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とある銀河の物語

作者:JK
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002 ナップと教授とマティルダ

今までの例から言って、この最終試験の訓練生はその後も同じチームを組むことが多い。だいたい同じ方面のミッションに派遣されるせいもあるが、チームとは有機的なつながり、そう、連帯感とでも言うのか、そんなものが強いほうがいいに決まってる。この最終試験は基本的に単独ミッションだが、多くの訓練生の中から選ばれ、同じ船に乗り、多少の時間差はあれそれぞれが与えられたミッションをこなし、同じ船に帰ってくる。この経験は、何ものにも代え難いものになるのではないか。天涯孤独の俺は、そんな連帯感に飢えていたのかもしれない。皮肉な話だが、俺の場合身寄りが無いがゆえに若くして訓練キャンプに入れたという経緯もある。そして今、俺はここにいる。思いっきり笑われながらではあるが。

バルロス。
六人の中では最年長。といっても“おっさん”の一歩手前というところか。現役の兵隊さんで階級は曹長だが、この訓練キャンプにいる期間、階級は関係なくなる。階級章も無い訓練服をみなと同じように着込んでいる。ときどき奥さんにしては若すぎるが子供にしては大きすぎる女性が差し入れを持ってきていた。いつも二言三言話すだけで帰っていたが、どういう関係なんだろう? 親密そうといえばそうだし、よそよそしいといえばそうも見える。以前若い訓練生がその娘に声をかけて逃げられたことがある。バルロスは、格闘訓練の時わざとその若いのと当たるように仕向け、何回も寝技に持ち込んだり、打撃よりも腕の取り合いをして結構長い時間やり合っていた。その間頻繁にバルロスのくちびるが動いていたようなんだが、俺には何も聞こえず、動きに乱れも無かった。一方、若い方は次第に呼吸が荒くなり、汗の量も多くなって、結果はドローだったがその場に崩れ折れてしまった。そのとき俺は心に決めた。バルロスには絶対、彼女のことは聞かないでおこう、と。

リリア。
全訓練生の中でも珍しい、士官で、しかも女である。もっともこの訓練キャンプにいる期間・・・以下同上。
若すぎはしないがおばさんでもない。バルロスより少し若いくらいだろう。パイロットの腕を買われて勧誘されたらしい。
俺にとっては難しく厳しい訓練ばかりだったが、リリアはその全てを淡々とこなしていた。さすがは士官というべきか。
彼女にとってこの程度の訓練はすでに卒業してきた内容で、今回はただのおさらいに過ぎなかったのかもしれない。
それほど逞しそうには見えない体で、大の男たちを簡単にノックアウトしてしまうのを何度か見た。

ラン。
俺と同じ民間からの志願だが、ランは俺なんかとは“毛色”が違う。普通はまず入隊し、訓練を受け、経験をつんでからこの訓練キャンプに入る。志願して受理されることもあれば、推薦されてくることもある。リリアのように。ところがランはこのプロセスがまだるっこしかったらしく、直接訓練キャンプに売り込んだ。いろいろと頭を使い、うまくやったようだが、結局はあの“教官”の「ま、一人くらい、いいんじゃないの」の一言で決まった。これでランがたいしたことのない奴だったら、“教官”に対する風当たりも少しは強くなったんだろうが、最終試験に一回目で選ばれてしまう逸材だ。“教官”の眼力は確かなものだ、ということになったらしい。
俺の場合も“教官”の判断で訓練キャンプ入りできた口だ。「ほう、身寄りがいないのか。ポイントが高いぞ。よし、キャンプ入りを認めてやろう。お前がどうなっても苦情を言う奴がいないというのは”最高の捨て石”の必須条件だ。」・・・・。

ミアル。
若く見えるし、実際に若いのだが、六人の中で唯一の妻子持ち。生活の安定のために志願したといってはばからない。
陽気な男で、「うちのかみさんがねぇ、・・・」が口癖。電子機器に長け、メディックとしても優秀。その他なんでもそつ無くこなすが、ランのような天才肌ではなく勉強と経験で積み上げてきたタイプである。出来ることが多くなればそれだけ実入りも多くなるから、らしい。別にけちな訳ではない。みんなとよく飲みにいくし、ギャンブルもする。おんなは買わないようだ。もしかしたらミアルほど”戦う理由”が明確な存在も他にいないのかもしれない。

エム。
優秀なスナイパーである。どれくらい優秀かというと、”スローバースト”(ゆっくりめの自動三点射)を使って三人に致命傷を与えることが出来るのだ。もちろん銃器を注意深く選ばないといけないし、敵の配置などの外的条件もある程度そろわないといけないし、シングル・ショットよりもずっと必中射程距離は短くなる。が、射程四百メートルでこれが出来れば戦場では相当な武器になる。敵の斥候、(たいていは二人組み)を同時に、速やかに殺せるということは、すぐに連絡される心配をしないで済む。斥候の役割は偵察して報告することだから、まずそこで出鼻をくじくことが出来る。十人の小隊がいきなり七人になったときの衝撃は想像に難くない。ほかにもいろいろあるが、使い方次第で多大な戦果をあげることが出来る。ちなみに彼女のシングルショットにおける極大射程記録は一千五百メートルだ。

