドス軍が突っ込んで来ました」
「そうね」
タリアはアーサーの報告を受けながら戦局を見据えていた。
「当然でしょうね。味方に斬られるよりはましだから」
「しかし。まさか味方を斬るなんて」
アーサーはそのことに驚きを隠せないようであった。
「こんなことははじめて見ましたよ」
「そうかしら、これは普通よ」
だがタリアはここで言うのであった。
「戦場で逃げる味方を攻撃するのはね」
「督戦隊ですか」
所謂逃げる味方を撃つ兵士である。そうした部隊も過去あったのだ。
「そうよ、そう考えればわかるわね」
「わかりたくないですよ」
アーサーの個人的な感情であった。
「そんなおっかないのは」
「そうですよね」
それにメイリンも同意して頷く。
「そこまでしますか」
「正直私も好きじゃないわ」
タリアもそれは同じであった。
「けれどね。それでも勝つ為には必要なのよね」
「味方に撃たれたら死にきれませんよ」
それでもアーサーは言う。
「それだけは勘弁して欲しいですよ」
「シンだったら誤射しそうだけれどね」
メイリンの言葉は本当にありそうなものであった。
「このミネルバの艦橋をドカンて」
「怖いこと言わないでくれよ」
「例えばですよ、例えば」
「例えでも怖過ぎるよ、全く」
「お喋りはいいけれどアーサー」
ここでタリアがまた言う。
「はい!?」
「ニコル君から通信よ」
「ニコルが!?」
「すいません」
そのニコルがモニターに出て来た。
「敵の攻撃が激しくなってきています」
「援護射撃だね」
「はい、それを御願いします」
彼が言うのはそれであった。
「できればタンホイザーで」
「わかったわ。それじゃあ今から」
「よし、じゃあニコル君」
アーサーが彼に声をかける。
「攻撃軌道上からは離れていてくれ」
「わかりました」
「流石に味方を撃つわけにはいかないからね」
ここが彼とキャリコ達の差であった。
「そこは頼むよ」
「わかりました。それじゃあ」
「うん。後ね」
「はい」
ニコルはまたアーサーに応えた。
「前線の方はまだいけそうかな」
「はい、何とか」
グラドスの攻撃を受けてもまだもっていたのだ。
「これで援護射撃さえあれば」
「わかったよ。それじゃあ」
「タンホイザー発射用意!」
タリアがここで叫ぶ。
「一気に撃墜するわ。いいわね」
「はい。ただ」
「ただ?」
メイリンの言葉に応える。
「グラドス軍が正面から殺到しています」
「なら好都合ね」
危機だがタリアはそれを好都合と言って捨てた。
「一気に敵を減らせるわ」
「一気にですか」
「そうよ。照準はそのまま」
指示は変えない。
「一気に消すわ。いいわね」
「わかりました。それじゃあ」
「撃てーーーーーーーーっ!」
タリアが叫ぶと同時にタンホイザーが放たれた。それでグラドス軍のSPTが数十機程度消し飛んだ。かろうじて生き残っている面々にプレアがドラクーンで攻撃を浴びせる。
「これなら!」
ドラクーンは的確にそのコクピットを撃っていく。こうしてかろうじて残った敵が炎の棺桶となっていく。グラドス軍は退くこともできずその数を次々に減らしていた。
「敵は退くことができない」
クワトロはそれを正確に把握していた。
「だがそれならそれで」
「容赦することないのよ!」
クェスが叫ぶ。
「こんな奴等。行けっ!」
叫びながらファンネルを放った。
「ファンネル達!」
ファンネルは一つ一つが複雑な動きを示してグラドス軍に一機一機襲い掛かる。まるで獣の様なその動きで敵を葬っていく。何時しかグラドス軍はその数を大きく減らしバルマー軍が出て来ていた。だが彼等もロンド=ベルに対しては劣勢であった。しかしそれでもロンド=ベルは安心してはいなかった。
「いないのか、今は」
「どうでしょうね、それは」
カイにジャーダが応えた。
「ただ出番を待っているだけかも知れませんよ」
「いざという時に備えてか」
「ええ。いるのなら絶対に出ますね」
彼は読む目でそう述べた。
「あれだけの戦力ですからね」
「切り札はここぞという時にこそ切るもの」
