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戦国異伝

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第十五話 異装その十


「鉄砲の数は」
「五百だな」
 道三が言った。
「多いな」
「鉄砲を五百も」
「そこまで持っているとは」
「この話真であったか」 
 三人衆がここでまた言う。
「槍と鉄砲を組み合わせて戦うのだな」
「それが織田の戦か」
「かなり厄介だな」
「どうやらこれは」
 道三の目は鋭い。その鋭い目での言葉だった。
「父親以上の戦上手だな」
「あの弾正殿よりもですね」
「そうだ、それよりもさらに手強いな」
 竹中に対して述べながらもその軍勢を見ている道三だった。
「戦うとなればだ」
「覚悟が必要ですね」
「間違いなくな」
 こう話をしながら軍勢を見ていた。そしてだ。
 やがて家臣達が見えてきた。どの者もだった。
「傾いておるのう」
「全くだ」
「そこまでするか」
「派手にも程があるぞ」
 三人衆と不破がまず呆れた声を出した。
「赤鬼に青鬼もいるな」
「それに翁か」
「あれは能のだな」
「そうだな」
 そのそれぞれの姿を見ての話だ。
「それにあれは」
「何だ、随分でかい男だな」
「しかも目立つな」
「本当にな」
 慶次もいる。赤に黄とだ。呆れるばかり派手な服を着ている。それに大きな煙管まで持っている。その煙管はどうやら鉄のものだ。
 しかもだ。彼はその手にやたらと大きな朱槍を持っている。それもまた実に目立つものだった。
「傾奇者の中でもあの人は」
「相当の者だな」
 細川が竹中の言葉に応えた。
「あそこまでいくとな」
「はい、それにです」
「腕も立つか」
「あの人の腕、尋常なものではありません」
 竹中はこのことも見抜いていた。
「どうやら」
「そうだな。あの者はな」
 細川もだ。眼力はある。それで慶次のその腕に気付いたのだった。
「強いな」
「恐ろしいまでに」
「ただ傾いているだけではありませんね」
「そうだな、それは間違いない」
 皆慶次のその強さも見抜いた。そしてだ。彼のこのことも見抜いた。
「ただ、な」
「兵は率いる者ではないな」
「そうだな」
 まずは三人衆が言った。
「そうした者ではないな」
「ただの武辺者だな」
「元々興味がないようだが」
「その様だな」
 不破も同じ見方だった。
「あの者はな」
「しかしです」
 ところがである。明智がここでまた言うのであった。
「織田殿の家臣はどなたも傑物の様ですな」
「十兵衛、わかるか」
「はい」
 道三の言葉にも答える。そのうえでまた言う。
「雰囲気といいますか。その放つもので」
「感じるか」
「どなたも秀でておられますな」
「そうだな。我が婿は人を見る目があるようだ」
「特にです」
 明智は特に見ている者がいた。それは。 
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