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久遠の神話

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第三話 見てしまったものその五


 上城の学校の帰りは今日もだった。樹里と一緒だ。
 二人並んで楽しく話をしながらだ。下校のデートを行っていた。
 その中でだ。樹里が彼に言ってきた。
「あの人だけれど」
「あの人って?」
「だから。ギリシアからの留学生の人よ」
「ああ、銀月さん」
「そう、あの人ね」
 そのだ。彼女のことだった。
「あの人についてどう思う?」
「どう思うって」
「奇麗な人よね」
 樹里が話すのはこのことからだった。
「日本人離れ、いえ」
「いえ?」
「何か人間からランクがあがったみたいな」
「人間より上って」
「女神みたいな感じだけれど」
「女神ね」
「そんな感じしない?あの人」
 こう言うのである。
「何かね」
「言われてみれば」
「そうよね。人間離れした感じね」
「うん、凄く奇麗で」
「あと。中性的?」
 こんなことも言う樹里だった。
「女の人だけれど何処か」
「そうそう、健康的でね」
「スポーツをしてるせいかしら」
「そのせいかな」
「身体つきが凄く引き締まっていて背も高くて」
 樹里はここで隣にいる上城を見た。小柄なので見上げる形になっている。
「上城君と同じ位だったかしら」
「それ位かな」
「ええと、上城君は確か」
「一七八だよ」
 それ位あるのだ。高い方と言っていい。
「今はね」
「じゃああの人って」
「そうだね。一七五はあるよね」
「女の人としてはやっぱり」
「かなり高いよ」
「そうよね。私は一五二で」
 彼女はそれ位だ。やはり小柄なのだ。
「何かそういうのを比べたら」
「全然違うっていうんだね」
「羨ましいわ」
 ついついだ。本音も出してしまう樹里だった。
「そこまで高いなんて」
「背が高いとなんだ」
「羨ましいわ」
 その本音を次第に強く話していく。
「私もそれだけあればって」
「思うんだ」
「女の子も背を気にするのよ」
「えっ、そうなんだ」
「やっぱり高い方がいいわよ」
 言葉は力説になっていた。
「モデルみたいにね」
「僕はそうは思わないけれど」 
 樹里のその話にだ。こう返す彼だった。
「特に。そんな」
「わからないのよ、それは」
「わからないって?」
「そりゃ男の子は誰でも背を気にするけれど」
「女の子もって」
「同じだから、それは」
 まだ言うのである。
「とにかく。背はね」
「背は?」
「あと八センチは欲しいわ」
 これが樹里の心からの言葉だった。 
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