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戦国異伝

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第七話 位牌その二


「鉄砲に長槍か」
「それに兵はです」
「常に戦えるようにしておるな」
「はい、常にです」
 父と対して確かな声で話していた。
「戦をできるようにしております」
「しかし兵の数は大丈夫か」
 信秀は平手に聞いたことをそのまま我が子に問うた。
「それはどうなのじゃ」
「それも抜かりはありません」
 父に対して不敵な笑みと共に話してみせた。
「今楽市楽座をやっております」
「城下で誰でも商いをできるようにしておるそうだな」
「はい、それで人が集まってきております」
「そこに来るのは商人だけではないか」
 信秀も話を聞いてわかった。このことがだ。
「浪人達もじゃな」
「その者達を兵に雇っています」 
 そうしているというのである。信長はそうしたことも考えて楽市楽座を行っている。信秀もこのことがよくわかったのである。
「ですから。その数もです」
「大丈夫じゃな」
「もう既に尾張で一番の兵の数ですが」
「減ったと聞いたが」
 また平手から聞いたことをそのまま返した。
「それは違うのか」
「今来ようとしている者がかなりおりますので」
「ふむ、左様か」
「はい、これからはそうして兵を集めますので」
「よし、わかった」
 ここまで聞いて頷いた信秀だった。
「それではだ」
「いいのですね、それで」
「そうするといい」
 また笑ってもみせた。
「そなたのそのやり方でな」
「左様ですか。それでは」
「しかしのう」
 信秀の口調がここでしみじみとしたものになった。
 そのうえでだ。また我が子に話すのであった。
「うつけだと言われておるがな」
「それがどうかしましたか」
「人の噂は気にせぬか」
「噂は噂です」
 不敵な雰囲気は全く崩れていない。
「事実だけを見ればいいのです」
「そうか。それでか」
「はい。言いたい者には言わせておればいいではありませんか」
「そしてそれでそなたを見誤れば」
「相手が倒れるだけです」
 このことについては実に素っ気無い口調であった。
「それだけです」
「わしはそなたをうつけと思ったことはない」
 信秀はそのうつけと言われている我が子を見てだ。そうして告げたのである。
「一度もな」
「一度もですか」
「おおうつけとは思っておる」
 ここでにやりと笑ってみせる父であった。
「天下一のな」
「天下一のおおうつけですか」
「そうでなければ何ができようか。おおうつけと呼ばれるまででなければ尾張一国はどうにかなろうとも天下まではどうにもならんわ」
「では。わしは」
「そなたの目指すものを目指せ」
 今己の子に告げた言葉はこれであった。
「よいな、そなたのだ」
「それをですか」
「天下か」
「無論です」
 確信と共にだ。そこには轟然たるものまであった。 
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