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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第八話 混沌の大地

                 第八話 混沌の大地
「何ィ!?」
戦艦の艦橋で誰かが声をあげていた。
「それは本当のことか」
「はい」
報告する者が彼に答える。
「あいつまで来るというのか」
「どうやら帝は本気であられるようです」
また報告される。
「それでこのようになりました」
「帝国の方面軍が二つ」
銀の服の男が呟いた。
「こんなことはかつてなかったことだ」
「確かに」
声が男の言葉に頷く。
「帝国の長い歴史にあっても」
「全ての艦隊を使うのだな?」
銀の男はまた声に問うた。
「この外宇宙方面軍の七つの艦隊全てを」
「はい」
声はまた頷いた。
「それも既に申し上げた通りです」
「あの男の軍もか」
「おそらくは」
そちらにも答える。
「既に再編成を終えた七個艦隊で向かっているそうです」
「俺の軍とあいつの軍を入れて十四個艦隊」
艦隊の数について言及された。
「それだけの戦力を動員してまであの星を倒す理由がわからないが」
「宰相もそれに同意されています」
「父上もか」
宰相と聞いて男の顔が微妙に動いた。
「父上もそれを御存知なのか」
「はい。宰相様も指示されておられます」
「そうか。ならいい」
彼はそこまで聞いて納得したようであった。
「俺も行こう。全軍に伝えよ」
「ハッ」
影が答える。
「これより我が軍は全戦力をあげてあの星に向かうとな。キャリコ」
「はい」
影は名前を呼ばれ応えた。
「御前とスペクトラは先行しろ」
「先にですか」
「そうだ。ゴラー=ゴレムの精鋭を連れてだ」
そう指示を出した。
「いいな。あとグラドスの奴等に」
「ゲートを開かせるのですね」
「一気に叩き潰す」
男は言い切った。
「地球の下等な生物共は全て。いいな」
「了解しました。それでは」
「行け。報告は一つしか聞かないぞ」
「成功を」
彼等は動きはじめた。また戦いの役者達が動きはじめていたのであった。
ロンド=ベルはシアトルに向かっていた。その途中で彼等はあれこれと話をしていた。
「やはりおかしいな」
ニーが言う。
「こうも次から次にインスペクターの戦力が現われるなんて。しかもかなりの数だ」
「それだけの勢力なのかしら」
キーンが彼にそう問うた。
「インスペクターって」
「いや、それはない筈だよ」
レッシィがキーンに答える。
「インスペクターは元々軍事力は大したことはないんだ。バルマーに比べたらね」
「そうなんだ」
「バルマーが多過ぎるっていうのもあるけれどね。あそこまでじゃないんだ」
「じゃああれか」
トッドはそれを聞いて延べた。
「一度にこんなに二つも大軍は送り込めないっていうんだな」
「そうさ。ただ」
「ただ?」
皆レッシィの次の言葉に注目する。
「もう一つ勢力があるんだ」
「もう一つ」
「それは一体」
「ゲストさ」
「ゲスト!?」
「彼等か」
ゲストという名前を聞いてエイジの顔が変わった。
「インスペクターと同じ星系の勢力だったな」
「そうさ。奴等は同じ兵器を使ってるしね。ひょっとしたらね」
「そのゲストって組織は何なんだ?」
ショウはレッシィにそれを尋ねた。
「インスペクターと同じ星系の知的生命体で兵器も同じだというのは聞いたけれど」
「政治的な理由で対立しているのさ」
レッシィはそう説明した。
「そういえばわかるかい?」
「ああ、それなら」
ショウも他の面々もこう言われて納得して頷いた。
「そう言われればね」
「地球にもよくあるか」
「まあそういうことさ。けれどゲストはちょっとまずいね」
「まずい?」
「どうして」
「奴等の指揮官がまずいんだ」
レッシィは顔を曇らせてそう延べた。
「ティニクエット=ゼゼーナンっていうんだけれどね。これが酷い奴で」
「酷いって?」
マーベルが彼女に問う。
「どんな感じからしら」
「あれなのか?」
一矢もレッシィに問う。
「あの三輪みたいな奴なのか?」
「偏見はあそこまでいってるね」
レッシィは顔を顰めさせて一矢に答えた。その整った顔が歪んでいる。
「最低の奴さ。自分達以外は人間と見なしちゃいない」
「そうか、やはりな」
「何かそういう奴って何処にでもいるわね」
アムが顔を顰めさせて言った。
「本当に」
「そうだな。残念な話だ」
ダバも顔を曇らせていた。
「何処にでもいる。ポセイダルのような存在も」
「しかしよ。そんなのが地球に来るってよ」
キャオがここで言った。
「またまた話がややこしくなってくるぜ」
「そういえばあれよね」
アムがレッシィに言う。
「何だ?」
「バルマーは一般市民を狙う指揮官とそうでないのの差が激しいわよね」
「言われてみればそうだね」
レッシィもそれに頷く。
「あいつだったかな。ユーゼス」
「ああ、そいつさ」
リュウセイの顔が険しくなる。
「とんでもねえ奴だったぜ。最後はラオデキアに粛清されたけれどな」
「地球人の命を何とも思っていなかったんだ」
「そうかと思えば君のお兄さんは」
