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戦国異伝

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第十七話 美濃の異変その七


「間違いなくな」
「では隠居させられて」
「そうしてですか」
「実験は長政殿が」
「そうなっておる。そして」
 信長の言葉は続く。
「長政という者。面白いようじゃな」
「というと傾いておられるのですか」
「長政殿もまた」
「殿と同じような」
「あの者は傾いてはおらん」
 ここでも否定する信長だった。彼は今はそれが多くなっていた。
「至って真面目な男よ」
「真面目ですか」
「では別の意味で、ですな」
「面白い方と」
「そう仰いますか」
「そういうことよ。できるぞ」
 信長はまた言った。
「それもかなりよ」
「では美濃に攻め入ることもです」
「それも有り得ますな」
「やはり」
「いや、その前にだ」
 信長はわざとだ。前置きしてみせた。
 そのうえでだ。こんなことを話すのだった。
「食い合うぞ」
「食い合うといいますと」
「浅井がですか」
「美濃に攻め入る前に」
「これでわかるな」
 にやりとさえしていた。それが今の信長だった。
「ここまで言えば」
「六角と争いますか」
「美濃に攻め入る前にまずお互いがでござるな」
「そうなりますな」
「そういうことよ。だから今はじゃ」
 どうだという。そしてその先の言葉は。
「我等織田が美濃を手に入れる好機よ」
「ですな」
「今こそまさに」
「その時です」
「まあ無理はせぬ」
 それはだというのであった。
「何よりも大事なのはじゃ」
「義父殿ですな」
「あの方の御命を」
「何よりもですな」
「そうじゃ、まずは義父殿よ」
 その通りだと話す信長だった。
「義父殿を救えねば美濃を手に入れても何の意味もない」
「だからこそですな」
「ここは何としても」
「あの方を」
「そうだ。義父殿を助けられなければだ」
 信長は決意を込めて語るのだった。
「美濃を手に入れる意味なぞない」
「では。必ず義父殿を」
「その時はお助けしましょう」
「そうだ。よいな」
「はい、それでは」
「その時はすぐに兵を」
 織田の者達は何時でも動けるようにその態勢を整えていた。そしてであった。
 美濃ではだ。信長の予想通り異変が起ころうとしていたのであった。
 義龍がだ。己の周りに家臣達を集めそうして話すのだった。
「ではだ」
「はい、それではです」
「まずは弟君達をこの稲葉山に呼びましょう」
「そしてそのうえで」
「理由はもう考えておる」
 義龍は確かな顔で述べた。
「わしは病を得た」
「そういうことですな」
「そうして家督を継がせるということで」
「そうされるのですね」
「その通りよ。そしてだ」
 義龍の言葉はさらに続くのだった。 
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