カイはまた言った。
「それならばな」
「用心だけしておきますか」
「敵の増援が来ました」
ここでラトゥーニが言う。
「数二千」
「二千か、ここで」
ジャーダはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「随分な数だな、何時にも増して」
「それだけ真剣ってことなんでしょうね」
ガーネットがそれに応えて言う。
「向こうも」
「へっ、素直に諦めてくれればいいのによ」
ジャーダは自分達の都合で言うのであった。
「前の戦争で随分やられてるしよ」
「敵には敵の事情がある」
カイはそうジャーダに言葉を返す。
「それはわかるんだな」
「わかりたくないですけれどね。それにしても」
「来たよ来たよ!」
タスクが叫ぶ。
「二千もここで来るとやっぱり辛いよなあ!」
「騒がないの」
そんな彼をレオナが嗜める。
「多いのはいつものことだから」
「そうだけれどよ。何かここまで多いと」
「多かったら減らせ!」
カチーナがタスクに対して怒鳴る。
「それだけでいいだろうが!」
「減らすんですか!」
「そうだ!撃て!撃ちまくれ!」
今度は叫んだ。
「それで数減らせ!いいな!」
「わかりましたよ。それにしても」
「一機撃墜すればそれだけ数が減るわ」
彼の後ろからラーダが言ってきた。
「だから。こうやって」
「こうやって」
「撃つのよ」
落ち着いた様子で砲撃する。それで本当に一機撃墜してみせた。
「いいわね」
「わかりました。それじゃあ」
「御前は突っ込め!」
カチーナはタスクを無理にでも突撃させた。
「ジガンスクードはその為にあるんだしな!」
「わかってますよ。それじゃあ!」
まだ残っていたグラドス軍のSPTの一機に向かい拳を振るう。
「御前等は許せないんでな。やらせてもらうぜ!」
「うわあああああーーーーーーーーーっ!」
ジガンスクードの拳を頭部にまともに受けて吹き飛ぶ。そのまま動かなくなり宙に漂うのであった。それをカチーナのビルトビルガーが蹴り飛ばして爆発させる。何だかんだで見事な連携を見せる二人であった。
その中でセレーナはスペクトラの前に向かっていた。彼女の後ろにはアイビス達がいる。
「セレーナ」
「何?」
そこで声をかけてきたスレイに応える。
「どうしたのだ、この前から」
「この前からって?」
「白を切るな。様子がおかしいぞ」
「そうね」
それにツグミも頷く。
「何か焦っているような」
「別に焦ってはいないけれど」
セレーナはいつもの調子で白を切ってきた。
「別にね」
「そうは見えないけれどね」
今度はアイビスが言ってきた。
「今のあんた。あの金色のマシンを睨んでるよ」
「あのマシン?」
「だから白を切っても無駄だよ」
アイビスもそれを言うのだった。
「あんた、あいつと何かあったんだね」
「さあ?」
だがセレーナはここでも心を見せないのであった。
「何のことかしら」
「言わないんだったら別にいいさ」
アイビスはそれをよしとした。
「ただね」
「ただ?」
「あんたの後ろはあたしが持つよ」
「私もだ」
「私もよ」
スレイもツグミも言ってきた。
「仲間だけは忘れないようにね」
「御前に何があったかは聞かない」
アイビスとスレイがそうセレーナに声をかける。
「けれど。あんたがあんたでいる限り」
「後ろは任せろ」
「有り難う。感謝するわ」
やはりいつもの調子で言葉を返すセレーナであった。
「さて。来たわよ」
「また御前か」
スペクトラは彼女の姿を認めて仮面の下の目を顰めさせた。
「しぶとい女だ」
「どうしてその顔をしているのかしら」
セレーナは彼女に対して問う。
「といっても答えてはくれないわよね」
「当然だ」
スペクトラは冷たく彼女に返した。
「御前なぞに言うつもりはない」
「御前なぞ、ねえ」
それを聞いたセレーナの顔が少しシニカルなものになった。
「何かそれなりの御身分のようだけれどだったら何故仮面をつけているのかしら」
「・・・・・・・・・」
スペクトラはその問いには答えなかった。
