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久遠の神話

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第二話 銀髪の美女その八


「言葉のあやです」
「あやですか」
「そうでしたが」
「初対面の方がおられますと」
 どうだというのだ。そういう相手が目の前にいると。
「自然と気を張り詰めてしまって」
「それで、となるんですね」
「ですから」
「はい、すいません」 
 こう言ってだ。二人に頭も下げもする。
「変なことを言ってしまいました」
「いえ、それはいいです」
「御気に召されずに」
 樹里だけでなく上城も彼女を慰める様にして言う。
 そのうえでだ。樹里は。
 話が一旦途切れたのを見てだ。彼女から言ったのだった。
「あの、それでなのですけれど」
「それでとは?」
「弓のことです」
 このことをだ。聡美に尋ねたのである。
「今弓道部とアーチェリー部に所属しておられますね」
「はい」
「両方やっておられるのですか」
「弓は好きなので」
 それでだとだ。聡美は樹里の問いに答えて話す。
「両方させてもらっています」
「私は弓のことはよく知りませんが」
 このことは断る樹里だった。
「ですが弓道とアーチェリーは細かいところが随分違うそうですね」
「そうです。弓であることは同じですけれど」
「そのことについては違和感はありませんか?」
 こう聡美に尋ねるのだった。
「両者の違いには」
「弓は。どれであっても弓ですから」
 これが今の樹里の問いへの聡美の返答だった。
「特に」
「ないんですか」
「弓はどうであっても得意です」
 自信が見られる言葉だった。
「弓なら」
「そうですか。弓なら」
「はい、得意です」
 また言う聡美だった。
「持っているだけで幸せになれます」
「それはまたかなりですね」
「弓を使った狩もしていました」
「狩もですか?」
「ギリシアにいた頃は」
 していたというのだ。弓を使った狩を。
「それでよく山の中を駆けました」
「それはまた凄いですね」
 狩もしていたというのを聞いてだ。樹里は目を丸くさせてだ。
 レポート用紙に素早く書きながらだ。聡美に言葉を返した。
「狩までされていたのですか」
「流石に日本ではしていませんが」
「日本ではですね」
「はい、それは」 
 していないというのだ。
「ただ。陸上はです」
「あっ、御聞きしています」
 陸上と聞いてだ。樹里はその顔をはっきりとしたものにさせた。
 そのうえでだ。彼女にこう話す。
「陸上部にも入っておられるとか」
「駆けるのも好きなので」
 また答える聡美だった。そうした話を聞けば随分とスポーツに秀でている留学生に聞こえる。少なくとも樹里も上城もそう思った。
「それで」
「アーチェリーと陸上で」
 さらに言う樹里だった。
「選手だったそうですね」
「そうだったこともありました」
「陸上の選手でもあったんですか」
 それを聞いてだ。上城が言う。 
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