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八条学園怪異譚

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第二話 嫉妬その六


「お料理とか家事と。かるただけじゃない」
「全国大会じゃない」
「聖花ちゃんも出てるじゃない」
「私もって」
「私、聖花ちゃんに何も勝ってないのよ」
 その劣等感を口に出していくのだった。
「全然。そういうこと以外は」
「あの、だから」
「そんな私に何があるのよ」
 まだ言う愛実だった。その顔を曇らせたまま聖花自身に言っていく。
「そんな。いいところとかって」
「ええと、愛実ちゃん」
「そんなのないから」
 あくまでだ。愛実は聖花の言葉を拒もうとする。
「本当に何も」
「ちょっと御免ね。何か」
 ここでだ。急にだった。
 聖花は話の途中だがその中でだ。制服のポケットから何かを出してきた。それは長方形で丸みがある青いケースだった。
 そこから眼鏡を出した。青い縁の眼鏡だ。愛実はその眼鏡を見て言った。
「あれっ、眼鏡?」
「ちょっとね。最近ね」
「視力落ちたの?」
「そうなの。あまりつけたくないけれど」
「それでもなの」
「ええ。やっぱり見えにくいから」
 それでだというのだ。
「それでなの」
「眼鏡かけてるの」
「春休みに買ったの」
 それでだ。今持っているというのだ。
「これからは授業の時とかはね」
「眼鏡かけるのね」
「普段はあまりかけたくないけれどね」
「どうしてなの?」
「何か。邪魔だから」
それでだとだ。聖花は少し苦笑いになって愛実の質問に答えた。
「だからなの」
「邪魔になるの」
「結構ね。眼鏡ってわずらわしいわよ」
「ふうん、そうなの」
「愛実ちゃん目の方は」
「あっ、私は別に」
 視力に問題はなかった。愛実の目は両方とも一・五だ。
「ないわ」
「じゃあ眼鏡はかけないのね」
「そういう心配はないわ」
「そうなの。いいわね」
「眼鏡ってわずらわしいの」 
 聖花は少し困った顔で話す。
「結構ね」
「そうなの」
「けれど視力が落ちたから」
 それでだ。仕方ないというのだ。
「コンタクトの方がよかったかしら」
「どうかしら。その辺りは」
 愛実は首を少し捻りながら聖花の言葉に応えた。
「少し難しいかしら」
「難しい?」
「うん。眼鏡は確かにかさばるけれど」
「コンタクトはコンタクトでなのね」
「小さいじゃない。それがかえってね」
「あっ、なくしやすいのね」
「そう。かさばるってことは目立つってことでもあるから」
 それでだとだ。愛実は聖花に話す。こうしたことは整理整頓を得意とする彼女の独壇場であると言えた。
「だからね。眼鏡の方がね」
「なくしにくいのね」
「そう思うわ。それにね」
「それに?」
「コンタクトって。話を聞くけれど」
「寝る時に入れたままとかにしておくと?」
「危ないって聞いてるから」
 愛実は聖花のその奇麗な、澄んだ目を見ながら彼女に話した。 
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