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久遠の神話

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第十六話 上城の迷いその八


「それに望みって」
「貴方には関係ありません」
「聞くなってことですね」
「そうです。貴方には関係のないことですから」
「おかしな理屈ですね」 
 上城はその声に対してだ。眉を顰めさせて言った。
「戦っている人間にそんなことを言うなんて」
「それが何か」
「何か隠していますよね」
 本能的には上城はそのことも察したのである。
 だからこそ声に対して問う。しかし声はやはりそのことには答えずにだ。
 冷淡とも言える口調でだ。彼に告げたのだった。
「ではその猪をです」
「倒せっていうんですね」
「生きたければそうして下さい」
 これが声の上城への言葉だった。
「宜しいですね」
「ええ、それはわかってます」
 不満を抱きつつもだ。上城は答えた。
「生きてこそですから」
「では頑張って下さい」
 声は上城に言うとだ。さらにだ。
 もう一人に対してもだ。告げたのだった。
「貴方もです」
「貴方?」
「今来られました」
 声が言うとだ。上城の右隣にだった。
 中田が来ていた。その彼を見て上城は言った。
「中田さん、貴方だったんですか」
「よお、ちょっと悩んでるか?」
「それは」
「まあその話は置いておいてな」
「はい、それでなんですか」
「一緒にやるか」
 中田はいつもの屈託のない口調で上城に言ってきた。
「そうするか?この戦いは」
「僕と中田さんで」
「怪物を二人で倒しても得られるものは同じなんだよ」
「一人で勝った場合と同じだけ強くなるんですね」
「そうさ。それなら二人で戦った方がいいだろ」
「はい、確かに」
 上城は中田のその言葉に頷いた。
「そうなりますね。それなら」
「話は決まりだな」
 中田は上城の話を受けて微笑みになった。そうしてだ。
 彼にだ。こうも言うのだった。
「じゃあやるか」
「お願いします」
「ちょっと待ってくれ」
「はい?」
「ここはお願いしますじゃなくてな」
 そうではないと言ってだ。中田はこう上城にこう話した。
「一緒に戦いましょうだよ」
「えっ、そうなるんですか」
「だってな。同じ怪物を協力して倒すんだぜ」
 だからだというのだ。
「それならお願いしますじゃなくてな」
「一緒に、なんですか」
「俺だけ、君だけが戦うならお願いしますだよ」
 そうなるというのだ。その場合にはだ。
「けれど俺達が一緒ならな」
「一緒に戦いましょう、ですか」
「ああ、じゃあ宜しくな」
 中田はその笑顔で上城に話してだ。そのうえでだった。
 刀を出した。その紅い二刀をだ。そして上城もまた。
 その手に蒼い長刀を出す。その三振りの刀をそれぞれ構えてだった。
 中田からだ。上城に言ってきた。
「相手は猪だからな」
「突進ですね」
「それに注意していこう」
 こう言うのだった。 
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