| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

永久の別れと楽しかった思い出

大宴会の翌朝…
その日はハツキさんの重大発表から始まった。
「リュカさん…皆さん…一緒に世界中を冒険出来て楽しかったです。でも、今日でお別れです!アルル…世界の平和を手に入れたのだから、次は貴女の幸せを手に入れる番よ!」

どういう事なのか…?
決意に染まった表情で、私達と今生の別れを宣言します。
何で!?ハツキさんは、此処アレフガルドに残るかグランバニアに来るのだろうから、全員とのお別れじゃないよね!?

「ハツキ…どういう事なの!?」
「アルル…私ね、ルビス様にお願いしたの。『もっと強くなりたいから、別の世界へ送ってください』って!だからアレフガルドに残る事も、リュカさん達と一緒に異世界(グランバニア)へ行く事もないのよ」
つ、強くなりたいって…

「ウルフ…頑張ってリュカさんの義息(ムスコ)になりなさいよ!世界一大変な役職に…」
ハツキさんは弟の様な存在のウルフを抱き締め、別れの悲しさに涙する…
強くなる為に別の世界へ行く必要ってあるの!?

「ハ、ハツキ…どうして…一緒にグランバニアへ「言ったでしょ。私はもっと強くなる為に、新たな世界で修業するのよ!」
普段は子供扱いするハツキさんを鬱陶しがってたウルフだが、血の繋がりが無いとは言え姉との永遠の別れに、抱き付いて泣き出してしまう。

「ルビス様…私はもういいですよ。これ以上いても別れが辛くなりますし…」
だがハツキさんの決意は揺るぎない物で、暫くウルフを抱き締めると、一転して彼を遠ざけルビスちゃんに実行を願い入れる。

「ハツキ…新たな世界でも頑張れよ!自ら選んだ人生なんだから、自身に負けるんじゃないぞ!」
『黄金の爪』と『星降る腕輪』をハツキさんから返却され流石に驚いていたが、彼女の自由意志を尊重させるべく、お父さんは笑顔で送り出す。

「リュ、リュカさん!何でそんな簡単に納得出来るんですか!?強くなるって言ったって、別の世界に行かなくたってリュカさんが鍛えてやればいいだけでしょう!」
違うよウルフ…お父さんも本当は一緒に居たいんだと思う。
それでも彼女の自由意志を束縛する事の方が、お父さんには嫌なんだよ。

「ウルフ…自分の都合ばかりを言うな!ハツキだって色々考えた結果、この答えを出したんだぞ!寂しい気持ちはよく分かるが、ここは笑顔で送り出してやろうよ…」
「………うぅぅぅ……ハツキー!!!」

折角のイケメンなのに、顔を大きく歪ませて泣くウルフ…
再度ハツキさんに抱き付き、彼女を困らせる。
本心を言えば私も別れたくないけど、グランバニア行きを強制したら、彼女は心が不幸になると思う為、抱き付くウルフを離れさせ笑顔で語りかける。

「さぁウルフ…笑顔でお別れを言おうよ…」
彼も分かってはいるんだ…でも心が別れを嫌がってるんだと思う。
「…うん…」と、か細く答えると、泣きながらハツキさんと距離を取った。

「ふふ…ウルフは良い彼女を見つけたわね。でもリュカさんみたいないい男に早くならないとダメよ。大人で頼れるいい男にね!」
彼女も泣きながら自身の決意を優先させるべく、ルビスちゃんへと向き直り実行を急かす。

「ではハツキ…今までに経験してきた事は貴重な体験です。それを忘れず、新たなる世界でも頑張ってくださいね!」
ルビスちゃんも空気読んでほしいわね!ハツキさんは声を出すと泣き出してしまうんだと思うわ…だって無言で頷くだけなんだもん。

それでも我慢しきれなかったのだろう…
ルビスちゃんが唱えた魔法の光に包まれて、顔を歪めて号泣するハツキさんが目に焼き付いた。
私は彼女の泣き顔を忘れない…だからウルフと永遠を共にするんだ!











