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万華鏡

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第七話 お泊り会その一


                 第七話  お泊り会
 ゴールデンウィーク中も昼は部活だった。学校の授業はないがその関係で多くの者が学校に通う。琴乃もその中にいた。
 五人で校門を潜る。それから四人に対して言った。
「授業のない学校ってね」
「違和感あるよね」
 部活の経験のない里香はこう琴乃に返した。彼女は琴乃の右隣にいる。中央には美優がいて琴乃は彼女の右隣にいるのだ。
「何かね」
「里香ちゃんはそうなの」
「ええ。土曜日曜でもそう思ったけれど」
「そういえば里香ちゃん部活は高校からだったね」
「それでね。そう思うのよ」
「確かに。私も最初はね」
 中学のバスケ部で日曜にはじめて部活に行った時のことを思い出しての言葉だ。
「何か違うかなって」
「校舎の中に人はいないし」
 気配はない。普通の校舎には。
「それにね」
「それにって?」
「来る人達も制服だけれど」
 持っているのはそれぞれの部活で使う道具だけだ。教科書やノートが入れられている鞄、八条学園高等部のそれはも持っていない。
 そうしたものを見てだ。そのうえで言うのだった。
「平日と違うから」
「うちの学校登下校は絶対に制服だからね」
 部活の服やジャージでのそれは許されていないのだ。
「鞄だけがなくて」
「それが何かね」
 違和感があるというのだ。里香にとっては。
「いつもと違うなって」
「そうね。けれどそのうちね」
「慣れるのね」
「うん、慣れるよ」
 それは大丈夫だというのだ。
「すぐにね」
「そうなのね。慣れるのね」
「いつもこうして土日も通ってるとね」
「そういえばうちの部活ってあれよね」
 美優の左隣にいる彩夏が言ってきた。
「これまで土日はなかったわね」
「四月の間はそうよね」
 その彩夏の左隣にいる景子も言う。
「なかったわよね」
「何か二年と三年の先輩達が皆路上ライブに行ってて」
「その関係らしいけれど」
「そんなに路上ライブに力入れてるのね、うちの部活って」
「顧問の先生達も皆一緒に出てね」
 それで四月は土日には部活がなかったというのだ。
「それでだったのね」
「それで土日はそれぞれで自主トレで」
 一応そういう名目だったが実質的には休部だった。琴乃達はそれぞれの家で演奏の話等をしていたのだ。
「そうしてたわよね」
「一年の路上ライブはまだだから」
 流石に初心者も多いのにそれはなかった。
「だから私達はね」
「部活なかったのね」
 そういうことだった。ここで美優が言った。中央の彼女が。
「けれど五月、ゴールデンウィークが終わるとあるらしいからな」
「土日も部活がね」
「あるのね」
「ある時とない時があるみたいだな」
 この辺りはまちまちだというのだ。
「それである時は今日みたいにな」
「登校するか路上ライブの現場にそのまま行くのね」
 琴乃が美優に尋ねる。自分の左隣にいる彼女に。
「そうよね」
「そうみたいだな。まあその辺りは先輩達か先生に聞いてな」
「それでよね」
「あたしじゃわからないことも多いしさ」
 リーダーでも一年は一年だった。それならだった。
「先生に聞くのが一番だよ」
「そうね。そこはね」
「ああ、そういうことでな」
「ゴールデンウィークが終わったら土日もね」
「いい部活だったら有り難いんだよな」
 美優はその手を己の頭の後ろに置いて組んでから言った。
「この部活は先生も先輩もいい人達だからな」
「その点は、よね」
「ああ、楽しい土日になりそうだよな」
「部活がいいとそうなのよね」
 琴乃もこのことを言う。
「土日も充実していいのになるのよね」
「だろ?けれど逆もあるよな」
「うん、それはね」
 あるとだ。琴乃もその場合は暗い顔で否定しなかった。 
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