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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第十七話 フラッシュ=ディ

              第十七話 フラッシュ=ディ
プラントへ急行するロンド=ベル。その先頭にはミネルバがいる。
「あとどれ位かしら」
タリアはメイリンに問うた。
「二時間です」
「そう」
メイリンの言葉を聞いて頷いた。
「間に合えばいいけれどね」
「艦長、モビルスーツはもう」
「ええ、そうね」
今度はアーサーの言葉に頷く。
「出撃準備を伝えておいて」
「わかりました」
「問題はシンね」
自分達のエースパイロットについて言及した。
「早まらなければいいのだけれど」
「今のところはレイが抑えています」
「そう。ならいいわ」
それを聞いて少しは安心したようであった。
「彼も結構丸くなったわね」
「そうですね」
メイリンはその言葉に笑顔で応える。
「最初は随分酷かったですけれど」
「おい、それはないだろ」
艦橋でそのシンの声がした。
「俺だって少しは成長するさ」
「まあ少しはね」
メイリンは少し意地悪い笑みを彼に見せて言葉を返した。
「大きくなったかしら」
「まるで子供みたいだな、おい」
「大きな子供ね」
相変わらずの態度である。
「そんなのじゃステラちゃんにも嫌われるわよ」
「うっ」
それを言われると弱かった。
「わかっていたらしっかりしなさい。いいわね」
「くっ、わかった」
「わかったらそろそろ格納庫に行った方がいいわよ」
今度は優しい言葉をかけてみせた。
「出撃準備しといたら?」
「ああ、そうだね」
アーサーも言う。
「今艦長にそれを申し上げたところだし」
「わかった」
シンもその言葉に頷いた。
「じゃあ今から行って来る」
「シン」
「はい」
今度はタリアの言葉に応えた。
「貴方のご家族のこともプラントも」
「絶対に守りますよ」
シンは強い声を返した。
「ステラとマユ達だけは。この俺が」
「増えてるし」
メイリンはまたシンをからかう。
「この子は。何だかんだで多情なんだから」
「おい、メイリン」
シンはすぐにメイリンにくってかかった。
「俺は別にステラとマユは」
「わかってるわよ。からかっただけよ」
「御前、こんな時に」
「ちょっとメイリン」
タリアが困った苦笑いでメイリンに言った。
「純情な子をからかったら駄目よ」
「はい、艦長」
「艦長まで」
「まあそこがシンのいいところなんだけれど」
タチアは同じ笑みを今度はシンに向けた。
「一途になるのも程々にね」
「そうなんですか」
「かといっても。不誠実な男はあれだけれどね」
「何か身につまされる言葉ですね」
アーサーがそれに突っ込みを入れる。
「何か」
「女には色々と過去があるものよ」
何気に結構業を背負っているタリアであった。
「それがわかると男として一皮剥けるわよ」
「そうなんですか」
「シンがそれをわかるのはまだまだでしょうけれどね」
タリアはまたシンを見る。
「そういうのをこれから見るのね」
「はあ」
「わかったら。さあ」
優しい声で促す。
「出撃準備にかかりなさい。いいわね」
「わかりました」
シンは敬礼の後でミネルバの格納庫に向かった。そうしてデスティニーに乗り込み出撃を待つのであった。既にそこには皆集まっていた。
「まさかまたプラントで戦うなんてね」
ルナマリアがインパルスの中で言う。
「思わなかったわ」
「そうだな。だが」
アスランがルナマリアに応える。
「バレンタインの時みたいなことは絶対にさせないぞ」
「そうだ」
彼にレイが頷く。
「プラントは全て守る。何があっても」
「その意気だ。しかしレイ」
「何だ?」
「御前も結構熱いところがあるんだな」
アスランはそれに気付いたのである。
「クールだとばかり思っていたら」
「そうだな」
自分でもそれを認めるレイであった。
「意外と俺も皆と同じらしいね」
すっと微笑んでそれを認めた。
「最初からクライマックスでいきたいな」
「何、それ」
ルナマリアは今の言葉がわからなかった。
「最近アキトやデュオもよく言うけれど」
「まあ気にするな」