「さて…後は僕等だね…」
「そうですね…それで、何方が此処に残られるのですか?」
少し…いえ、大分しんみりした雰囲気になっていたラダトームの宿屋の大食堂…
その雰囲気を払拭させるべく、お父さんが明るい口調で語りかけ、ルビスちゃんもそれに合わせて喋り出す。

「そ、その事ですけど父さん…僕とアルルは共にグランバニアへ行く事になりました…」
「え!?何言ってんの?折角家族が一緒になれたのに、何でアルルをグランバニアへ連れ去ろうとするの?」
あぁ…そっか。この二人は、どちらで生きるのかを選択制になってたんだっけ。
私は勝手にグランバニアへ一緒に帰るもんだと思ってたわ。

「昨晩…オルテガさんを交えて話し合った結論です!僕とアルルは此方に残るよりグランバニアへ行ったほうが良いと、結論を出しました!」
何で?王子様の地位の方が良いって事?

「……………」「……………」
お父さんはオルテガさんを厳しい顔で睨んでいたが、暫くすると無言で頷き、
「そうか…オルテガっちの考えは解った…そう言う事なら僕は大歓迎だよ」

私には分かりません?今度ゆっくりと聞いてみたいと思います。
お父さんが教えてくれなくても、お兄ちゃんは教えてくれるでしょう。
きっと何か重要な理由があるのでしょうね。





「さて…ラングはどうすんの?ロマリアに帰れなくなっちゃったけども…どうせお偉いさんに嫌われてるんでしょ?僕達と一緒にグランバニアへ来る?本心はイヤだけど一応誘っとくよ」
私が別の事を考えてると、話はサクサク進んだみたいで、残りのメンバーの進路設定に話は移る。

「お心遣い痛み入ります。しかし本心を聞いてしまっては………是が非でもグランバニアへ行かねばならないでしょうね!これからもよろしくお願い致します!」
「………」
良いわね。ラン君もグランバニアへ来るなんて…楽しくなりそうじゃん!

「めんどくせぇ奴等がみんなグランバニアへ集まって行く…やっぱりこっちに残ろうかなぁ…」
凄く酷い言い様だけど、誰も反論出来ないお兄ちゃんの一言。
オルテガパパに助けを求めるけど、“シッシッ”ってされ見放されてる(笑)

「あはははは、諦めろティミー!帰ったらお前は王子として国民に発表してやる…ラングはお前の部下にしてやるから、喜んでプリンスライフを堪能しろよ!」
「げぇー!」
あぁ…大分お父さん色に染まって胃薬の使用量も減ったのに…これでまた増えるわね。

「よろしくお願いしますティミー殿下!私の経験上、私の上司になった方々は、80%の確率で過労と胃潰瘍になっておりますので、そこんところ留意くださいませ!」
残りの20%が気になるわ。
どんな精神の持ち主だったのかしら?

「おいカンダタ。大笑いしている場合じゃねーぞ!お前は絶対に連れて帰らないからな!」
他人事の様に馬鹿笑いしているカンダタに、お父さんが厳しい一言で先制パンチ。
カンダタはお父さんの事が苦手だろうから、言われなくてもグランバニアへは来ないだろうと思う。

「な…べ、別に俺はこっちに残るつもりだけど、そんな言い方ねーだろ!」
でも言い方が気に入らなかったのね…
まるでグランバニアへ行きたい様な台詞になっちゃってるわ。

「すまんすまん…つい感情が表に出ちゃったみたい。でもお前を連れて行かないのには理由があるんだよ」
大事な息子をからかう馬鹿だから…ってワケじゃなさそうだ。
馬鹿(カンダタ)を宥めながら語る話に興味津々!

「僕の世界にも『大盗賊カンダタ』ってのが居たんだ。もっとも、もう死んじゃってるけどね(笑)」
「何でそこで笑うんだよ!?」
「うん。だって殺したのは僕だし(大笑) ちょ~うけるよね~!」
どういう神経をしてるんだ!?本人を目の前に、殺した事を爆笑するって…

「ぜ、全然笑えねーよ!俺とは他人だと判っているけど、いい気分じゃねーよ!それに殺す事は無かったんじゃねーのか?アンタ何時もやりすぎなんだよ!」
「え~…だってぇ~…あの馬鹿、僕の家族を殺すって言ったんだよ!そんな事を言われたら、生かしとくワケにはいかないでしょう!?」
あ、それはカンダタが悪い…お父さんは家族の事が大好きだから。

「う…わ、分かったよ…た、確かにそっちのカンダタは、地雷踏んだよ……でもさぁ、そっちのカンダタが死んでいるのなら、俺が行っても問題なくね?」
そういやそうだ…是非とも来て欲しいとは思わないが、断固拒絶する理由も無い。

「そう言う訳にもいかないよ」
やっぱ“息子を馬鹿にする”からか?
何度殺さずに、命を助けてやったか分からないからか?

