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久遠の神話

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第三話 見てしまったものその六


「一六〇位はね」
「別に今のままでいいんじゃないかな」
「何でそう言えるのよ」
「いや、小柄な女の子って可愛いから」 
 だからだというのだ。
「それでね」
「可愛いって。小柄なのが?」
「そう思うけれど違うかな」
「小柄だと子供みたいじゃない」
 今度はこんなことを言う。
「だから。本当に」
「一六〇は欲しいんだ」
「今だってね」
 また上城を見上げる。何気に首を必死に上にあげている。
「あれよ。見上げるの辛いから」
「それでなんだ」
「そう。女の子も背が欲しいの」
 自分のことからだ。こう話すのである。
「だから同じよ」
「そういうものなんだね」
「そういうことよ。それでね」
「うん。それで」
「あの人。あそこまで背が高いと」
 やはり羨ましそうに話す樹里だった。
「あのスタイルもあって」
「女優になれるかな」
「本人がなりたいって言えばなれるでしょ」
 自然にだ。そうなるというのだ。
「もうそれでね」
「何処かの事務所がスカウトして」
「そうなるんだ」
「何度も言うけれどそこまで奇麗じゃない」
 銀髪に緑の目。、そしてその白い肌も思い出しての言葉だ。当然背も。
「まさに完璧超人よ」
「完璧って」
「どう、完璧じゃない」
 また言う彼女だった。
「いや、羨ましいわよ」
「ううん、その銀月さんが」
「そう、完璧じゃない」
 樹里の羨望の言葉が続く。
「私もねえ。あんな感じだったらそれこそ」
「芸能界デビュー?」
「そういうのは興味ないけれど」
 実はだ。そうしたことは考えていないというのだ。
「ただ。それでもね」
「羨ましいんだね」
「どうしてもそう思うわ」
 この感情をだ。抱いてやまないというのだ。
「まあ。私は私だけれど」
「そうだね。あの人はあの人で」
「私は私で」
「それでいいじゃない」
 これが上城の樹里への言葉だった。そして樹里も。
 上城のその言葉を聞いてだ。静かにだった。
 頷いてだ。こう返した。
「そうよね」
「そうだよ。人は人でね」
「自分は自分よね」
「だから。特に変に意識することはね」
「ないわね」
「変に強く考えたらそれこそ」
 どうなるか。上城はそのことも話した。
「かえってよくないから」
「嫉妬したりして」
「憧れるのはいいと思うよ」
 上城はその感情は肯定した。プラスの考えはだ。 
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