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戦国異伝

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第十三話 家臣達その十


「それでは何の意味もありませぬ。そもそも殿も一同も誰も何かと軽いですから」
「わかった、ではじゃ」
「はい」
「連れて参ったな」
 信長はそこに話をやった。
「そうじゃな」
「今ここにおります」
 こう信長に返す平手だった。
「既に」
「そうか。それならすぐに中に入れよ」
「はい、それでは」
 こうしてだった。六人の男達がそれぞれ平手によって信長の前に引き出された。彼等は一礼してからだ。それぞれ名乗ったのであった。
 まずはだ。口髭を奇麗に整えた男であった。
「矢部善七郎家定」
 続いては月代の若者である。
「長谷川藤五郎秀一」
 三人目はやけに細い男だった。
「福富平左衛門秀勝」
 次はだ。鋭い黒目がちの男だった。
「野々村さん十郎正成」
 五人目は大柄な男だった。
「大津伝十郎長昌」
 最後は。女にも見える美しい若者だった。
「万見仙千代重元」
「この者達でございます」
 信長の前で深々と頭を下げるこの者達をだ。平手が紹介した。
「この度殿に仕官して参った者達です」
「ふむ」
 信長はまず彼等をその目で見回した。そのうえで言うのだった。
「どの者も政に長けておるな」
「はい、どの者もかなり」
「よい。政ができる者は幾らいても多過ぎるということはない」
 信長は満足した声で述べた。
「喜んで使おうぞ」
「有り難き御言葉」
「それでは」
「そなた等の働きを期待する」
 信長は明朗な声で彼等に告げた。
「その力思う存分振るうがよいぞ」
「では今より」
「我等もまた」
「これでよし、じゃな」
 信長は満足した様子であった。そうしてであった。
 滝川と池田勝正を見た。そのうえでだった。
「久助、八郎三郎」
「はい」
「伊勢のことでありますか」
「そうじゃ。久助にはより働いてもらうと共にだ」
 とりわけ滝川に告げたうえでだった。
「この者達も入れるがいい。伊勢の国人や守護の家にじゃ」
「謀をですな」
「これまで以上にするがよい」
 こう話すのだった。
「それにこの者達も使ってじゃ」
「わかりました」
 滝川は一礼して主の言葉に応えた。
「ではすぐに」
「言っておくが尾張の政も怠らぬことじゃ」
 信長は滝川にこのことも言い含めた。
「それもよいな」
「承知しております」
「八郎三郎もじゃ」
 池田勝正にも声をかけることを忘れなかった。
「よいな」
「承知しております」
「ならばよい。まずは尾張よ」
 彼の本拠地であるそこをというのだった。
「全ては尾張からはじまるのよ」
「終わりから尾張がですな」
 慶次がここでおどけてこう言った。 
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