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八条学園怪異譚

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第九話 職員室前の鏡その四


「その時間にね」
「出るのよね」
「そうみたい。それでどうするの?」
「どっちにするか」
「私はどっちでもいいのよ」
 愛実はそうだというのだ。
「鏡で博士のところでもね」
「そうね。それじゃあ」
「それじゃあ?」
「この十円玉をね」
 聖花は自分の制服のポケットから何かを出してきた。それは財布だった。
 財布から茶色の十円玉を出してきた。それを愛実に見せながら言う。
「よし、これでね」
「あっ、表か裏でね」
「どっちかで決めるのね」
「そう。表が出れば鏡で」
 そしてだった。
「裏が出ると博士のところ」
「それでいくのね」
「同じ日に行ってもいいけれど」
 放課後に博士のところに行き十二時に鏡の前にというのだ。
「それもね」
「部活休むことになるしね」
 愛実は聖花にこのことを指摘した。
「博士のところに行くのなら土日・・・・・・は博士も大学にいないわね」
「大学は土曜でも講義あるところはあるらしいけれど」
 これは講義による。
「けれど滅多にないから」
「そうよね。博士も土曜日はいないと思った方がいいわね」
「日曜は間違いなくね」
 それは確実だった、日曜にいないのは。
「だから出来れば部活のない日にね」
「行けばいいわよね」
「今日は部活あるし」
 博士の場合はこのことがネックだった。二人は怪談やそうしたことを調べることも好きになっていたがやはり部活を第一に考えているのだ。
「部活に出ないとね」
「そう、駄目だから」
「じゃあ今日はね」
 聖花はコインを手にしたまま言う。
「鏡にする?」
「そうする?」
「そうね。それじゃあね」
 愛実も聖花の言葉に頷く。そうしてだった。
 今日は十二時に普通科の鏡の前に行くことにした。そのことを決めてからだ。
 部活の時に二人でかるたをしながら愛実が言ってきた。
「あのね」
「あのねって?」
「鏡って昔から色々言われてるわよね」
 愛実はかるたをじっと見ながら向かい側に座って同じくかるたを見据えている聖花に言った。二人の目はかるたに集中している。
「そこから何か出て来るとか」
「悪魔とかよね」
「西洋のお話だけれどね」
 悪魔といえば西洋だ。だからここではそうなった。
「あと吸血鬼は鏡に映らないとか」
「あっ、映画ね」
「そう。映画でよくあるわよね」 
 愛実はハリウッド等の映画の話をした。吸血鬼は死者であるので鏡にその姿は映らないのである。
「それに悪魔以外にも」
「何か出て来て引き込むとか」
「そんな怖いお話が一杯あるから」
 それで言うのだった。今ここで。
「用心した方がいいかも」
「この学園にいる妖怪や幽霊の人達っていい人達ばかりらしいけれど」
「例外って何にでもあるでしょ」
 愛実はかるたを見据えながら言う。
「本当に何でもね」
「そうね。じゃあ今回も」
「日下部さんにね」
 ここでも彼の名前が出る。二人にとって日下部は非常に頼りになる先師になっていた。教師ではないがそうした存在になっていた。
「一緒に来てもらう?」
「その方がいいかしら」
「だって。若し変なのが出て来たら」
 悪魔や鏡の中に引き摺り込む存在がだというのだ。 
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