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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第6話 異星人来襲

 東京郊外に設けられた巨大な建物。
 その建物には流星を象ったマークが施されてあった。
 科学特捜隊日本支部。此処がそうであった。其処へ今帰還する為にジェットビートルが向かっていた。
 ビートルの中からなのはと甲児はそれを見ていた。

「あれが科学特捜隊日本支部だよ」
「凄ぇ、俺初めて見たぜ」

 ハヤタ隊員の説明を聞き甲児となのはは窓に映るそれを見て感動の余り言葉がなかった。
 それを新鮮そうに見つめる科特隊のメンバー達。

「そりゃ初めてなのは当然さ。何せ此処は一般人は勿論、警視庁でも立ち入りは禁じられてるからな。君達は特別に許可されたのさ」

 アラシがそう言う。それを聞くと自分達はとても運が良かったのだと思えた。尚、ビートルの下ではマジンガーZが吊るされる形で運搬されている。
 このビートルとは凄い物だ。何せ20tもあるマジンガーZを軽々と運搬出来るのだから。もしかしたらこのビートルなら怪獣の運搬も出来るのでは? そう思える次第であった。
 そうしている間にもビートルは屋上に用意されていた発着場に着陸するとそのまま内部へと移送され、戻った直後に数名のスタッフがメンテナンスに入った。
 マジンガーZも勿論同じ様にメンテナンスを受ける事となった。
 特に外傷が見当たらないとは言えあんな怪獣と戦ったのだ。何かしら問題があってからでは間に合わない、と言うのが現場の判断だ。
 そんな訳でマジンガーZの整備を科学特捜隊の整備スタッフに任せ、甲児となのはの二人はムラマツキャップに連れられてある部屋にやってきた。
 それは所謂会議室の様な場所だ。
 広々とした会議室内にムラマツキャップと兜甲児、そして高町なのはの三人だけが居た。

「今回は君たちに多大な迷惑を掛けてしまい申し訳ない」
「いえ、私達も偶々其処に居合わせただけですし」
「そうそう、それよりハヤタさんも見つかった訳ですし良かったじゃないですか」

 謝罪するムラマツに甲児となのはがそう言う。それを聞いてムラマツもホッとした様に話題を変える。

「それじゃ話を変えるが、何故君達だけをこの科学特捜隊に連れてきたのか、そろ理由を言おう。ズバリ、私は君達二人を臨時的にスカウトしたいと思っているんだ」
「スカウト…ですか?」

 ムラマツの言葉になのはが首を傾げる。
 頷きながらもムラマツは続けた。

「我々科学特捜隊の任務は人外の脅威、即ち宇宙からの脅威や超常現象に対処する為に組織された物なんだ。だが、知っての通り人間の力には限界がある。今回の様な巨大怪獣が相手では正直厳しい所があるんだ」
「でも、それならあのウルトラマンってのがどうにかしてくれるんじゃないんですか?」

 甲児が尋ねた。
 竜ヶ森でのベムラーとの戦いの際に突如現れた謎の銀色の巨人。
 ハヤタ隊員はそれを『ウルトラマン』と呼称した。彼が言うにはビートルの事故の際にそのウルトラマンが助けてくれた為に一命を取り留めたと聞いているが、真相は不明でもある。
 勿論、そのウルトラマンが味方なのかと言う点でも疑問が多い。

「確かに、甲児君の言う通りだ。だが、我々としては敵か味方か分からん存在に頼っていてはいけないんだ。地球は我々人類自らの手で守らなければならない。その為に君達二人の力を貸して欲しいんだよ」
「その…甲児さんはマジンガーZに乗ってますけど、私もなんですか?」

 なのはは疑問に感じていた。
 何故自分が選ばれたのか。
 運動能力は平均的かそれ以下であるし、学力も飛びぬけていると言う訳ではない。そんな自分が何故スカウトされたのか? その答えが知りたかったのだ。

「君はベムラーとの戦いの際にその小さな体にも関わらず果敢に立ち向かったじゃないか。それに君には不思議な力がある様だ。まるで…そう、魔法と言った方が良いかな?」

 鋭い意見である。
 ムラマツはビートルからなのはと甲児の戦いぶりを見ていたのだ。あの状況で凄い人である。

「あの…それでしたらもう一人の人にも話しを聞いて貰った良いですか?」
「もう一人? あぁ、構わんが、他に誰か居たかい?」

 連れてきたのはこの二人だけだ。
 他の者達は応相談の元地元へと帰っていって貰った。だから此処に居るのは目の前の二人だけの筈であった。それなのにもう一人と言った。一体誰なのだろうか。
 すると、今まで胸元に抱えていた鞄のファスナーを開くと、その中から一匹のフェレットが飛び出してきた。

「ん? それはフェレットだね。もしかして…これが君の言うもう一人の人なのかい?」
「はい、さぁユーノ君」
「始めまして。僕の名前はユーノ・スクライアと言います」

 ムラマツは驚き目を見開いた。
 持っていたアンティークパイプをポロリと落としまるで珍しい物でも見るような目でユーノを見たのだ。

(まぁ、そりゃ驚くよなぁ。俺も最初は驚いたし)

