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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第25話

 
前書き
土日は大分県に旅行に行ってました。
湯布院凄かったです。 

 
佐天は同級生達の手を引っ張って裏路地に入り男達から逃げている。
正直、逃げ道が見えたので慌てて入ったが、裏路地を走っている事に気づくのはそう時間はかからなかった。

(早く此処から出ないと!!)

自分は無能力者(レベル0)で、同級生達も低能力者(レベル1)程度の能力しか持っていない。
一刻も早くこの路地から脱出しないと佐天は走りながら考えていた。
入り組んでいる裏路地を右に曲がると数メートル先に出入り口が見えた。
佐天は出られると思った時、その出口を塞ぐかのように何人もの男達が立ちはだかる。

「おっと!
 此処から先は通行止めだ。」

「ッ!?
 引き返して!!」

すぐに振り返り、別の出口を探す。
しかし、どれだけ出口を見つけてもその直前で男達が立ちはだかった。
佐天達はさっきから全力で走っているので、そろそろ体力が限界に近づきつつあった。

(このままじゃあ・・・・誰か助けを・・)

ポケットから携帯を取り出し電話帳を開く。
普通なら風紀委員(ジャッジメント)である初春や白井に電話するべきなのだろう。
だが、電話帳を開けた瞬間にある名前が佐天の目に映る。
麻生恭介。
電話帳は開けると、基本的に最初の画面はア行から始まる。
開けた瞬間に麻生の名前が出てきたのだ。
佐天はあの時に麻生が言った言葉を思い出す。

「俺だって困ったらすぐに駆け付けるスーパーマンではないからな。」

電話をかけても麻生は何か用事で来られないかもしれない。
初春や白井なら電話をすればすぐに駆け付けてくれるだろう。
それでも佐天は初春でも白井でもなく麻生に電話を掛けた。







「そうか、助かった。」

「それくらいお安いご用じゃん。」

第七学区のビルの壁に背中を預けながら、麻生は愛穂に電話をかけていた。
麻生は風紀委員(ジャッジメント)の支部を出て、すぐに愛穂に電話を掛けある事を調べて貰っていた。
今はその調べた事の報告を聞いている所だ。

「それにしてもここ数日の能力者による犯罪事件の数を教えてほしい、と言われた時は驚いたじゃん。
 恭介が風紀委員(ジャッジメント)の仕事をしているみたいじゃん。
 それかもしかしてなりたいの?」

「馬鹿を言うな。
 俺が風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)といった機関に縛られる役割が、嫌いだってことお前が一番知っている筈だろう。」

「それは警備員(アンチスキル)をやっているウチに対しての嫌味?」

「お前がそう感じたのなら、そうなんじゃあないのか?」

会話を見る限り麻生が愛穂をおちょくっているように聞こえる。
なぜか愛穂は不機嫌な声をあげるどころか、少しだけ小さな笑い声が聞こえた。

「なんで笑っている?」

「恭介が変わったと思ったんじゃん。」

「今の会話で、どうやったらそう言う捉え方が出来るんだ?」

逆に麻生が不満そうな声で話すと愛穂は楽しそうな声で話す。

「ウチはあんたが小学校の頃から面倒を見ているから大体は分かるじゃん。
 この夏休みで何かあったの?」

愛穂に言われて麻生はこの夏休み、正確には7月辺りから始まった出来事を思い出す。
電撃少女に追い掛け回され、隣の隣人は変なシスターを拾ったり、魔術師や錬金術師と戦ったり、あげくには学園都市第一位とも戦った。
それを思い返すと麻生は大きなため息が自然と口から洩れた。

「ああ、とても面倒な出来事がたくさんあったよ。」

「でもその出来事が恭介を変えたんじゃん。
 麻生がどれほど変わったかというと月とスッポンってなくらいの違いじゃん。
 まぁ、ウチはどちらかといえばそっちの恭介の方が好きだよ。」