「うん」
タケルはダバの言葉に頷いた。
「奇麗な戦争をするね」
「兄さんは本当は優しい人なんだ」
それは彼が最もよくわかっていた。
「本当は戦争なんか」
「そうか」
「その兄さんが関係ない人達を巻き込む筈はない。俺にはわかるんだ」
「いいね、その絆」
レッシィはタケルのその言葉を聞いて優しく笑った。
「あたしにはそういうものがないから。羨ましいよ」
「何言ってるの、レッシィ」
横からクェスが言ってきた。
「クェス」
「あんたは友達が一杯いるじゃない」
「友達・・・・・・」
「あたしだってそうだし」
そう言って笑う。
「ヒギンスさんだってリリスだってチャムだって。大勢いるでしょ」
「それもそうか」
言われてはじめて気付く。
「それ考えるとあたしも友達多いね」
「そういうこと」
「何か俺も友達多いな」
一矢も言った。
「どういうわけか気の合う奴が多いよ、本当に」
「何か羨ましいな、それって」
それを聞いたアラドが言う。
「ゼオラはルネさんと気が合うみたいだけれど俺はな」
「そういえばいねえな」
リュウセイもそれに気付く。
「御前と似た奴って」
「リュウセイは結構いるよな」
「まあサブロウタさんとかラッセさんとかな」
彼も意外と似た者が多い。
「ライもアヤもレビも多いしな」
「ちぇっ、いいよな」
「私もいないわよ」
アクアも来た。
「ヒューゴには金竜さんがいるのに。寂しいわよ」
「それ言うとあれだぜ」
横からそのサブロウタが言う。
「モコナとプリメーラが似てるじゃないか、あんたに」
「人間じゃないじゃない」
「けれどいいじゃねえか。ちゃんといるんだしな」
「言われてみればそうね」
何か納得した。
「じゃあモコナ達と友達になりたいわ。いいかしら」
「ぷう、ぷう」
「私ならいいわよ」
「よし、声が似た者同士仲良くやりましょう」
「何はともあれだ」
ライが話を戻しにかかった。
「バルマーも本格的に来るだろう。だが今は」
「地上に対して何も有効な手が打てないわね」
アヤが溜息混じりに言う。
「早いうちに何とかしたいのに」
「敵のことがまだ殆どわかっていません」
ライはそうアヤに告げる。
「その状態で何かしても無駄な損害を出すだけです」
「ええ」
「少しでもわかりゃあいいんだけれどな」
デュオが言った。
「今は全然わかっていねえからな」
「機ではないということだな」
ウーヒェイが彼にこう述べた。
「腹立たしいことだがな」
「そうですね。今は待つしかありません」
カトルがウーヒェイの言葉に頷いた。
「はがゆいですけれど」
「そのうち状況が変わる」
トロワは冷静に述べた。
「それまでの我慢だ」
「だが。戦いはさらに激しくなる」
ヒイロは視線の先に何かを見ていた。
「それに対してどうするか。考えておかなければならない」
「敵と見たら手当たり次第にぶっ潰す!」
豹馬が提案してきた。
「これは駄目かな」
「駄目に決まってるでしょ」
ちずるが彼に言った。
「作戦でも何でもないじゃない、そんなの」
「そっか」
「そうよ。けれど今が何かもどかしいのは事実よね」
「そやな」
十三がちずるに頷く。
「今はな。ホンマに我慢や」
「そうでごわすな」
「ただ。情報収集はしておきましょう」
小介は真面目に述べてきた。
「情報収集か」
「はい、そうすれば状況が変わります」
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」
京四郎が呟く。
「その通りだな」
「はい、今は目の前の敵を倒していきその間に」
「情報を集めていくのね」
ナナが問うた。
「そういうことです。ではロペット」
「ハイ」
「僕も頑張りますので協力御願いします」
「ワカリマシタ」
ロペットは彼の言葉に頷いた。こうして小介をはじめとしてロンド=ベルの頭脳達が地底勢力やインスペクターの情報収集を進めていったのであった。
ロンド=ベルはシアトル西岸に着いた。そこは既に敵の勢力が展開して連邦軍に攻撃を仕掛けていた。
「いいか」
敵軍の中央にいる青いマシンに乗る男が指示を出していた。
「狙うのは敵のマシンだけだ。戦闘不能になった者や非戦闘員は狙うな」
「はっ」
「わかりました」
部下達がそれに応えて頷く。
「あくまで戦闘だけを考えろ。いいな」
軍人として理想的な指示を出していた。彼は自ら戦闘に入り敵を倒していた。
その彼のところに今報告が入った。
「ロフレイン隊長」
「どうした?」
部下の報告に応える。
「西岸に新たな敵です」
「連邦軍の援軍か?」
「いえ、どうやらロンド=ベルのようです」
「ロンド=ベル」
その名を聞いて身構える。
「彼等が来たのか、ここに」
「どうされますか?」
報告する兵士は彼に問う。
「戦われますか?それとも」
「まだ撤退には及ばん」
それが彼の判断であった。
「戦闘を続行する。いいな」
「了解」
「それでは」
兵の幾らかが西岸を向く。そこに彼等が来た。
「よし、間に合ったようだな」
「ああ」
ピーとがサンシローの言葉に頷く。
「博士、今です」
「わかっている」
大文字はそのピートの言葉に応える。そうして指示を出した。
「全機出撃だ。いいな」
「わかりました」