 ムラマツの反応を見て甲児は内心共感していた。
 彼もまた、同じ様に驚いた口だったのだから。

「驚かせて申し訳ありません。ムラマツキャップ」
「いやぁ、すまないね。それで、君の意見を聞きたいんだが」
「勿論こちらからお願いしたい位です。今この星は危機的状況に見舞われていると言うのを僕は知りました。僕もまたこの星の為に働きたいです」
うむ、立派な事だ」

 ユーノの言い分にムラマツは満足げに頷いた。
 するとなのははある事を思いつく。

「あの、ムラマツキャップ。その…お願いを一つ聞いて貰っても良いですか?」
「ん、何かね?」
「そのぉ、家に連絡したいんですけど…大丈夫ですか?」
「あぁ、それなら心配ない。今フジ君が君の自宅に連絡を入れている所だよ。安心したまえ」
「有難う御座います」

 ホッとするなのは。
 そうであった。彼女は前回のエネルガーZ並びにアイアンZとの騒動の際に帰り道が封鎖されてしまい帰れず仕舞いとなってしまったのだ。そんななのはを元気づけようと企画した竜ヶ森でのキャンプの際にベムラーとの騒動に巻き込まれてしまったのだ。
 そうして現代に至ると言う事になる。ムラマツとしては何とかしてやりたいと思っても居た。不思議な力を宿しているとは言え彼女はまだ年はも行かない子供なのだ。
 まだ親元が恋しい筈である。それは人間誰しも同じ事だ。

「あ、後それともう一つあるんですけど…」

 そう言うとなのはは首につけていた赤い球を手に取り起動させる。起動した赤い球は忽ち杖状の姿に変わる。
 そして、杖の先端から青く輝く結晶を取り出してムラマツに見せたのだ。

「これを見た事ありませんか?」
「何だねそれは? 見たところ唯の石の…嫌、違う。何だこれは?」

 ムラマツの顔色が変わる。彼の中でそれが唯の石ではないと分かったのだ。
 それを手に取りマジマジと見つめるムラマツ。だが、すぐになのはの元に返した。

「すまないが、これは見た事がないね。だが、逸れは一体何なのだい? 見たところ何かありそうだったが」
「ユーノ君、教えても良いよね?」
「だったら僕が話すよ」

 そう言ってユーノが代弁して説明を行った。
 その結晶の事を。その結晶が何故地球にあるのかと言う事を―――

「成る程、つまり君は此処とは違う世界の出身でこのジュエルシードを偶々見つけてしまったのだね? そして護送中謎の事故によりそれがこの星にばら撒かれてしまった」
「すみません、僕のせいなんです」

 申し訳なさそうにユーノが言う。
 だが、ムラマツはそんなユーノの肩をそっと叩いた。

「気にする事はない。立派な事じゃないか。しかし君達だけでそれを全て集めるのは困難だろう。よし、我々科学特捜隊もそのジュエルシードの捜索に協力しようじゃないか」
「え、良いんですか?」
「この結晶が地球に害を成すと言う事はこちらでも分かった。だとしたら科学特捜隊の隊員としてそれを放っておく訳にもいかないのでね。構わないかね?」
「は、はい! 有難う御座います!」

 思いもよらない協力を得たなのはは思わずペコリと会釈して返した。年の割りには良く出来た子である。

「それと、そのジュエルシードを少しの間だけ貸して貰えないか? これの性質を分析したいんだ。上手くすればそれの探索装置を作れるかも知れんからね」
「はい、良いかな? ユーノ君」
「そうだね、広範囲に捜索出来る範囲が広がれば探索もし易くなるし、お願いします」
「よし、早速これを御殿山にある科学センターに持っていくとしよう。あそこなら正確な分析が行える筈だ」

 そう言うとムラマツは席を立った。

「それじゃ隊員の皆に君達を紹介しよう。ついてきたまえ」

 ムラマツキャップの後をついていき、甲児となのはは科学特捜隊のメンバーの揃っている部屋に辿り着いた。
 主に殆どのメンバーが此処に集まる言わばメインルームの様な場所である。

「諸君、今日から臨時であるが我々科学特捜隊に新しい仲間が加わった」
「始めまして、高町なのはです」
「僕は兜甲児。宜しくお願いします」

 二人がそう言って会釈をする。
 それを返すように科特隊のメンバーも各々自己紹介を行った。

「僕はハヤタと言います。これから宜しく」
「アラシだ。ま、気楽にしていて良いぜ」
「僕はイデと言います。科学の分野で分からない事があったら何でも僕に聞いて下さいね」
「私はフジ・アキコと言います。通信を主に担当していますので、宜しく」

 各々が自己紹介を終える。
 するとなのはは主室に鞄の中からユーノを取り出して目の前で見せる。

「始めまして。僕はユーノ・スクライアと言います。宜しく」

 そう言ってユーノが会釈をする。
 だが、それを見た際にハヤタ以外のメンバーが総出で驚いたと言うのは記憶の新しい事であり。




     ***




 なのはと甲児達が科学特捜隊に臨時スカウトされてから翌日。
 昨日御殿山にある科学センターに届けたジュエルシードの性能分析結果が出たと言うので早速アラシ隊員にそれの回収と分析結果の確認に向かわせた。
 だが、その数時間後、科学センター並びにアラシ隊員との応答が途切れてしまったのだ。
 不足の事態にムラマツキャップはハヤタ隊員とイデ隊員。そして臨時隊員としてスカウトされた甲児となのはを現場に向かわせた。