アスランがそれをフォローする。
「俺も最近な。蝿だの言われるしな」
「アスランも?」
「俺も言われるぞ」
シンもであった。
「答えは聞いていないとかな」
「ああ、それはわかるわ」
何故かそれはわかるルナマリアであった。
「あんたに似合ってるしね」
「似合ってるか?」
「ええ、凄く」
笑って言うルナマリアだった。
「あたしも何かそういうのになりたいけれど」
「なれるか?」
それにはハイネが突っ込みを入れる。
「なれたらいいだろうが」
「あんたはどうなの?」
「俺は歌いたい」
それがハイネのコメントだった。
「主題歌をな」
「俺は終わりは歌っているぞ」
レイが言う。
「何かな」
「俺は踊っているしな」
「羨ましい話ね」
ルナマリアはシンにも嫉妬を覚えた。
「そんなこともできるなんて」
「俺に言われても困るんだが」
アスランはルナマリアの視線を感じて言葉を返した。
「俺は結構虐待されている感じだしな」
「王子にはなれないのですね」
シホが問うてきた。
「それじゃあ」
「それはリュウセイさんですよ」
フィリスが突っ込みを入れる。
「それかサブロウタさん、ラッセさん」
「いいですよね」
エルフィも話に入る。
「そういうこともできるって」
「そうだよなあ」
ジャックも羨ましいようだった。
「俺達ってそういうのないからなあ」
「別に羨むことでもないと思うがな」
ミゲルがそれを聞いて呟く。
「人はそれぞれだからな」
「そうだな。俺も別に困ることはないか」
アスランはそう思うことにした。
「じゃあ皆、そろそろ」
「了解」
「いよいよですね」
ディアッカとニコルが応える。
「出撃か。見ていろバルマーの犬共め」
イザークの目が血走る。
「一人残らず叩き落してやる」
「それはいいけれどさ、イザーク」
「どうした!?」
メイリンからの通信に応える。
「あまり無茶はしないようにね」
「俺が何時無茶をした」
「御前自覚がないのか!?」
「まさか」
ディアッカとニコルが今の言葉に突っ込みを入れる。
「いつもだろうが」
「そうですよね」
「俺は別にそんなつもりは」
やはり自覚のないイザークであった。
「その自覚がないのが危ないのよ」
メイリンはそこをまた言う。
「だから。気をつけてよね」
「わかった」
イザークは憮然とした顔で頷くしかなかった。
「では自重してやらせてもらう」
「デュエルのシヴァを効果的に使うといい」
アスランがアドバイスをしてきた。
「あれなら遠距離から全体に攻撃ができるからな」
「いつもしているが」
「御前はあれ近距離でも使ってるだろうが」
「それが問題なんですよ」
またディアッカとニコルが言う。
「だから遠距離からやれって」
「いつも敵に突っ込むんですから。シンみたいに」
「シンか」
「そうだな。何処かシンに似ているな」
アスランはシンがいるのもわかったうえで言うのだった。
「血気にはやるのもいいがあまり命を粗末にするのはよくないな」
「わかった」
そこまで言われてはイザークも頷くしかなかった。
「ではそうさせてもらう」
「ああ、頼む」
アスランは穏やかに述べた。
「シンはもう。言われていると思うが」
「わかっているさ」
シンはまだ落ち着いていた。
「だがプラントは守る」
「頼むぞ」
それには頷くアスランだった。
「御前のデスティニーは鍵の一つだからな」
「俺がか」
「そうだ。それと御前がなんだ」
アスランはそうシンに対して言う。
「御前とキラがいないと。おそらくは」
「また随分とシンを評価していますね」
ニコルが彼に対して言った。
「貴方もSEEDを持っておられるのに」
「それでもキラとシンの実力は違う」
アスランはこう見ているのであった。
「だからだ。頼むぞ」
「わかったぜ。どっちにしろやってやる」
シンは既に気合を入れていた。
「マユを守る為にな」
「あれだ」
アスランはここでニコルに囁くのだった。
「守るものがあるからだ。今回のあいつは特に頼りになる」
「そういうことですか」
「そうだ。だから今回はあいつを軸にしたい。いいな」
「わかりました」
ニコルは彼の言葉に頷いた。そうして彼等は出撃した。
出撃するとすぐにバルマー軍が目の前に現われた。無人機とグラドス軍のマシンがいる。
「やっぱりな」
デビットは彼等を見て呟いた。