リーが最初にこれに応えた。
「行きましょう、ヤマガタケさん」
「おうよ」
続いてブンタとヤマガタケも。まずは彼等の出撃であった。
他の面々も次々と出撃する。キョウスケは目の前に展開する敵軍を見て言う。
「確かにな。同じか」
「そうね」
彼の言葉にリンが頷く。
「インスペクターと同じ。やっぱりね」
「じゃあ戦い方も同じってやつか?」
イルムが軽い調子で言ってきた。
「同じ兵器ならよ」
「いや、そう安易に考えるのはよくなさそうだ」
だがその彼にゼンガーが言った。
「それはどういうことですか?」
「まさか何かが」
「問題はそれを操る者だ」
ゼンガーはクスハとブリットにそう述べた。
「操る者」
「それじゃあ」
「そうだ、最も重要なのは人なのだ」
それがゼンガーの答えであった。
「いいな、それで」
「わかりました」
「そういうことですね」
二人は彼の言葉をあらためて受け入れる。
「操る者が強ければそれだけ強くなる。ならば」
「それだけ戦が面白くなる」
ククルはゼンガーの横で不敵に笑ってみせた。
「そうであろう、ゼンガー=ゾンバルトよ」
「そうかも知れぬ。だが今は」
「参る!」
レーツェルが鋭い声を出した。
「このトロンベの力今見せてやる」
「全軍まずは上陸だ」
グローバルは全軍に伝えた。
「いいな。そうして次は」
「わかってますって」
ジュドーが彼に答える。
「あの連中をやっつけれシアトル解放ってね」
「おおい、生きてっか?」
ビーチャがまだ戦っている連邦軍に対して通信を入れた。
「助けに来たぜ」
「ロンド=ベルか」
「そう、そのロンド=ベルだよ」
モンドが笑いながら応える。
「援軍に来ました」
「けれど随分」
イーノは奮戦する彼等を見て言う。
「ダメージを受けているような」
「そうね」
エルは彼のその言葉に頷いた。
「これはもう限界かも」
「ここは私達に任せて下さい」
それを受けてルーが連邦軍に言った。
「今は撤退してダメージの回復を」
「しかし我々はまだ」
「だからここは任せてって」
痺れを切らしたかのようにルーが話に入ってきた。
「私達だってその為に来たんだしな」
「そうそう、休んでてよ」
プルも参戦した。
「その間パフェでも食べて」
「パフェ!?」
「それかケーキでもさ」
プルツーが続く。
「食べてくつろいでなよ」
「ううむ」
「そうするか」
お菓子の名前を聞くとどうにも気持ちが和んだ。こう言われると弱いのだ。
「それでは頼む」
「後は任せた」
「あいよ」
ジュドーが彼等に応える。
「じゃあ任せられるぜ」
「了解。それではな」
「これで」
連邦軍の将兵達は撤退する。そうしてロンド=ベルだけが戦場に残るのであった。
「さて、とだ」
ブライトが敵軍を見据える。
「どの敵かはまだわからないが攻めるぞ」
「わかった」
アムロがそれに応える。
「じゃあまずは上陸するぞ。皆いいな」
「了解」
「じゃあいきますか」
皆それに続く。こうしてまずは上陸にかかるのだった。
空からの援護の下港に上陸を開始する。早速空では激しい戦闘がはじまった。
「いいか、まずは弾幕を張れ!」
フォッカーがバルキリーのパイロット達に指示を出す。
「ミサイルだ!ミサイルを派手に撃て!」
「わかりました!」
輝が皆を代表して答える。まずはバルキリー達が弾幕を張りその中に入った敵を次々に屠っていく。その間にモビルスーツ達が上陸して戦闘態勢に入る。ここでも見のフスキークラフトを多量に持っているのが効いて上陸はそのまま海に入ってからよりも遥かにスムーズに進んだのであった。
「全機上陸完了しました」
「わかった」
ブライトはサエグサの報告に頷く。
「そのまま前に進め。そうして敵を少しずつ圧迫していくぞ」
「了解!」
その指示も伝わる。こうして彼等は港からさらに進む。
ロンド=ベルのその動きを見て敵軍も手をこまねいているわけではなかった。敵の中枢にいる青いマシンがすっと前に出て来たのだ。
「えっ、隊長」
「俺が行こう」
彼は部下達にそう告げた。
「さもなければ軍が総崩れになる」
「しかしそれは」
部下達は彼を気遣うようにして声をかけた。
「隊長に危険が」
「そうです、ですから」
「馬鹿を言え」
だが彼はこう言って部下達の制止を振り切るのだった。そのうえでまた言う。
「ここは何処だ」
「はっ!?」
「ここは何処だと聞いている」
あらためて彼等に問うた。
「何処なのだ?」
「戦場です」
部下の一人が答えた。
「戦場であります」
「そうだ。ならばわかるな」
そこまで聞いてまた答えた。
「俺が言いたいことは」
「行かれるのですか。あくまで」
「心配するな。足止めだ」
また部下達に告げた。
「わかったな。では行って来る」
「それならば私も」
「私もです」
彼のその動きを見て部下達も次々に名乗りをあげてきた。
「隊長一人では行かせません」
「そうです、ですから」
「御前達、いいのか」
彼は自分と共に行こうとする部下達を見て驚きの声をあげた。
「敵はかなりの強さだというのに」
「ですから隊長」
「ここは戦場ではないですか」
今度は彼等がこう述べた。笑みを浮かべながら。
「違いますか?」
「そういうことですよ」
