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豊臣秀吉が異世界で無双系姫騎士やるってよ

作者:モッチー7
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第2話:忍者が足りない……

 
前書き
前回のあらすじ

ムソーウ王国第三王女『オラウ・タ・ムソーウ』に転生した『豊臣秀吉』は、敗戦し壊滅したマッホーウ法国の救援要請を受けて謎の元弱小国エイジオブ帝国と合戦する事になった。
だが、肝心のムソーウ王国とマッホーウ法国がファイアーエムブレム無双やDOGDAYSシリーズの様な戦い方をし、階級が部将以上の将校全員(例外無し)に戦国無双2のプレイアブルキャラクターに匹敵する戦闘力とファイアーエムブレム無双風花雪月やDOGDAYSシリーズの様な戦技か魔法の修得が必須な為、、戦略と戦術が致命的に幼稚化していた……
そこでオラウはムソーウ王国やマッホーウ法国に足りない物を1つ1つ整理しようとするが、その度にこの戦いが前途多難である事を思い知らされて愕然。
こうしてオラウは、ムソーウ王国の完敗を予感しながらもムソーウ王国の部将としてエイジオブ帝国と戦う事にしたのでした。

へべく! 

 
いやぁ……
ムソーウ王国の戦術の立て直しを本格的に始めて初めて気付いたのだが……
(笑)(くさ)生えるくらい……
忍者(くさ)が足りない!
じゃあなんだ!?
祖国(このくに)は今までどうやって諜報を行ってきたと言うのだ!?
情報収集(それ)だけじゃない!
噂流布、破壊工作、罠設置、暗殺……
忍者(くさ)の仕事や重要性は多岐にわたる。
それが居ないとなると……
ん?
情報収集がままならない状態で部将としての初仕事をしなきゃいけないと言うのだが、何だこの木材の数は?防御拠点を増やすの?
本陣内に櫓を用意する事はよくある事だが、本当にそれだけなのかが気になる……
「私達は敵の斥候を討伐するのですよね?野営地建設と櫓建設にしては木材が多い気がするのですが?」
すると、私は何故か笑われた。
「姫様は初陣がまだ済まされておられないだけあって、敵が何処にいるのかを知る方法をご存知無いとお見受けする」
それを聴いて……私は愕然としてクラッとした。
ひょっとして……未だに高井楼と望遠鏡に頼った警戒以外の諜報を一切しておらんと言うのか!?
頼む!この嫌な予感が私の見当違いな勘違いであってくれ!
……
……
……
……本当に草原のど真ん中に高井楼を建ておった……
「……これで敵の何が解ると言うのですか?」
「敵がどの方向にいるのかが解ります!」
そう自信満々に言われんでも解るよ。
私が訊きたいのはその先!
つまり、高井楼から見下ろしただけでは解らない敵の中身じゃ!
「……で……敵がどの方向にいるのかを知った後はどうするのですか?」
「勿論、我々はその方向に向かって進軍するのです」
弓兵!仕事しろ!
こんなどデカい高井楼をわざわざ作って、やる事は進軍方向決定だけか?
「おーい、敵が何処にいるか解るかぁー」
なんだこの暢気な会話は?
斥候部隊とは言え、いやしくも敵だぞ!
せめて敵の伏兵の場所を発見せなんだら、こんな諜報のイロハを知らぬふざけた高井楼などぶっ壊して―――
「えー、敵は東の」
その高井楼が敵の攻撃を受けてあっさり転倒・倒壊した。
「砲撃か!?」
はい。あっさりこちらの高井楼の負け。
この様子だと、敵はかなり優秀な大筒をお持ちの様で……
こっちは戦術どころか諜報のイロハすら解らぬ馬鹿揃いだと言うのに……
「何が遭った!?」
「……決まってるでしょ……敵の攻撃です……」
「何を言っているのです姫様!エイジオブ帝国は戦技や魔法に乏しい弱小国!この様な器用な事は不可能です」
あー……
馬鹿だこいつら……
祖国(このくに)は鉄砲や大筒の事をまったくご存知無い様で……
しかも、敵を過小評価するは愚策の中の愚策。それを平気で行うとは……
「何をしている!早く櫓を直せ!敵の―――」
駄目だ!こんな状態で敵鉄砲隊と戦えば、こちらは間違いなく全滅して皆殺しにされる!
「後退だ……」
「……姫様?何を馬鹿な事を仰っているのです?」
何?その馬鹿を見下すかの様な顔は?
この様な状態で敵鉄砲隊と戦えと?
死にたいのかお前は!
「後退だ!これは命令だ!」
「馬鹿な事を言わんでください!そんな事をしたら敵に逃げる背中を見せてしまいますぞ!今直ぐお考え直しを!」
何で自分達の全滅を避ける為に逃げろと言った私が説得されにゃいかんのだ?
勇猛果敢もこれでは無知無謀よな……
「いいから後退だ!これは勝敗どころか生死すら左右する事だぞ!早く!」