「よし、こんなもんかな。」
荷造りを終えた俺は満足げにうなずいた。
「何だ、ずいぶんと小さいな。それで足りるのか?」
さすがはバルロス。よく見ている。年齢や経験から自然とリーダー的な立場に立っていた。リリアが突っかかるかと思いきや、そうでも無くうまくやっている。 二人ともさすがである。
「ええ、極限まで荷物を減らしました。計算してみたら、一日時速18.75キロで十六時間走らないといけない計算になりますから。」
これでもか、というくらい減らした。 携帯食料も一番かさばらないタイプを選び、箱から出し、バックパックの隙間やポケットに詰め込んだ。 コミュニケーターは欠かせないが、どんな些細なことでも兼用できるものがあれば兼用できる可能性を持ったタイプを選んだ。 例えば、コミュニケーターの裏が平らならまな板代わりに使えることだってあるのだ。 実際その手のタイプ、つまり二重底になっていて、中に折りたたみ式のスプーンとフォーク、塩、こしょうのパックが入っていて、底蓋自体が皿代わりになる奴をバックパックに入れてある。水分に関しては、大気中から集めるフィルターと、地面から吸い上げるフィルターを用意した。走っている最中に200ccくらいは集めれると思うし、寝ている間に500ccくらいは集めれるはずだ。
今回特筆すべきは、携帯武器の少なさだ。 旧式の消音銃と予備のクリップ二本。 それと特殊型のグレネードが二個。 コンバットナイフ一本に小型ナイフがいくつか。 これだけである。
「これはまた思い切ったな。記録的な少なさだ。お前、本当に帰ってくるつもりがあるのか?」ランの言葉は、冗談めかしてはいるが本音だろう。
「帰ってくるつもりがあるから少なくするのさ。大体見つからないことが前提の偵察ミッションだろ?本当はグレネードも持っていきたくはないんだけどね。」
「でも持っていくのね。どうしてかしら?」リリアは何か楽しそうに言う。
「最低限のエスケーププランの確保のためですよ。見つかりたくはないけど、見つかってしまった場合のことも想定しておかないとね。グレネードと消音銃はエスケープのための物で、偵察ミッションのものではないともいえるかな?」
「なるほどね、なんとなく、わかったわ。いろいろ考えてはいるのね。」
「そうだといいんですけどね。教官にも“考えるのは悪いことだといっているわけではない”とか何とか言われましたし・・・」いくら“階級は関係なくなる”訓練期間と入っても士官のリリアにはさすがに“ため口”はきけない。
「そうそう、教官といえばさっきオフィシャルに連絡があったぜ。」とミアル。「今後マールの正式コードネームは“ナップ”だそうだ。」
「ははぁ、いつでもどこでも寝れるお前にぴったりだな。・・・しかし、異例ではある。」笑いながらバルロス。
「そうね、正式なコードネームは普通最終試験の後、正式なミッションに組み込まれるときに、選ばれた人にだけ与えられるものよね。」その辺のところ、士官のリリアはよく知っていそうだ。
「そ、そんなシリアスなものじゃないでしょう、これは。教官一流のジョークみたいなもんですよ。」なにをいっているんだ、みんなは?
「チラッとうわさで聞いたんだけど」自分のライフルを点検しながらエムが言う。「お前がどうなっても苦情を言う奴がいないというのは”最高の捨て石”の必須条件だ、と言われてキャンプ入りしたんでしょ?」
「あ、ああ、そうだけど?」
「ということは、マール、じゃなかったナップは“最高の捨て石”候補に上がっているということじゃないかしらね?」
「ほうほう、そんなことがあったのか。」
「初耳だなぁ。」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!どうしてそんなほうに話が進むんだ?こんなの、あの教官のいつもの嫌がらせみたいなもんだよ。大体捨て石に最高だなんて言われたってちっともうれしくない。」
「マール、じゃなかったナップよ。」一生懸命まじめな顔を作ったランが言う。「捨て石だろうがなんだろうが、あの教官に“最高”と言われたんだぜ。これはちょっとした事件だと思うんだがなぁ。」
「しかもキャンプ入り前にいわれたというんだからなぁ、どうよ。」皮肉っぽく笑いながらはミアルだ。
「俺なんか、“一人くらい、いいんじゃないの?”ですよ。」これはラン。
「それはそれで異例だけどね。ランの成績が上々だったので教官の見る目は確かだってことに落ち着いたわよね、あのときは。」とリリア。
「まぁ、人の見る目のない教官だったら、このキャンプはやっていけないでしょうしね。」エムの声は涼しい。
青ランプがついた。降下の時間だ。
「・・・よし、わかった。一番初めに降下する最年少の俺に気を使ってくれてありがとう。たとえ荒唐無稽な話でも俺を勇気付けてくれようとするみんなの気持ちはよくわかったよ。」
装備を身につけ、降下ワイヤーに腰のアタッチメントを繋げた。左のつま先を鐙に入れる。
ランプが黄色に変わる。皆が下がり、手近なものにつかまった。皆が俺を見ている。
何か言いたい、言わなければと思うが、言葉が出ない。ちきしょう・・・。黄色が点滅し始めた。
「Good luck!!」
ランプが赤に変わると同時に壁がスライドし、俺は突然出来た闇の中に飛び込んだ。ワイヤーがリリースされる。
ファースト・ミッションの始まりだ。

