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戦国異伝

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第五話 初陣その二


「兵糧や槍、弓の手筈をせよ。よいな」
「畏まりました、それでは」
「鉄砲もじゃ」
 これについて言うのも忘れなかった。
「それもあるだけ持って行くぞ」
「あれもですか」
 今言ったのは平手である。
「鉄砲もまた」
「そうじゃ。あるだけじゃ」
 またこう言うのであった。
「持って行く。わかったな」
「あれを使うとは」
「まだ碌に撃ってもいないが」
「それでもですか」
 家臣達は今の信長の言葉には多少であるが動揺を見せた。76
「持って行かれると」
「しかもあるだけですか」
「そうじゃ。まあ見ておれ」
 信長は不敵に笑って述べた。
「あれは必ず役に立つからな」
「では殿」
 平手がここでまた告げてきた。
「三日後に」
「出陣とするぞ」
「はい」
 こうしてであった。信長は初陣に出た。家臣達を全て連れてだ。濃青の鎧に赤い陣羽織を身に着け。青備えの兵達を連れて出陣したのであった。 
 その青い鎧に陣笠の兵達を見てだ。領民達は驚きを隠せなかった。
「何とまあ目立つことよ」
「青い鎧とな」
「しかも兜も陣笠も青とな」
「これはまた派手なことよ」
「あの殿様の考えることはわからんわ」
「全くじゃ」
 こう言ってであった。驚くことしきりであった。
 だが信長はだ。平然とこう言うのであった。
「目立つ為にしておるからいいのじゃ」
「それで青なのですか」
「武田は赤、長尾は黒」
 ここで佐久間に応えて言った。
「北条は白、毛利は緑じゃな」
「はい」
「ならば我等は青じゃ」
 こう言うのである。
「青じゃ。織田は青じゃ」
「それで青なのですか」
「まずは尾張を青くする」
 そして言った。
「それからじゃ。尾張の青を天下に知らしめるのじゃ」
「尾張だけではなくですな」
 平手が言った。
「そうされると」
「そうじゃ。わかったらまずはじゃ」
「この初陣を飾られるのですね」
「この戦い、当然の如く勝つ」
 信長は前を見据えて話した。
「わしの初陣に相応しくじゃ」
「それでは我等も」
「共に」
 家臣達も応える。そのうえで今川の軍がいる尾張の境に向かうのだった。
 そこに着くとだ。滝川の者達から報告が上がった。
「そうか、あの場所にか」
「はい、あの場所にです」
「今川の主力がおります」
 報告する忍の者はこう告げるのだった。
「どうされますか、ここは」
「休まれますか、それとも」
「知れたこと、攻める」 
 信長は一言でその者に告げた。
「すぐにじゃ。では皆の者、行くぞ」
「しかし殿」
 ここでだった。平手が彼に言ってきた。 
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