愛穂は自分が何を言っているのか気づいたのか慌てた口調でさっきの言葉を撤回する。

「さ、さっきの言葉に深い意味はないじゃん!
 ただウチは前の恭介より、今の恭介の方が親しみやすいと言うかなんて言うか・・・・」

「何をそんなに慌てている?
 変な事でも言ったのか?」

へ?、と愛穂は呟くと今度は愛穂の方が大きなため息を吐く。
何をそんなに落ち込んでいるんだ?、と考えるが麻生は全く分からないようだ。

「とりあえず助かった。
 今度そっちの家に行ってご飯でも作るよ。
 どうせ、未だに炊飯器でご飯を作っているんだろう?」

うっ、と愛穂は言葉に詰まり言い返せないようだ。

「今度桔梗も誘って飯でも作ってやるよ、じゃあな。」

そう言って麻生はボタンを押して通話を切る。
麻生は愛穂の教えてくれた情報で無能力者狩りを行う本当の理由が分かった。
その情報と推理を今から白井達のいる支部に戻り伝える。
これだけ情報を教えれば無能力者狩りの行っている組織の頭を捕まえるのにそう時間はかからない。
後の事は白井達にでも押し付けるかと考えていた時、麻生の携帯がブルブルと震える。
画面を見るとそこには佐天と名前が出ていた。

「助けてください!!」

開口一番に助けを求められた。

「何があった?」

佐天の息が切れている事に気づき何かの事件に巻き込まれているのかと考える。

「友達と帰っていたら無能力者狩りに会ってしまって、今は裏路地を走りながら逃げているんです!!」

「正確な位置は分かるか?」

「さっきから走り回っているから今どこにいるか・・・・」

「なら、GPSの使用コードを俺の携帯に送る事は出来るか?」

「やってみます!!」

一度通話を切ると少ししてからGPSの使用コードが麻生の携帯に送られる。
そのすぐ後に、再び佐天から電話がかかってくる。

「とりあえずコードは届いた。
 今からそっちに向かうから何とかして逃げろ。」

「は、はい、頑張って・・きゃあ!?」

佐天の叫び声が聞こえると次に聞こえてくる声は佐天の声を違う声だった。

「あれ~?
 誰と電話しているのかな?
 俺達と遊んでいるのにつれないな~」

「あ・・あ・・」

「とりあえず一度こっちに来てもらおうか。」

その声と同時に通話が切れる。
電話を取られたのかそれとも佐天が無意識に切ったのは、どちらかは分からないが佐天達が危険である事だけは分かった。
麻生は送られたGPSの使用コードを使いさっきまで佐天がいた場所に向かう。
そこに向かう途中の曲がり角で御坂美琴にぶつかりそうになる。
美琴は麻生が珍しく走っている事に少し驚いている。

「珍しいわね。
 あんたが急いでいるなんて。」

「こっちとしては急ぎたくないんだが、助けてくれと頼まれたからには全力で助けるって決めているんでな。
 その当事者が何やら危険な雰囲気だったから走っているんだよ。」

ふ~ん、と美琴は麻生の顔をじっと見つめている。

「ちなみに聞くけどそれは誰が困っているの?」

麻生は話すかどうか迷ったが此処で言わないと、余計に時間がかかってしまうと思った麻生は簡単に美琴に説明する。
説明を聞いた美琴は言った。

「なら私も一緒についていくわ。
 あんた一人でも問題ないと思うけど、味方が一人でも多い方がすぐに終わるでしょ。
 それに能力をそんなくだらない事に使う連中を黙って見過ごすわけにはいかないわ。」

どうやら美琴の耳にも無能力者狩りについての事件は聞いていたらしい。
止める理由も特に見つからなかったので、麻生は何も言わずに佐天達がいたであろう場所に向かう。






佐天は麻生に二回目の電話をかけた時、気づいたら前後には既に無能力者狩りを行っている男達が立っていた。
佐天の携帯電話を取り上げられ男達は佐天達をどこかに連れて行くつもりなのかついて来い、と言って歩き出す。
佐天は隙を見て逃げ出そうと考えるが、その佐天の心を読んだかのように男の一人が言った。

「逃げ出そうと考えているだろう?
 俺の能力は読心能力(サイコメトリー)の能力を持っているからお前が考えていることはバレバレだ。
 次に妙な事を考えたら痛い目見るぞ。」

釘を刺されてしまい無駄な事すら考えられなくなる。
黙ってついて行くと既に使わなくなったのか、古くてボロボロな工場のような建物が見えてきた。
男達はその中に入り佐天達は入るのを躊躇ったが後ろの男が入れ、と言われ周りを警戒しながら建物に入っていく。
中に入ると目の前には三〇人くらいの男女が集まっていた。
その真ん中に立っているリーダーと思われる男の腕にはある物がついていた。
それは風紀委員(ジャッジメント)がつけている腕章だった。
佐天は初春や白井の風紀委員(ジャッジメント)の腕章をよく見るので見間違えることはなかった。
佐天がその男の腕章を見て驚いているの姿を見て、周りの男女が笑みを浮かべながら話し合う。

