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戦国異伝

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第二十二話 策には策でその八


 信長もこうなっては諦めるしかなかった。だが行方は引き続き捜されることになった。そして信行は頭を剃り伸びるまで蟄居となったのだった。
 こうして信行の謀叛の話は区切りを迎えた。それが終わってからだった。
「都にじゃな」
「行かれますか」
「そちらへ」
「そうじゃ。そうする」
 こうだ。野々村と大津に述べるのだった。
「尾張を手中に収めた。それでじゃ」
「尾張の守護にですね」
「正式にですな」
「そうよ。公方様に御会いして任じてもらう」
 尾張を手中に収めた。後はであった。
「その為にじゃ」
「それはいいのですが」
「そうですな」 
 ここでだ。万見と矢部が言ってきた。多くの家臣達が信長の前に集まっていた。そうしてそのうえで彼に対して言っていくのだった。
「問題は美濃を通るならばです」
「斉藤が」
「それが問題ですな」
 福富もそのことについて話した。
「美濃を通らずとも。道中に刺客を放ってくるでしょう」
「間違いなくそうしてきますな」 
 その通りだとだ。生駒も述べた。
「只でさえ我々は剣呑な間柄にあるのですから」
「ではここは頼りになる者を連れて行きましょう」
「是非共」
 早速金森と中川が出て来た。
「それがしも御供して宜しいでしょうか」
「それがしも」
 二人は早速信長にいってきた。そしてだった。森長可もであった。
「ではわしもまた」
「よいぞ。むしろじゃ」
 ここでだ。信長は彼等にこう告げたのであった。
「残る者の方が少ない程じゃ」
「といいますと」
「誰が残るですか」
「一体」
 家臣達がいぶかしんでいるとだった。信長はこう述べるのだった。
「まずは爺じゃ」
「それがしでございますか」
「やはり留守といえばじゃな」
 ここでだ。信長は妙に楽しそうに話すのだった。
「爺が一番じゃ」
「何故それがしが留守には一番でしょうか」
「口煩い者は置いておくに限る」
 ここでこんなことを言う信長だった。
「そういうことじゃ」
「それでは常に言っておきましょうか」
 平手も負けてはいない。こう主に返す。
「殿のお傍にいる時は」
「それは困る。まああれじゃ」
 本当のことをだ。ようやく話す彼だった。
「その仕切りの技故じゃ。やはり爺じゃ」
「確かに。平手殿がおられれば」
 家臣達も信長の話を聞いて言うのであった。
「何かと安心できますな」
「出ても城におられれば安心できます」
「政も備えもして下さいますし」
「それならば」
 こうしてだった。彼が留守に決まった。しかしであった。信長はまた言うのであった。
「もう一人置くぞ」
「といいますともう一人は一体」
「どなたでしょうか」
「勘十郎様はおられるにしても」
 彼はだ。それ以前であった。
「今は蟄居されていますし」
「戻られるのは後になりますし」
「それでは一体」
「誰が」
「与三よ」
 名を呼んだのはだ。森可成であった。彼の顔を見てだった。 
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