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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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別世界より⑧

<グランバニア>

(コンコン)
「どうぞ」
軍務大臣のピピンが決裁書類を持ち、国王の執務室へ入って来る。
「失礼します…!?」
入室早々、何やら驚き息を止めるピピン。

「どうしましたか?…私の顔に何か付いてますか?」
ピピンの反応が気になり、机の引き出しから鏡を取り出し確認する代理女王リュリュ。
「あ…い、いえ…そっくりだったので…つい…」
「そっくり?」
「はい…極めて希にですが、リュカ様が真面目に仕事をされている時の表情と、今のリュリュ様が似ていたもので…」
どうやら国政に携わり、国の行く先を真剣に考え悩んでいるリュリュの姿が、父親のリュカと似ていた事に驚いていた様だ。

「まぁ嬉しい。きっとお父さんも、こうやって真剣に考えていたのでしょう…とっても国王って難しいですもん!」
父に似ていると言われた事と、大好きな父の知らない一面を知った事への嬉しさで、上機嫌になり笑顔を振りまく若き女王リュリュ。
「私もそんなお父さんの姿を見てみたいわ…きっと格好いいのでしょうね?」

「それは難しいわよ!」
変態的ファザコン女王に冷ややかな口調で注意を促すのは、宰相のポピー…
ピピンの後に執務室へ訪れ、先程までの会話を聞いた為、事の難しさを教えようとしている。
「何で難しいの?」
「ピピンも言った様に、極めて希な事だからよ。リュカ国王陛下が真剣に真面目に執務机で思い悩む姿なんて、『メタルキング』との遭遇率より低い確率なのよ」
午前の謁見を終わらせると、殆ど城には居らず営業(リュカ談)に出てしまう為、真面目な仕事シーンなど拝める事は少ない。

「だから素敵なのよ!………う~ん、女王であるうちに近親者同士での結婚を、了承する法でも制定しちゃおうかしら!?」
「あはははははは…」
リュリュの台詞に大笑いするポピー…
だが冗談に聞こえなかったピピンと、半分…いや、8割本気なリュリュには笑いはない。
まぁポピーも、『そんな法を作っても、お父さんはアンタと結婚しないわよ!』的な笑いなのだが…



さて、冗談(?)を言い合い気分が和んだ所で、真面目な国政の話しに移るリュリュとポピー。
「んで、リュリュは何を悩んでいたのかしら?」
今に始まった事ではないのだが、この国では国王や女王に対して敬語を使わない人物が多々居る。
代理や臨時の傀儡だとしても、本来ならば問題になるのだが、ここグランバニアではこれがスタンダードなのだ。

「うん。あのねポピーちゃん…お父さんが推進している鉄道のお陰で、広大なグランバニアの城下町に、大規模な物流網が形成されたの。その影響で、広い範囲で発展を促す事が出来、人口も急増しているのだけど………」
「最終流通ラインが滞るのね!?」
「うん」

リュリュは(リュカ)と同じように、城下へ出ては人々の不満等を聞き、今後の発展に生かそうと努力している。
そしてその城下では、鉄道や港から離れた地域で、物資の運搬がスムーズでは無いとの問題が浮彫になり、それについて思い悩んでいたと言うのだ。
つまり、船や汽車は大量に物資を運搬する事が出来るが、そこからの運搬方法は馬車となり、運べる物資の量が限られてしまう…
その為、港や駅近くで物資が停滞し、食品であれば腐らせ、その他の物であっても損壊等の被害が出ているという…

「これじゃ今後の発展に支障が出ると思うの。……きっとお父さんは、その事も織り込み済みで考えてあったのだとは思うのだけど…今の私達には打開策が思い付かないわ…」
と言う真面目なリュリュの考えに、ポピーは…
《多分何も考えてないと思う…きっとお父さんの事だから、『そんな事知らねーよ!』とか言うわね…でもリュリュが折角やる気を出しているのだし、それを削ぐのは上手くないわね…話を合わせるか………》
と言う思いから、
「そうね…お父さんなら何か打開案があったはず…でも私達では、お父さんの考えに到達する事は不可能よ!…だから一緒にどうするかを考えましょう」
と笑顔でリュリュを安心させた。


それからの数日…
リュリュ・ポピーを中心に、各大臣や有識者を集め新たな流通方法を検討し合う。
しかし、どんなに優秀な頭脳を持ってしても、リュカのアイデアにより具現化された蒸気機関を、小回りの効く小型の乗り物に換え大量の物資輸送の補助にする方法は浮かばなかった。

皆が落胆し頭を垂れる…
父の代わりに国家発展を意気込んだリュリュなどは、思い悩み碌に睡眠を取れなくなる程だ…
そんな窶れるリュリュを見て、家臣や貴族…城下の民までもが心配をし、何とかしようと思い悩む。
そして出した結論が、彼女の父に最も近い思考を持っている者へ頼るという結論だった。
つまりポピーである。

「私だって色々考えているわよ!何でリュリュの笑顔を取り戻す為に、私だけが苦労しなきゃならないの!?私の心配は誰もしてないの!?」
大臣や貴族…そして国民の代表者がポピーの執務室へ押しかけ、リュリュの為に何とか打開策を提示する様に嘆願(脅迫?)しに現れた。
「勿論、ポピー様の事も心配しておりますが、リュリュ陛下よりも心が丈夫そうですし、何より正攻法以外の何らかの手段をお持ちの様にお見受けします。どうかリュリュ陛下の笑顔を取り戻す為、一層のご尽力をお願い致します!」
若い貴族の兵士に言いたいことを言われて、少しだけムッとしたのだが、確かに1つだけ打開策が有り、窶れるリュリュを放っておけないポピーは渋々ながら承諾し、押しかけてきた面々を帰らせる。

そして執務中のオジロンに、家族(愛人も含む)だけを集め会議室で待つ様に伝え、自身はルーラで何処かに飛んで行く…
因みにオジロンの執務室には丁度リュリュも居り、その際に『本当はお父さんの判断に任せるつもりだったけど、ワイルドカードを切るわよ!何より、この騒動の原因を作った張本人だし…』と言って出て行った。

果たして、どんなワイルドカード(切り札)なのだろうか?



 
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