「・・・・・・いいのだな」
彼はあらためて部下達に問うた。
「それでも」
「はい」
「御供させて頂きます」
「わかった」
そこまで言われては彼も退けるわけにはいかなかった。彼等を受け入れる。
「では行くぞ。いいな」
「はいっ」
「行きましょう、隊長」
部下達も彼に続く。これを機に敵の動きが一変したのだった。それはロンド=ベルからもわかった。
「敵が変わった!?」
イーグルがNSXの艦橋で呟いた。
「動きが急によくなりましたね」
「そうだな」
彼の言葉にジェオが頷く。
「どういうことだ、これは」
「こっちにも来たよ」
ザズが報告する。
「かなり動きがいい。これは」
「こちらにも来ました」
童夢からサンユンが言ってきた。
「速いです、これは」
「アスカ様御注意を」
「わかっておる」
アスカはシャンアンに答えた。
「油断はできぬ。強敵じゃ」
「その通りです」
「姉様、左右からだ」
「あらあら」
鋭くなるタータに対してタトラは相変わらずであった。
「困ったわ。どうしましょう」
「ジンを出す!」
タータはすぐに決断を下した。
「それでいいな、姉様」
「まあ、タータったら元気ね」
ここでもやはりいつもの様子であった。
「もうジンを出すなんて」
「敵が来てるんや!そんなこと言ってる場合ちゃう!」
「わかったわ。それじゃあ」
「やるで!」
何だかんだで動きを合わせる二人だった。三隻の戦艦もそれぞれ攻撃を開始した。
戦闘は熾烈なものになった。ロンド=ベルも動きが止まった。
「くっ、思ったよりやる」
クワトロはサザビーからファンネルを放ちながら述べた。
「敵の指揮がいいな。指揮官は」
「あの青いマシンのようです」
ギュネイが彼に報告する。見れば敵軍の中央に青いマシンがある。
「あれが的確な指示を出していて」
「ふむ、あれか」
クワトロはその青いマシンを見て呟いた。
「あのマシンか」
「俺が仕掛けます」
ギュネイは自分から名乗りを挙げた。
「あいつさえ倒せば」
「いや、待て」
だがクワトロはそんな彼を制止した。
「何か?」
「ギュネイは今は他の敵を頼む」
「何かありますか?」
「右に来ているぞ」
クワトロはギュネイの右手に顔を向けて言った。
「うっ」
「そちらを頼む。クェスも行かせる」
「わかりました。それじゃあ」
「あの青いマシンは私が相手をするか」
クワトロは自分が向かおうとした。しかしそれはならなかった。
「待て」
「誰だ?」
今度はクワトロが呼び止められた。
「私だ」
「ハマーン」
「あの青いマシンには私が向かおう」
ハマーンのキュベレイが来た。優雅に前に進んで言う。
「いいな、それで」
「頼めるか?」
クワトロは静かに笑ってハマーンに問うた。
「手強いようだな」
「御前やジュドー坊や程ではあるまい」
ハマーンも静かに笑って言葉を返した。
「違うか?」
「ふふふ、買い被られたものだな」
「買ってやっていると言ってもらおう」
ハマーンは笑ったまま彼に言葉を返した。
「御前という男をな」
「そうか。では喜んで買ってもらおう」
「だが。そろそろ私も本来の相手が欲しいものだな」
さりげなくとんでもない言葉を口にする。
「どうやら御前ではないようだしな」
「さて、誰かな」
「それはおいおい見つける」
かなり難しいことであった。ハマーンは自覚していないようだが。
「私もまだ若いのだしな」
「三十五だったか?」
シンが横から戦闘を続けながら余計なことを言う。
「もうおばさんだったな」
「・・・・・・面白い言葉だ」
笑いが氷の微笑になっていた。皆その笑みを見て戦慄を覚える。
「実にな。それでは覚悟はできているな」
「またシンは」
アキトはシンの余計な言葉に溜息をつく。
「余計なことを言って」
「死ぬな、また」
京四郎も言う。
「やれやれだ」
「今はその命置いておこう」
しかしハマーンは今は引き下がった。
「今はな。だが」
「な、何だよその言葉」
とりあえずは死地を脱したシンはハマーンのその言葉に不気味なものを感じながら言う。
「何かあるっていうのかよ」
「あるよな、絶対」
「なあ」
スティングとアウルが話をする。
「後でな」
「ご愁傷様、シン」
「御前等まで」
「シン、これで死ぬの何回目?」
ステラもぶしつけにシンに問う。
「ステラもう死ぬって言葉怖くないけれど」
「俺は死なねえ!」
あまりにも言われるのでこう反論した。
「誰に何をされてもな!」
「それはわかったから少年」
そのシンを何度か殺しているナタルがシンに言ってきた。
「何だ!?」
「早く前の敵を何とかするんだ」
「おっと、それか」
言われてようやく気付く。
「そうだった。今戦闘中だったんだ」
「別に君がどうなろうと知ったことではないが」
ナタルも何気にシンに言う。
「敵は倒せ。いいな」
「了解、バジルール少佐」
「不合格だな」
そうシンに告げる。
「不合格って!?」
「単に少佐と呼ぶだけでは駄目ということだ」
「じゃあおばさんか?」
「・・・・・・やはり君は死ぬべき運命のようだな」
その声が氷の様に凍った。
「まあいい。それは後にしてだ」
「早くやっつけろっていうんだな?」
「そうだ。とにかく何とかし給え」
そうシンに告げる。