「まあ答えないのならいいわ。その仮面」
「セレーナさん、どうするんですか?」
「仮面は何の為にあるのかしら」
セレーナは横から問うてきたエルマに対して問い返した。
「何の為って?」
「剥ぎ取る為よ」
不敵に笑って答える。答えながら構えを取る。格闘技というよりは隠密めいた構えをソレアレスで取っている。
「そうでしょ?だから」
「そうなんですか?仮面って」
「あたしにとってはそうなのよ」
これまた強引な言葉であった。
「だからね。ここは」
「ふん、仮面を剥ぎ取るか」
スペクトラはセレーナのその言葉を聞いて不敵に笑い返してみせた。
「生憎私に対してそう言って生きている者はいない」
「今までいなかっただけでしょ?」
セレーナは負けてはいなかった。
「たったそれだけ。そうじゃないの?」
「そうだとしてどうするのだ?」
「決まっているわ。何にしろ私がその一人になるわ」
その手にブーメランを出す。それで以って構えながらまた言う。
「これでね。変幻自在!」
放ちながら叫んだ。
「このステルスブーメランよけられて!?」
「くっ、この動きは」
複数のブーメランが放たれそれぞれが複雑な、まるで禽の様な動きを見せてスペクトラに襲い掛かる。その速さと動きはスペクトラですら驚くものであった。
「まるで。生き物のような」
「それはブーメランだけじゃなくてよ」
「何っ!?」
「ただ。飛び道具を出すだけじゃないのよ」
セレーナの声がまたした。
「それに気を取られていると」
「何処だ!?」
「ここよ。足元をすくわれるわよ!」
正面にいきなり出て来た。その瞬間にもうソル=フェンサーを出してきていた。
「これでどうかしら!」
「くっ!」
「!?今の声は」
セレーナはここであることを感じた。
「まさか」
「むっ、動きが」
その感情の動きが動きにも出た。スペクトラはそれに気付きすぐに動いた。
「鈍ったか。それなら」
「ちっ、しまった!」
ソル=フェンサーが薙ぎ払われ逆に斬りつけられた。何とか致命傷は避けたがそれでもダメージは受けてしまった。
「何を迷った?」
「迷ってはいないわよ」
ダメージを受けてもまだ笑う余裕はあった。セレーナはまたスペクトラに言い返す。
「けれど。声を聞いたわよ」
「声だと!?」
「そうよ、あんたの声をね」
不敵に笑いながらスペクトラに言うのであった。
「その声は。まさかね」
「考える必要はない」
スペクトラはそのセレーナに対して告げた。
「考えずに・・・・・・死ね」
「あらあら、どうやら」
彼女の態度が変わったことを何よりの証拠と見た。
「痛い場所みたいね、どうやら」
「もう一度言う。貴様が考える必要はない」
構えを取りながらセレーナにまた言うのだった。
「二度とな。死ね!」
「来ましたよ!」
「わかってるわよ」
セレーナはまた余裕の顔でエルマに言葉を返す。ダメージを受けていても彼女は普段のままであった。
「だから慌てないの」
「けれど!」
「ラカッド=ヴェ=ヤラーーーーーッ!」
その剣で斬りつけてくる。スペクトラはこの一撃で完全にセレーナを屠る気であった。
「セレーナ!」
「よけろ!」
後方で他の敵と戦うアイビスとスレイがそれを見てセレーナに叫ぶ。彼女達の横ではクォヴレーがまたキャリコと戦っている。
そのセレーナにキスペクトラの攻撃が迫る。だがここで不意にセレーナのソレアレスの姿が何処かに消え去ってしまったのである。
「!?何処だ!」
スペクトラは攻撃をそれでかわされ慌てて周囲を見回す。だがセレーナの姿は何処にも見えないのであった。
「くっ、逃げた!?違うな」
「言っておくけれど」
ここでそのセレーナの声がした。
「いたか!」
「いるわ。けれどね」
またスペクトラに対して言うのだった。
「姿を見せないといけないってルールはないわよね」
「隠れているというのか」
「それはあんたも知っている筈だけれど」
またセレーナの声が言ってきた。
「あたしは特殊部隊よ。隠れるのもまた流儀の一つよ」
「戯言を。それで私を混乱させているつもりか?」