「ほら、時雨さんが腕章を隠さないからあの女の子が驚いているじゃないですか。」

風紀委員(ジャッジメント)の腕章をしている男の名前は時雨と呼ばれている。

「でも此処に連れてきた奴は皆、時雨さんの腕章を見て一回は驚きますよね。」

「その驚く顔を見るのが楽しみでもあるんだけどな。」

佐天だけでなく同級生もその腕章を見て驚いている。

「どうして風紀委員(ジャッジメント)の人が無能力者狩り何てしているんですか!?」

「此処にきた奴は皆同じ事を聞くから説明するのが飽きてしまったけど、まぁいいか。」

時雨という男は頭をかきながらめんどくさそうに説明をする。

「まずお前達は、この無能力者狩りがゲームのように行われていると思っているのだろうがそれは間違いだ。
 これはこの学園都市の治安の為に必要なことなんだよ。」

それを聞いて唖然とする佐天だが男はその表情を見てニヤリ、とにやけながら説明を続ける。

風紀委員(ジャッジメント)の仕事をしている俺は能力者による犯罪の理由などをまとめてみた。
 結果の大半は金が欲しかったなどのそういった理由だった。
 そして能力者の犯罪以外にも無能力者の犯罪も数多く発生している。
 俺は考えた。
 この二つをどうやって解決するかをそして思いついたのがこの無能力者狩りだ。
 能力者が無能力者を狩る度にそれを点数化する。
 そしてその一位なった奴が俺から賞金を出すという仕組みだ。
 これなら金にも困らないし能力者の憂さ晴らしにもなる。
 無能力者も狩れるから無能力者による犯罪も減るといったまさに一石二鳥な訳だ。
 此処に連れてきたのは路地で能力を使うと、他の人にばれてしまい騒ぎを大きくしない為だ。
 まぁ、昨日は何人かの馬鹿が先走って路地で能力を使うというイレギュラーがあったが、何とかばれずにすんだからよかったのだがな。」

自分の考えた計画が完璧だと思っているのか楽しそうに話す。
そして自分の腕につけている風紀委員(ジャッジメント)の腕章をトントンと指をさす。

「この計画は結構穴だらけで能力者と無能力者の判別の仕方を分からない。
 いつ他の風紀委員(ジャッジメント)が路地を見回り来るか分からない。
 だからこそこいつが役に立った。
 俺は風紀委員(ジャッジメント)である事を利用して、他の風紀委員(ジャッジメント)の巡回ルートを予め知ることができた。
 それに合わせて穴になっている所で無能力者を狩ることが出来た。
 風紀委員(ジャッジメント)は「書庫(バンク)」にアクセスする事も出来たから、無能力者のリストも簡単に作ることができ、さらにこの計画に必要な能力者を見つける事も出来た。
 まさか同じ風紀委員(ジャッジメント)が無能力者狩りの首謀者だって、誰も思わないからスムーズに事が運んでいる。」

時雨が楽しそうに話を聞いていた佐天は奥歯を噛み締めて叫んだ。

「ふざけないで!!
 能力を風紀委員(ジャッジメント)をそんなくだらない事に利用して、それに何の罪もない無能力者を傷つけるなんて許されると思っているの!!」

佐天の言葉を聞くとさっきまで楽しそうに話していた時雨の表情が、一気に鬱陶しそうな表情になり佐天をにらみつける。

「無能力者が俺に説教か?
 学園都市の中ではお前達みたいな無能力者や低能力者はゴミみたいな存在だろう?
 そんなゴミが学園都市の治安の為に必要とされているんだから、もっと喜ぶと思っていたんだけどな。」