「あいつ等がかよ」
「エイジ、それでどうするんだい?」
ロアンがエイジに尋ねてきた。
「かなりの数だけれど。守りきれると思うかい?」
「守らないといけないんだ」
エイジはロアンにそう答えた。
「さもないとプラントの人達が」
「そうね」
シモーヌは彼のその言葉に頷いた。
「一機でも通したらそれで」
「ですから。御願いします」
エターナルからラクスが彼等に言う。
「プラントを再び戦火に巻き込むのは」
「無論承知です」
グローバルがラクスに答えた。
「市民を戦争に巻き込むわけにはいきません」
「有り難うございます」
ラクスは彼に礼を述べた。
「それでは」
「全軍広く布陣してくれ」
グローバルは全軍にそう伝えた。
「敵の質は大したことがない。だからだ」
「了解っ」
フォッカーがそれに頷く。
「それじゃあ。機動力を活かして」
「そうですね」
マックスが彼の言葉に頷く。
「それでプラントを広くカバーしましょう」
「セレーナさん」
エルマはその中でセレーナに声をかけてきた。
「何かレーダーに微妙な反応が」
「わかってるわ」
セレーナは彼に対して答える。
「来てるわね、逆から」
「ええ」
「それじゃあ」
セレーナは不意にアレグリアスを移動させた。それを見て一緒に小隊を組んでいるアイビス達が彼女に問うた。
「何処へ行くんだ?」
「ちょっとお腹が痛くなっちゃって」
「お腹が!?」
「そうなの」
そうスレイにも答える。
「すぐに戻るからね。じゃあこれで」
「あっ、待て」
「アディオス」
スレイが止めるよりも早く姿を消した。あっという間だった。
「何なんだ、一体」
アイビスは彼女が消えた場所を見て呟いた。
「急に」
「ただ。お腹が痛いというわけではないな」
スレイもそれはわかっていた。
「逃げた。いや」
そうではないと。彼女は読んだ。
「裏切ったわけでもないな。では一体」
「彼女には彼女の考えがあるみたいね」
ツグミはそうスレイに告げた。
「だから今は何も言わないでおきましょう」
「そうだね」
アイビスはツグミのその言葉に同意して頷いた。
「今はね。とりあえずあたし達も」
「ええ」
ツグミは今度はアイビスの言葉に頷いた。
「前に随分来ているし」
「気をつけろ」
スレイは二人に言う。
「どうやら奴等。私達ではなく」
「ああ、わかっている」
アイビスは目を鋭くさせて彼女の言葉に応えた。
「プラントを狙ってる。やっぱりね」
「おいおい、まさかとは思ったけれどよ」
ジャーダもそれを見て声をあげる。
「一般市民を狙うっていうのかよ、マジで」
「何て奴等だ」
カチーナもすぐに怒りを感じた。
「だったら。容赦はしないよ」
「レーダーに反応!」
その中でエイタが報告する。
「敵の母艦からミサイルです」
「ミサイル!?」
皆それを聞いて驚きの声をあげる。
「まさか」
「いや、そのまさかだ」
ギリアムがその皆に告げた。
「あの大きさはやはり」
「核ミサイルだ」
ダイテツもそれを確信した。
「どうやら。本気でプラントを攻撃するつもりらしいな」
「あいつ等!」
シンはその話を聞きミサイルを見てすぐに怒りを発動させた。
「それでプラントを吹き飛ばすつもりか!」
「シン!」
そのシンにキラが声をかけてきた。
「何だ、シン」
「ミサイルは僕が引き受ける!」
彼はそうシンに言うのだった。
「だから君はバルマー軍を」
「やれっていうのか」
「うん」
シンに対して頷いてきた。
「それで。いいね」
「わかった」
シンは何とか冷静さを保ちながらキラに応えた。
「じゃあミサイルは頼む」
「任せておいて。僕のほかにも皆がいるから」
「皆が」
「そうだ」
アスランがシンに言ってきた。
「俺もいる。他にも」
「そうだな。じゃあ」
「シン」
ステラもシンに声をかけてきた。その左右にはスティングとアウルもいる。
「シンのお家は。ステラが守ってあげるから」
「安心して戦ってくれよ」
「そのかわり、後でジュースな」
「ああ」
シンはそのスティングとアウルにも答えた。
「わかった。じゃあ」
「広範囲攻撃可能なマシンはミサイルを狙え」
ブライトが指示を出す。
「そして他の者で敵のマシンを叩く。いいな」
「了解!」
こうして戦いははじまった。まずはシンが派手に一撃を放った。