「わかったな」
「了解。じゃあやるか」
「行くぞシン」
アスランが横から言う。
「今は激戦なんだ。御前がいないと困る」
「済まない、アスラン」
「礼はいい。とにかく頼むぞ」
「ああわかった」
「しかし」
アスランはシンを急かした後でふうと溜息をついた。
「どうにもこうにも。シンといいカガリといい」
「苦労が多いみたいだね」
「そうだな。困ったことだ」
アスランはそうキラに返す。
「何で俺は。おかげで」
「その話はしない方がいいよ」
キラはアスランが髪の毛に話を持っていこうとしたところで制止した。
「自分が傷つくだけだから」
「うう・・・・・・」
「とにかくアスランも前に出て」
キラはフリーダムの照準を合わせる。
「援護は僕とレイでするから」
「ここは任せろ」
「済まないな、二人共」
アスランは彼等に礼を述べた。
「おかげで助かる」
「うおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーっ!」
その前ではもうシンが戦闘に入っていた。その抜群の戦闘センスで次々と敵軍を倒していく。
「こんな奴等、俺にかかれば!」
「よし、今だ!」
アスランもそれを見て動く。ジャスティスを突っ込ませる。
「カガリ、いいな!」
「ああ、もう出ている!」
カガリはマユラ達を引き連れ既に敵の中に突入していた。彼女もシンも既にSEEDを発動させて群がる敵達を次々と屠っていたのだった。
そこにやはり覚醒したアスランが入ると無敵だった。キラの援護もあり敵の陣に大きな穴を開けたのだった。
「よし」
ハマーンもそれを見ていた。その穴に素早く入る。
「今は礼を言おう、少年」
そうシンに告げる。
「これであの青いマシンの相手をできるというものだ」
「ハマーン様」
後ろにいるマシュマーが彼女に声をかけてきた。
「どうした、マシュマー」
「私も御供します」
そう言って後ろを引き受ける。他にはキャラとゴットンもいる。
「楽しいねえ、これはまた」
キャラは戦場の中で笑っていた。
「こんなに敵がいるとさ!熱くなるかいがあるよ!」
「ひ、ひぇええええええ!」
ゴットンは怯えながらも何とか戦っていた。
「マシュマー様、敵が滅茶苦茶強いですよ」
「慌てるな、ゴットン」
マシュマーはそのゴットンに対して告げた。
「この程度は予想していた」
「本当ですか?」
今一つ彼を信じていない言葉であった。
「そうならいいですけれど」
「何だその言葉は」
マシュマーも彼の言葉に気付き不機嫌な顔を見せる。
「言いたいことがあるなら早く言え」
「またれじゃないんですか?」
ゴットンは遠慮なく彼に問うてきた。
「ハマーン様にいところを見せようと。それで」
「馬鹿を申せっ」
図星をつかれて顔を真っ赤にさせる。
「私がどうして。そもそもだな」
「そもそも。何ですか?」
「騎士とは何だ」
またお得意の騎士道精神がはじまった。
「答えよ。騎士とは何だ」
「主の為に正々堂々と剣を抜く」
いい加減答えはわかっていた。
「そう言いたいんですよね」
「そうだ。だからこそだ」
彼は無理矢理力説する。
「このマシュマー=マロあえてハマーン様の為に」
「そのハマーン様ですけれど」
「むっ!?」
またここでふと気付く。
「もう敵の指揮官機のところに言っておられますけれど」
「な、何とぉーーーーーーーーっ!」
「相変わらず面白過ぎるな」
「ああ」
ナンガとラッセは一人騒ぐ彼を見て言う。
「どうしたことだ!ハマーン様」
「マシュマー、騒いでいる場合じゃないよ」
「キャラ=スーン」
「あたし達の周りも敵だらけだよ。そっちをまず何とかしないと」
「し、しかし」
それでもマシュマーはハマーンの方を見ていた。
「ハマーン様が。このままでは」
「ハマーン様ですよ」112
しかしここでゴットンが言う。
「きっと何とかしてくれますよ」
「しかしだ」
「その前にさ」
キャラはまたマシュマーに言った。
「本当に目の前を何とかしないとあたし達がだね」
「むむむっ」
「ささ、マシュマー様」
ゴットンはまたマシュマーに言う。
「ここは目の前の敵をですよ」
「致し方ないか」
「それが戦争ってやつですよ」
また告げる。
「それがハマーン様の為ですし」
「ハマーン様の」
面白い程単純に反応を見せる。
「それがハマーン様のか」
「だってそうでしょ?」
ゴットンはまたマシュマーに告げた。
「戦いに勝つことがハマーン様の最大の望みですから。ですから」
「そういうことか」
「そういうことです。さあわかりましたよね」
「わかった。では」
異常に簡単にその言葉に乗る。
「ハマーン様、今ここで!」
「さあ、行くよ」
またキャラが急かす。急かすと同時にゲーマルクのファンネルを放つ。
「これで一気に決めてやるよ」
「私もだ!」
マシュマーも派手な動きでザクスリー改のビームライフルを放つ。
「ハマーン様!このマシュマー=セロ今日もまた!」
「さあゴットン」
キャラはゴットンにも声をかける。
「あんたもさ」
「へっ、私もですか!?」
「当然だろ」
「さあ早く頑張れ」
マシュマーも話に入ってきた。
「今が正念場だからな」
