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万華鏡

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第十六話 プールと海その十


「あんな風になったら」
「風が吹いても痛いっていうけれど」
「だって脂肪だけでなくて筋肉もなくなるのよ」
 骨と皮の間にあるべきそれがだというのだ。
「それで痛くない筈ないでしょ」
「ええ、確かに」
「そこまでなったら奇麗じゃなくて」
 また言う彩夏だった。
「怖いわよ」
「そうよね、怖いわよね」
 琴乃も彩夏のその言葉に真剣な顔で頷く。
「私も筋肉はないと」
「ダンスも出来ないわよ」
「プラネッツは確かにダンスはメインじゃないけれど」
 それでも踊るのは琴乃だ。
「踊れないとね」
「筋肉がないとどうしても無理よ」
「脂肪だってね」
「ないと困るわよ」
 今言ったのは里香だ。
「脂肪率も極端に少ないと」
「駄目なのね」
「太り過ぎも痩せ過ぎもよくないの」
 つまりバランスだった。里香もこのことを琴乃達に話す。
「気をつけてね」
「ええ。それにしてもね」
 琴乃は里香の言葉に頷きながら話題を変えた。今も窓の外に降っている飴を見て四人に話したのである。
「飴多いわね」
「今日甲子園大丈夫かしら」
 景子もその窓の外を見て言う。
「今日の試合は」
「一応もうすぐ晴れるみたいって天気予報は言ってるけれどな」
 美優も浮かない顔でその窓の外の雨を見ている。
「けれどグラウンドがな」
「使えないわよね」
「ああ、駄目だろこれは」
 美優はこう琴乃に言った。
「そういえば最近甲子園に行ってないな、あたし」
「あっ、私もそういえば」
 琴乃も美優の今の言葉に気付いた。
「甲子園にはね」
「一塁側での応援が最高だけれどな」
「うん、球場が揺れる位だから」
「晴れた日に行きたいな」
「そうよね。久し振りに応援したいわね」
 五人共当然の様に阪神ファンだ。神戸や大阪、関西にいては阪神ファンであることは当然のことである。
「リアルで」
「次の日曜だけれど」
 景子が琴乃と美優に言ってきた。
「また試合あるわよ」
「甲子園で、よね」
「ええ、あるけれど」
「相手何処?」
「巨人よ」
 人類の普遍の敵が相手だというのだ。
「あのチームよ」
「ああ、絶対に勝って欲しいわね」
「行ってみる?日曜に」
「晴れだったらいいけれど」
「ちょっと待ってね」
 今度は彩夏が自分の携帯を取り出して調べる。その結果は。
「晴れるみたいよ、日曜」
「そうなの」
「じゃあ行ってみる?」
 彩夏もこう言う。
「日曜」
「まあ晴れだったら」
 琴乃が応える。
「それじゃあね」
「私も。実は」
 里香もおずおずとした調子で言ってくる。
「受験の時から甲子園行ってなかったし」
「じゃあ里香ちゃんもよね」
「応援いいわよね」
 里香はにこりと笑ってこう琴乃に述べた。
「阪神の応援はね」
「そうよね。それじゃあ五人でね」
 五人全員でだった。甲子園でも。
 このことを話してそうしてだった。琴乃は四人に笑顔でこう言った。 
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