「だとしたらどうするのかしら」
あえて軽い調子でまた声をかける。
「また攻撃を仕掛けるの?」
「レーダーにも反応がない」
スペクトラは己のマシンのレーダーを見て呻く。
「何処だ、何処にいるのだ」
「ステルスだね」
「そうね」
ツグミはアイビスの言葉に頷く。二人にはそれはわかった。しかしだ。
「だが。これは」
スレイがここで言う。
「これだけのステルス性能ははじめて見るぞ」
「そうね」
ツグミは今度はスレイに答えた。
「デスサイズヘルカスタムやブリッツガンダム以上の」
「だとしたら。かなりの性能だな」
「それだけじゃないわよ」
またアイビスに応える。
「それを使いこなせるセレーナも。凄いわ」
「そうだね。そういえばあたし達はあいつのことをあまり知らないね」
「そうだな」
スレイはアイビスの言葉に頷いていた。
「特殊部隊にいたというが。その過去は」
「あまり聞いてはいなかったけれど」
アイビスはそれに気付いた。
「一体何者なんだ」
「そうして私が焦れるのを楽しんでいるというのか?」
まだセレーナの姿は見えない。スペクトラには次第に焦りが見られてきた。
「それとも。からかっているのか」
「あら、今気付いたのかしら」
「何っ!?」
スペクトラの言葉に怒りの色が浮かんだ。
「私を。からかって生きていた人間はいないぞ」
「じゃあ私が最初ね」
それに応えてまた言ってみせる。
「私が。じゃあそろそろ」
「むっ!?」
その時だった。不意にヴァルク=イシャーの前に何かが姿を現わした。それはやはりセレーナのソレアレスであった。
「イルマ!」
「はい!」
セレーナはイルマに声をかけるとイルマはそれに応えてきた。
「プリズムファントムスタンバイ!」
「ラジャ!」
イルマがそれに応えて動く。
「モードオン!」
「仕掛けるわ。ガトリングテンペスト!」
「ラジャ!ガトリングテンペストモードオン!」
「見せてあげるわソレアレスの本当の動き」
ソレアレスが赤い影となって動く。そうして今ヴァルク=イシャーに総攻撃を仕掛ける。
「隊長の、皆の仇」
流れる動きと共に呟く。
「今取ってあげるわ!」
「くっ!」
「スペクトラ!」
キャリコが攻撃を受けるスペクトラを見て叫ぶ。
「いかん、退け!」
「わかってるわ。けれど!」
だが動きが間に合わない。スペクトラのヴァルク=イシャーはソレアレスのガトリングテンペストを受け大きく吹き飛んでしまったのであった。
「さて、終わりかしら」
「くっ・・・・・・」
「あら、しぶといのね」
しかしまだスペクトラもヴァルク=イシャーもまた動いていた。スペクトラは重傷を負いながらもそれでも生きているのであった。それで顔を上げてセレーナに対して言う。
「貴様、よくも私をここまで」
「ここまで痛め付けてもまだ立っているのね」
「この程度でやったとは思わないことね」
セレーナを見据えての言葉であった。
「私は。まだ」
「じゃあ。また仕掛けてあげるわ」
構えながらスペクトラに言う。
「今度こそ」
「スペクトラ」
ここでまたキャリコが彼女に声をかけてきた。
「どうしたというの!?」
「今はこれ以上は無理だ。退け」
「いえ、まだ」
だが彼女はそれに従おうとはしない。まだセレーナを見据えていた。
「まだやれる。この小娘を」
「それだけなら俺も止めたりはしない」
キャリコはまた言ってきた。
「しかしだ。撤退命令が出た」
「撤退命令だと!?」
「そうだ」
キャリコは言う。
「エイス様が出撃された。後詰に回られるそうだ」
「エイス様が」
「そうだ。だから」
彼はまた言った。
「ここは下がれ。いいな」
「くっ、命令ならば仕方がない」
スペクトラも命令とあらば従うしかなかった。
「では。下がるか」
「そうだ。今回の作戦も中止だ」
これも告げられた。
「損害が五十パーセントを超えた・これ以上の作戦行動は無理だ」
「作戦も中止か」
「そういうことだ。仕方がない」
こうも言う。
「わかったな」
「・・・・・・わかった」
スペクトラも頷くしかなかった。命令とあらばだ。
