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転生者達による神世界開拓記

作者:三島 渓山
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東方
国譲り編
  第十一話






 ちょっぴり羽目を外した日から数日の間、俺は香苗に霊力の操作を教えながら過ごしていた。今は寝床で物思いに更けている。



 「そろそろとんずらしようかな……」



 まるで夜逃げするような奴の考えだ。しかし、こうでもしないとこの展開を進められなくなったからな。



 「よし、そうしよう」



 思い立ったら吉日、昔のお偉いさんだか知らないけど良い言葉を残してくださった。明日出て行こうじゃないか。



 「ぐー……」



 思えばこれはフラグだったかもしれない……。





 ~~~~~~





 ……廊下が煩いな。何かあったのか?



 「永巡様!永巡様!」

 「なあに……そんなに慌てて……ふぁあ~」



 香苗が慌てて俺に宛がわれた客室に雪崩れ込んで来る。はっきり言って眠い……。



 「八坂神奈子が攻めて来ました!」

 「ああそう……え゛?」



 八坂神奈子が攻めて来た?八 坂 神 奈 子 が 攻 め て 来 た? (←大切な事なので二度言いました)



 「諏訪子はどうしてる?」

 「迎撃に向かいました!」

 「何処にだ?」

 「ここから南東です」

 「あの湖周辺か……俺も向かうしかないな」



 襖を開け、舞空術さながら宙に舞い出る。



 「めぇいっぱい飛ばせぇー!」



 ベジータさんリスペクトっす!





 ~~~洩矢神社付近の湖~~~





 大魔導典籍(ユングドヴァン)を発動させ、更に加速すればうっすらと諏訪子の姿が見えてきた。



 「もう始まってやがったか」



 状況はやはりというか諏訪子の方が不利だった。服の所々が赤く染まっている……大分やられてるな。



 「諏訪子!」

 「永巡……かい?」

 「今そっちに……」



 行く、と言いかけた所で諏訪子が手で制してくる。手を出すなという事か?



 「……分かった」

 「ありがとう永巡……待たせたね八坂」

 「別に二人でも構わんのだぞ?」

 「それで勝っても嬉しくないやい」

 「そうか」



 少ない言葉を紡いでまた戦い始める。この勝負が決着するまで実に数時間はかかった。





 ~~~洩矢神社~~~





 俺は倒れた諏訪子を背負い、八坂を引き連れて神社に帰って来た。すると向こうから香苗が心配そうな顔で走ってきた。



 「はあはあ……諏訪子様は?」

 「負けた……多少傷ついているが死んではない」

 「そうですか……」



 ホッとしている……普段は毒舌なのに素直じゃないな。



 「……それでこちらの方は?」

 「八坂神奈子、東の大将だ」

 「八坂神奈子だ」

 「はぁ……諏訪子様と違って貫禄というか、威厳がありますね」

 「「…………」」



 確かに……長身、巨乳、標縄、言動と全然諏訪子と違う。



 「そんな事はどうでもいい。私は……」

 「あっ、私に小難しい事を聞かれても分かりませんので。全部諏訪子様と相談して決めてください」

 「……分かった」

 「諏訪子様が起きるまで上がって行ってください」



 香苗は八坂を神社に上げる。なかなか度胸あるよね。



 「永巡様は諏訪子様を寝室へ連れて行ってください」

 「了解」

 「では八坂様、どうぞこちらへ」

 「うむ」



 八坂を連れる香苗と途中で別れ、寝室で諏訪子を寝かせた。俺は諏訪子が目覚めるまでずっと待ち続けた。





 ~~~~~~





 結局、諏訪子は夕方になるまで起きなかった。起きた直後は、



 「ちくしょー!負けちまったー!」



 なんて、爽やか野郎が言いそうな台詞をのたまってた。元気がある証拠だからいいか。



 「……んで、何で俺がこの場にいなきゃいけないの?」

 「気にしない気にしない」

 「私も気にせん」



 二柱は気にしないらしい。ならいいんだけど。



 「先の一騎打ちでお前も見ただろうが私が勝った。此方の要求は分かっているだろう?」

 「八坂神奈子を信仰させろって事でしょ?どうぞ勝手にやっちゃって~」

 「……随分と軽いな」

 「諏訪子様……」



 香苗が頭抱えてる。威厳もへったくれもないからな……今の諏訪子には。前の諏訪子にもなかったけど。



 「成り上がりの土着神だからね。元々こんなに広い神社建てて貰えるなんて考えてもなかったし」

 「ふむ……では、勝手にやらせてもらおう」

 「頑張ってね~」



 八坂は早速と言わんばかりに出て行った。 



 「そううまくいくかな……」

 「どういう事ですか?」

 「諏訪子は祟り神だろ?」

 「……あ」

 「信仰を止めちまったら祟られる~、なんて考える奴が大多数だろうさ。だから八坂を信仰するのは難しいんじゃないかな」

 「あははは~永巡は偉いね~」



 さっきから諏訪湖の奴軽いな。負けた事がそんなにショックだったのか?



 「香苗」

 「何でしょうか?」

 「八坂がここで暮らすかもね」

 「……は?」

 「多分八坂は業を煮やしてこっちに来るよ。信仰が貰えないって」



 ドラえも~んみたいにか?



 「どうするんですか?」

 「私にいい考えがあるよ」



 後は原作通りで表に神奈子(←呼んでいいと仰ってた)、裏に諏訪子という変な政治になっていた。香苗は混乱していた事は完全な余談だ(笑)
 
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