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万華鏡

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第七話 お泊り会その二


「どうしてもね」
「あるんだよな。雰囲気の悪い部活」
「先生とか先輩が酷くて」
 同級生の場合もある。これはどの組織や場所でも言えるが部活についても全く同じことが言えるのである。
「なるのよね」
「特に顧問の先生だろ」
「先生よね、確かに」
「だろ?顧問の先生って大事なんだよ」
「やる気のない先生も問題だけれど」
「それだとまだいいよ」
 まだやる気がなく部活に出ない顧問ならまだいいというのだ。確かによくはないがましだというのだ。こうした教師に比べてば。
「自分の成績が上がるからって部活を指導してな」
「そういう先生って本当にいるのよね」
「ああ、いるよ」
 美優はこれ以上ないまでに忌々しげな顔になって言う。
「自分が指導してる部活が強くなってもな」
「先生の評判ってよくなるから」
「それでだよ。部活の成績を上げる為に」
 生徒の為ではない。自分の為だ。
「部活に出て駄目な生徒とかを袋にする先生っているからな」
「そうそう、いるのよね」
「よく聞くし見てきたさ」
 美優は両手を己の頭で組みかばんは右肩に吊るした状態のまま言う。
「剣道部の顧問でいたんだよ、あたしの学校で」
「そういう先生実際に見たの」
「最低だったよ。傍から見てもな」
「具体的にどんなのなの?」
「もう生徒に床で背負い投げしたりな」
 まずはここからだった。
「後で聞いたらそれ柔道の技で柔道って畳の上でするものなんだよ」
「そういえばオリンピックとかで」
「畳の上でやってるよな」
「ええ、絶対に」
「あれ。畳がクッションになるからなんだよ」
 しかもここで受身を絶対に徹底して教える。全ては怪我をしない為だ。
「普通は畳の上でするんだよ」
「怪我をしない為になのね」
「うちの部活でも。前に言われたよな」
「うん、気を抜くなって」
「気を抜いたら怪我をするなってな」
 美優は琴乃とあのトレーニング中にゴールデンウィークのことを話して先輩に怒られた時のことを話した。それには確かな理由があったのだ。
「だから怪我ってのはさ」
「部活では絶対によね」
「避けないといけないんだよ。ましてな」
「床で背負い投げって」
「痛いだろ。聞いただけで」
「痛いってもんじゃないわよね」
「下手したら怪我じゃ済まないからな」
 後頭部を打てば後遺症が残ることも考えられる。少なくともまともな教師ならば絶対にしないことである。
「それやられたの同じクラスの奴だったけれどな」
「剣道部員よね」
「そうだよ。間違っても柔道部員じゃないさ」 
「それで背負い投げ?」
「無茶苦茶だろ?それ浴びせたのが何か顧問の機嫌が悪くてな」
「それ有り得ないから」
「そいつも部活にあまり出てなかったみたいだけれどさ」
 床で背負い投げを受けた美優のクラスメイトにも問題があったというのだ。だがそれでもだった。
「そんな死にそうなこと受ける理由はないよな」
「シゴキってレベルでもないわよね」
「だろ?とにかく勝つことだけ言ってたんだよ」
「勝つことだけ言うってやっぱり」
「勝てばその部活の評判が上がるんだよ」 
 ひいてはその顧問の評判がだ。 
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