| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十七話 美濃の異変その六


「戦はその後ということよ」
「では今はまだ動きませんか」
「信濃から」
「とりあえずは」
「上杉との戦いも一段落した。
 川中島での死闘のことであるのは言うまでもない。
「さすればよ」
「そこから政に専念して信濃を治める」
「美濃は今はどうでもよいと」
「だからこそですか」
「そうよ、暫くは武田に美濃を襲われる不安はない」
 信長はこのことは見抜いていた。しかとだった。
 そしてだ。その見抜いた目でさらに話すのであった。
「そして武田以外の勢力は」
「飛騨の三木は問題ないですな」
「あの家については」
「何の心配もござらるな」
「あの家はどうでもよい」
 信長も彼等については素っ気無い。
「気にすることはない」
「まず力がありませんな」
 このことが指摘された。
「飛騨は貧しくそれで美濃を攻めるなぞとても」
「飛騨を守るだけで手が一杯でござる」
「それで攻めるなぞとても」
「有り得ませんな」
「しかもです」
 三木の問題がただ力がないだけではないのだった。その他のことも指摘され述べられていくのであった。信長の家臣達も見ているのだった。
「飛騨はあまりにも険しい国です」
「外に出ることすら中々できませぬ」
「そうした国だからこそ」
「攻めてくる不安はありませぬな」
「さしあたってはどうでもいい場所だ」
 信長もこれで終わらせる程だった。
「あそこはな」
「では飛騨はどうでもよい」
「摩ればここで問題となるのはです」
「あの国の者達ですな」
 中川が鋭い顔で述べてきた。その国は。
「近江ですな」
「そうか。あの国か」
「浅井に六角」
「その二つですな」
「そういえば浅井では」
 どうなのかとだ。木下が話してきた。
「家督が譲られたそうですな」
「久政殿ではなくなったと」
「では嫡男の長政殿が受け継いだか」
「そうなったか」
「その様でござる」
 実際にこう述べる木下だった。
「どうも家督争いになりそれで」
「父を斬ったのじゃな」
「戦乱の世はいえ惨い話よ」
「全くよ」
「聞く話だが難儀なものよな」
「待て」
 しかしだった。ここで彼等に信長が言ってきたのだった。
「久政殿よな」
「はい、そうです」
「あの方ですが」
「今は」
「死んだとは初耳よ」
 あえてこう返す信長だった。
「久政殿は死んではいないと」
「殿はそう見ておられるのですか」
「ここは」
「生きておる」
 断言であった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