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「・・・荒唐無稽、だってさ。」とエム。
「意外に四文字熟語に詳しいやつだったんだな。」とラン。
「おやっさんが“人生を豊かにするため”にいろいろと教えているらしいぜ。」とミアル。「俺にも、暇を見て経理を教えてやってくれ、といってきた。」
「最高の捨て石に経理、ねぇ・・・。」相変わらず、リリアは楽しそうだ。「どんな人生になるのかしら。」
「さて、マール、じゃないナップのスケジュールが八日から六日に変わったことで、どうやらわれわれのスケジュールも変更されるらしい。」何か聞いているらしいバルロスが言う。
「ま、想定の範囲内というやつですな。」「OK」「了解」と誰も動じない。
「降下の順番の変更があるし、期間を短縮せざるを得ないものもいる、が、私から説明してかまわんかね、リリア?」
「あら、気を使わないでくださいな、ボス。」
「ありがとう。・・・でもボスは辞めてくれ。とにかく、いまのうちは・・・。」
「アイ・アイ。」
「では、新しいスケジュールは、こうだ・・・・」

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とりあえず、移動は順調に進んでいる。
この四日間で移動した距離は1200km余りだ。
疲労はしている。してはいるが困憊ではない。適度に緊張していて、感覚が通常以上に鋭くなっている気がする。
話す相手もなく、定期的に現在位置を確認し、休み、エネルギーを補給する。それだけに集中してきた結果だ。
五日目を迎え、今日中に偵察目標に出来るだけ近づかなければならない。そうなってくると、同じペースで移動するにしても、意識が違ってくる。いや、意識を変えなければいけない。
目標に近づくということは、発見される確立が高くなるということだ。でも、ペースを下げるわけにはいかない。頼れるのは、自分の注意力、観察力、それと直感だけだ。
機械のように自動的に動いている自分がいる。また、それを眺めている自分もいる。機械のように動いている自分の、見ているものを見ている、そんな自分もいる。
移動することだけに集中する自分を、周りを観察しながら移動する自分に変えただけで、こうだ。

自分はいったい何人いるのだろう。いや、本当の自分はどこにいるのだろう。どれが本当の自分だろう。

突然、地に伏した自分がいる。なぜだ?なにかが、視界の端のほうで動いたからだ。この四日間、何の動きもなかった。五日目にして初めての動き。目標に近づいてからの、初めての動き。
それほど近い距離ではなかった。だが、どちらに動いているかまでは見極められなかった。幸い、体が自動的に地形のくぼみを選んで伏せたので、よほど近づかなければ見つかることはないだろう。もし、敵であるならば、だ。
瞬きもせずに、待った。
感覚の糸を伸ばす、そんな感じだ。糸を伸ばし、探っていく。動きの見えた方へ。伸ばす。糸を、伸ばしていく。
何もない。見間違いだったのか。ゆっくりと、ゆっくりと頭を上げ、視界を広げていく。どうやら、ちょっとしだ崖に近づいていたようだ。いつのまにか、日も落ちかかっている。
動きの見えたほうに視線を凝らした。そこに動きはなかったが、異物があった。人口建造物だ。
目標を発見した。

この五日間、山こそ無かったが、森、草原、荒野などの、人口建造物など一切無いところを走り続けてきた。
そんなところに崖の端から人口建造物が見えてきた。脳は異物を発見したことにより、一種の警告を発した。それが視界の隅の動きとして認識されたのだろう。
なぜ、という思いがある。
なぜ、こんな何も無いところにこんな施設を作ったのか?ま、わからないから偵察に来ているわけだが。
それにしても、なぜ、この偵察を俺のような新米にやらせるのか?もしこの施設がとてつもなく重要な施設だったら?たとえば、すごく、なにかとんでもない施設だったら、こんな新米のファースト・ミッションにしては荷が勝ちすぎる。それとも、そんな重要な施設ではあるはずが無いということで、ここが選ばれたのか?
「あの教官のことだからなぁ。」自然とつぶやきがもれた。五日ぶりだ。そんな簡単なミッションを選ぶはずが無い。絶対に。「どこかにひねりがあるはずなんだ。」
とにかく、日のあるうちに出来るだけ近づいて、明日の日の出とともに偵察を始め、午後には移動しよう。出来るだけ離れて、午前0時にGPSを発信して迎えを待つ。ミッション終了。
となればいいんだが、さてさて、どうなることやら。
完全に日が落ちるまでにあと二十分はあるだろう。少しでも移動をしておこう。


