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アーチャー”が”憑依

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二十一話

 
前書き
えらい短いですが、切れ目を考えるとこれがベストでしたのですみません。
 

 
 波乱の修学旅行を終えたネギ達3-A。彼女達は旅行での興奮を僅かに残しながらも、いつも通りの生活を送っていた。そして、それはネギも例外ではない。

「そうらっ!」

「そんな攻撃ではやられんよ!」

 学園へと戻ってきたネギは通常通り、エヴァンジェリンへと指導を仰いでいる。今日も今日とて修行の締めに、割と全力の模擬戦を行っている所だ。だが、そんな中にも例外が一つ。

「あ、改めて見るととんでもないわね……」

「先生にエヴァちゃんすごいなー」

「あわわ、全然目で追えないです」

「まさかネギ先生がここまでの実力とは……」

 明日菜、このか、のどか、刹那の修学旅行で裏の世界へと関わらざるを得なくなった者達が二人の模擬戦を遠目に眺めていた。
 今日、彼女達がこの場に招かれたのは今後どうするのか……その方針を決めるためだ。

「隙ありだ!」

「ッ!」

 エヴァンジェリンのパワーに押されたことで生まれた一瞬の隙。そこに的確に放たれた彼女の蹴りは、ネギの体を数百メートルに吹っ飛ばした。まだやれるからと続けては泥沼にはまりかねない以上、これにて模擬戦は終了。クリーンヒットを先にあてたエヴァンジェリンの勝利だ。

「さて、どうだった小娘共。これが、お前たちの関わった魔法だ」

 数百年の時を生きる吸血鬼は、威厳のある声をもって、少女たちへと語りかけた。





「さて、早速だが本題に入る」

 世間ではゴスロリと呼ばれる衣装に身を包んだエヴァンジェリンは茶々丸の入れた紅茶で喉を潤すと、前置きもなく本題へと入った。事前に話しの内容を聞かされていた三人は、い住まいを正し目の前の少女を注視する。

「私とコイツで話し合った所、お前たちはこのまま魔法関係者になってもらうのが最適だという結論が出た」

「詳しく聞いてもええ?」

 関西の長の娘にして関東の長の孫。修学旅行で自分が狙われたことからこのかは自分が無関係ではいられないのだと理解している。だが、隣に居る友人二人はどうなのか。このかはそれが知りたかった。

「近衛に関してはいわずもがな。関西、関東両組織の長の血縁であり、また本人も類まれな魔力を有していることから関わらずにいる事はできないだろう」

 それは分かっている、といわんばかりに深く頷くこのか。それを刹那は苦虫を噛み潰したかのような表情で見ていたが、例えこのかが関わろうと関わらないでいようと自分は守るだけだと、表情を改めた。

「そして、次は神楽坂明日菜。お前だ」

 明日菜がピクリ、と僅かに身をよじらせる。無理もない。普段は3-Aのバカレッドとしてクラスの元気筆頭の彼女だが、今回の件は間違いなく人生を左右する大きな事態だ。さすがの彼女も、全くの普段通りにはできないだろう。

「貴様の持つ能力、魔法無効化能力は正に魔法使いたちの天敵だ。はっきり言って、近衛このかの魔力等より、よっぽど価値がある」

「それに、だ。いくつか気になることもある」

「そ、っか」

 明日菜も、どこか予感していた。自分は魔法から逃げられないそん漠然とした気持ちを今この場で言われる前から感じていたのだ。
 正直な所、明日菜は魔法に恐怖を感じていた。修学旅行中こそこのかを取り戻そうと必死で、そんなこと微塵も気にしていなかったが、ネギとエヴァンジェリンの模擬戦を見て死の可能性を垣間見てしまったのだ。
 だが、明日菜はそんな運命に抗おうとは思わなかった。自分と同じく、今から歩み始める友が居る。そしてなにより、今も此方を心配そうな顔でうかがっている子供先生。コイツなら、きっと自分たちを守ってくれる。そんな確信が、明日菜の中には既にあった。

「まあ、そうなっちゃったのは仕方がないし。これからよろしくね」

 だからこそ彼女は、これから世話になる人物たちへ最大の笑みを持って、頭を下げた。





「さて、最後だが……」

 エヴァンジェリンにジロリ、と睨まれて(本人にその気なし)のどかは目に見えて慌てた。元々人見知りの気がある彼女が、威圧を伴って睨まれればそうなったのは当然と言えよう。

「宮崎のどか。貴様が魔法に関わっていかなければならない理由は、そっちの二人よりは軽い。だが、馬鹿に出来ないのも事実だ」

 のどかの理由。それは彼女の元に出現したアーティファクトだ。絵日記、というコミカルな形態をとっているとはいえ、読心という力がどれほど強力なものなのか想像するのは容易い事だろう。
 アーティファクトは従者と主の相性によっても多少は左右されるが、やはり一番は扱う者の資質だ。例えネギが彼女と契約を解除しても、他の魔法使いと再び契約した際、またいどのえにっきが出てくる可能性は非常に高い。

「アーティファクトの収集家は多くいる。中には他者から奪ってでも、という輩もな。お前がそれを手に入れてからまだ数日しか経っていないし、使ったのは修学旅行での一件とこの別荘の中でのみ。だが、情報とはどこから漏れるか分からんからな」

 のどかとて、既に魔法に対する幻想など捨て去った。それだけのインパクトがネギとエヴァンジェリンの模擬戦にはあったのだ。
 怖い。魔法が。魔法と関わっていくことが。だが、それ以上に身に降りかかる危険を理解していないことが怖い。だから、彼女は勇気を振り絞る。前を向き、立ち向かうのだと己を振い立たせる。
 そして何より……目の前にいる少年と同じ場所に立ちたかった。恋する乙女は、時に想像を絶する力を発揮するのだ。



 この日、三人の少女が新たに魔法の世界へと足を踏み入れることを決意した。











 麻帆良内にある教会。そこで、一人の男が祈りを捧げていた。年は恐らく三十後半。煤けた茶色の髪に濁った灰色の瞳を持つ男だ。

「相変わらず熱心ですね」

 その男に背後から声をかける人物がいた。褐色の肌をシスター服で覆った女性。麻帆良に所属する魔法先生の一人、シスター・シャークティだ。

「いえ、私などまだまだです」

「ご謙遜を。貴方がここで一番の徒であると皆が知っていますよ」

 私の弟子も見習ってくれれば、とシャークティが続けて漏らす。男も悪戯ばかりしている少女を知っているために、若干の憐みの込められた視線でシャークティを見やる。

「それにしても、今日は何だか嬉しそうですね。何かいいことでも?」

「ええ。ようやくですが、私の望みが叶いそうなのですよ」

 普段無表情で過ごすこの男が僅かに醸し出す喜の気配を感じ取ったシャークティ。それを問われた男は今度こそ完全な笑みを浮かべてそう答えた。

「そうなのですか。貴方の望み……確か、誰かの願いを叶える手助けがしたい、でしたね」

「ええ。今まではどうすればいいのか分かりませんでしたが、先日ようやく思いつきました」

「それはよかった。貴方の願いは素晴らしいものです。どうか頑張って下さいね」



 ――――言峰神父。 
 

 
後書き
テストと学内企業説明会の日程をかぶらせるアホな大学があるらしい。
言うまでもなく私が通っている大学です。やつらめ・・・・・・就職させる気あるのか? 
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