「偉く静まり返ってるなぁ」

 目の前にある科学センターは真っ暗であった。
 まだ閉館する時間ではない。にも関わらず窓からは電気の明かりも見えない。明らかにおかしい。そう思えたのだ。

「とにかく、中を調査しよう。もしかしたら何かあったのかも知れない」

 そうハヤタが言った。
 その直後であった。彼等の通信端末から呼び出し音が鳴った。

「こちらハヤタ。どうした?」
『ハヤタさん、先ほどその科学センター上空で謎の電波が発生したのをキャッチしたんです』
「どれ位前だ?」
『丁度アラシ隊員が科学センターに向かった後の辺りです』
「すると、今回の騒動はその電波を発する奴の仕業と言う事かぁ」

 ハヤタの顔がキリッと引き締まった。
 どうやら只事ではないのは明白である。

「も、もしかして…異星人とかですか?」
「恐らくそうだろう。皆気を引き締めて行くんだ」
「だ、大丈夫かなぁ?」

 なのはの肩に力が入っている。
 彼女にとっては人生初の異星人との遭遇なのだ。
 しかもそれが敵意を持っているとすれば尚更緊張感を持ってしまう。

「大丈夫ですよなのはちゃん。こんな事もあろうかとこの私イデ隊員。ちゃんと宇宙語をマスターしているんです

『キエテ、コシ、キレキレテ、ボク、キミ、トモダチ』

ね、完璧でしょう」
「それ、宇宙語なのか?」

 返って不安になってしまうだけであった。
 そんなイデ隊員を連れて科学センターに入った四人を出迎えたのは受付の人であった。だが、その受付の人は何故かその場から一歩も動かないのだ。まるで、その人の時間が止められているかの様に。

「これは…間違いない、こんな事が出来るのは異星人の他に居ない」
「それじゃ、さっきの怪電波ってやっぱり…」
「畜生! 人様の家に土足で入り込むたぁふてぇやろうだぜ!」

 なのはは不安な顔色になり甲児は逆に怒りを露にしていた。

「とにかく、センター内をくまなく探そう。二手に分かれて探すんだ。僕となのはちゃんは此処を探す。イデと甲児君は2階を頼む」
「わ、分かりました」
「あいよぅ! 異星人を見つけたら一発ぶん殴ってやるぜ」

 腕を振り回して意気込む甲児。
 だが、そんな甲児をハヤタは止める。

「冷静になるんだ甲児君。相手は我々の想像を遥かに超えた科学力を持っているんだ。下手に手出ししたら君もこの受付の人の二の舞になるぞ」
「う…そ、そうだった」
「何か見つけたらその都度連絡をするんだ。くれぐれも単独行動は控えるように。常に二人で互いの死角をカバーしあうよう心がけて」

 そう言うとハヤタとなのはは1階周辺を。
 イデと甲児は2階周辺の探索に入った。





     ***




 1階を捜索していたハヤタとなのはは、其処でもやはり受付と同じ様に固められている作業員達や警備員、それに科学者達の姿があった。
 どれも皆同じ様な現象になっており、幾ら叩いてもビクともしない。
 まるでその人だけ時間が止まっているかの様に。

「そうだ! ジュエルシード」

 其処でなのはは思い出した。
 この科学センターには例のジュエルシードを預けていたのだ。
 もしかしたらその異星人はジュエルシードを狙ってやってきたのかも知れない。

「ハヤタさん、もしかしたらその異星人、きっとジュエルシードを狙ってきたのかも知れませんよ」
「そうか、確かにあれからは未知のエネルギーが発せられている。それを異星人が目をつけたのかも知れない。だとしたら急いで探さないと」

 そう言うとハヤタ隊員は急いで通路を走った。
 彼はそのジュエルシードが何処に保管されているのか分かっているのだ。
 そんなハヤタ隊員の後を追ってなのはも走る。
 訪れたのは保管室であった。その中の一つのカプセルの中にジュエルシードは保管されていた。どうやらまだ無事の様だ。

「良かった。まだ取られてない」

 安堵してジュエルシードに近づく。
 レイジングハートを起動させてジュエルシードを再び封印する。

「どうやら間に合ったみたいだね」
「はい、取られていたらどうなっていたか冷や冷やしましたよ」
「全くだね。しかし、どうやら此処に異星人は居ないみたいだ」
「ですね、それでしたら甲児さんやイデさんの居る2階に行きましょう」

 1階の調べる場所はもう殆どない。
 何時までも此処に居た所で時間の無駄でしかならない。
 そう判断した二人は此処の探索を切り上げて甲児、イデの受け持っている2階に行く事にした。
 だが、その時、なのはの背後から突如何者かが現れて彼女を掴み上げた。