「うう、何でこんなことにって・・・・・・うわーーーーーーーっ!」
いきなり目の前に敵が現われた。勿論襲い掛かって来る。
「ゲストを甘く見るな!」
「ゲストって何なんだよ!」
ゴットンは無意識のうちに敵の兵士に言葉を返す。
「俺は一体何でこんな目に!」
あれこれ言っている間に戦いに組み込まれる。彼も逃げられなかった。
マシュマー達が後ろで戦っている間にハマーンは青いマシンに接近していた。まずはファンネルを放つ。
「さあ、どうする?」
ファンネルを放ちながら敵に問う。
「このファンネル、かわせるか」
「来たか」
敵の指揮官は冷静にそのファンネルの動きを見ていた。多くの敵を屠ってきたハマーンのファンネルを前にしても全く動じてはいない。
「ならば」
「むっ」
何とその動きだけで全てかわす。自然な動きでだ。
「私のファンネルを。全てかわしたか」
「速い。油断はできないか」
男は攻撃をかわしながら述べる。
「やるな」
「面白い」
ハマーンもまた自分の攻撃をかわした彼に興味を持った。それで問う。
「聞きたいことがある」
「何だ、地球の戦士よ」
「よく私の攻撃をかわした。名は何という」
「名前か」
「そうだ、私の名はハマーン=カーン」
まずは自分から名乗った。
「それが私の名だ」
「そうか。俺はグロフィス=ロフレイン」
彼も名乗った。
「ロフと言われている」
「ロフレインというのか」
「そうだ。よく覚えておけ」
彼はそうハマーンに告げた。
「地球の誇り高き戦士よ」
「地球人を肯定しているのか」
「否定はしていない」
ロフはハマーンにそう答えた。
「少なくともな」
「わかった」
ハマーンは彼の言葉に頷いた。
「かなりやるのはわかった。だが」
「まだやるというのか?」
「そうだ。私とてこの戦い退くわけにはいかぬ」
鋭い顔と声でロフに答える。
「それは貴様も同じだと思うがな」
「如何にも」
ロフもハマーンの言葉に応える。
「俺とてゲストの指揮官の一人だ。だからこそ」
「ゲストだと」
「我が組織の名前だ」
そうハマーンに説明する。
「覚えていてもらいたい」
「そうか。では覚えておこう」
ハマーンはロフにそう返した。
「ゲストという名はな」
「インスペクターに会ったそうだな」
ロフはキュベレイにビームを放ちながら彼女に問うた。
「それがどうした?」
「そうか。メキボスは元気か」
「メキボスだと」
ハマーンは彼がメキボスの名前を出したことにすぐに反応した。
「何故貴様がその名を知っている」
「当然だ。同じ文明にあるのだからな」
「同じ文明。そうか」
ハマーンは何故彼等の兵器がインスペクターと同じものなのかを理解した。そういうことならば容易に説明がつくことであるからだ。
「だから貴様等はインスペクターと同じ」
「そういうことだ」
ロフの方でもそれを認めてきた。
「我々は政治組織が違うが同じ人種なのだ」
「やはりな」
「そういうところは諸君等と同じだな。結局は」
「結局はだと?」
ハマーンはロフがポツリと呟いた部分も見逃さなかった。
「何か含むところがあるな」
「それを言うつもりはない」
だが彼はそれを語ろうとはしなかった。
「生憎な。悪いが」
「ふっ、ならば良い」
ハマーンもそれを聞こうとはしない。あえて止めた。
「どちらにしろ貴様にはここで倒れてもらうからな」
「このゼイドラムを倒すというのか」
「その通りだ」
その顔に凄みが宿った。
「貴様は今ここで死ぬ。私の手でな」
「面白い。ならばやってみせろ」
ロフもそれを受ける。ハマーンを前にしても臆するところはない。
「かつてアクシズを率いた女傑ハマーン=カーンの腕、見せてもらおう」
「私のことも知っているのだな」
「地球のことも事前に情報収集させてもらった」
ロフはそのことについても言及する。
「そうか。何かと手回しがいい」
「君達の戦闘力の高さは特筆に価する」
それもまた認めた。
「それについて我々は多大な興味があるのでね」
「つまり我々の技術を欲しているということか」
ハマーンはハンドビームを放ちながらロフに問うた。
「そういうことだな」
「そうだ。そこはインスペクターと同じだ」
「同じだな。何処までも」
「だが彼等と違うところもある」
ロフはそのビームをかわしながら述べた。
「細かい違いでしかないが」
「それは一体何だ?」
再度ハンドビームを放つ。
「言え。倒れる前にな」
「倒れるつもりはない」
またビームをかわす。左右に舞い。
「しかし言おう。我々は貴族社会でね」
「ほう」
ハマーンは貴族主義と聞いて目を細めさせた。いささかシニカルな笑みであった。
「我々もかつてはそうだった」
「馬鹿にしているのだな」
「いや。同じだと思ってな」
ハマーンが笑ったのはそこであった。
「貴様等も私も。所詮は同じなのだと思ってな」
「それに対してインスペクターは実力社会と言える」
ロフはインスペクターについてはそう答えた。
「実力があれば若くして頂点に立てるのだ」
「それも同じだな。我々と」
「そうだな。所詮は同じだ」
ロフは表情を変えずにそれを認めた。特にそのことで悪感情は抱いていないようである。
「諸君も我々も。だが」
「だが?」
今度はロフが攻撃を加えてきた。