「うおおおおおおおおおおっ!」
早速数機まとめてその両手の光で消し去った。それを合図にロンド=ベルは敵に対して積極的に攻撃に出たのであった。
まずはミサイルも敵のマシンも順調に倒していく。彼等にとって幸いだったのは敵の動きが思ったよりも鈍いことであった。
「おかしい」
エイジが最初にそれに気付いた。
「敵の動きが。何だか」
「どうかしたのかい?」
その彼にダバが声をかけてきた。
「何か気付いたみたいだけれど」
「敵の動きが大人しい」
エイジはそれをダバにも告げた。
「そうは思わないかい?」
「そういえばそうだな」
言われてみればそうだ。ダバもそれに気付いた。
「いつものバルマーよりも少し」
「確かにプラントに向かっているけれどそれと一緒に」
「俺達とも戦おうともしている」
「迎撃だけじゃなくてね」
そうダバに言うのだった。
「こっちにも向かって来ている。迷いがある?」
「迷いか」
「僕達に向かいたいみたいだけれど」
「だとしたらどうしてだ?」
語るエイジにギャブレーが尋ねてきた。
「プラントを狙ってきたのだ。辻褄が合わないのだが」
「そこまではわからないけれど」
エイジもそこまではわからない。
「けれど実際に」
「迷いがあるのは確かか」
「うん。僕にはそう見える」
そうギャブレーにも述べる。
「敵の指揮官に何かあるのかな」
「何かな」
「そう思うけれどね」
「だとすればだ」
ギャブレーはそこまで聞いて述べた。
「敵の指揮官はこうした作戦を好んではいないということも考えられるな」
「グラドス軍にはそうした指揮官はあまりいないのですけれどね」
エイジは複雑な顔をして述べた。
「あの連中は。自分達こそが優れていると信じて疑いませんから。他の星の人達の命なんて」
「だったらよ」
忍はそれを聞いて言った。
「俺達も同じことをあいつ等にしてやるさ」
「どういうことだい、忍」
沙羅が彼に問う。
「それって」
「決まってるだろ、叩き潰す」
やはり彼はこうであった。
「それだけだ」
「だったらいつもと一緒じゃない」
雅人も彼の言葉に突っ込みを入れる。
「そうじゃないの?」
「そうだな」
そして亮がそれに同意する。
「だが。それでも武器を持たない者を攻撃するバルマー、そしてグラドスは」
「許しちゃおけねえ。見てろ」
忍は話しながらダンクーガを攻撃態勢にする。
「断空砲だ!喰らいやがれっ!」
一気に砲撃をグラドス軍の小隊に向けて放つ。それで枢機まとめて吹き飛ばした。
「何も手出しできない奴にしか武器を向けられねえ卑怯者共が!俺がぶっ殺してやらあ!」
忍はそう吼えた。そうしてその剣と砲撃でグラドス軍を次々に倒すのであった。
戦局は完全にロンド=ベルのものとなっていた。バルマー軍はプラントどころか彼等の陣まで破壊されていき防戦一方になっていた。それは後方の母艦からも確認されていた。
「隊長!」
旗艦からグラドスのSPTの一機に通信が入る。
「このままでは我が軍は」
「わかっている」
そのSPTは他のものとは違っていた。そこに乗る金髪の端整な男の雰囲気もまた。
「仕方がない。ここは一般市民への攻撃を中断する」
「中断されるのですか」
「ですがそれは」
「では聞こう」
男は部下達に問い返した。
「このままで勝てるのか?」
「ここままでですか」
「そうだ。敵の迎撃はあまりにも激しい」
彼はそれを指摘する。指摘だが何処か理由付けめいていた。
「このままでは攻撃どころではないな」
「確かにそうですが」
「ですがハザル司令は」
「司令には私から申し上げておく」
しかし彼はそれでも言うのだった。
「それでよいな」
「わかりました」
「それでは」
部下達はそれで納得した。そうして彼等は攻撃目標をプラントからロンド=ベルに変えるのであった。それでもその攻撃を防ぎきれてはいなかったが。
「問題はだ」
男はまた言った。
「死鬼隊だが」
「彼等は間も無くだと思われます」
戦艦から報告があがった。
「予定通りならば」
「そうか」
男はそれを聞いても何故か喜んではいなかった。
「ではどちらにしろ作戦は成功するな」
「はい」
戦艦に乗っている部下がそれに応えた。
「要はあのコロニーを相当数破壊すればいいのですから」