「きゃぁ!」
「なに!」

 振り返ったハヤタの目に映ったのは、幼いなのはを抱え込んでいる人外の生き物であった。

「おぉっとぉ、そないな物騒なもんは仕舞って貰おかぁ? でないとこのお嬢ちゃんが痛い目ぇ見る事んなるでぇ」

 ゲラゲラと笑いながらそいつは言った。
 ハヤタの手には既にスーパーガンが持たれていた。だが、下手に動けばなのはの命はない。そう判断したハヤタは言われた通りスーパーガンをホルスターに納めた。
 すると、それを合図にハヤタの回りに様々な人外の者達が現れる。

「此処を襲撃したのはお前達だったのか?」
「襲撃? 何の事やかさっぱり分からへんわ。まぁえぇ、とにかくあんさん。ワイ等と一緒に来て貰おやないかぁ。変な真似するんやないでぇ。このお嬢ちゃんが大事やったらなぁ」

 人外の者の手は鋭く尖った鉤爪の様であった。
 その先をなのはの顔に近づける。
 その力はとても幼いなのはでは振り解けない力でもあった。

「待て! 分かった、言う通りにする。だから彼女には手をだすな」
「ハヤタさん!」
「えぇ心がけや。やっぱ色男はそうでないとなぁ。おい、行くでぇ」
『ガデッサー!』

 全員がそう相槌を打つ。
 その後、二人を連れて人外の集団は真っ直ぐに屋上へと向かって行った。




     ***




 その頃、2階を捜索していたイデと甲児であったが、相変わらず異星人の痕跡は見つからず、あるのはその異星人に止められた被害者達だけであった。

「くそっ、手掛かりなしかよ。まるで忍者みたいな奴だなぁ」
「愚痴らない愚痴らない、捜索は根気が大事なの。とは言え…あんまりあって欲しくないんだけどなぁ僕の場合」

 甲児に言うにはイデは余りに弱弱しくそう言っていた。
 それを聞いていた甲児が以外そうな顔でイデを見る。

「何だよイデさん。もしかして怖いの?」
「そ、そんな訳ないでしょ! 唯僕は科学専門だからこう言った現場関係はアラシの方が向いてるって言うだけなの! べ、別に怖い訳じゃないんだからねぇ!」

 そう言いながらスパイダーショットを手に通路を見回るイデ。
 その横では科学特捜隊支給のスーパーガンを手に甲児も歩き回っていた。
 やがて、二人は2階の端に辿り着いた。
 結局此処で異星人を見つけるには至らなかったのだ。

「外れかぁ、どうします?」
「そうだなぁ。一度ハヤタ達と合流しよう。もしかしたらハヤタが何か見つけたかも知れないし」
「やれやれ、収穫なしかぁ。なのはに笑われなきゃ良いけど」

 バツの悪い顔で頭を掻き毟りながら甲児が呟く。
 だが、1階へ戻ろうと道を引き返そうとした時、二人の前にそれは居た。
 青っぽい外皮を纏い両手は巨大なハサミになっており、奇妙な顔立ちをしたその者が立っていた。

「で、ででで出たぁ!」
「出やがったなぁコソ泥野郎! この俺の目の前に出るたぁ良い度胸だぜ!」

 震えるイデに対し待ってましたとばかりにスーパーガンを構える甲児。
 だが、そんな二人の前でその異星人は突如数人に分身しだしたのだ。
 分身した異星人が幾人も歩きながら二人を包囲している。

「な、何だコイツぁ! セミ野郎が何人も居やがる!」
「落ち着くんだ甲児君! 此処は僕の宇宙語で説得してみるよ
『キエテ、コシ、キレキレテ、ボク、キミ、トモダチ』
これで大丈夫な筈だよ」
「それ、本当に宇宙語なのか?」

 疑問に思う甲児。
 すると先ほどまで歩いていた異星人の姿が突如プツリと消えてしまったのだ。
 不審に思い辺りを見る甲児。
 だが、その直後、イデの驚くような叫び声が聞こえてきたので振り返った。
 其処にはイデの体にハサミの腕を突きつける異星人の姿があった。
 下手な事をすればこの男の命はない。無言でそう言っていたのだ。
 それを見た甲児は諦めたのかスーパーガンをホルスターに戻す。
 そうして、異星人に導かれるまま二人もまた屋上に連れて来られた。




     ***




 数名の異星人に回りを囲まれたまま、ハヤタは導かれるままに屋上に辿り着いた。
 その直後、煙の様に異星人の姿が消えてしまったのだ。

「消えた…奴等は一体何者なんだ?」

 辺りを見回す。
 だが、其処に先ほどの異星人の姿は何処にもなかったのだ。そして、なのはの姿もない。

「しまった! 奴等なのはちゃんを!」

 急ぎ捜索しようとした時、別の入り口から今度は別の異星人に連れられてイデと甲児がやってきた。

「イデ! 甲児君!」
「ハヤタさん!」
「ハヤタァ!」

 三人が合流する。

「ハヤタ、無事だったのかい?」
「僕は無事だ。唯なのはちゃんが異星人に捕まってしまった」
「何だって! あのセミ野郎か?」
「嫌違う、別の異星人だ」

 三人が話し合う。
 此処には複数の異星人が居るようだ。
 そう話していた時、暗い闇の中からゆっくりと誰かがやってきた。
 それはアラシだった。
 その目には光が宿っておらず、虚ろな瞳のまま操り人形の様にゆっくりと歩いてきたのだ。