こちらからレーダー、ソナー、電磁波、赤外線類を発することは出来ない。発するだけでこちらの位置を暴露してしまうことになるからだ。
もちろん体温も熱源になりうるが、その辺のところはステルス仕様の野戦服が何とかしてくれている。手袋、簡易マスクも装着した今の俺は、電気的にはほとんど見えない。
コミュニケーターの裏蓋の中から取り出したいくつかの色の違ったフィルターはそこそこ役に立つ。これらのフィルターを通してみることで、ある程度の電気的なシグナル、質量の違いを見ることが出来るからだ。
しかもこちらからは何も発しない。“GIFT”など、高度に発達した科学技術が使えないときは、こんなものが役に立つ。
しかし、なぜ。
なぜ、こんなにセキュリティ・システムが少ないのか?
塀代わりの電磁柵と、赤外線センサー、それと、たぶん地雷だろう、周りに転々と見える質量の違うマークは。これだけだ。

この程度のセキュリティ、でいったい何を守っているんだろう?
いったい、何をやっているところなのか?

夜の開ける前から観察しているが、ほとんど動きが無い。 じわりじわりと近づいて、地雷原の手前まで来てしまった。柵までほんの二十メートルだ。
思いのほか地面がやわらかく、うまく体を沈み込ませることが出来た。この分なら簡単に地雷も掘り出せそうだ。もちろん、やらないが。

建物はそう大きくは無い。地上三階の建物で、倉庫とか工場というよりも事務所に近い印象だ。
柵の中の、ほぼ中央にその建物があり、柵までは五十メートルほどか。明るくなってきた日差しの中でよく見ると、結構くたびれた建物だ。
特に車両やヘリなどが出入りしている形跡も見当たらない。 昨日崖の上から見た限りでは、どの方向へも轍は伸びていなかった。
物資の補給はどうしているのか?
日差しが地面を暖め始め、汗をかき始めたころに、やっと動きがあった。
一階の、正面の玄関(建物の真ん中あたりにあるからだ)が開き、人が出てきた。中肉中背の、薄汚れた研究者用らしい白衣の男と、これも薄汚れたシャツとスカートを着た女の子だ。

なんだろう、囚人の親子か?午前中の散歩とでも言うのか?
散歩にしては、なんだか元気がないな。たとえ囚人だとして、単なる日課の散歩だとして、これだけの日差しの中に出てくれば何らかの反応をしてもよさそうなものだ。
まぶしそうに太陽を見上げるとか、とりあえず伸びをするとか・・・

玄関から、また人が出てきた。今度は三人だ。銃を持っているところを見ると、看守か?
しかしいくら日差しが強いからといって、フルフェイスのヘルメットと、ボディ・アーマーはないだろう。
出てきた三人は、玄関の前に横に並び、銃を縦に持って微動だにしない。
ロボット、いや、アンドロイドだったのか。いやな予感がする。

多少危険だが、予感に従い行動を起こした。
内心、“余計な事しすきじゃないのか?”との思いもある。これはただの“偵察ミッション”のはずだ。
だが偵察するからには、その先に何か目的があるはずだ。例えば、破壊工作とか、救出ミッションとか。
その、先にある目的をやりやすくしておくのも、偵察の一部といえるんじゃないかな?なに、ちょっとした根回しみたいなものさ。
地雷をよけつつ、出来るだけ近づいた。どうせやるならうまいタイミングで、一発で決めたいものだ。
ゆっくりと、白衣の男と女の子がこちらに近づいてくる。白衣の男が女のこの方に左手をかけ、女の子は自分で自分を抱くようにしている。

柵まであと十メートルくらいか。

アンドロイドに動きがあった。
アンドロイドからなるべく見えないように二人の陰に入るようにしてひざ立ちになり、山なりにグレネードを投げる。
そして立ち上がり、身振りを交えて二人に言う。「伏せろ」
そのまま掘り起こしておいた地雷を電磁柵に投げつけた。

なかなかうまいタイミングだったようだ。
最初に投げた閃光グレネードは銃を二人に向けつつあったアンドロイドの前に落ち、発光した。ほとんど瞬間で視覚システムが焼ききれただろう。
同じタイミングで電磁柵が爆発し派手な火花を上げた。すぐに立ち上がり、後方に残りの地雷を投げ、二人のほうに駆け寄る。
「まだです。伏せていてください。口をあけて耳をふさいで!」二人に覆いかぶさった。
投げた地雷が爆発し、近くの地雷がいくつか誘爆した。
「ミスター、立てますか?走ります。」よく聞こえていないようだ。
もうひとつの閃光グレネードを建物の開きっぱなしの玄関に向けて投げつけた。ワンバウンドして中に入っていく。今日は運がいい。
女の子を背負い、白衣の男をを助け起こし、そのまま手を引いていく。男はよろけながらもついてきた。パニックには陥っていないようだ。目に強い光がある。
全部地雷が誘爆していることを願いながら、破れた電磁柵から走り出た。