「まずは一般市民を殺戮し我等の戦力を彼等に見せ付ける」
男は言う。
「ハザル司令やル=カインの考えだな」
「そして死鬼隊の」
「あの者達は違う」
だが彼はここで死鬼隊は別だと言うのであった。
「別ですか」
「そうだ。彼等はただ殺戮を楽しんでいるだけだ」
忌々しげにそう述べる。
「ただそれだけだ。違うか」
「いえ」
その部下もそれに同意しているようであった。
「私も。そう考えます」
「そうか」
「本来戦争というものはあくまで武器を持つ者同士が」
「それ以上は言うな」
彼は部下にそれ以上言わせなかった。
「いいな」
「申し訳ありません」
「これはハザル司令が決められたことだ」
そう述べるのだった。
「だからだ。司令の御言葉は絶対だ」
「はい」
部下はその言葉に頷いた。
「左様でした。これは失礼致しました」
「わかればいい。だが今は」
「我々はまずは目の前の敵をですか」
「あくまで目の前の敵をだ」
そこを強調する。
「作戦遂行はそれからでいい。わかったな」
「了解っ」
他の部下達もそれに応えるのであった。
「確かに地球人は好戦的で野蛮だ」
男は地球人に対しては偏見を持っているようであった。
「だがそれは彼等を教化すればいいだけのこと」
「そうですね」
グラドス軍の者達が彼の言葉に頷く。
「その劣った文化を滅してな。それだけでいいのだ」
「そうですね。歯向かう者にだけ罰を与えればいいのです」
「我々が本当の平和と正義と自由を教えてやればいいのだ」
彼はこう考えていた。自分達が間違っているなどとは全く考えていない。
「それがバルマー直系である誇り高き我々の聖なる義務だ」
「ではその聖なる義務を果たす為にも」
「勝利を収める。いいな」
男の指揮の下一斉にロンド=ベルに攻撃を浴びせる。しかしロンド=ベルも負けてはいないのだった。果敢に反撃を浴びせていた。
「速度は確かに速い」
「そうだな」
アスレイはアイビスのその言葉に頷いていた。アルテリオンとベガリオンはその機動力を活かして自由自在に攻撃を浴びせていた。
「しかし。動きならこちらも」
「負けてはいない!」
二人は動きを合わせて敵を次々と屠っていく。SPTの機動力を上回る動きを見せて彼等の上につきそこから頭部を撃ち抜くのを常としていた。
「アイビス」
ツグミは彼女達の戦闘を見てアイビスに声をかけた。
「どうしたんだい、ツグミ」
「どうやら彼等のコクピットは頭部にあるみたいね」
「そうなのか」
「ええ。頭部を撃ち抜かれたら動きを止めるわよね」
「ああ」
それはアイビスもわかってきていた。だからこそ頭部を狙って攻撃をしているのだ。
「だからね。それをやっていれば」
「いいんだね」
「そうよ。それで行きましょう」
「よしっ」
アイビスはそれを受けてさらに頭部に攻撃を続ける。何故か彼女はSPTに対しては容赦するつもりが一切起こらないのだった。
「武器を持たない市民を狙うような奴等だ」
スレイがここで呟く。
「容赦することはない」
「そうだね」
そういうことだった。アイビスも彼女と同じ考えだったのだ。
「そんな奴等。死んでも」
「天罰ということだ」
「そうなんですか」
だがキラはそれを聞いても納得してはいなかった。
「だから。殺しても」
「違うのかよ、坊主」
迷いを見せる彼にムウが声をかけていた。
「今までそうした奴等は随分いたよな」
「はい」
それは彼もわかっていた。ティターンズもそうだったしブルーコスモス急進派もそうだった。キラも彼等のことはよくわかっていた。
「だったら。どうすればいいかわかるよな」
「頭ではわかっています」
しかし感情は。こう言っているのだ。
「けれどそれでも」
「キラ、核ミサイルだ」
ロウが彼に言う。
「それを忘れるな」
「核ミサイルですか」
「奴等はそこまでする奴等だ」
見ればロウもイライジャもSPTに対しては積極的に頭部を狙っていた。
「容赦する必要はないんだ」
「俺も同じだ」
「けれど僕は」
それでも迷いのある彼だった。しかしその迷いはすぐに消し飛ぶことになるのだった。
激戦の続くプラントの裏側で。四機のマシンが蠢いていた。
「よおし、もうすぐだな」
「ああ」
他の三機に乗る異形の者達がやけに人相の悪い男の言葉に応える。
「じゃあ仕掛けるか」
「一気にな」