「アラシ! 無事だったのか?」
「……」

 イデが感極まってアラシの両肩を叩くがアラシは無反応であった。
 それに不信感を抱く甲児とハヤタ。

「お、おい。どうしたんだよアラシ! 少しは反応したらどうなんだ?」
「君達ノ言語ハワカリニクイ。ダカラコノ男ノ脳髄ヲ使ッテ君達ノ言葉ヲ使ウ」
「な、脳髄だって!」

 驚く一同。
 そんな中、ハヤタはそれが異星人の仕業だと見抜きアラシに近づく。

「君達は何の目的でこの星に来たんだ?」
「我々ノ星、バルタン星ハアル原因デ爆発シテシマッタ。唯一、旅行中デアッタ我々ダケガ生キ残リ、第2ノ故郷ヲ探シテイタ。ソシテ、我々ハ君達ガ『地球』ト呼ブ『M240惑星』ヲ発見シタ」

 バルタンと言う異星人の話を聞くとそれは不幸な事とは同情出来る。
 だが、だからと言って科学センターの人をあんな目にあわせたりアラシをこの様な目に合わせて良いと言う道理にはならない。

「では聞こう。何故君達は此処に来た?」
「ココに重力バランスニ必要ナダイオードガアッタカラダ」
「てめぇ、そんな事の為に此処の人達やアラシ隊員を殺したって言うのかよぉ!?」

 怒声を甲児が放った。
 だが、それに対しアラシ隊員が首を傾げる。

「殺ス? 殺ストハナンダ?」
「つまり命を奪うと言う事だ」
「命…ワカラナイ。命トハ何カ?」

 以外な返答に一同が騒然とした。
 この異星人は命と言う概念を知らないのだ。
 だからあの様な非道を行っても平然としていられるのである。

「てめぇ、こんな事しやがって。一体何が目的なんだ?」
「我々ノ旅ハコレデ終ワッタノダ。地球ハ我々ニトッテ住ミヤスイ所ニナルダロウ。我々ハ地球ニ住ムコトニスル」

 バルタン星人から放たれた答えは意外な物であった。
 地球の移住。そんな事の為に此処までの大事を起こしたのだ。
 当然甲児はそれに対し猛反対した。

「ざけんじゃねぇ。多くの人を殺したてめぇなんかこっちから御免被るぜ!」
「待つんだ甲児君。君達の要求だが、呑もう」

 ハヤタは意外とそう答えた。
 それにはイデも甲児も驚いた。

「は、ハヤタさん!」
「君達がこの地球の風俗、習慣になじみ地球の法律を守るのなら、それも不可能な事ではない」

 確かにハヤタの言う通りだ。
それなら大抵の地球人も易々と受け入れてくれるだろう。
 甲児は若干面白くない顔をしていたがこの際余り揉め事は起こしたくない。
 出来る事なら穏便に解決したかったのだ。

「それで、君達は何名居るんだ?」
「君達デ言ウ微生物ノサイズニナッテ眠ッテイル我ガ同胞達ハオヨソ20億3千万人イル」
「に、20億3千万人だってぇ! そんなには無理だ!」

 イデが否定気味になる。
 確かに今の地球でも人口の増加でパンク寸前だ。これ以上増えたら地球が食い尽くされてしまう。

「それかもしくは火星に住む事は出来ないのか?」
「火星ノ大気ハ我々ニ有害ダ。アソコニハ我々ノ嫌イナ………ガアル」
「はぁ? 何だって! 良く聞こえねぇぞ!」
「か~、肝心な所でぇ!」

 甲児が耳を傾け、イデが苛立つ。

「オシャベリハ終ワリダ。我々ハコノ星ガ気ニ入ッタ。我々ハコノ星ヲ頂ク」

 そう言い終えるとアラシの中に入っていた者が居なくなりそのまま嵐は力なく倒れてしまった。

「アラシ!」

 倒れたアラシの元に駆け寄る三人。
 その時、三人の前にバルタン星人が姿を現した。

「あ、あの時のセミ野郎!」
「こいつが、バルタン星人」
『フォッフォッフォッフォッ…』

 バルタン星人は両手のハサミを天に持ち上げて奇妙な笑い声をあげている。
 その姿が余りにも不気味に見えた。

「けっ、舐めんじゃねぇや! 地球にはウルトラマンが居るし、何よりこの俺が居るんでぃ! そう好き勝手させるかってんだぁ!」
「偉い自信やないかぁ。若いアンちゃん程無謀ってのはホンマやなぁ」
「この声は!」

 三人を見下ろすような声がした。
 声の主はバルタン星人の横からゆっくりと現れた。
 それは、先ほどハヤタの前に現れた例の異星人であった。その異星人の近くにはなのはが居た。

「なのはちゃん!」
「ハヤタさん! 皆!」
「これでもその強気が言えまっかぁ?」

 その異星人がなのはの喉元に鉤爪を近づける。

「てめぇ、汚ぇぞ!」

 怒り殴りかかろうとする甲児。
 だが、その回りを数名の異星人とバルタン星人が取り囲む。

「お前たちは何者だ? そのバルタン星人とはどんな関係なんだ?」
「なぁに、其処の人がワイ等を雇ったんや。この星が欲しいから手ぇ貸してぇなってなぁ。たんまり謝礼も頂いた事やし、後はワイ等の目的を達成するだけや」
「目的だと?」