時雨は指で合図すると何人かの男女がじりじりと佐天達に近づいていく。
出入り口も塞がれているので逃げることは出来ない。

「お前達をさんざん痛めつけても此処には精神系能力者もいるから、俺達の顔もさっき聞いた計画も全部忘れている。
 恨むなら力のない自分達を恨むんだな。」

時雨がそう言った瞬間、この工場の出入り口でもある鉄の扉がいきなり爆発した。
その近くに立っていた見張りはその爆風で数メートルくらい吹き飛んでしまう。

「扉を破壊するとはいえ、やりすぎだと俺は思うのだが。」

「あんたが扉の近くに佐天さん達はいない、って言うから派手にぶっ壊したのよ。
 こういうのは派手にやったほうが何かといいのよ。」

扉を破壊した爆風で埃などが舞い上がり誰だか確認できない。
だが、佐天はこの二人の声に聞き覚えがあった。
バチバチと電気が火花を散らす音が聞こえ、埃のカーテンが晴れると麻生と美琴が立っていた。

(来てくれた・・・)

麻生と美琴を見て心から安堵する、佐天。
同級生は佐天の安堵する顔を意味が分かっていないようだ。

「ルイコ、あれって・・・・」

「さっき話してた私が憧れている人だよ。」

安堵している佐天とは打って変わって時雨達は困惑している。
それもその筈、美琴の制服とあの電気を見て誰だかすぐに分かったからだ。

「常盤台の「超電磁砲」(レールガン)!!
 どうして此処に!?」

「あら?
 あんた達みたいな奴でも私の名前を知っているみたいね。
 私は佐天さんの友達だから助けに来た。
 、後こんなくだらない事をしている首謀者の顔を見て、一回はぶん殴るつもりで来たの。」

バチバチと電気を出しながら言う。
いくら、三〇人の能力者とはいえほとんどがレベル3程度の能力者だ。
それだけではあの超能力者(レベル5)には勝てない。
時雨は自分の腕章を見て必死に考え、ある名案が浮かぶ。

「ちょうど良い所に着てくれました!!
 私もようやく無能力者狩りのアジトに辿り着いたのですが、能力者が多くて困っていたんですよ。」

時雨の言葉を聞いて周りの能力者全員が驚いた顔をして時雨を睨み付ける。
時雨は風紀委員(ジャッジメント)の立場を利用して、此処にいる能力者達を切り捨てたのだ。
だが、名案かと思われていた案が麻生の言葉で一気に崩れ去る。

「残念だが、お前が首謀者だという事は既に判明している。
 さっき知り合いの風紀委員(ジャッジメント)に連絡して調べた結果、お前が「書庫(バンク)」に何度もアクセスしている形跡が発見された。
 後、さっきまでべらべらと自分の計画を話している声はこいつに録音している。」

麻生はポケットからボイスレコーダーを取り出し再生ボタンを押すと、さっきまで楽しそうに佐天達に話していた計画の全てが録音されていた。
それを聞いた時雨の表情が崩れる。

「もうすぐ風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)がやってくる。
 大人しくしているのなら何も危害は」

麻生の言葉は最後まで続かなかった。
なぜなら、近くにいたショートヘヤーの金髪の女が能力で自分の腕に炎を纏わせ、麻生に襲い掛かる。
その腕を右腕で掴み、背負い投げで女性を地面に叩きつける。
能力を使っているので、麻生の腕には火傷などは一切ない。

「どうやら大人しくするつもりはないみたいだな。」

それが乱戦の合図だった。
捕まる訳にはいかないと、この場にいる能力者は一斉に能力を使い逃げようとする。
それをする前に美琴の電撃の槍が放たれる。

「一応手加減はしてあげるけど結構痛いわよ。」

対する麻生は近くにある鉄パイプを拾い、能力者達を一撃で沈めていく。
能力者のほとんどが美琴に注意が向いているので、簡単に急所を攻める事が出来る。
麻生の視界に時雨が裏から逃げていくのが見えた。

「美琴、此処は任せるぞ。」

返事を聞かずに麻生は時雨を追いかける。
裏口から逃げようとするが麻生だけが追いかけていると分かると、急に足を止めて振り返る。

「どうした、逃げるのを諦めたのか?」

「君が持っているボイスレコーダーを破壊することが出来れば何とかする事が出来る。
 あの「超電磁砲」(レールガン)が厄介だが何とか出来るだろう。
 問題は君が持っているボイスレコーダーだけだ。
 どうだ、金はいくらでも払うからそのボイスレコーダーを譲る気はないか?」