「では下がるとしよう」
「とりわけグラドス軍の消耗が激しい」
「フン、役立たずが」
スペクトラは彼等のふがいなさに侮蔑の目を向けた。
「所詮はこの程度か」
「戦力の再編成及び充実が必要だな」
キャリコはもうこれからのことを見据えていた。
「暫くは軍事行動は無理だな」
「そうだな。とにかく今は下がるか」
「そうだ。それではな」
こうして二人は下がった。それと共にバルマー軍も。撤退の間にもロンド=ベルの攻撃は続きバルマー軍は七割を超える損害を出して撤退した。かろうじてエイスの後詰で何とか戦場を離脱したのである。
「戦いは終わったね」
「戦いはな」
スレイはそうアイビスに応えた。
「しかしだ。聞きたいことがある」
「あたしもね」
二人のそれは同じであった。
「ツグミもそうじゃないの?」
「ええ。セレーナ」
ツグミがセレーナに声をかけてきた。
「貴女はどうしてあのバルマーのパイロットに敵対心を向けるのかしら」
「大した理由はないわ」
こう三人に応える。
「別にね」
「そうは思えないのだがな」
スレイが彼女に突っ込みを入れてきた。
「とてもな」
「そうだね。そういえばさっき」
アイビスも言う。
「隊長がどうとか言っていたわよね」
「セレーナ、貴女は」
「あら、聞いてたの」
三人の言葉に遂に応える。しかしどういうわけか明るい顔であった。
「まあ大体予想はしていたけれど」
「あんた、前は特殊部隊にいたんだね」
アイビスはそれをセレーナに問うのだった。
「それでここに流れてきた」
「そうよ。第十三特殊部隊」
セレーナはかつて自分がいた部隊の名前を出してみせた。
「知っているかも知れないわね」
「第十三特殊部隊っていったら」
ツグミはそれを聞いて驚いた顔を見せてきた。
「丁度私達がガンエデンとの戦いを終えた直後に全滅した部隊じゃない」
「そういえば聞いたことがある」
スレイもそれを思い出した。
「突然月で消息を絶ったのだったな」
「ええ、そうよ」
セレーナもそれを認めてきた。
「突然謎の赤いマシンの軍に襲われてね。あたし一人を残して全滅したのよ」
「そうだったのか」
「やっぱり」
「正直に言うわ」
セレーナはそれでも明るい笑顔であった。
「あたしはその敵を探す為にここにいるのよ」
「待て」
それを聞いてスレイが彼女に問うのだった。
「では私達を利用するというのか」
「ちょっとスレイ」
「いえ、アイビス」
止めようとするアイビスをさらにツグミが止めるのであった。
「そう捉えられても仕方ないわ。セレーナ」
ツグミも厳しい顔でセレーナに問うのであった。
「今のはそういう意味なの?」
「そう捉えてもいいわ。あたしにはあたしの戦いがあるのよ」
セレーナも平気な顔で三人に言葉を返す。
「けれどね。やることはやるから」
「やることは」
「ちゃんとロンド=ベルで戦うわ。だから別にいいでしょう?」
「そんな問題ではない!」
スレイはさらに厳しい言葉で彼女に言い返す。
「私達を利用するというのか!仲間としてではなく!」
「仲間よ」
「何処がだ!」
「一緒に戦うね。それで充分じゃない」
「違う!」
スレイはセレーナの軽い言葉を否定する。
「そんなものは仲間ではない。仲間は!」
「だから止めるんだスレイ」
また彼女をアイビスが止めた。
「スレイも。いいね」
「アイビス、どうして」
「あんたがそう考えるならそれでいいさ」
アイビスは今度はセレーナに顔を向けて言った。
「けれどね。覚えておくんだ」
「何を?」
「復讐もいいさ。それで戦うのも」
アイビスはそれは肯定してみせた。
「けれどね。仲間はそれだけじゃないんだよ」
「そうなの」
「それをわかっていないのならいいけれど。だけど」
アイビスの目もここで厳しいものになった。
「裏切るのだけは。許さないからね」
「あたしはそんな人間に見えるのかしら」
「少なくともそう簡単には信用できん」
スレイが言ってきた。
「今の話ではな」
「まあいいわ。とにかく戦いは一旦はこれで終わりね」
「そうね。一応はね」
ツグミが彼女の言葉に応えた。