 異星人はそう言った。
 すると視線をなのはに移して今度はなのはに話しかける。

「さぁてお嬢ちゃん。さっきお嬢ちゃんが手にした例の青い石ころ。ワイ等ギャンドラーに渡して貰おかぁ?」
「ギャンドラー? それがお前達の名前なのか?」
「そうや、宇宙のあらゆる犯罪の元凶。それがワイ等ギャンドラーや! この星には高エネルギーを持つ結晶体があるっちゅうんでやってきたんや。そしたら偉い良い物見つけたでぇ!」
「この関西弁野郎! なのはちゃんを離しやがれ! でねぇとぶん殴るぞぉ!」
「ハンッ、口だけは一丁前やなぁ。回りを見てみぃ! お前等はもう終わりや! 後はそのお嬢ちゃんの持ってるのを持ち帰るだけ。そうすりゃワイのコマンダーランキングは鰻登りやぁ!」

 喜び勇む異星人。
 そして、鉤爪をガチガチ言わせながらなのはにそれを近づける。

「さぁお嬢ちゃん。大人しくワイ等にそれを渡してぇな」
「嫌です! このジュエルシードは貴方達には渡しません!」

 幼いながらも気丈になのははそう言う。
 それを聞いた異星人は怒りを露に鉤爪を地面に叩きつける。
 叩きつけられた地面が歪に凹み砕けてしまった。
 それを見せ付けられたなのはは青ざめる。

「これで分かったやろう。下手に逆らったら命はないでぇ。さぁ、さっさと渡せやゴラァ!」
「そ、それでも…それでも、貴方達には渡しません!」
「えぇ度胸しとるやないかぁお嬢ちゃん。ワイ気に入ったでぇ。せやけどなぁ…世の中にゃ従わにゃぁアカン時もあるんやでぇ」

 怒りが最高潮に達したのかその異星人が鉤爪を天高く持ち上げる。

「そないに渡したくないなら…ちぃと痛い目にあって貰おかぁ!」
「う!」
「なのはちゃん!」
「止めろコノ野郎!」

 皆が見てる前でなのはに向かい無情にも鉤爪が振り下ろされる。
 正にその時であった…




”待てぃ!!!”




 突如、何処からか声が響いた。それと同時になのはに向かっていた鉤爪を弾き飛ばすかの様に一本の剣が飛んできた。
 その剣は鉤爪を弾き飛ばしなのはの目の前に突き刺さる。
 その剣の柄には青く狼の絵が彫られていた。

「こ、この剣! まさか…アイツが此処に居るんかぁ?」

 突然の出来事にそのギャンドラー達は勿論バルタン星人もその声の主を探していた。

「お、おい! あそこに誰か立ってるぞ!」

 甲児がそれを見つける。それはタンクの上であった。
 月夜に照らされてる一人の男が立っていた。
 その男はギャンドラー達とバルタン星人を見下ろす形で淡々と語りだした。


”血塗られた富と権力にたかる蛆虫どもよ! 己が姿を良く見るがいい! 

 正しき道を示す光……

  人、それを…『鏡』と言う!”


「な、何だアイツ? いきなり出てきた何か言ってるぜぇ」
「だが、あの言い方からすると敵ではなさそうだ」
「ほ、本当かなぁ?」

 三人がその男を見る。
 すると、鉤爪を持った異星人がそれを男に向けて突き付ける。

「えぇい、毎度の如くやけど一応聞いといてやるわ! 誰や貴様はぁ!」

 尋ねた異星人に対し月夜に照らされた男はこう答えた。

”貴様等に名乗る名前はないっ!”

 そう言い終えた直後、男は天高く舞い上がった。

「天空宙心拳・旋風蹴り!」

 舞い降りたと同時に男が周囲に居たギャンドラーとバルタン星人を吹き飛ばす。そして、なのはを抱えて甲児達の元へと飛んできた。

「怪我はなかったか?」
「は、はい!」

 そっと降ろされたなのはが頷く。
 それを見て青年は優しく微笑んだ。
 敵には一切の情けを与えず、弱者や心優しき者には尽きる事のない慈愛の心を持つ。それが彼なのだ。

「サンキュー。誰かは知らないけど助かったぜ」
「話は後にしましょう。まずはこの悪党どもを成敗する事が先です!」

 そう言うと青年はギャンドラー達とバルタン星人に対し構えた。

「お、おのれぇ、毎度の如くワイ等の邪魔しやがってぇ! 本当にイラつく奴やで、ロム・ストール!」
「ギャンドラー! お前達の悪行、例え天が許しても俺が許さん!」
「阿呆! こっちにゃこの宇宙忍者バルタン星人が居るんや! お前なんぞこのバルタン星人さんの光線で一生動けない体にして貰えやぁ!」
『フォッフォッフォッフォッ…』

