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久遠の神話

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第六話 上城の初戦その十一


「その黄金はです」
「これですよね」
「上城君がされたいようにされて下さい」
「そうしていいんですね」
「全てはお任せします」
 そうするとだ。あえて彼に任せるというのだ。
「貴方がされたいように」
「黄金は」
「勿論ですが売ればです」
「かなりのものになりますよね」
 これは当然のことだった。何しろ黄金だ。言うまでもなかった。
 彼も実際にだ。その黄金を見てだ。
 手に取りだ。自分のものにして色々と使う、それが悪いことには思えなかった。
 だが、だ。ここでこう言ったのだった。
「少しだけ貰って」
「少しですか」
「僕が必要なだけ貰います」
 そうするというのだ。
「そして残りは」
「どうされますか?」
「寄付でしょうか」
 考える顔でだ。彼は答えた。
「そうした方がいいでしょうか」
「寄付ですか」
「学生にはこれ一本でも凄いですよ」
 上城はその黄金の棒の一本を手に取って述べた。
「これだけでも百万はしますよね」
「二百万でしょうか」
「それだけあればどれだけのことができるのか」
 そしてだ。こんなことを言うのだった。
「マクドナルドも吉野家も行けてラーメンも食べられて」
「他には?」
「カラオケに甲子園行ってゲームセンターでUFOキャッチャーやって」
「それだけですか」
「はい、それこそ一年というか」
 彼はだ。さらに話すのだった。
「高校卒業まで遊ぶお金には困りませんよ」
「貴方はお金については」
「遊ぶか。後は」
「寄付ですか」
「これだけあったら貯金してもいけますし」
 中々堅実なところも見せる彼だった。 
 そしてだ。さらにだった。
「これだけあったら充分ですから」
「そうよね。私もそう思うわ」
 樹里もだ。ここで言う。
「お金は。必要なだけあったら」
「いいよね」
「そうよね」
 眉を少し曲げてだ。樹里は上城の言葉に応える。
「別に」
「沢山あっても」
「何か。ぴんとこないし」
「少なくとも今のところ使いみちはないです」
 上城はだ。やはりこう言うのだった。
「ですから」
「では他の棒は」
「銀月さんにお渡ししましょうか。それとも」
 上城は考える顔のまま聡美に話す。
「僕がお金に変えて」
「直接寄付されるか」
「そうしましょうか」
「そうですね」
 聡美もだ。考える顔になっている。
 そしてその顔でだ。上城に離した。
「そうされた方がいいと思います」
「じゃあ。一本は頂きます」
 本当に一本だけだ。上城は己のズボンのポケットの中に入れた。
 しかし他の数本の棒はだ。どうするかというと。 
 その手に取ったままでだ。こう言うのだった。
「明日お金に換えて」
「それでよね」
「寄付するよ」
 こう樹里に話した。
「八条グループって寄付する先あったよね」
「あるわ。あのグループ慈善事業も沢山やってるから」
「赤十字もあるし」
 寄付する先も様々なのだ。世の中にはそうした団体も数多くあるのだ。
「それなら」
「そうよね。そうしましょう」
 二人で話しだ。黄金の残りの使い道を決めた。だが、だ。
 ここでだ。もう一人が出て来たのだった。
 中田だった。彼が不意に姿を現わしてだ。
 そうしてだ。上城に話すのだった。
「ちょっと待ってくれるか?」
「中田さんですか?」
「ああ、俺だよ」
 人懐っこい笑みでだ。上城に言ってきてだ。
 彼のところに来てだ。こうも言ってきた。
「その黄金寄付するんだな」
「そのつもりです」
「まあいいことだな」
 中田は上城の説明を聞いてだ。
 頷きはした。しかしだ。すぐにこんなことを言ってきたのだった。 
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