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八条学園騒動記

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第七百三十四話 猛獣以上の災厄その六

「だから死んでもだ」
「ローマの民衆に慕われましたね」
「身分の低い者に拠ってギリシア文化を好んだことが仇となった」
 こうしたことは当時のローマの上流層の一部には否定される傾向が強かったのだ。大カトーの様な者がまだいたのだ。
「そして国家戦略は理解していたが」
「ローマのそれは」
「彼自身は軍を率いたことがなかった」
 これは生涯に渡ってだった。
「当時それはローマ皇帝にとって致命傷だった」
「自ら軍を率いられないことは」
「ローマ皇帝はインペラトールだ」
 プリンキケプス即ち第一の市民であると共にだ。
「軍の最高司令官だ」
「軍を握っていることが権力の源でしたね」
「それで軍隊を率いられないのではな」
「致命傷ですね」
「そこを政敵に衝かれてな」
 そうしてというのだ。
「それでだ」
「追い詰められて自殺して」
「政敵に暴君と書かれたが」
 歴史書にだ。
「その実はな」
「暴君ではなかったですね」
「短気な一面はあったが」
 これはネロの短所であった。
「しかしな」
「全般で見てですね」
「ローマに心血を注いで結果も出したな」
 その証拠にネロの統治の間ローマは乱れていない、ローマの火災も自ら陣頭指揮を執って鎮火と民衆の救済にあたっている。
「そうだったな」
「あの皇帝は」
「暴君どころかな」
「それなりの皇帝でしたね」
「競技に出た時にはな」
 スポーツのだ。
「皇帝の証を外した」
「あの月桂冠をですね」
「そして一選手になってだ」
 そのうえでだったのだ。
「参加した」
「皇帝の権威を使わない時はですね」
「使わないだけの分別もだ」
「備えていましたね」
「そして教養もあった」
 これもというのだ。
「そうした面を見るとな」
「ネロは、ですね」
「それなりの皇帝だった」
「暴君ではなかった」
「決してな、何故長い間そう言われたか」
 二十世紀までのことだ。
「それには理由があった」
「キリスト教への弾圧ですね」
「それ故だ」
「キリスト教から見ますと」
「今もネロの評価は低いな」
「悪いと言っていいな」
「はい」
 上等兵も答えた。
「実に」
「弾圧された方ならだ」
「それも当然ですね」
「だがネロが最初ではなかった」
 キリスト教を弾圧したのはだ、尚七つの首を持つ赤いドラゴンはローマ帝国を表していると言われている。
「カリギュラからだ」
「はじまったことで」
「当時のローマから見るとな」
 そうなると、というのだ。 
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