 紹介されたバルタン星人がゆっくりとロムの前にやってくる。
 それと同じようにロムもバルタンの前に歩み寄る。

「お、おい。あんた一人で大丈夫なのかよ?」
「心配しないで下さい。天空宙心拳は正義の拳法。悪には決して負けません」
「そなら今日此処で負けぇや!」

 その言葉を合図にバルタン星人がロムにハサミを向ける。
 ロムは光線が放たれるよりも早く天高く舞い上がった。
 そんなロムを追いハサミを天空に向ける。
 だが、其処には丁度ロムの後ろに重なっていた月の光が照らされ悪党達の視界を塞ぐ。

「わ、ま、眩しい! 何でや! 月がこないに明るい筈がない!」
『フォッ! フォォォ!?』

 バルタンも目が眩んだのかヨロヨロとしている。

「お前たち悪党にはこの聖なる光を直視する事は出来まい。行くぞ、天空心剣・爆裂空転!」

 光となりロムの手に戻った剣『剣浪』が光を放ち屋上に居た悪党達をなぎ倒した。

「ぎゃアアアアアアアアアア!」
「お、己ええええええええ! こうなったらこないな町ぶっ壊したるぁぁ!」
『フォッフォッフォッフォッフォッ…』

 残っていた鉤爪の異星人とバルタン星人が突如巨大化し町を破壊し始めた。

「おのれデビルサターン! これ以上の悪行、見過ごせん!」
「って、言いますけどねぇ貴方。あんな巨大になった奴をどうやって倒すおつもりなの?」

 拳を握り締めて言うロムに対してイデが尋ねる。
 が、その問いにロムは笑顔で返す。

「ご心配なく。正義に敗北の二文字はないのです」

 そう言うと再びロムはガスタンクの上に飛び乗る。
 すると剣浪を天高く振り上げる。

「剣浪よ! 勇気の雷鳴を呼べ!!!」

 ロムが叫ぶ。
 すると天空から一筋の雷光が発せられ、その中から青いロボットが現れた。そのロボットとロムは『合身』する。

「闇ある所光あり! 悪ある所正義あり!
 天空よりの使者、ケンリュウ! 参上!!!」

 青いロボットがデビルサターンとバルタン星人の前に降り立つ。

「出おったなぁケンリュウ!」
「デビルサターン! この星を貴様等の思い通りにはさせん! この俺が居る限り悪に栄える日は来ない!」
「ほざけや! こっちは2体や、2対1でボッコボコにしたらぁ!」




     ***




 ビルの屋上からケンリュウとデビルサターン、そしてバルタン星人の戦いを甲児達は見ていた。

「畜生。こんな時マジンガーZがあれば俺も一緒に戦えるってのによぉ!」

 悔しそうに呟く甲児。
 その時、通信端末から通信が入った。

『聞こえる? 甲児君、こちらフジ隊員。こんな事もあろうかとってキャップがマジンガーZを持って行けって指令してくれたのよ』
「ナイスタイミングだぜアキコさん!」

 見れば上空からビートルで吊るされてマジンガーZがやってくるのが見えた。その横を自動操縦でパイルダーが飛行している。
 ゆっくりと屋上に着陸するパイルダーに飛び乗る甲児。

「よぉし、見てろよ異星人め! 地球に来た事を目一杯後悔させてやるぜ!」

 そう言ってパイルダーは飛翔し上空に居たZをドッキングを果たす。
 そしてケンリュウの隣に着地した。

「待たせたなロムさんよぉ、俺も加勢するぜ!」
「有り難い。行くぞ!」

 ケンリュウとマジンガーZがデビルサターンとバルタン星人と戦う。

「このセミ野郎! マジンガーのパワーを思い知れ!」

 マジンガーZとバルタン星人がぶつかり合う。
 バルタン星人の大きさは前回のベムラーと同じくマジンガーの約倍はあった。巨大なハサミは分厚い鉄板すら易々と切断してしまう程の切れ味を有している。下手に近づけばどうなるか分からない。
 しかし、マジンガーZにそのハサミが通用する筈がない。マジンガーは無敵なのだ。

「これでどうだ!」

 主室にバルタンの顔面を殴りつけるZ。
 それを食らったバルタン星人が仰向けに倒れる。

「けっ、呆気ねぇ。これでトドメだ! ブレストファイヤー!」

 Zの胸の放熱板から赤々と熱線が放たれた。
 その熱線がバルタンを焼き焦がしていく。
 だが、その直前、もう一体のバルタンが上空に逃げ出した。焦げたのはバルタンの分身であった。

「アイツ、空が飛べるのか!」

 これは以外であった。
 マジンガーの唯一の弱点、それは空中の敵に脆いと言う事だ。
 空中に居られては上手くロケットパンチも当てられないし他の武器もかわされる危険性がある。
そんなZに向かいハサミから次々と爆撃を放っていく。
 マジンガーの周囲が瞬く間に爆発に包まれていく。