「ゴステロ」
彼等はリーダーの名を呼んだ。
「このまま滅多撃ちにしていいんだよな」
「ああ、その通りだ」
ゴステロは彼等の言葉に応えた。
「ゲティ、ボーン、マンジェロ」
仲間達の名を呼ぶ。
「コロニーは一撃でいい。わかったな」
「ああ、わかったぜ」
「じゃあよお」
彼等はまず一基のコロニーを狙う。そうしてミサイルを放った」
「ひゃはははははははははは!」
「死にやがれ!」
「後方にエネルギー反応!」
ミリアリアの声はほぼ悲鳴だった。
「プラントに向けてミサイルが!」
「何ですって!?」
マリューはその悲鳴に血相を変えた。
「馬鹿な、どうして後ろに」
「後方にSPT四機!」
サイも叫ぶ。
「そんな・・・・・・しかも核ミサイルまで」
「やばい、じゃあ!」
トールはそれを聞いて急いで操縦桿を動かそうとする。
「早く行かないと!」
「行くって言っても!」
カズイもまた叫ぶ。
「間に合わないよ、とても!」
「間に合わないで済むか!」
シンが真っ青な顔でアークエンジェルのモニターに怒鳴り込んで来た。
「俺が行く!間に合わせてみせる!」
「無理よ、シン君!」
だがマリューはそのシンに対して言うのだった。
「今からじゃとても」
「じゃあどうしろっていうんだよ!」
それでもシンは叫び続ける。
「このままだとプラントが。マユが!」
「行けるのなら私だって行くわ!」
マリューもシンと同じ考えだった。だからその気持ちもわかっていた。しかしそれでも。
「けれどもう」
「そんな。それじゃあ」
シンはその真っ青な顔で言う。
「マユは・・・・・・」
「これで終わりだぜえ!」
ミサイルを放ったゴステロは誇らしげに笑っていた。
「俺様の手柄だあ!どいつもこいつも死んじまえ!」
「あら、残念」
ところでここで声がした。
「生憎だけれどそうはいかないのよ」
「何だと!?」
「正義の味方参上」
不意にブーメランが現われた。そうしてミサイル達を両断していく。ミサイル達はプラントを直撃することなく宙で爆発するだけであった。
「間一髪だけれどね」
「何、手前は」
「さあ、悪い奴等は正義の味方の名前を覚えておくものよ」
赤いマシンが彼等の前に姿を現わすのだった。
「セレーナ=レシタールよ。それと相棒のエルマ」
「僕は相棒だったんですか」
エルマはセレーナの声に対して言う。
「初耳ですよ」
「あれ、そうじゃなかったの?」
セレーナは軽い調子で彼に言葉を返す。
「じゃあ何なのかしら」
「パートナーですよ」
それが彼の意見である。
「よく覚えておいて下さい」
「わかったわ。じゃあパートナーのエルマ」
「はい」
これでまとまった。
「そしてASアレグリアス。覚えておいてね」
「貴様、女か」
「そうよ、今流行の女ヒーロー」
ゴステロに対して答える。
「わかったかしら」
「ふざけるんじゃねえぞ」
ゴステロはセレーナに粗野な声で返した。
「何が女ヒーローだ」
「武器を持たない人を守るのはそうじゃなくて?」
セレーナはそのゴステロに余裕の笑みで返す。
「違うかしら」
「おいゴステロ」
ゲティがゴステロに声をかける。
「相手は一人だ。しかも女だ」
「そうだな。怖気づくことはねえ」
ボーンも言う。
「それにだ」
「俺達だけじゃないしな」
マンジェロも言った。
「呼べばいいさ」
「そうだな。出やがれ!」
ここでゴステロは叫んだ。すると。
SPTが大量に姿を現わした。思わぬ伏兵であった。
「あらあら」
セレーナはそれを見ておどけた声をあげる。
「また出て来たのね」
「当たり前だ。これが俺達の仕事だからな」
彼はそうセレーナに述べる。
「女、まずは手前からだ」
ゴステロ自身がセレーナに向かう。
「嬲り殺しにしてやる。覚悟しやがれ!」
「セレーナさん、何か」
エルマはゴステロの話を聞きながらセレーナに述べた。
「凄くわかりやすい人ですね」
「そうね」
セレーナも彼のその言葉に同意して頷く。
「古典的って言うのかしら、これって」
「そうですね。そう言うしかないですね」
「じゃあこっちもまた古典的にヒーローで」
「待ってくれ!」
しかしそこに。シンがやって来た。
「あら、少年」
「貴様等ァッ!」
シンはもう怒りを全開にさせていた。その目が真っ赤に燃えている。
