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ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者

作者:黒神
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閑話3 メイドと死神


闇慈がルイズに召喚された翌日。闇慈はルイズより早めに起床すると、ルイズから言われたとおり着替えを用意して、時間を待っていた。そして7時を廻り、流石に起こさないと遅れてしまう時間帯になった。闇慈はルイズの右肩を優しく叩き、ルイズを起こそうとした。

「ルイズ?そろそろ起きないと遅刻してしまうよ?」

その呼びかけにルイズは背伸びをしながら回りを確認すると・・・

「アンタ・・・誰?」

まだ寝ぼけているのか、目を擦りながら、そう呟いていた。

「僕はルイズの使い魔だよ。そして昨日、遅れそうになったら起こしてって頼んだでしょう?」

「・・・そうだったわね。昨日召喚したんだった」

ルイズが完全に目を覚まし、ベッドから降りたことを確認すると、着替えの制服を渡そうとしたが・・・

「アンジ。私に着せてちょうだい。下僕がいる場合、貴族は自分で服を着ないの!!ほら、早くしなさい!!」

「あはは・・・分かりました、ご主人様」

闇慈はルイズの我が儘っぷりに苦笑すると、闇慈は上半身の制服を丁寧にルイズに着せた。下半身の制服は流石に自分で着た様だった。そしてそれが終わると朝食に食堂に行こうとしたが闇慈が引き止めた。

「待って、ルイズ。寝癖がまだついてるよ。鏡台に座って?整えてあげる」

「そ、そう。中々、気が利くじゃない」

ルイズが鏡台の前に座ると、闇慈が鏡台のそばにあったクシを取って、ルイズのピンクブロンドの髪を整え始めた。ルイズは顔には出さなかったが、心の中ではタジタジしていた。自分の髪は自分で整えるか、屋敷に居る時はメイド。つまり『男性』から髪を整えて貰ったことがなかった。

「ルイズの髪って凄く綺麗でツヤツヤしてるよね」

「あ、当たり前じゃない。そんなことはどうでも良いから早く手を動かしなさい!!」

「はいはい」

(そう言えば、私の髪を褒めてくれた男性ってアンジが初めてよね?・・・ってなに意識してるの!?彼は私の使い魔それ以外なんでもないんだから!!)

ルイズが一人で考えている間に、調髪も終わり、食堂に移動することにした。

~~~~~~~~~~~~

食堂の入り口に辿りついたのは良いが、やはり使い魔を中に入れることは出来ないみたいだった。そこでルイズが厨房の人たちに頼み、厨房で闇慈の賄いを用意してくれることになった。

「ごめんね、ルイズ。僕のために」

「別に感謝されることじゃないわ。使い魔の管理は主人である私の義務なんだから」

「それでも、ありがとう・・・だよ」

「ふ、ふん。早く厨房に行きなさいよ」

「うん。じゃあまた後でね」

闇慈はルイズと一旦別れを告げると厨房に向かって歩き始めた。

~~~~~~~~~~~~

「おいしい朝食、ありがとうございました、マルトーさん」

「な~に。どうせ貴族の連中のあまりもんだ。気にするな」

闇慈は厨房で洋風の朝食を厨房の料理長の『マルトー』に食べさせてもらった。

「しかし。おめえさんも大変だなぁ。貴族の使い魔として召喚されるんだからよ」

「でもルイズはそんなに悪い娘ではないと思うので、それに人のために動くって何だかやる気が出るって言うか・・・」

「前向きな兄ちゃんだなぁ。でもそう言う心がけは大したもんだぜ」

ここで闇慈は食事を取らせてもらうことのお礼としてマルトーにこんなことを申し出た。

「そうだ。マルトーさん。僕にここの厨房の手伝いをさせて貰えませんか?」

「手伝いをか?それは願ってもねえ事だが。良いのか?」

「ルイズの許可も取ってきますから。是非お願いします!!」

闇慈は頭を下げて、マルトーに頼むと・・・

「よし!分かった!おめえのご主人の許可が下りたら、ここの手伝いをさせてやろう」

「ありがとうございます!!」

闇慈とマルトーが話していると、メイド服を着ている一人の黒髪の女の子が厨房に入ってきた。

「マルトーさん。注文の・・・この人は何方ですか?」

「シエスタ。丁度良かった。もしかしたらここの手伝いをして貰うことになるかもしれねえ奴だ」

「初めまして。僕はアンジ・クロガミ。ルイズの使い魔をやっている者です」

「ああ。貴方がミス・ヴァリエールの使い魔さんなんですね。私はここでご奉仕させてもらって『シエスタ』と言います。よろしくお願いします」

「その口調からすると僕の事は知れ渡っているみたいだね?」

「はい。平民が使い魔として召喚されたって学園中に噂になっていますよ、アンジさん」

「なるほどね。ここで手伝うことになったらよろしくね?シエスタ」

「はい!よろしくお願いします」

挨拶を交わすと闇慈はマルトーとシエスタに別れを告げ、ルイズとの待ち合わせの場所である食堂の入り口へと急いだ。そこに付くとルイズがもう食堂から出てきて、両手を腰に当て、まだかまだかと待っているようだった。