なんとか敵大筒の次の攻撃から逃げ切ったが……
……どいつもこいつも私の後退命令への愚痴しか言わぬ。中には他の将校と私を比べて「そっちの方が良かった」とか言う輩までいる……
とは言われましても、あんな敵の鉄砲や大筒の数がまったく解らずな状態で突撃命令を出せと?
アホか!
そんな事をしたら、私達は全滅だ!信長様が長篠で武田家をコテンパンにした時の様に!
くっ!
豊臣秀吉(わたし)は信長様の許で多くの戦を経験したと思い込んでいたが、それはただの慢心だったか?
この期に及んで、漸く勇猛果敢で無知蒙昧な部隊を率いながら未知の敵と戦う事の困難さを思い知るとは……
……あーーーーー!
神よ!勝利の女神よ!
この迷えるオラウ・タ・ムソーウに忍者(くさ)を与えたまええぇーーーーー!
「こんな所で何をやっている!」
「ひゃ!?す、すいません!」
なんだ?
「また貴方でしたか?戦場(ここ)は貴方が来る場所ではありません」
「でも!僕もマッホーウ法国の―――」
「ですが!」
「どうかしましたか?」
「チッ!」
こいつ!
全力舌打ちじゃなかったか今の……
「ごめんなさい!」
それに引き換え、何でこの子供は謝っておるのじゃ?
「でも……でも、僕もマッホーウ法国の王子だ。だから、マッホーウ法国の役に立ちたいんだ」
そうでしたの―――
「何言ってんだ。大した魔法も使えない癖に」
このバカ!
私が出した後退命令に対する不満もあってか、このガキ……もとい!覚悟を決めたいくさ人に対して客将相手とは思えぬ雑で乱暴な扱いしおって。
でも、今はこの王子様の事に集中だ。
でないと……この馬鹿共への怒りと忍者(くさ)不足による不安で気が狂いそうじゃ。
「で、実際にどのような魔法を?」
が、この質問が悪かったのか、さっきまでいくさ人の様な顔をしておった王子様の表情が曇った。
「……小動物を操る魔法と……動物と会話する魔法……」
「他には?」
「……以上……です」
あー、なるほどね。
つまり、1発で数十人の敵を吹き飛ばせるほどの魔法が撃てないから……
ん?……小動物を操る……
これだぁーーーーー!
「何でそれをもっと早く言ってくれなかったんだ!?」
「え?……何の事?」
「小動物を操る話じゃ!」
その途端、馬鹿共は「この馬鹿女の頭が遂に狂ったか」だの「こいつは救い難い馬鹿だ」だのと、この豊臣秀吉(わたし)を馬鹿にしよる。
つまり……私にこの子が小動物を操る魔法が使える事実が伝わるのがこんなに遅くなったのは、この馬鹿共が小動物を操る魔法の戦術的重要性と危険性に全く気付いていないからって訳ね。
祖国(このくに)の戦術を立て直す取り組み……これでますます困難になったな……こんな致命的な『宝の持ち腐れ』をしでかすとは……
あぁー!もう無視!
「して、どのくらいの大きさの動物を操れる」
「ポメラニアンくらいの大きさの動物が限界です」
かえって好都合!
熊や虎だと偵察じゃなくて強襲になってしまうが、その程度の大きさなら諜報として十分使える!
このオラウ・タ・ムソーウ!漸く優秀な忍者(くさ)を得たぞ!
「なら!……その前に名前じゃ。何と言う?」
「え?……『アニマ・マッホーウ』」
「ではアニマよ!早速その小動物を操る魔法を私の言う通りに使用して貰おう!」
その途端……救い難い馬鹿共が「やっぱこの馬鹿女に軍を指揮する資格が無い」と抜かしおる。それがアニマの自信を奪ってしまう。
「……やっぱり……みんなの言う通り、僕には姉さんの様な強さは―――」
「違う!」
「……え?……」
この点は早い段階ではっきりさせて修正しないと、このアニマもこの馬鹿共が行う間違った戦術に完全に染まって致命的な間違いを犯す!
せっかくの貴重な忍者(くさ)に、その様な致命的な間違いはさせん!
「武器を振り回して敵を薙倒すだけが戦争ではない!敵を知り敵に嫌われる、それもまた戦争じゃ!」
「敵を……知る?」
「そうじゃ!お前には敵の全てを知り尽くす才能が眠っている!それをこの豊臣秀吉(わたし)が見事に開花させ、お望み通りのこの戦争に欠かせない逸材にしてやろう!約束じゃ!」
……その途端……馬鹿共の中からこの豊臣秀吉(わたし)を見下げ果てて私の許を去る者が出始めおった。
「……駄目だな……この女はもう駄目だ……」
「戦争を何だと思っているんだこの馬鹿女は?ま、あの時の後退を命じた時点で、この女は完全に馬鹿だと気付いていたがな」
無視だ無視!
今はアニマが使える魔法をどう有効活用しようかを必死に考える方が先じゃ!
……と言いたいところだが……私がアニマの魔法に夢中になり過ぎた事が、後でとんでもない形で私の首を絞めようとは……
この時の私は夢にも思わんかった……

