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世にも不幸な物語

作者:炎花翠蘇
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第十二章『新たな外界人』

 輝が里で働き始めて数日がたった。仕事の内容は様々、だけど基本は頼まれた仕事は遣っている。つまり万屋だ。料金は決めず「あなたのお気持ちで」をキャッチフレーズにしている。お金は勿論のこと食べ物や衣類などを貰って経営している。その御かげで博麗神社は以前より安定している(金銭的に)。毎日里に出向き、依頼を受け、その日に遣る。その日出来なかった依頼は次の日に、といった感じに動いている。
 仕事をしてから変わったことがある。一つ目が早起きになった事。いつもなら十時や十一時に起きるのだが仕事を遣りだしたら日が出る前に起きてしまう。二度寝しようとしても目が覚めてしまい、他にすることもないから朝ご飯を作ったりする(屍に手伝って貰っている)。それが霊夢に好評で今ではもう家事全般を輝がこなしている。当初輝も「何故、家事全般俺が?」と疑問に思ったが今では体を動かしていないと落ち着かないというまで家事が板についてしまった。二つ目は風と零がニート化し始めている。二人は朝起きるのも遅い霊夢は輝の少し後に起きる。直ぐに外に行ってしまう。雨が降ればダラダラと過ごす。引きこもらないのがせめてもの救いだ。
「うん♪今回も上手く味噌汁が出来たな。さて、二人を起こしに行きますか」
 味噌汁の味を確認し、二人の部屋に向かう。




「今日も仕事?」
「いや、昨日で依頼は片付けたから今日は依頼探しです」
「たまには休みなさいよ」
「考えておきます」
「あんた等も輝を見習って働きなさいよ」
 寝起きの風と零に喝を入れる。
「やることがねぇんだからしょうがないだろ」
 半ばやけ答える風。
「俺は風呂沸かしたり、火おこしたり、雨降った時は洗濯物乾かしてるけど?」
「アレは本当に感謝してる。部屋干しだと湿気って気持ち悪くなるからな」
「つまり・・・」
 三人はあることに気付き。
「「「・・・・・・・」」」
 そして風を静かに見つめる。
「おい!なんだその『うわぁマジ使えねぇぇ~』的な視線は!!」
「事実だ」
「う・・・」
 零の言葉に風は口ごもる。
「霊夢だってな―――」
「家主よ」
「家主だぜ?」
「家主だね」
「チクショ――――――ッッ!!」
 今日の絶叫も絶好調であった。



「ん~~・・・はぁ、今日もいい天気だ」
 箒を片手に気持ちよく背伸びをする。今日は久々に休む事にした。霊夢に言われたからもあるが根を詰め込み過ぎるのも体に悪いと思ったからだ。
 だが、体を動かしてないと落ち着かないから境内の掃除をしている。霊夢は半場呆れてはいたが喜んでもいた。
 今現在、博麗神社居るのは輝だけ。霊夢は修行に行き、萃香はいつの間にか居なくなっているのがたまにある。風と零は朝食を食べたら直ぐに外に出て行ってしまった。スペルの修行とか言って。風と零の行動は誰にも迷惑かけているでもないからこれといって強くは注意しない。博麗神社に引きこまれるよりはありがたい。
「さてと、掃除開始だ」
 だから今朝のやり取りは自分の立場が分かっているか確かめたかったからだ。だが本当の所は風を弄りたかったためでもある。
「串にささって~だんご♪だんご♪ 3つならんで~だんご♪だんご♪」
 懐かしの曲を歌いながら軽快に掃除を始めた。この掃除も日課になりつつある。




~少年熱唱中~




「三日月がたの とくべつチケットに 金いろ銀いろ クレヨンで~♪」
続いての曲に入って熱唱していたら
「うわっ!」
 と誰かの悲鳴が聞こえた。
「だれがくるかニャ♪・・・・・ニャ?」
 一旦歌を中断して声がした方へ耳を傾ける。すると階段の下の方から誰かがもがいているような物音が聞えた。
「何だろう?」
 気になり階段を下りていく。
 下の辺りまで降りて見るとそこに居たのは輝と同年代の青年がいて黒い塊に押し倒されていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 余りにもの異様な光景に思考が付いて行けなかった。
 これは黒い塊を妖怪として捉えていいのか、それとも黒い塊を物として捉えていいものか。そもそも黒い塊が妖怪だとしたらどう対処するべきか。
 などと必死に思考をフル回転させこの状況を把握しようとした。
「おい」
 黒い塊に押し倒されている青年が輝に気付き声を掛けたが。
「ちょっと待ってください。今この状況を必死に考えているので暫し・・・」
 と額に手を置き考えていた。
「いいから早く助けろよ!」
 その行動を見ていた青年は若干苛立ち、怒鳴りつけるように言った。
「え、は、はい」
 この状況を考えるのを後回しにして救出を最優先した。