「ゴメン!ルイズ!遅くなったよ」

「遅い!!主人より遅れてどうするの!!」

「す、スミマセン!!」

闇慈はルイズのあまりの怒り様に言葉も敬語になり、頭を下げて謝った。

「・・・今度遅れたら、ご飯抜きにするわよ?」

「わ、分かったよ。そう言えば今日はルイズの授業はないの?」

「今日は二年生はお休み。召喚した使い魔とのコミュニケーションを取るために過ごす日よ」

「なるほどね・・・ん?」

「ギューー」

闇慈が何かに気付き、その方を向くと全長2mはある『サラマンダー』が闇慈の足元にいた。闇慈は一瞬何かと身構えたが大人しいことに気付くとしゃがみ込み、優しく頭を撫でてやった。

「君は、サラマンダー・・・かな。」

「ギューー」

「君のご主人様は何処にいるの?」

「あら。フレイムが初見の人に懐くなんて」

声がした方を見ると、赤髪でグラマーな生徒、キュルケが立っていた。

「ねえ、ルイズ。貴女、そこらへんにいる平民を連れてきたの?爆発で上手くごまかして」

「違うわよ!!それにアンジはただの平民じゃないわ!!彼は・・・」

ルイズが闇慈を『死神』だと言い切る前に、ルイズの口を慌てて塞ぎ、キュルケに背を向け、小さな声で話しを始めた。

「ちょ、ちょっと!!何するのよ!?」

「ゴメン、ルイズ。僕が死神ってことはしばらく内緒にしてもらえるかな?この事が公になれば大事になりかねない」

「・・・考えてみればそうね。分かったわ」

話が終わると再び、キュルケと向き合った。

「どうしたの?彼は何なの?」

「僕はただの平民ですよ。そしてこの子がサラマンダーだと言うのは本で読んだことがあって、それに当てはめただけですよ」

「そう。やっぱり『ゼロのルイズ』はお似合いよね?」

キュルケがルイズを再び、『ゼロ』と呼び始めたが、闇慈がここで質問する。

「貴女は今、ルイズの事を『ゼロのルイズ』と言いましたよね?」

「ええ。そう言ったわよ?」

「なら。これは何ですか?」

闇慈はルイズを自分の背後に周らせ、自分の左手に刻まれた使い魔の『ルーン』をキュルケに見せた。

「何って・・・使い魔のルーンじゃない。それがどうかしたの?」

「どんな形であれ、ルイズは僕を召喚し、契約を行った。それは・・・魔法を成功させたことじゃないんですか?」

「そ、それは・・・」

「彼女が魔法を成功させた事はこのルーンが何よりの証拠です。これでもう、ルイズのことは『ゼロのルイズ』じゃありませんよ?」

「アンジ・・・」

ルイズは闇慈の言葉が嬉しかったのか、少し顔を赤くし、闇慈の私服を軽く握っていた。

「・・・貴方ってそんな考え方をするのね。気に入ったかも。貴方の名前は?」

「アンジ・・・。アンジ・クロガミです」

「アンジ。変わった名前だけど、顔立ちも綺麗だし、気に入ったわ。何時かゆっくりお話しましょう?」

そう言うとキュルケはフレイムを連れてその場から立ち去った。

「ルイズ?大丈夫」

「ありがとう・・・」

「えっ・・・?」

「私の事庇ってくれたんでしょ?」

「まあ。そんな所かな?でも自分の意見を言っただけだよ?」

「そう。・・・って当然よね。ご主人が危なかったら使い魔として助けるのが当たり前だからね!!」

ルイズは掴んでいた闇慈の私服を離すと、開き直ったかのように向き合った。

「ボサッとしないで何か飲み物を持ってきなさい!!」

「は、はい!!(良かった。何時ものルイズに戻ってくれたみたいだ)」

闇慈はそのまま紅茶を貰いに厨房に行こうとしたが、中庭で何やらもめごとが起こっているようだった。闇慈はそこらに居た一人の生徒に何事か尋ねることにした。

「あの。何があったんですか?」

「メイドがギーシュの香水を拾ってそれを届けようとしたんだけどな。その香水が下級生に貰ったものらしいんだ。それが原因でそこいた下級生と同級生のモンモランシーとの二股がばれてしまったみたいだ。そしたらギーシュの奴、それをメイドのせいにし始めたんだよ」

