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久遠の神話

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第十話 偶発戦その十五


「君は戦いは否定しているよな」
「剣士同士の戦いについては」
「俺はそうした考えじゃないけれど認めているんだよ」
「僕のそうした考えをですか」
「それに君のことは嫌いじゃない」
 このことを言うのだった。
「それに縁もできたしな」
「だから義侠心なんですか」
「ああ、そうさ」
 そうなるとだ。上城に笑顔で話すのである。
「これでわかってくれたかな」
「ううん、それは」
「すぐにわからなくてもいいさ」 
 爽やかな笑顔でそれはいいとも話すのだった。
「覚えてくれたらいいさ」
「それでいいんですか」
「いいさ。少なくとも俺は剣を持つ相手と戦う」
 このことが中田の考えだった。上城が決して戦わないのと同じくだ。
「だから君とは戦わないんだよ」
「むしろですか」
「そうだな。むしろだよな」
 屈託のない笑みでだ。また話すのだった。
「助けるってことになるな」
「それが義侠心ですか」
「そうなると思うんだけれどな。じゃあな」
 ここまで話してだった。彼はあらためて彼等に背を向けてだった。
 そのうえで去る。彼もそうした。
 そしてだ。聡美は残っている上城と聡美に話すのだった。
「あの、送りましょうか」
「車で、ですよね」
「銀月さんの」
「はい。日本の車はいいですね」
 微笑んでだ。日本車も話すのだった。
「運転し易いですし安いですし」
「そういえばギリシアでは」
 ここでだ。樹里がギリシアでの日本車の事情について聡美に尋ねた。
「日本車の中古が売れているんですよね」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。聡美も笑顔で答える。
「私も中古車派ですが」
「ギリシアでも日本車ですか」
「ギリシアから持って来ました」
 その中古の日本車をだというのだ。
「そうしています」
「そうですか。日本車派なんですね」
「ドイツやフランスの車よりいいと思います」
 同じEUであるだ。両国のものよりもだというのだ。
「そう思います」
「何か嬉しいですね」
 日本車がギリシアでも人気があると聞いてだ。上城もだ。
 微笑みだ。そうして言うのだった。
「日本のものがそこまで褒められるなんて」
「事実だと思いますけれど」
「いえ、事実でもです」
 褒められると嬉しいとだ。上城は笑顔で話すのだった。
「むしろ事実だから余計に」
「嬉しいのですか」
「そうなんです。日本車ですよね」
 上城は笑顔でこうも言った。
「あれが一番ですよね」
「そう思います。ではその日本車で」
「帰りましょう」
 こうした話をしてだった。一行はだ。
 最後は穏やかに終わった。だが五人目の剣士のことは頭の中に入れて忘れはしなかった。また一つ大きな動きがあったことはだ。


第十話   完


               2011・10・5 
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