「これ以上やらせるか!覚悟しろ!」
そう叫んでまずは手前の一機の頭を派手に吹き飛ばした。
「死ねっ!」
「何だこいつ!」
「モビルスーツか!?」
「そうだ!」
シンは死鬼隊に対して答えた。
「貴様等にやられるところだったプラントの人間だ!貴様等だけは!」
「おいおい、それがグラドスってやつかよ!」
ディアッカも来た。ライフルで容赦なく頭を撃ち抜く。
「誇り高いんならちょっとはましなことしやがれ!」
「馬鹿か、御前は」
ボーンがそのディアッカに対して言う。
「何っ!?」
「戦争なんだよ。そんなこと構うかよ」
「また随分と外道だな、あんたは」
「外道で結構なんだよ」
ゴステロに至っては居直ってすらいる。
「俺達グラドスは御前等とは違うんだよ。だから何をしてもいいんだよ」
「そうか!今の言葉忘れるな!」
イザークも来た。完全に頭に血が上っていた。
「これで貴様等には容赦するつもりはなくなった!俺が一人残らず殺してやる!」
「貴方達だけは!」
その横にはニコルがいる。彼もいつもの温厚さはない。
「許せません!絶対に!」
「キラ!」
アスランもいる。彼はキラに声をかけるのだった。
「わかってるよ。アスラン」
「なら」
「うん!」
彼もわかっていた。照準を一つ一つ合わせていた。
「こうした人達がいる限り」
モニターを見て言う。
「戦争はなくならない。なら!」
一気に一斉射撃を放った。
「僕は戦う!そしてこの人達だけは許せない!」
全て頭を撃ち抜いていた。そこに何があるのかわかったうえで。彼もまた一般市民をせせら笑いながら殺そうとするグラドス軍を許せなかったのだ。
「貴様等を宇宙から一人残らず消してやる!」
シンはキラの強力な援護射撃の中で敵のSPTの頭を叩き切っていた。
「そしてマユを!皆を守る!」
「うざいんだよ!」
だがゴステロはその彼の横をすり抜けていった。
「しまった!」
「こんなのは一発で潰れるんだよ。だからよお」
彼の後ろには死鬼隊もいる。そのままプラントに照準を合わせる。
「何もできねえ自分を呪うんだなあ!」
「セレーナさん!」
「やばい!」
セレーナも別の敵の相手をしていた。とても間に合わない。そんなタイミングだった。
「ひゃあっはははははははははははははは!!」
ゴステロの狂気の笑い声が響く。だがその彼を閃光が貫いた。
「ぐっ!?」
「間に合ってよかった」
そこにはレイズナーマークツーがいた。彼の攻撃だったのだ。
「これで何とかプラントは助かるかな」
「いや、まだだ」
その彼にデビットが言う。
「あの連中の相手があるからな」
「そうね」
デビットは死鬼隊を見ていた。シモーヌもそれに同意して頷く。
「彼等の相手は僕達がするよ」
今度はロアンが言う。
「エイジはあのリーダーを頼むよ」
「わかったよ。とは言っても」
今の一撃でゴステロは致命傷を受けていた。その動きが止まっていた。
「これで終わりみたいだね」
「そうね。爆発を起こしているし」
シモーヌがそれを見て述べる。
「エイジ、見事だったわよ」
「何とか防げてよかったよ」
だが彼はそれを喜ぶだけであった。
「プラントの人達をね」
「あらあら、本当のヒーローがここにいたわ」
セレーナはそんなエイジを茶化すのだった。
「危機一髪って時に現われてしかも謙虚だなんて」
「セレーナさん、悪乗りし過ぎですよ」
「そうかしら」
エルマの言葉にも相変わらずの調子であった。
「自覚はないけれど」
「自覚して下さい。けれど」
エルマはここで戦局を見るのだった。
「もうこれで終わりみたいですね。敵が退いていきます」
「そうね」
セレーナもその言葉には素直に頷くのであった。
「どうやら諦めたみたいね。何よりだわ」
「はい。けれどそれにしても」
だがエルマは戦争が終わっても浮かない様子であった。
「グラドス軍。随分酷いですね」
「どうかしら。よくある話よ」
しかしセレーナの顔も声も何を今更といった様子であった。
「こんなのはね。ティターンズだってそうだったじゃない」
「それはそうですけれど」
「言いたいことはわかってるわ。けれどいちいち嫌な気分を味わっていても何にもならないわよ」
達観した言葉であった。
「わかったわね」
「はい」
エルマも頷くしかなかった。その通りだったからだ。
