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金木犀の許嫁

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第四話 同居の準備その六

「ああしたな」
「無茶苦茶はしなかったのね」
「魔女狩りっていうとキリスト教でな」
 父は宗教の話もした。
「切支丹って言って江戸時代は禁じられていただろ」
「切支丹だと死罪よね」
「それでもまずは踏み絵をさせてな」
 それで切支丹かどうか確認をしてというのだ。
「信仰を捨てれば助けたからな」
「魔女狩りよりずっとましね」
「魔女狩りは疑われたら終わりだろ」
「欧州の子が言ってるわ」
 真昼は父に答えた。
「本当に疑われたらね」
「後は地獄だな」
「とんでもないものだったって」
「日本は確かに切支丹は禁止したけれどな」
 キリスト教の信仰はだ、これは信仰を利用しての侵略そして日本人を奴隷として海外に売り飛ばして働かせることを警戒してのことだ、実際に後者は起こっていた。
「けれどな」
「ちゃんとチェックして」
「信仰を捨てれば助けたんだ」
「遥かにましね、魔女狩りより」
「そうだぞ」
 それこそというのだ。
「本当にな」
「そうなのね」
「そうしたものを見るとな」
「幕府はかなりましね」
「そうだぞ、当時にしてみればな」
 その時代の世界各国と比較してというのだ。
「今で言うと随分人道的だったんだ」
「そうなのね」
「死罪も少なかったしな」
 そもそも江戸時代は犯罪件数も少なかったという。
「平和で穏やかな」
「いい時代だったのね」
「年貢も低かったしな」
 幕府は敢えてそうしていた、民に善政を敷いて諸藩への手本を見せようと考えてのことであったのだ。
「だから生活も楽だったしな」
「そっちも色々言われてるけれど」
「生かさず殺さずだな」
「搾って搾って搾り抜くとか」
「それもなかったからな」
 その実はというのだ。
「いい時代だったんだ」
「江戸時代は」
「大阪だって平和でな」
 当時は大坂と書いた。
「穏やかだったんだ」
「それで商売が栄えたのね」
「そうだったんだ」
「成程ね」
「だから二百六十年以上続いたんだ」
 二百六十四年になる。
「長くな」
「長く続くには理由があるのね」
「しかもずっと平和だったしな」 
 二百年以上続いた、これを世界では奇跡の平和と呼ぶ。
「いい時代だったんだ、文化も栄えたしな」
「元禄文化に化政文化に」
「そのこともいいことだな」
「そうね」
「それでその江戸時代の間」
「ご先祖様は薩摩でな」
 その地でというのだ。
「ずっとな」
「暮らしていたのね」
「苗字は変えてな」
 本来の姓は隠してというのだ。 
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