「そうは考えない者もいるということを覚えておいて欲しい」
大口径ビームキャノンを撃つ。しかしそれはハマーンにあえなくかわされた。
「簡単に言うと君達を同じ存在と見なしていない者もいるのだ」
「そこも同じだな」
ハマーンはそれを聞いても笑うのだった。
「我々とな」
「俺もそれには同意見だ。できることならば」
何かを言おうとする。だが。
「いや」
それを止めた。何か考えあるかのように。
「言うまい、それは」
「何かと複雑だな。貴様も」
「それはどうでもいいことだ」
再度攻撃に移りながら述べる。
「貴殿にとってはな。だが」
また攻撃を左にかわされて言う。
「やるな。俺の攻撃をここまでかわすとは」
「私でなければ死んでいる」
ハマーンは余裕の笑みを浮かべたがその動きはそうではなかった。紙一重だったのだ。
「貴様も。やるものだ」
「ふむ。どうやらそれが君達の実力のようだな」
ロフはまた攻撃をかわされたところでそう述べた。
「かなりのものだ。それはわかった」
「それでどうするのだ?」
「今日のところは退こう」
こう返す。
「また会おう。だが今度はより多くの戦力を用意しておく」
「楽しみにしておく」
ハマーンもその言葉に笑みで返す。戦いを楽しむ笑みだった。
「今度こそ貴様を散らせてやろう」
「そうか。ではやってみせるがいい」
「ではな」
ロフは部下を連れて撤退した。こうして戦いは終わった。ハマーンはそれを見届けながらグワダンに帰るのだった。着艦するとすぐに艦橋に呼ばれた。
「来たわねハマーン」
すぐにミネバが彼女に声をかけてきた。心配する顔だった。
「ミネバ様、どうされたのですか」
「ずっと見ていたわよ」
彼女はそうハマーンに告げた。
「先程の戦闘をですか」
「まずは見事だったわ」
最初は褒めた。
「けれど」
「けれど」
「あまり無理はしないで」
それがミネバの本音であった。
「無理をですか」
「そうよ。ハマーンに何かあれば」
顔を不安の色がさらに包み込む。
「私は。誰を頼りにすれば」
「御安心下さい」
ハマーンは不安げな顔になるミネバに対して穏やかに笑って言うのだった。
「私は常にミネバ様のお側にいますので」
「万が一ということもないのね」
「そうです。ですから」
そう言って彼女を安心させる。
「御心配なく。ただ」
「ただ?」
「殿下を不安にさせたことは謝罪致します」
こう述べて片膝を折ってきた。
「ミネバ様をその様な御気持ちにさせたこと。御赦し下さい」
「ハマーン、そんなことは」
ミネバはそんなハマーンを見て慌てた顔になった。
「顔を上げて。いいから」
「ミネバ様」
「私はハマーンが無事だったらそれでいいの」
また本音を語る。
「それだけだから。だから」
「左様ですか」
「だから。顔を上げて」
またハマーンに言う。するとハマーンはようやく顔を上げたのだった。
「そして。一緒に何か食べましょう」
「それでしたらミネバ様」
ハマーンの笑みが母親か姉のようなものになった。家庭的な優しい笑みであった。
「もう用意しております」
「何を?」
「今日はプリン=アラモードを作っておきました」
ミネバに言うのだった。
「プリンを」
「はい。冷蔵庫に冷やしています」
意外と家庭的なハマーンであった。
「私の分もありますので。それでは二人で」
「うん、二人で」
二人で食べると聞いて上機嫌になるミネバであった。
「食べましょう。けれど」
「他の者もですか」
「プリンは二人分だけかしら」
ミネバはそのことを考えて少し困った顔になる。
「まだあればいいけれど」
「それについては御安心下さい」
ハマーンはまた言うのだった。
「冷蔵庫にかなりありますのでそれで」
「そう。皆食べられるのね」
「そうです。それでは」
「ええ」
ミネバは笑顔で応える。こうして戦いが終わり皆でデザートとなったのであった。
デザートは好評だった。皆ハマーンのプリンを褒め称える。
「また腕あげられましたね」
ファがそう言って彼女を褒める。
「凄く甘くてそれでいて」
「あっさりしているわ」
フォウも言う。
「口触りが凄くよくて。これなら幾らでも」
「私とて女なのだ」
ハマーンは笑って彼女達に言葉を返す。
「料理もする。いやむしろ」
「ハマーン様はミネバ様の料理を常に作ってこられたのだ」
イリアが皆に説明してきた。
「だからこうしたことはお手の物なのだ」
「そうだったんだ」
「それで」
「けれどそれって凄いことよ」
セシリーはそれを聞いたうえでハマーンを褒める。
「いつも作っていたなんて。やっぱり」
「アクシズは寂しいものだったからな」
ハマーンの笑みに寂しげなものが含まれた。
「ミネバ様と二人で。多くの時間を過ごした」
「ハマーンも。色々あったんだな」
「そうしたところは御前と同じだ」
ハマーンは今度はカミーユに言葉を返した。
「寂しいことには。慣れている」
「そうか」
「だが。好きにはなれない」
笑みの中の寂しさを増した顔になっていた。
「これだけはな」
「御前には申し訳ないことをしたが」
クワトロはそう語るハマーンから微妙に顔を逸らしていた。
「だが私は。こうするしか」
「御前にも御前の都合がある」