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一時間ほどは走っただろう。
白衣の男は、決して根を上げなかったが気力だけで走っていることが見て取れた。
ちょっとした岩場に差し掛かったのを機にようやく足を止めた。
「少し休みましょう。」
白衣の男は、まともに止まることが出来ずに俺の横を駆け抜けようとした。
「ミスター!」
右手で男の腹部を抱えるようにして勢いを殺し、そのまま横にならせた。娘も下ろす。
男はフイゴのように胸を上下させてあえいでいた。しばらくは口も利けないだろうな。
フィルターを出し、女の子に渡す。
「少しだが水が入っている。ここから吸い出すんだ。」
黙って受け取り、俺を見つめる。
「あまりいい乗りごごちではなかっただろう?すまなかったね。」
なんか、くだらないことを言ってしまった。困ったな、まだ見つめているよ。別のフィルターを地面に刺した。少しでも水分を吸い上げれればいいんだが。
「先に、父に、上げてください。わたしは、大丈夫です。」
「そうか、ではこれを持っているといい。お腹が空いたら食べるんだ。小さいが、カロリーがとても高い。味もそんなに、悪くない。」
携帯バーを三本渡した。
十歳くらいだろうか。ちょっとくすんだ感じの、くせのある金髪、長さは肩を超えている。
シャワーを浴びさせて、きれいな服に着せ替えたらすばらしくかわいい子なのかもなぁ・・・とも思ったが、それどころではない。
さて、これから、どうするか・・・・。

「礼を、言う・・・・。」
ようやく、言葉が出るようになったようだ。
「毎日、、、怯えて、、いつ、、、この日が、、、、とにかく、、、。」
「無理にしゃべらなくてもいいです、ミスター。少し水分を取ってください。出来れば、カロリーバーも。」
「う、、む、、。」
娘がフィルターを男の口に持っていく。カロリーバーも渡したようだ。

水分を取り、カロリーを補給したせいだろう、男も娘もずいぶんと落ち着いたようだ。
「少し歩きましょう。この岩場は走ってはいけませんし。とにかく移動しなければ。」
「あ、ああ、そうだな。」
それほど広い岩場ではないが、この二人のペースを考えたら二時間近くかかるかもしれない。俺一人だったら二十分もかからないんだけど。
「何も聞かないのか?」
しばらく歩いた後、男が意を決したように言う。
「というよりも、何も教えてくれないのか?」
そりゃあ、いきなり救世主が現れて救ってくれたのはいいけど、何の説明もないんだからなぁ。
行き当たりばったりで助けちゃいました、なんていえないよなぁ・・・
「そうですね、少し聞きたいことがあります。」
自信ありげに言ってみた。大丈夫、何でもわかってやっています、何も心配要らない、と誤解してくれればいいんだけど。
「あの施設に人員はどのくらいいるのか、車輌やヘリ、航空機の類はどのくらい配備されているのか。」
「おいおい、そんなことも知らないでいたのか?」
いきなりぼろを出してしまった。ま、仕方がない。ファースト・ミッションだし。
「それを調べるために来て、こうなってしまったのです。」
「なるほど、行き当たりばったりというわけかね。」
なんか、鋭いな、このおっさん。煙たいタイプなのか?教官のような。
「臨機応変といっていただけると、もう少し現実をうまく説明しているのではないかと思います。」
しまった、教官を思い出したら、つい減らず口まで復活してしまった。
「うん、それもいい表現だな。俺もその方がいいと思う。要は状況をどのように生かすか、生かすすべを見出すか、だ。」
「はい、まったくそのとおりです。」
「お父さん・・・」
なにやら娘が小声で男に言っている。親子の会話というやつだ。これだけでも助けた甲斐があるというものだ。
たとえ偵察ミッションを大きく逸脱したとしても。

予想通り、車輌、航空機の類は一切配備されていないようだ。二人は二週間ほど収容されていたようだが、数体(あるいは十数体)のアンドロイドしか見ていないらしい。
それからはほとんど会話をすることもなく、黙々と進んだ。結構な岩場で、気軽に冗談を飛ばしながら進むわけにはいかなかったのだ。
運がいい、というべきか、岩場を歩き始めてから曇り空になってきた。夕方には雨になるかもしれない。
湿気が出てきているので、フィルターに水がたまりやすくなっている。これは助かる。ただでさえ一人分にも足りないのだから。