「今は戦いが終わったことを喜びましょう」
「また随分とさばけてるな、あんた」
デビットがそんなセレーナに対して言う。
「気楽っていうのかね、それって」
「そうよ、私は何時でもこうよ」
右目をウィンクしての言葉であった。
「よく覚えておいてね」
「わかったよまあこれで戦いが終わったし」
デビットもまた戦場を見回していた。もう敵は何処にもいない。
「後はプラントの部隊に任せてもいいな」
「そうね。それじゃあ撤収ね」
「ああ」
「しかし。グラドス軍」
エイジはその中で顔を曇らせていた。
「何処まで非道なんだ」
「エイジ」
そう呟く彼にロアンが声をかけてきた。
「あれこれ考えても仕方がない。ここは帰ろう」
「うん」
エイジは彼の言葉に頷いた。そうして彼も戦場を後にするのだった。
戦いを終えゼダンに帰還するロンド=ベル。プラントを救ったとはいえ彼等は不機嫌なままであった。その理由はもう言うまでもなかった。
「またとんでもない奴等が出て来たわね」
アスカが怒っていた。
「何よ、あのグラドス軍って」
「とんでもない奴等やな」
トウジがそのアスカに言った。
「洒落ならんで、あれは」
「洒落にならないどころじゃないわよ」
「そうよ」
彼に対してマユラとアサギが述べる。
「一般市民をああして狙うなんて」
「バルマーにもあんな部隊があるのはエイジさんから聞いていたけれど」
ジュリも暗い顔で述べた。
「それでも。あんまりよ、あれは」
「あいつ等、許してはおけねえ」
ゴルディマーグもまた激怒していた。
「今度会ったら粉々にしてやるぜ」
「おい、あんただけじゃねえぜ」
そのゴルディマーグに宙が言う。
「俺だって。奴等には心底頭に来たぜ」
「その通りだ」
神宮寺も言う。
「どうやら奴等にだけは容赦はいらないな」
「そうだね。ミスター」
洸もそれは同じ考えである。しかし。
「どうしたんだい、洸さんよ」
「彼等はエイジさんの」
「いや、いい」
だがここでそのエイジが皆に言う。
「僕は彼等のそのやり方を嫌ってここまで来たから」
「そうだったわね」
マリが彼のその言葉に頷く。
「エイジさんはその為にわざわざ地球まで」
「スパイと疑われたりもされて」
それは麗も知っていた。疑われて当然と言えば当然である。そうした意味ではダバ達も同じである。その事情は複雑なのだ。
「大変でしたね」
「覚悟はしていたから」
そう猿丸にも言葉を返した。
「平気だったさ。けれど」
「けれど?」
「あのゴステロはそう簡単には死なない」
彼はゴステロのことを知っていたのだった。
「ゴステロ!?あいつか」
シンはすぐにそれが誰か気付いた。
「あの一番暴れ回っていた」
「あの男はグラドス軍の中でも特に酷い奴なんだ」
エイジは暗い顔で皆に告げる。
「どんな卑劣な手段でも平気で使う。注意しておいて」
「何かそれだけはわかったわ」
セレーナが彼に対してそう述べた。
「嫌な奴等ね」
「こうなったら容赦はしねえぜ」
ディアッカはまだ怒りを露わにさせていた。
「あいつ等だけは。一人残らずな」
「殺してやる!」
イザークが叫ぶ。
「あいつ等、許せん!」
「そういうことだな」
レイも冷静だが心の中は彼等と同じであった。
「グラドス人は放ってはおけない」
「宇宙には色々な奴がいるってことね」
ラミアはそう述べる。
「それだけはわかりましたってことですわ」
「何でこの娘こんなに敬語下手なの?」
セレーナはそれを聞いて言う。
「滅茶苦茶じゃない」
「そうか?」
ラミアはラミアで自覚がない。
「私は別に」
「自覚ないの。困ったわね」
それではどうしようもなかった。
「どうしたものかしら」
「とにかく話はあれだ」
ここでカイが言う。
「とんでもない奴等もいる。それは覚えておこう」
「そうね」
セレーナもそれに頷く。
「それだけははっきりと言えるわ」
「とりあえずはゼダンに帰還だ」
ダイテツは言う。
「それからだ。いいな」
「了解」
「とりあえずは補給と休息だな」
そういうことであった。彼等は一旦ゼダンに帰還した。そうして補給と休息に入るのだった。

第十七話完

2007・10・23  
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