「僕の世界のカンダタはね、世界各地で悪行の限りをやり尽くしたんだ。『カンダタ』って名前だけで、人々は忌避する存在なんだよ。『死んだカンダタとは別人ですよー』って言っても、みんな憎しみを拭う事は出来ないんだよ…」

「確かにそうかもしれねーな………でもよ、それだったらこっちの世界でも同じだろ!?でも各国の王様に頼んで、改心した事を広めてもらえたから、大きな問題も起きなかったんだぜ!旦那はグランバニアの王様なんだろ!?世界中に『カンダタは良いヤツ』って広めてくれれば、俺もそっちで暮らし易くなるんじゃねぇの?」

「えぇ~…ヤだよ、めんどくせー!何で僕がお前の為に、各国の代表等にお願いしなきゃならないんだよ?『その代わりに…』とか言って、めんどくさい事を押し付けられたらどうすんだよ!?お前、外交折衝をなめんなよ…くだらねー事でも、後々言ってくるんだぞ!」

「わ、悪かったよ…そんなに怒るなよ…どうせそっちに行く気は無いのだから、別にムリしなくてもいいって…」
だったら、そんなにしつこく食い下がらなければ良いのに…
お父さん、ちょっとイライラよ。



さて…後はミニモンとアホの子だけね…
ぶっちゃけ私としてはどちらも置いていきたいけど、モンスターが普通に人間と生活出来る環境ってグランバニアぐらいなもんでしょ。

ミニモンを連れて行くって事は、アホの子も連れて行かないと愚図りそうだし…
邪魔よねぇ……
本人も雰囲気を察知したらしく、『ラーミア、リュカと一緒に行くゾ!リュカと逢えないのはイヤ!まだセッ○○してないんだゾ!』って叫ぶし…
将来、アホの子から私の妹が生まれたりして(笑)





「これで永久の別れだなリュカちん…」
「ああ、アルルの事は任せてくれ。僕の自慢の息子が絶対に幸せにするから…」
短い間だったが、古くからの親友の様なリュカテガが、ガッチリと握手を交わし互いの別れを惜しみ合う。

息子(オレ)(むすめ)に手を出すなよ!(笑)」
「…………………………」
実の娘になら絶対に手を出さないが、血の繋がりがなければどうだろうか?

「な、何で黙るんだよリュカちん!」
「あははははジョークだよ、ジョーク!大丈夫、僕は他人(ひと)の女には手を出さない。勿論知らなければ手を出しちゃうけどね!(笑)」

果たして本当に冗談なのだろうか?
私はお兄ちゃんと顔を見合わせ、将来の不安を想像する。
尤もお兄ちゃんは真剣な表情で…私は半笑いでだけどね!


「ではリュカ…もうよろしいですか?彼方の世界で、マスタードラゴンが準備を整え待ってます」
「おう、そうだったね!あのヒゲメガネに会って、今回の落とし前をキッチリ付けさせないとね!」
う~ん…お父さん楽しそうだわ。

ルビスちゃんが呪文を唱え準備をしている間も、私達は互いに別れを惜しみ合う。
「それじゃぁアメリアさん…旦那さんを放しちゃダメよ!」
「うん…ビアンカさんも愛人なんかに負けないで!」

「おいウルフ…尻に敷かれないよう気を付けろよ!」
「流石はカンダタ!経験者の言葉は重みが違うぜ!」

「モニカさん。そいつが悪さしないように、キッチリ手綱を握っていてよ!」
「マリーこそ…あの男の弟子を彼氏にするのだから、気を抜くんじゃないよ!」

光が私達を包み、視界が消え去るその瞬間まで…
一緒に冒険をし、楽しい時間を共有した仲間と…
大好きな異世界の家族との思い出を胸に刻みながら…

もう…二度と会えない大切な人々の事を惜しんで。



 
 

 
後書き
明日も0:00に更新するよ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