岩場を、出た。
「さて、これが水分を大気中から集めるフィルターです。使い方はわかりますね。それとこれは、地面から水分を濾し取るフィルターです。休憩するときは必ず地面に刺してください。こちらのほうが効率よく水分を集めれますから。」
「おい、いったい・・」
「これがコミュニケーターです。が、ほとんど役には立ちません。でも、ここの時間で夜中の十二時になったら。」コミュニケーターの時刻表示をさしながら説明を続ける。
「ここにパス・コードを入力してください。パス・コードは“6074”です。“ろくでなし”と覚えていてください。」
初めて娘が微笑んだ。ほんの少しだが、報酬としては十分だ。
「それで、GPSが作動し、迎えが来ます。“ナップに言われた”といえば彼らにはわかります。あとは彼らの指示に従ってください。できますね。」
「そりゃ、できる。しかし」
「カロリーバーは先ほどの三本で全部です。後は迎えが来るまで水でしのいでください。」
「わかった、だが」
「出来るだけ、遠くに行ってください。あの山の方角です。暗くなったら別の目印を見つけて進んでください。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「待ちません、時間がないのです。あ、あなたの白衣を私に譲ってください。・・・助かります。」
こういうのは、気まずいなぁ、やっぱ。
「臨機応変に、生かすすべを見出します。この岩場は、なかなか使えそうです。」
「う、む・・。」
「そういう訓練を充分受けてきました。何とかして見せます・・・うぉ!」
いきなり娘が抱きついてきた。うかつにも、うろたえてしまった。
「そういう訓練は、受けていないんだな。」大人の笑みと言うやつが男の顔には浮かんでいた。
「今度会ったら、ゆっくり娘の相手をしてやってくれ。」
「私は年上が好みなのです、残念ながら。」まったく、リップ・サービスしたっていいだろうに。
「・・・それでもいいから、死なないで。約束してください。」
傷つけるつもりはサラサラない。だが、嘘をつくには抵抗がある。とりあえず、黙っていた。
「充分、訓練を受けてきた、でしょう?」うーん、この目で見つめられるとなぁ・・・。
「そうだよ、大変な訓練だったんだ。教官はものすごく優秀で、とてつもなくえげつないやつで、うんざりするくらい嫌味なやつだけど、すごい訓練を受けてきたんだ。」
「・・・だから?」
「だからこのミッションに選ばれたんだし、“Touched by Angele”されたから、うん、大丈夫、死なないよ。」
ま、片手がなくなっても、下半身がサイボーグになっても、死んではいないということで。
「もう行って下さい。なるべく遠くへ。なるべく早く。」
なんか恥ずかしくって、二人の方を見れないな。
来た方向に引き返しつつ、ひときわ大きな岩の上に乗って二人の行った方を眺めた。まだあんなところか。ま、しょうがないか。
さて、岩場の入り口へ急ぐとしよう。まずはそこで迎え撃つ。多少の準備もしたいし。

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「名前ぐらい聞いておくべきだったかなぁ。」
「しかし、あのおっさんは何者なのか?」
「女の子に抱きつかれたのなんて、もしかして生まれて初めてじゃないか?」
「こんなところに、収容所?しかも囚人は二人だけ?」
作業をしながらも、いろいろなことが頭に浮かんでくる。ほとんどがくだらないことだが。
二個目の閃光グレネードといい、今、追っ手が来る前に岩場の端で多少の準備が出来ていることといい、今日の俺はそこそこ運が良いようだ。
これで追っ手を全滅させて凱旋できれば最高なんだが、世の中そんなに甘くはないよなぁ。
それよりも、今までが運が良すぎたと思って気を引き締めていかないと。十八歳にもならない身空で死にたくはない。
あの娘との約束もあるし。
「名前くらい聞いておけばよかったなぁ・・・」
おっと、つい声に出してしまった。近くに追っ手が来ていたら、多分聞かれただろう。これで警戒して多少なりともゆっくり近づいてきてくれたら時間稼ぎになるんだが。
ひときわ大きな岩の上に伏せ、旧式のサイレンサー銃を構える。そのまま凝固した。さて、どのくらい待つことになるのか。
迎え撃つ準備といっても、そんなに複雑なことはしていない。何しろここは岩場だ。岩しかないのだ。森ならまたいろいろと罠を仕掛けれるのだけど。
おっさんから譲ってもらった白衣を幾つかに裂き、俺の身長より高い岩の横に垂らす。同じ方向から見て、二つ以上見えないように配置することを心がけた。
わずかながら風があるので、白衣も少しそよぐ。それを追っ手が見て発砲してくれればしめたものだ。
追っては俺に対して位置を暴露することになり、それだけでも俺が有利になる。
そして狙い撃つ。
俺の銃は旧式のサイレンサーで、かなり性能の良いフラッシュ・ハイダー付だ。しばらくはこちらの位置はばれないだろう。
何しろ今日の俺は運がいいしね。
いやいや、運に頼らないと決めたんだな。とにかく時間稼ぎに専念だ。夜中の十二時までは何とか。

どのくらい凝固していたのか、いまだに何の動きも見られない。そのまま凝固を続ける。
ずいぶんと暗くなってきた。白い布だから、多少暗くなっての動きは見えるだろう。

・・・来た。
何人、何体くらい来ているのか?
おっさんの白衣に引っかかって発砲してくれるか?