「バルマー軍は去ったし」
「けれど。まだいるよ」
アイビスがここで言う。
「ホワイトスターにね」
「そうだな。今度は彼等だ」
スレイも応えた。
「ホワイトスターを警戒しておくことにしよう」
「ええ、そうね」
今度の敵はわかっていた。彼等はネビーイームに目を向けていた。そのネビーイームではマーグがロゼの他にもメンバーを入れて話をしていた。
「そうか。君が来たのか」
「はい」
そこにいたのはラオデキアと全く同じ顔の男であった。だがその髪の色が違っていた。彼のそれは鮮やかな緑色であったのだ。
「エペソ=ジュデッカ=ゴッツォ」
彼はこう名乗った。
「銀河辺境方面軍に派遣されてきました」
「私もです」
彼の他にももう一人。赤い髪の女であった。
「アタッド=シャムランです」
「バルマーかわわざわざ来てくれたのか」
「そうです」
そのアタッドがロゼの言葉に応えてきた。
「宜しく御願いします」
「うん。それでは早速」
マーグは二人を前にして言うのであった。
「作戦行動に入りたい」
「一体どのような作戦でしょうか」
エペソが彼に問うてきた。
「今回は」
「色々考えたけれどこのネビーイームだけでは心許ないかも知れない」
彼が見たのはそこであった。
「それで他にも拠点を築いておきたい」
「拠点をですか」
「うん。まず月は外す」
それは今外した。
「外銀河方面軍が攻略に失敗している。だから」
「では地球ですか?」
「いや、地球ではない」
マーグはそれも否定した。
「ここは火星を狙いたいんだ」
「火星をですか」
「うん。火星には豊富な資源がある」
マーグはまずはそれに目をつけた。
「それを手に入れて戦力の充実を計りたい。今後の為にも」
「では司令」
アタッドはそれを聞いてマーグに問うた。
「火星をこれからの我々の恒久的な基地にされるおつもりですね」
「それでは駄目かな」
あらためてアタッドに問うた。
「拠点を複数持ったうえで敵に対するのは」
「いえ、そうは思いません」
エペソが答えてきた。
「むしろ」
「むしろ?」
「そうであるべきです。ですから」
「火星攻略に賛成なんだね」
「はい、私はそうです」
エペソはそれでいいと述べてきた。
「是非共それでいきましょう。主力は」
「本国から送られてきた援軍を使いたい」
マーグは戦力はそちらを使うつもりであった。
「それと今ここにある戦力でね。大規模な攻撃になる」
「そうですね。おそらくですが」
ロゼが応えてきた。
「ロンド=ベルは火星には来ないでしょうがそれでもバーム人達がいますので」
「彼等の戦力も馬鹿にはできない」
マーグは決して彼等を侮ってはいなかった。かつて地球人達と激しい戦いを繰り広げた彼等を高く評価しているのであった。マーグらしいと言えた。
「だからだ。全力で攻めたい」
「わかりました。それでは」
「じゃあロゼも賛成してくれるね?」
「はい」
ロゼはマーグのその問いに頷いてみせた。
「それで行きましょう。是非共」
「わかった。それじゃあ」
最後の一人であった。マーグはアタッドに声をかけるのであった。
「君はどうかな。アタッド」
「私も異論はありません」
彼女もそれは同じであった。
「是非共それで行きましょう」
「それでは作戦は決まりだね」
「ええ。これで」
「よい、すぐに総攻撃に入る」
マーグは決断を下した。
「火星を攻める。総攻撃だ」
「はい」
「それでは」
マルスの星が戦乱に包まれようとしていた。だがロンド=ベルは火星からのSOSでそれを知るのであった。まず一矢が血相を変えた。
「エリカ、エリカが!」
「落ち着いて、お兄ちゃん」
その彼にナナが声をかけてきた。
「まだ敵が来たってだけだし。エリカさんは無事よ」
「わかっている。だが」
それでも一矢は不安であったのだ。
「このままじゃエリカが。バームの皆が」
「わかっています」
ルリがここで出て来た。
「バームの方々もエリカさんも失うわけにはいきません」
「そうだ!」
一矢はルリのその言葉に応えた。
「だから早く。何とかしないと!」