「うわっ! くそぉ!」

 空中の敵に手出しが出来ない状況に陥られるマジンガーZ。
 だが、その時眩い光と共に銀色の巨人ウルトラマンが現れた。

「ウルトラマン、来てくれたのか!」
「ウルトラマン、あの光の巨人がこの星に居たのか!」

 ロムは目の前に現れたウルトラマンを見て驚く。

「余所見している場合かぁ!」
「むっ!」

 其処へでビルサターンが鉤爪を振りかざして来た。
 それを剣浪で弾くケンリュウ。
 だが、その直後でビルサターンの口から猛烈な火炎攻撃が発せられた。

「ぐぅっ!」
「ハハハッ! 灰になってまえやぁロム・ストール!」

 笑いながら火力を強めるデビルサターン。
 だが、その口が突如桜色のバインドで塞がれてしまった。

「な、何やぁ!」
「ロムさん、今です!」

 それは上空に居たなのはであった。
 バリアジャケットを纏いデビルサターンにバインドを仕掛けたのだ。

「有難う。デビルサターン! 貴様に見せてやる。正義の力を!」

 そう言うとロムは目を閉じて静かに念じだした。

”天よ地よ、火よ水よ、我に力を与え給え

パァァイルフォォォォメイション!!!”

 ロムが叫ぶ。
 するとケンリュウの背後に更に大きく赤いロボットが現れた。
 ケンリュウが更にその赤いロボットと合身する。するとロボットの胸に剣浪の柄と同じ狼の絵が現れる。

「バイカンフー!!!」

 赤く力強い姿になったロムが叫ぶ。
 その大きさはケンリュウの実に2倍はあった。

「げっ、これってもしかして所謂敗北フラグって奴なんかぁ?」
「思い知れ! これが正義の鉄拳だ!」

 バイカンフーが光り輝く右拳をデビルサターンに叩き付けた。
 その技の名を叫びながら。

「ゴッドハンドスマッシュ!!!」

 ゴッドハンドスマッシュを決められたデビルサターンの体は瞬く間に爆風に包まれる。

「ギャアアアアアアアアアアアアア! きょ、今日の所はこの辺で退いといたるわあああああああああ!」

 捨て台詞を残し、デビルサターンは姿を消した。

「デビルサターン、何度来ようと貴様に勝ち目はない!」

 ロムがそう言う。
 その頃、ウルトラマンとバルタン星人は激しい空中戦を展開していた。
 互いの光線が空中でぶつかりあい爆発を起こす。
 だが、旗色が悪いと判断したバルタン星人が逃げ出そうとする。
 そうはさせまいとウルトラマンが腕を十字に組んで光線を放った。
 そう、この光線こそバルタン星人の最も嫌う光線であった。
 その名も『スペシウム光線』である。
 スペシウム光線を食らったバルタン星人は数秒と経たずに粉々になった。
 戦いを終えたウルトラマンはその後、科学センターの上で擬態していたバルタン星人の円盤を見つけ、それを抱えて再び空高く飛び去ってしまった。

「行っちまった。それにしてもウルトラマンは凄ぇぜ」

 マジンガーに乗っていた甲児が心底そう思っていた。そして、視線を今度はバイカンフーに移す。

「あんたもサンキューな。お陰で助かったぜ」
「礼には及びません。共に正義の為に戦う仲間同士。そして、幼い命を守るのも正義の勤めなのです」

 甲児の言い分にロムはそう答える。どうやら結構お堅い人らしい。

「あの、有難う御座います。ロムさん」
「君の方こそ、怪我がなくて良かった。それと、あの時は助かったよ。俺からも礼を言わせてくれ」
「え? そ、そんなぁ///」

 ロムにそう言われて思わず頬を染めるなのは。すると、バイカンフーは二人に対し背を向けて歩き出していく。

「お、おい! 何処行くんだよ?」
「奴等はまだ倒れてはいません。俺は奴等ギャンドラーを倒す為に戦い続けなければならないのです」
「また、会えますか?」
「この星に正義の心がある限り、必ず!」

 そう言い残し、ロム・ストールもまた霧の様にその場から消え去ってしまった。残ったのは甲児のマジンガーZとなのはだけである。

「やれやれ、これから更に大変な事になりそうだぜ。Dr.ヘルの機械獣に怪獣、そんでもって今度は宇宙人とはなぁ」
「大丈夫ですよ甲児さん。私達にはウルトラマンがついてますし、何よりあのロムさんも居るじゃないですか!」

 愚痴る甲児になのはが力強くそう言う。それを聞いて甲児もニッと笑う。

「そうか、そうだな。俺達が負ける訳ねぇもんなぁ」
「はい!」

 笑う甲児に強くなのはは頷いた。

「さぁて、これ以上此処に居ても何もないし、そろそろ帰るとすっかぁ」
「そうですね、私もう眠くなっちゃいましたよ」

 時刻は丁度夜の10時を差している。子供なら眠くなるのも当たり前だ。甲児となのははジェットビートルに乗りそのまま科学特捜隊本部へと戻っていった。
 地球を狙い多くの異星人がこれから来襲してくるだろう。
 だが、その中には正義を愛し、平和を愛し、地球を守ろうとする異星人も居る。そして、地球には地球を守ろうとする正義の戦士達が居るのだ。彼等が居る限り、地球は悪の手には落ちる事はない。
 必ず…




     つづく 
 

 
後書き
次回予告
幻の都にて少女は光の巨人の過去の伝説を知る。
そして、新たな力を受け継ぐ事となる。

次回「バラージの青い瞳」

お楽しみに 
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