 黒い塊はルーミアと言う闇を操る妖怪らしく押し倒した青年を食べる所だったらしい。何とか説得をしとりあえず持っている飴で事を収めた。ルーミアは「人間は食べちゃだめなのかー」と言いながらフヨフヨと木にぶつかりながら森に帰っていった。
「助けてくれてありがとな」
「別にお礼言われることはしてませんよ。めっちゃ動揺して助けるの遅れた訳だし」
「いや、それでも礼を言わせてくれ」
 助けた男の名は(しん)。歳は17で輝たちと同い年。黒っぽいジーンズに黒のワイシャツを着ていて裾はだしっぱなし。怖そうに見えるが礼儀正しい。
 何故博麗神社でルーミアに襲われていたか尋ねると、博麗神社に御参り来たらルーミアが襲って来たらしい。
 まさか博麗神社(ここ)に御参りに来る人が居るなんて。霊夢が聞いたら喜ぶだろう。
「とこで真さんは」
「さん付けはよしてくれ。それに敬語も」
「分かった。真は何処に住んでんだ?里だと見かけないし服装も外界のに似ているし」
 真を見たときからの疑問だった。服装は輝たちの知る外界に似ているし、里は依頼で良く行くから全てではないが大体の人の顔は覚えたが真は見かけた覚えが無い。
「俺は幻想郷(ここ)の人間じゃない。外界から幻想入りさせられた人間らしい」
「らしい?」
「記憶がないんだ・・・・。ここに来る以前の記憶が・・・・」
「え・・・」
 まずい事を聞いてしまった。輝は言葉を詰まらせる。
 困惑する輝を察したのか真は明るく話した。
「ま、気にしてもしゃーないから今を楽しく過ごしているさ」
「そう・・・・なんだ」
 本人が気にしていないと言っているのだからこれ以上気にしたら迷惑だろう。他人が口を出してどうこう出来る問題でもないだろうし。
「んで、俺が倒れて入るのを見つけてくれたのが紅魔館の人なんだ」
「紅魔館!?」
「ん?知ってんのか」
「え、ええ一様・・・・」
「正体が分からない自分を助けてくれた。俺はこの恩を一生忘れない」
 気が付いたら見知らぬ土地で記憶が無い。自分だったら絶望に突き落とされていたなと思う。紅魔館の人達は良い人だなと感じた。
「そして今はその紅魔館にご厄介になっている」
「お互いに苦労してんだね。でも真の方が辛いか・・・・」
「お互いにっつうことは輝も苦労してんのか?」
「真ほどでわないよ」
「気になるな~話してくれ」
「え~・・・まぁいいけど」
 今まで体験したことを真に語る。
 訳も分からず幻想入りしたことやいきなり刀を持った女性に斬り殺された話等々を愚痴交じりで語りつくした。
「たっはっはっはっはっはっは!!」
「笑わないでよ。こっちはこっちなりに辛いんだから」
「は~~~~ははは、いや~すまんすまん」
 腹を抱えて目じりを擦りながら謝罪する。
 そんなに面白可笑しく語った訳では無いのだがと悩む。
「さて、そろそろ帰るわ。同じ外界の人間と話せてよかった」
「いつでも遊びに来いよ。基本博麗神社は暇してっから」
「ああ、そうする」
 真に飴を数個渡し見送った。





 その夜、霊夢たちに昼間のことを話した。予想通りに霊夢は喜んだ、が賽銭箱を確認したらつまらない顔をして「シケてるわね」とぼそっといった。輝は巫女として大丈夫かと本気で心配した。
 夕飯を済ませて風と零に部屋に来て貰い真と言う東方キャラクターは入るかと聞いてみたが、そんなキャラは知らんと帰ってきた。
(もしかして物語(未来)が変わり始めたか?)
 これからの行動に気お付けなければならないと輝は静かに思う。








輝は気付かない



これから起こる幻想郷の異変を



輝はまだ気付かない



これから起こる自分の悲惨な運命に



まだ気付いていない・・・・・気付いてはならない・・・・・






 
 

 
後書き
次はいよいよ紅魔館編♪
無事書けるか不安です(- -;) 
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