ハマーンもそれがわかってきていたのだ。
「もう終わったことだ。気にすることはない」
「済まない」
「私とて。女になったのだ」
寂しさをそのままに語る。
「もう少女ではないのだからな」
「いえ、ハマーンさんはまだ少女だよ」
ここでヒメが言った。
「どういうことだ?」
「だってとても純粋だから」
「純粋。私が」
「うん。ハマーンさんの心はとても奇麗」
ハマーンに対して告げる。
「だから。少女だよ」
「ふふふ、何か照れ臭いな」
アクシズの時には誰にも見せたことのない笑顔だった。
「そう言われるとな」
「そもそもハマーンさんってまだ二十一じゃない」
カナンが言ってきた。
「まだまだこれからよ」
「というかはじまったばかりだな」
ヒギンズもそれに加わる。
「今やっとな」
「そういえば」
ナタルもふと思い出す。
「私よりも四つも年下で」
「そうなのよねえ。ちょっちどころじゃないショック」
ミサトは複雑な顔で苦笑いを浮かべていた。
「八つも年下なのにこんなにしっかりしていて純情だから」
「ハマーンさんはこれからいい人がきっとね」
「それはまだ先か」
ハマーンは自分で述べる。
「今はミネバ様をお守りせねばな」
「何かそこのところがお母さんみたいなのよね」
リツコが指摘してきた。
「それか大きいお姉さんか」
「要するにあれだろ?」
またしてもシンが言う。
「おばさん臭いってやつか。まあうちはナタルさんとかマリュー艦長とかミサトさんとか赤木博士とか完全なおばさんが・・・・・・って」
「少年」
既に取り囲まれていた。シンの目の前にはナタルがいる。
「やっぱり・・・・・・死ね」
袋叩きにされる。結局はこうなる運命だった。
シンが医療室に放り込まれている間にもデザートの時間は続く。マリューやユリカの作った怪しいものはオルガ、クロト、シャニが食べて事なきを得た。その後で彼等の方針が決定したのだった。
「これからだが」
ブライトが皆に対して言う。
「まずは地底勢力を叩きたい」
「彼等をか」
「そうだ。ゲストもインスペクターも宇宙から来ている」
そうクワトロに答える。
「その勢力はかなりのものだ。しかもまだ何もわかってはいない」
「そうだな」
その言葉にシナプスが頷く。
「彼等に対してはあまりにも不確定要素が多い。しかし地底の勢力は」
「そうではないということですね」
「その通りだ。彼等の勢力には限りがある」
シナプスはジャクリーンに言葉を返した。
「地底という閉鎖された空間にいるからだ。それならば」
「まずは地底勢力を」
「それでどうだ」
「その通りです」
ブライトはそうシナプスに返した。
「だからこそまずは百鬼帝国と邪魔大王国を」
「よし。ならば日本に戻るか」
彼等の主な活動拠点は日本である。それならば何処に向かうかも自明の理であった。
「すぐにな」
「はい。それでは全軍」
ブライトは一同に対して言う。
「日本に」
「よし」
アムロが一同を代表して頷いてみせてきた。
「行くぞ」
「すぐに日本に向かうぞ」
ブライトはこうも言う。
「わかったな」
「了解」
こうしてロンド=ベルは日本に戻ることになった。ところがその中で一人苦悩に落ちる者がいたのであった。
「おいトウマ」
甲児がトウマに声をかける。
「御前最近どうしたんだ?」
「どうしたって?」
「いや、何か調子悪いじゃねえか」
そう彼に言う。
「何があったんだよ、一体」
「別に何もないさ」
口ではこう返す。
「ただな」
「ただ?」
表情は違っていた。その表情が曇っているのに甲児も気付いた。
「何か雷鳳を使いこなせていないんだ」
「そうなのか」
それを言われて何となく納得する甲児だった。
「そうだろうな。最近の御前の戦い方を見てるとな」
「わかったのか、それが」
「ああ」
甲児はまた答える。
「皆そうなんだよ」
「皆?」
「マシンを上手く操ろうと思ってもな。できないんだ」
「甲児もだったのか?」
「俺だって最初は苦労したさ」
トウマに答える。
「マジンガーをどう使っていいか困ってな」
「そうだったのか」
「それでミナキさんは何て言ってるんだ?」
甲児は今度はミナキの名前を出してきた。
「ミナキ?」
「そうだよ。雷鳳はミナキさんの親父さんが開発したものだったよな」
「ああ」
甲児のその言葉にも答える。
「俺が。偶然乗って」
「そういうこともよくあることさ」
少なくともロンド=ベルにおいてはである。
「アムロさんやキラだってそうだったしな」
「そういえばそうか」
甲児にそれを言われてあらためて気付く。
「アムロさん達だって」
「ああ。だから気にすることはねえよ。それよりな」
「それより?」
「鍛えておけよ」
甲児は笑ってそう述べてきた。
「鍛えるのか」
「そうさ。何はともあれそれだよ」
笑ってまた言うのだった。
「よかったら付き合うぜ」
「ああ、じゃあ頼むぜ」
「鉄也さんも呼んでな」
トウマは何はともあれ訓練に入った。だがそれはあまりにも過酷なトレーニングだった。そしてそれを終えても彼にはまだ試練があるのだった。

第八話完

2007・9・8  
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