「ないな。」

時雨を言葉を聞いて即答で答える。
時雨はそうか、と呟くと手のひらを麻生に向けると麻生が持っている鉄パイプが後ろに弾かれる。

「なら、力ずくで奪ってやるよ!!」

その言葉と同時に麻生の腹に衝撃が走る。
まるで腹を力いっぱいに殴られたような感触に似ているのだが、麻生と時雨との距離は五メートルは離れている。
時雨は一歩も動いていないのに麻生に攻撃をしているということは、何らかの能力を使っている事になる。
顔を右側から殴られるような衝撃が走り、軽くふらついてしまう。

「なるほど、それがお前の能力か。」

「そうさ、俺の能力名は「見えざる手(インビジブルハンド)」。
 相手の位置情報を計算して特定のポイントに衝撃を加えることが出来る。
 こんな風にな!!」

次の瞬間、麻生の身体全身に衝撃が走る。
まるで五、六人から集団リンチを受けているかのようだ。
ふらふらとおぼつかない足取りになるが麻生は倒れない。

「いい加減に倒れろよ!!」

麻生の顎に向かって能力を放つと、顎を打ち上げるような衝撃が走る。
これで確実に倒せると思った時雨だが麻生はまだ倒れない。

「もう終わりか?」

麻生は一歩ずつ前に進む。
時雨は何度も麻生の身体に衝撃を加えるが怯むことなく、麻生は一歩ずつ時雨に向かって歩いてくる。
その光景が時雨を焦らせる。

「なんでだ・・・なんで倒れないんだよ!!」

「理由は簡単だ。」

麻生は地面を蹴って一気に距離を詰め左手を握り締める。

「お前より俺のほうが強いからだ。」

麻生の左手が時雨の顔面に突き刺さった。
時雨が気絶したのと同時に外が騒がしくなる。
麻生は風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)が来たのだろうと考えたときだった。

「へ・へへ・・俺を倒したところで無能力者狩りはおわらねぇ。
 俺達の他に無能力者狩りは行われているのだからな。
 どれだけ必死になっても無駄だ。」

時雨は独り言のように呟いていて麻生は時雨の腹を踏みつけ今度こそ気絶させる。

「そいつらが俺の邪魔をするのなら同じように叩き潰すだけだ。」

他の能力者は美琴がほとんど片付けていた。
風紀委員(ジャッジメント)が時雨を含む能力者を移送している。
白井と初春が麻生と美琴を見つけると麻生達に近づいてきた。

「お姉様までいらっしゃるとは驚きですわ。
 それよりお二人ともこういった荒事は、風紀委員(ジャッジメント)の仕事だと何度言ったら・・」

「まぁまぁ、白井さん。
 今回の一件は二人が協力してくれなかったら、解決出来なかったのかもしれません。
 だから抑えて抑えて。」

初春は白井を何とか静めようとしている。
白井が初春に気をとられている内に麻生は色々聞かれる前に立ち去るか、と考えていたとき腕の裾を引っ張られたので振り向くと佐天と、その同級生が立っていた。

「助けていただいてありがとうございます!」

佐天が深々と頭を下げると同級生も一緒に頭を下げる。

「気にするな。
 無能力者狩りが頻繁に行われていたら俺の散歩に支障がでるからな。
 だから、それを潰すついでに助けただけだ。」

「でも、麻生さんに電話をかけて私を助けてくれました。
 だからお礼を言いたかっただけです。」

もう一度深々と頭を下げる。
そして佐天は麻生に聞いた。

「私も麻生さんみたいに強くなれますか?」

それを聞いた麻生は少しだけ笑いながら言った。

「さぁな。
 俺は俺でお前はお前だ。
 俺の様になる事は出来ない。
 だからお前はお前の強さを手に入れればいい。
 佐天涙子だけが持つ強さをな。」

白井が麻生を探す声が聞こえ麻生は早足でその場を去っていく。
しかし、髪は後ろで纏めている女の警備員(アンチスキル)に捕まってしまい逃走に失敗したようだ。
佐天は麻生の言葉を小さく繰り返す。

「私だけが持つ強さをか・・・・」

「いやぁ~ルイコが言ったとおりかっこよくて大人な人だね。」

「私、あの人に惚れちゃったかも。」

同級生が冗談ではないような眼差しで連れさらわれて行く麻生を見つめていた。
とりあえずこの場を何とかしなければと佐天は思うのだった 
 

 
後書き
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。  
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