いつの間にか真っ暗になっていた。いくら発砲してくれても、ここからの狙い撃ちはもう難しい。
というより、真っ暗になってから来てくれたのは好都合だ。これは俺の土俵だ。
伏せていた岩から降り、移動する。岩場の端の方へ。音を立てずに、すばやく。
いろいろな音が聞こえる。小石を踏みしだく音。銃が岩にあたる音。装備がこすれ合う音。
通常装備の追っ手達は、とにかく音を立てる。隠密行動のための装備ではないのだ。
俺の野戦服は音を立てない。そして俺の脚は音を立てないように徹底的に訓練されている。
二体のアンドロイドの前に音もなく進み出て正面からバイザーを狙い撃ちする。また移動。
音を立ててアンドロイドが崩れる。その音を聞き、ほかのアンドロイドたちが動く。俺は移動し、狙い打ち、移動する。
実包は予備を含めて三十発しかない。果たして何体来ているのか。
移動し続ける。
位置を把握されたらおしまいだ。
この実包では、頭のバイザーをそれなりの角度で狙わないと機能停止させれない。
貫通力は高いのだが、破壊力はあまりない。
今のところ外してはいないと思うが、果たして何体機能停止したのか。
旧式のサイレンサーに最後のマガジンを入れ、ホルスターにしまう。右手にコンバット・ナイフを持つ。
この手のアンドロイドの急所は三箇所ある。
頭にある制御装置、首の神経回路、腰の動力部だ。ナイフで狙えるのは首の神経回路だ。
俺の野戦服はそれなりに絶縁処理してあるが、やはり動力部は狙いたくない。刃こぼれもひどいだろうし。
あと、どのくらい時間を稼げるだろう・・・

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「ナップといったな、あの男。」
明るいうちは、とにかく歩き続けた。
暗くなり始め、ようやく森の入り口に差し掛かったところで休憩を取る事にした。
「若い、まだ二十歳にもなっていないだろう。」
言われたとおり、フィルターを地面に刺す。「少し水分を取っておきなさい。」もうひとつのフィルターを娘に渡した。
素直に受け取り、口にする。ほんの一口すすって父親に返した。
「ウォルフのことかも知れんな。」自分も一口すすり、ナップからもらったバックパックにしまった。
「うんざりするくらい嫌味な教官といえば、あいつくらいしか思い浮かばん。・・・厳しい訓練を受けてきた、か。とすると最終試験だったのかもしれないな。」
娘は最後のカロリーバーを包装紙から出し、父親に差し出した。
「お前が食べたらいい。俺はまだ大丈夫だ。」
「私はダイエット中だから、お父さんが食べて。」
「・・・じゃあ、半分ずつだ。」
優しい、良い子に育った。母親の性質を多く受け継いだに違いない。
「お前、いくつになったんだ、マティルダ?」
「もうすぐ、十三です。」
「・・・うそだろう・・・・もう、そんなになったのか?」
「子供はほっといてもそれなりに育つの、お父さん。」
「う・・・んん・・・そうだな・・・。」
しばらくの沈黙。
「ナップといったな、あの男。」
今度は娘の方をチラッと盗み見ながら言った。
「いやだ、お父さん。今度はあの人に私を押し付けようと考えているの?」
「ば,馬鹿言え!だ、誰がそんなこと!!」
時として、娘は父親に対して超能力めいた力を発揮する。
「お父さんなりに私のことを心配してくれているのはわかっています。今回みたいなこともあったし。」
「そ、それは、そうだ、危ないんだ。」
四十男がいまだ未成年の娘にたじたじとなるのは、いつの時代も変わらない。
「でも、もうお父さんの突然の思い付きには乗りません。ちゃんとお父さんと一緒に行きますから。お母さんの変わりに。」
母親のことを持ち出されると、やはり何もいえなくなる。それでも・・・やはり・・・。
「それにあの人は年上が好みだそうですから、迷惑がられます。」
「ああ、そうだったな。女のプライドが傷ついたか?」
「全然、私にだって好みというものがあります。」
こんな他愛もない会話を、もっと早く、もっとたくさんしておけばよかった。妻と三人で・・・。
「よし、そろそろ行こう。なるべく遠くへ、なるべく早く、だからな。」
娘はうなずき、地面に刺したフィルターを回収した。

