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戦国異伝

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第二十三話 上洛その六


「それがいいのじゃ」
「殴られるのがよいのか」
「そうならないようにそこから逃げるのがいいじゃ」
 笑いながら今度は可児に話す。
「怒った平手殿からのう」
「御主はそうした悪戯が好きなのじゃな」
「大好きじゃ」
 実際にそうだというのであった。
「あの楽しさは幾ら味わっても足りぬ」
「まるで子供じゃな」
「そうじゃ、こ奴は身体は大きいがじゃ」
 ここで柴田が出て来て話すのであった。
「頭の中は子供なのじゃ」
「その様でござるな」
 可児もそれは感じ取った。慶次のそうした無邪気さをだ。
「ううむ、尾張一の傾奇者とはそうした者じゃったか」
「わしは常識なんぞには捉われぬ」
 実際にその通りに生きている慶次であった。
「だからこそ傾奇者よ」
「そういうものか。さて、それでじゃ」
 ここで可児は話を変えてきた。
「この道中色々ありそうじゃな」
「そうだというのか」
「おそらくはじゃ」
 丹羽に対して話す彼だった。
「義龍殿もただ見ているだけではあるまい」
「そうじゃな、それはな」
 丹羽もすぐに頷いて返すのだった。
「刺客の一度や二度はな」
「来るのじゃな」
「間違いなくな」
 丹羽も言った。
「何時来るかが問題じゃが」
「それならばじゃ」
 今度は滝川が出て来てだった。
「わしが働くか」
「わしもじゃ」
 蜂須賀も出て来て言うのだった。
「忍びの者達を使ってな」
「そうした話は掴んでおくとしよう」
「そうしてもらえるか、ここは」
 柴田が名乗り出た二人に述べた。今の家臣達の筆頭としての言葉だった。
「御主等でな」
「うむ、ここはな」
「そうさせてもらおう」
 二人も柴田に対してその言葉を返した。
「そうしてだ」
「刺客達は封じておかねばな」
「その動きを掴めばそれでだ」
「全く違う」
 敵の動きを知ることがどれだけ大事なのかだ。彼等はわかっていた。それは信長の家臣達全員がだ。そうでなれば信長に見出されたりはしない。
 それがわかっているからこそだ。彼等も今言えるのであった。
「してそのうえで」
「その都度対処していくとしよう」
「いや、それもあるが」
 ここで柴田は意気込む二人にこう告げた。
「殿にもお話しておくぞ」
「おっと、そうだったな」
「それを忘れてはならん」
 二人も柴田の言葉を受けてすぐに気付いたのだった。
「殿にもな。是非な」
「お話しておこう」
「わしも行く」
 柴田もだというのである。 
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