闇慈は心の底から溜め息を付いていた。明らかにそれはギーシュと言う奴が悪いと闇慈は悟り、その現場に行って見ると、先ほどのシエスタが金髪でバラを持っている男子生徒に許しを得ようとしていた。

「全く・・・君はどうしてくれるんだい?お陰で二人のレディを傷つけることになってしまったじゃないか?」

「も、申し訳ありません!!」

「シエスタ」

ここで闇慈はシエスタに声をかけることにした。

「ア、 アンジさん?」

「何だい?君は?これは僕と彼女の問題だ。君は引っ込んでて貰おうか?」

「それは出来ない相談ですね」

闇慈は相手を思いやる心を忘れておらずに、ギーシュと言う男子にも敬語で話していた。

「話を聞く限り、どう見ても貴方が悪いように思えますけど?貴方は女子生徒二人を相手に出来るほど身分が良いんですか?」

「何を生意気な・・・ん?君は確か・・・ゼロのルイズの・・・」

ピクッ・・・

ギーシュがルイズのことをゼロ呼ばわりし始め、闇慈は少しこめかみを動かした。

「そうそう。君はあの『ゼロのルイズ』の使い魔じゃないか。やっぱりゼロのルイズの使い魔は礼儀がなっていない。平民が貴族に意見するなんて身の程を知った方が良いと思うね」

「平民と貴族とか言う前に、僕は一人の人間です。そんなことも理解できずに二人の女の子を相手にしようとしていたなんて・・・貴方の方が身の程を知った方が良いと思いますけど?」

「アンジ!!」

ここであまりに遅かったことを心配してきたのか、ルイズがやってきた。

「ここでご主人のご登場か。全く、君は本当にゼロだよ、ルイズ。使い魔の管理すら出来ない・・・」

「おい・・・」

「何か・・・!?」

ギーシュが闇慈を見てみると闇慈の眼の色が茶色から真紅のように真っ赤になっていた。それを見ていた生徒たちはある感情に襲われた。


『死』


それはルイズも例外ではなかった。

「それ以上。俺の主人を侮辱してみろ・・・」

(何なの・・・?これが・・・あの心優しいアンジなの!?)

一人称も『僕』から『俺』に変わっていて、口調もドスの効いた低い声になっていた。

「貴様に・・・『死』を見せるぞ?」

「ふ、ふん!!そこまで言うなら・・・決闘だ!!」

ギーシュは持っていたバラを闇慈に向け、決闘を申し込んだ。闇慈は少し考え・・・

「・・・良いだろう。力で解決するのはあまり好きじゃないが、受けて立つ!!」

「減らず口を・・・ベストリの広場で待っている」

ギーシュはマントを翻し、その場を後にした。それを見ていたシエスタは闇慈に近寄った。

「アンジさん。貴方。殺されてしまいます!!」

「心配してくれるんだね。ありがとう、シエスタ。でも僕も男だ。逃げるわけには行かないよ。すみません、ベストリの広場って何処ですか?」

闇慈が一人の生徒に尋ねるとその場所を教えてくれた。周りの生徒たちは興味を持ったのか、その広場に向かっているようだった。

「アンジ!!」

ここでルイズの声が闇慈の耳に届いた。そしてそのまま闇慈は引っ張られ、人気のない所まで連れてこられた。

「ル、ルイズ」

「アンタ!何してんのよ!今すぐにギーシュに謝るのよ!!」

「どうして?明らかにあのギーシュって男子が悪いじゃないか」

「アンタが死神かもしれないけど、ギーシュはお構いなしにアンタを潰しに来るはずよ!!」

それを聞いた闇慈は優しく微笑むとルイズに問いかけた。

「それって僕を心配してくれてるの?」

「そ、そそそ、そんな訳ないじゃない!!」

闇慈の言葉にルイズは顔を赤くしながら、全力でそれを否定する。しかしこれには闇慈の考えがあった。

「でも丁度良い機会だと思うよ?この決闘であの『ゼロのルイズ』が何を召喚したのか。みんなに示すことが出来ると思うよ?」

「でも・・・もしアンタになにかあったら」

「大丈夫。僕は戦いには慣れてるよ。それに間違って相手を殺したりしないよ」

ルイズは頭を抱えしばらく考えると・・・

「・・・分かったわ。でも怪我はしないで!!」

「了解!ご主人様!」

そう言うと闇慈は教えられた広場に向かって足を進めた。
 
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