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ついに岩場の端まで後退させられた。
思ったよりも数が多い。というよりも、いつまでも減らない、という感じだ。
もしかしたら収容所でアンドロイドを何体かずつ“解凍”して随時投入しているのかもしれない。
常識的には兵力の逐次投入は下策だ。
時間稼ぎが戦術目標の俺としても願ったりなのだが、どうもよくわからん。
本当に、“人”は配置されていないのか?
赤ん坊の頭ほどの大きさの石を白衣でくるみ、落ちないようにひねる。
すばやく移動し、アンドロイドの腰めがけて振り回す。火花が飛び、数瞬周りが明るく照らされる。
数体のアンドロイドを見たし、こちらも見られた。大岩に回り込んだが銃火が集中してくる。
姿を見られてはならない。戦法を変えた。
先ほど見たアンドロイドの位置と地形を考え、現在位置を予測、移動。発見。こちらが見られる前にスリング・ショットで腰の動力部を狙う。移動。
うまく移動すれば投げたスリング・ショットを回収できるだろう。あと二つある。手ごろな石を拾い、移動する。

「運がいい、というより奇跡だな、こりゃ。」
いまだに被弾していない。さすがに疲労困憊でのども渇き、空腹にさいなまれているが多少の擦り傷と打撲程度の怪我しかしてない。
自分が岩場に入り込むことでアンドロイドを数体引き込んだが、大部分は引っかかりそうもない。敵が広がりすぎているのだ。
「ここは、ここまでか。」
岩場に引き込んだアンドロイドを振り切り、敵のラインの端へ移動する。
少し先に行かせ、後ろからスリング・ショットを投げた。頭にまともにヒットした。
派手な音と火花を出し、アンドロイドが倒れる。周りのアンドロイドの注意が向いた。すばやく、身をかがめながら移動する。
やつらよりも先に出なければならない。 しばらく行けば森がある。そこまではほとんど遮蔽物のない草原だ。
戦闘服と簡易マスク、手袋のおかげで電気的にほとんど見えない状態の俺は、音を立てないこと、視認されないことを徹底しなければならない。
何しろ手持ちの武器は、旧式のサイレンサーと残弾十発、刃こぼれのひどいコンバット・ナイフと小型ナイフが数本のみなのだから。
これで、どうやって残りの時間を稼ぐのか。
ずいぶん頑張ったが、夜中の十二時にはあと数時間はあると思う。正確な時間は、コミュニケーターを渡してしまったので知るすべがない。
「これ以上は、さらして引っ張るしかないかもなぁ・・・だとすると、あの子との約束を守れなくなってしまうな。」
ま、あの二人のために“使い捨て”となるなら、それもいいか。すでに報酬ももらっていることだし。
とするなら、森に入る前にもう少し引っ掻き回すのがいいかな。一体一体の確実な機能停止は望むべくもないが、多少の混乱はさせてやれるだろう。
旧式のサイレンサーをホルスターに戻し、小型ナイフを手に持つ。全部で六本ある。忍者の使う、クナイのようなやつだ。
アンドロイドの位置関係は、森側を正面としてみたとき横長に広がっている感じだ。俺は、彼らから見て左前方に位置する。
大きく深呼吸をして、やつらの中心めがけて走り出す。もちろん音は立てない。俺がやっていることにはすぐ気づくだろうが、それが遅くなればなるほどいい。
一本目のナイフは、すれ違いざまにアンドロイドの首を振りぬいた。そして別のやつのバイザーに向けて投げる。
中心にたどり着くまでにもう三体にダメージを与えた。結構な音が立ったので、たぶん全アンドロイドが気づいただろう。
いい状況が作れるまで、ここで立ち回りを演じなければならない。なかなかの正念場だ。
刃こぼれのひどいコンバット・ナイフを右手に、旧式のサイレンサーを左手に持ち、近づいてくるアンドロイドを処理していく。
なんと言っても今回一番の幸運は、こいつらが俺のサイレンサー以上に旧式だということだ。
動きも遅いし、視覚、聴覚も特化されているわけではない。射撃だけは正確だけど、同士討ちはしないようになってる。
充分なスピードで動けば、やつらには俺を捕まえられない。死角に回り込み、コンバット・ナイフを振るう。さすがに切れ味が悪いぜ。
だんだんと集まってきた。このままのスピードでうまく動き続けていれば捕まらないが、数がそろえば壁を作られてしまう。
俺はなるべく多く、近くに集めたいが、かといって脱出できないほど密度が高くなってもらっても困るのだ。そろそろだ。
三対がまとまっているほうへダッシュし、至近距離からバイザーに弾丸をぶち込む。三発使った。
倒れる前にコンバット・ナイフを腰に突き刺す、抜く、突き刺す、抜く、そして突き刺した。
思ったとおり、突き刺したままのコンバット・ナイフが避雷針の役割を果たし、ほかの二体の放電を吸収した。吸収して、大きな光球となった。
周りのやつらは、少なくともしばらくはモニターが使えないだろう。やつらの間を走り抜ける。一気に森まで走った。







































 
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