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魔術師の娘

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第四章

 小百合もそのことをわかったうえで唯にこう言うのだった。
「いいかしら。十八になった時にね」
「教えてくれるの?」
「そう。嫌だったらいいけれど」
「ううん、それは」
 母のその問いに娘は首を横に振ったうえで答えた。
「お母さん、私に魔術を教えてくれるのよね」
「そうよ。それでね」
「お店のこともアクセサリーのことも」
「勿論占いのこともね」
 そうしたことを全てだというのだ。
「そうするわ」
「それじゃあね」
 そこまで笑顔で言う。
「お願い。十八になったら」
「その時からね」
「私を魔女にしてくれるのね」
「そうよ。魔女の魔術は親から子供に受け継がれていくものだから」
「私がお母さんの娘だから」
「ええ、それでよ」
 小百合も唯を娘と思っていた。だからこその言葉だった。
「これからも宜しくね」
「うん、それじゃあ」
 二人で笑顔で言葉を交えさせて頷き合う。そうしてからだった。
 唯は十八の誕生日に母に地下室に入れてもらった。そこはまさに魔女の部屋であり様々な魔術書やその道具、それに部屋の中央には巨大な鍋もあった。漫画に出て来る魔女の部屋がそこにそのままあった。
 この日から唯は小百合に多くの魔術を教えてもらった。それはいつも通り優しく丁寧に教えてもらった。
 それを受けて唯は魔女になった。そしてある日のこと。
 買出しに行く途中に母にこう言った時にこう言い返された。
「魔女だからね」
「うん、箒でお空を飛んでよね」
「そうして行かないと駄目よね」
「魔女に箒はどうしてあるのか」
 それを言う小百合だった。
「それを考えるとね」
「お空を飛んで行かないとね」
「魔術は使わないと忘れるものよ」
 他のこともそうだが魔術もだった。
「だからいいわね」
「うん、それじゃあね」
「お母さんは唯ちゃんに魔術を教えられてもね」
「使うのは私よね」
「そう、唯ちゃんよ」
 魔術を使うから魔女だ。それでだった。
「魔女になるのはね」
「そうよね。それじゃあ」
「魔女、魔術師って言ってもいいけれど」
 小百合が言うこの辺りの定義は曖昧だった。魔術を使う者が魔術師でありその中で女性であると魔女になるのだった。
 その魔女である小百合は唯にこう言うのだった。
「魔術を使うからこそよ」
「だからなのね」
「そう、魔術を使うのよ」 
 何につけてもそうしなければだというのだ。そしてだった。 
 唯は実際に箒を使って空を飛ぶ。ゴスロリの衣装で箒に跨る彼女の姿は実に可愛らしい魔女だった。そして。
 まだつたない魔術で店のアクセサリーを作ったりタロット占いをしていった。そこでまた小百合に言われるのだった。
「私実はね」
「実は?」
「ずっと困ってたのよ」
 こうした話をしたのだった。場所は家の中、父は帰りが遅いので二人で夕食のビーフシチュー、二人で共同で作ったそれを食べながらだった。シチューの他にはポテトサラダと鮭のムニエル、それに御飯という献立だった。
 その中のシチューを食べながら小百合はこう唯に言うのだった。自分の向かい側の席にいる娘に対して。 
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