「ですがここは落ち着いて下さい」
それでもルリはこう言うのであった。
「一矢さん、ここは」
「ルリ、じゃあここはやっぱり」
「はい、ボゾンジャンプです」
ルリはここで切り札を使うつもりであった。
「それで火星に向かいましょう」
「そうだな」
彼女の言葉に京四郎が応えた。
「時は一刻を争う。バーム人だけじゃない」
「そうだ、火星だ!」
リョーコが叫んだ。
「火星を奴等に渡してみろ。大変なことになるぞ!」
「そうですよね。確かに」
ヒカルもその言葉に頷く。
「火星には資源も豊富ですし」
「火星を敵に渡せば」
イズミが言う。
「マルスは困ってしマルス」
「・・・・・・何かですね」
「ああ」
ジュンの言葉にナガレが応える。
「イズミさんの駄洒落がどんどん苦しくなってきていますね」
「どうしたものか」
「とにかくボゾンジャンプですよね」
「そうそう、それよ」
今度はメグミとハルカが出て来た。
「すぐに取り掛からないと」
「急がないと本当にエリカちゃん危ないわよ」
「そうですよ、本当に早く」
ハーリーはもう一矢並に焦っていた。
「何とかしないと。取り返しのつかないことに」
「じゃあ全員揃うぞ!」
ダイゴウジが叫ぶ。
「全員で火星に殴り込みだ!」
「総員スタンバイして下さい」
ユリカが言ってきた。
「すぐいボゾンジャンプで全軍火星に向かいます」
「よし、それじゃあ」
アキトの目にも光が宿る。
「すぐに。俺も」
「エリカ、待っていろ!」
一矢がここでまた叫んだ。
「必ず君を守ってみせる。だから!」
「その心です」
ルリは燃え上がる彼に対して言うのだった。
「一矢さん」
「ああ」
「貴方のその心こそが最も大切なのです」
「俺の。この心が」
一矢は今のルリの言葉に顔を向けた。そのうえで彼女に問うのであった。
「そんなに大事なのか」
「そうです。私は一矢さんに心を打たれました」
そう素直に述べる。
「どんな時でもエリカさんを諦めなかった一矢さんの心に。ですから私は」
「今ボゾンジャンプで」
「必ずです」
ルリ独特の淡々とした口調だったが。心ははっきりと伝わっていた。
「エリカさんを守って下さい。いいですね」
「ああ、わかっている!」
その心に偽りはなかった。
「何があっても。俺はエリカを!」
「エリカさんは。とても幸せな方です」
ルリは強く誓う一矢を見て言うのであった。
「一矢さんのような方に愛してもらえて。本当に」
「正直に言ってな」
京四郎がそのルリに言うのだった。
「こんなに馬鹿だとは思わなかった」
「馬鹿ですか」
「ああ。何もかも見ずに突っ走る」
これまでの一矢の行動は全てがそうであった。
「だが。どんな障害があってもな」
「はい。一矢さんは乗り越えてこられました」
その心と拳に誰もが心を打たれたのだ。決して諦めはしない彼の心にだ。
「それで私はわかったのです」
「わかったのか」
「はい。馬鹿でもいいんです」
そう言って微笑んでみせる。
「それがわかりました」
「一矢を認めているんだな」
「一矢さんは誰も馬鹿にはできません」
こうまで言うのであった。
「その強い一途な心は。誰にも」
「それが築き上げたんだ」
京四郎は今度はこう言った。
「血急とバームの平和をな」
「そうですね。一度は壊れた平和を」
その何処までも一途な愛で築きなおした彼のことを。二人は知っていたのだ。無論それは二人だけではなく他の皆もである。
「では皆さん」
ユリカがまた言う。
「今から火星に!」
「了解!」
「行くぜ!」
皆高らかに叫んで彼女の言葉に応える。
「バームの人達の為に!」
「エリカさん達の為に!」
口々にそう叫ぶ。
「こうでなくっちゃね」
サブロウタがその中で言った。
「火事場の中に飛び込んでこそってね」
こうして彼等はボゾンジャンプで火星に向かった。今戦いの神の星が戦乱に覆われようとしていた。

第三十七話完

2008・1・13
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