一方、エイジオブ帝国側は上官の進軍再開命令に副官が困惑していた。
「ですが中隊長、我々の今回の任務は斥候射撃の筈では?」
「だからこその進軍再開だ」
「と、申しますと?」
「あの敵将が何か変だったからだ」
「変?」
「俺が聞いたムソーウ王国の将校は、その全てが勇猛果敢な一騎当千だそうだ」
「それは私も聞いております」
「だが、実際に戦ってみてどうだ。俺達がちょっと前哨を破壊したくらいであの逃げ足だぞ?」
「確かにあの逃げ足は勇猛果敢とは程遠いですが……あの敵将が唯の臆病なだけでは?」
そんな副官の予想に対し、上官は困った顔をしながら首を横に振った。
「俺にはどうもそれだけには視えない。あの逃げ足……わざとの様な気がしてならんのだ」
副官はそこで漸く上官の言いたい事を理解した。
「つまり、あの敵将が魅せた逃げ足が罠か臆病かを確かめる為に、と言う事ですな?」
副官の言葉に上官がニヤッと笑うが、
「しっしっ!あっち行け!」
「ん?何の騒ぎだ?」
部下が必死に手を振っているので、何が遭ったのかを確かめるべく上官が其処に向かう。
「何が遭った?」
だが、部下は気楽に答えた。
「すいません。この蜂が意外としつこくて……あー、もう!いい加減にしろ!」
その途端、上官が激怒した。
「馬鹿もん!」
「え!?」
「蜂を素手で追い払うな!毒針に当たって体調が崩れてしまうだろうが!」
「え!?ですが―――」
「体調の悪化は部隊の乱れ!体調管理を怠ったら、勝てる戦いに敗けてしまうだろうが!」
「……すいません」
どうやらこの上官は、オラウが慎重に部隊の後退を選んだだけで『救い難い無能』のレッテルを張った戦術知らずのムソーウ王国軍一般兵達とは違ってそこそこ賢い様だ。
が、その賢さ故に蜂を素手で払う行為を止めさせた事が、この上官が率いる部隊の後々の敗因になろうとは……

