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犬の頭は馬鹿に出来ない

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第一章

               犬の頭は馬鹿に出来ない
 石川県で大地震が起こった、それでだった。
 日本中大騒ぎになり被災地に自衛隊が急行し被災者の人達の救助や復興にあたる様になっていた。多くの人が被災者の人達や被災地を心配していたが。
 その中で悪質なデマが拡散されかつ被災地に来ることを自粛する様に言われても来る国会議員もいた。
 ふわりの飼い主である国崎家の一家もこうした輩共には眉を顰めさせていた。
 一家の父であり夫である文太は自分のスマートフォンのインターネット機能でそうした情報を確認して言った。
「こうした時こそデマなんてな」
「流すべきじゃないわね」
 妻の百合子も応えた。
「本当に」
「そうだな」
「ええ、変なコメディアンの人とか」
「学校の名前が付いてるか」
「あの人とか」
 まずはこの輩のことを話した。
「変な政党とね」
「そこの代表か」
「今被災地に行っても」
 交通が破壊され何もかもが混乱している状況ではというのだ。
「邪魔になるだけでしょ」
「実際そうだったらしいな」
「そうなるわね」
 百合子はそれを当然とした。
「やっぱり」
「しかも炊き出しのカレーまで食べてな」
「被災者の人達のものよね」
「それを食ったんだよ」
「何考えているのかしら」
「碌なこと考えていないだろ」
 それこそとだ、文太は忌々し気に答えた。
「どうせな」
「自己満足とか宣伝とか」
「被災者の人達のことなんてな」
「全く考えていないわね」
「それがわかるだろ」
「よくね」
「考えているとデマなんて流すか」
 忌々し気な言葉はそのままだった。
「そして今の時期に被災地に行くこともな」
「しないわね」
「行って何が出来るんだ」
 そもそもと言うのだった。
「重機も物資もなくてな、かえって道を通ってな」
「渋滞になってるみたいね」
「自衛隊の人達が行ってな」 
 被災地にというのだ。
「救助や復興の活動をしたり物資を運ぶ邪魔だ」
「渋滞になんかなったら」
「それをやってるんだ、本当にな」
「迷惑ね」
「これ以上はないまでにな」
 それこそというのだ。
「最悪なことだ」
「本当にそうね」
「こいつだ」
 ここでだた、文太は。
 今リビングのテレビに出ているその政党の代表元俳優だった彼を指差してそのうえで百合子に話した。 
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