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戦国異伝

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第十七話 美濃の異変その九


「義龍殿は優に一万を超えるの兵を用意されますが」
「我等四人で八千です」
「そして殿が持たれている二千の兵を合わせて場勝負になります」
「それで」
「よいのだ」
 また言う道三であった。とにかく兵を動かすなというのであった。
「わしだけで戦う」
「ですがそれでは」
「御命が」
「よい」
 また言ったのだった。
「その時はよい。それよりもだ」
「婿殿をですか」
「見極めよと」
「そう仰るのですな」
「わしは止める」
 信長をだというのだ。
「絶対にな。しかしだ」
「来られればですね」
 竹中がここで言った。
「そうされたならば」
「まずは合格よ」
 道三もそれでいいとだ。言うのであった。
「若しただの野心だけの者ならばだ」
「殿を見捨て敵を精々減らしたところで」
「そこで美濃に入り残った義龍様を討つ」
「そうされますな」
「しかし来たならばだ」
 その場合についての話をするのであった。それも細かくだ。
「わしを見捨てることはなかったということよ」
「例え無駄だとわかっていても」
「殿のことを思いですな」
「だからこそ」
「芝居でもできるがあの婿殿はそれはせぬ」
 これはもうわかっていたのだ。あの会見の時で信長のそこまで見抜いていたのである。
「何があろうともな」
「何かをされるなら極端にされる」
「あの方はそうした方でござるな」
「傾奇から正装に」
 そこにこそ出ているのだった。信長はやるからには徹底的にやる、そのことが会見でわかったのである。あくまでわかる者だけにわかることであるがだ。
「ではその婿殿が来られるとなると」
「まずは合格ですな」
「美濃の主として」
「そしてさらに上に行かれる方として」
「左様」
 こう竹中達に述べる道三であった。
「その通りよ。それでまずは及第よ」
「ですが。それだけではありませんな」
「婿殿への出題は」
「まだありますな」
「後は。尾張に必ず今川が来る」
 道三は既にこのことを察していた。彼も今川の動きは注視していた。今川が武田、北条と手を結び後顧の憂いをなくしたのは何の為か、そしてその兵を何処に向けるのは。答えは出ていることだった。
「それを防ぎだ」
「そしてそこから生き残られた後で」
「さらにですな」
「そうじゃ、厳しくいく」
 道三は楽しげに笑って話を続けるのだった。
「そしてそこからよ」
「伊勢ですな」
「婿殿は近頃伊勢及び志摩に随分と人を送られているとか」
「それでどうされるか」
「それも見てからですな」
「そうじゃ。決めよ」
 彼等への言葉だった。
「そなた等がだ」
「婿殿を主とするかどうか」
「それをですな」
「それにあたってだ」
 道三はここで懐から何かを出してきた。それは。 
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