翌朝……
敵は進軍を再開した様だ。
アニマが操った蜂の話によると、今回の敵将は豊臣秀吉(わたし)が出した後退命令に罠の気配を感じているそうだ。
実際はただの準備不足なだけだったのだがな。
あの敵将、結果的にではあるがその慎重さに自分の首を絞められたな。
とは言え……もしエイジオブ帝国の将校全員が今回の敵将と同じくらい賢かったら、戦下手過ぎるムソーウ王国の勝ち目はますます減るぞ!
早く何とかしないと!
「む?停まれぇー!」
敵将が立ち塞がる私を発見して部隊を停止させる。
くぅー!ますますあの馬鹿共にこいつの慎重さを見習わせたい!
とは言え、ここで開戦となっては今回の作戦が根底から崩れる。
……攻めて視るか。
「光刃!」
私が思いっきり裏一文字を放つやいなや、光の斬撃が銃弾に様に敵に向かってすっ飛んで往く。そして、それだけで数十人の敵を木の葉の様に吹き飛ばす。
これがムソーウ王国が誇る戦技の1つ。
ムソーウ王国軍にはこの様な1人で数十人の敵を一瞬で討ち取れる戦技が沢山有る。
が、それに頼り過ぎたかどいつもこいつも本物の猪が名誉棄損で訴えてきそうなくらいの猪武者に成り下がりおった。
そうやって過剰な戦力に物を言わせて不要な突撃を行い、気付けば死地に堕ちる馬鹿はごまんといる。
私はそんな馬鹿げた死に方は御免だ。
寧ろ……
「あー!逃げたぞぉー!追え!追えぇー!」
そうだ!
豊臣秀吉(わたし)は逃げたぞ!さっさと追って来い!
しばらくして、私がとある洞窟に逃げ込むと、敵達も一同に追って来る……だったら良かったんだけどなぁ!
私の後ろの足音が減ったと言う事は、敵全員がこの洞窟に入った訳ではなさそうね……本当にムソーウ王国とエイジオブ帝国の戦術の差がマジで凄い……
とは言え、これだけの敵鉄砲隊をここまで誘き出せば上等か!
敵は、私が反転して攻撃を再開する素振りを魅せた途端、私に向かって鉄砲を構えるが、
「あれ?……なんだ!?炭酸粉がパチパチ言わない!」
「これでは鉄の球を遠くに飛ばせない!」
「何がどうなっているんだ!?」
ここで自慢げに豊臣秀吉(わたし)が華麗にネタバラシをする。
「フフフ、まんまと引っ掛かったな?」
「な!?……我々の小型投石器に何をした?」
「なぁーに、この洞窟の湿気を利用しただけよ。この洞窟の湿気がお前達の火薬と火縄をお釈迦にしてくれたのよ」
因みに、この洞窟もアニマが近くにいた蝙蝠から訊き出してくれたモノ。アニマには本当に感謝だ!
すると、鉄砲隊を率いていたリーダーが必死に叫ぶ。
「誰か火を持って来い!炭酸粉を温めて湿気を飛ばすのだ!」
おーおー、大慌てですなぁ。
だが、お前達の火縄が正気に戻るのを待つ心算は無い!
ムソーウ王国の自慢の戦技でこいつらを蹴散らしてみるか!
先ずは先程もだした『光刃』!
光の魔力を宿した剣撃を銃弾の様に飛ばす技じゃ!
続いては『一閃』。
高速ダッシュしながらすれ違い様に敵に渾身の裏一文字を浴びせる移動を兼ねた技!
そして『剣の舞い』。
ジグザグに前進しながら裏一文字を3連発する回避にも使える技じゃ!
しかも、そのどれもが一騎当千の破壊力!
あっという間に敵鉄砲隊は全滅だ。
我ながら凄いと思いつつ……これに溺れない様に最新の注意を払わねばな。
……さて、外にいる敵将に遭いに往くか。
敵将は、私の顔を視た途端、中に入った手下の全滅を悟ったのか、勇猛果敢で無知蒙昧な馬鹿共とは真逆な命令を下しおった。
「誰でも良い!早く帝都に逃げ込め!そして、この女がどれだけ危険かを上の連中に正しく伝えるのだ!往けぇー!」
それはつまり……こいつらが私を過剰に危険視している事の表れ。
普通に考えれば誉と思える事なのだろうが、ムソーウ王国の戦略と戦術が完全に死に体の現地点ではかえって困る。
せめて他の馬鹿共と同列扱いして貰わねば!
つまり、私がやる事はただ1つ……
ムソーウ王国自慢の戦技を使ってこいつらを全滅させた。1人も残さずだ。
とは言え……この敵将は本当は欲しかったなぁ……私の周りは全員馬鹿ばっかだから!
さて……そんな馬鹿共を1人も死なせずに完勝したまでは良かったが……
「姫様!今回の愚行の数々に関する出頭命令が出ておりますので、至急国王の許にお向かい下さい!」
何故か私の支持率は大幅に減衰していた……
私達は勝ったんだよ!?こっちは1人も死んでいないんだよ!なのに何で!?
もう嫌だ祖国(このくに)いぃー! 
 

 
後書き
アニマ・マッホーウ

年齢:10歳
性別:男性
身長:139cm
体重:35.1㎏
職業:元王子
魔法:小動物を操る(ポメラニアン程の大きさが上限)、動物と会話出来る
趣味:動物飼育、魔法の勉強
好物:平和、活躍の場、仲間達の役に立つ事
嫌物:不正、侮辱的発言、無力な自分
特技:動物と会話する
苦手:強力な攻撃魔法会得

姉と共にムソーウ王国に亡命したマッホーウ法国の王子。
祖国を滅ぼした怨敵エイジオブ帝国との戦いで自分も役に立ちたいと考えてはいるが、優しくてお人好しな性格が災いしたのか動物操作系魔法しか習得出来ず、戦力とみなされない日々が続いていたが、そんな彼に諜報員としての才能を見出したオラウに拾われた事で事態は一変、周囲から戦力外と侮辱されつつもオラウに叱咤激励され続けた結果、オラウが率いる部隊に必要不可欠な敏腕諜報員へと成長した。 
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