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イベリス

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最終話 素敵な想い出その五

「けれどね」
「行って来るのね」
「そのお店にね」
「気を付けてね」
 母は娘にこう言うことを忘れなかった。
「小さな娘も一緒だと」
「ええ、色々気を付けてね」
「行って来るわね」
「そうしてくるわ」
 この時も笑顔で言った、そして父がモコと一緒に買えるモコとも遊んでだった。三世帯で食事を摂って。
 一階の夫婦と娘の為に布団を敷いてもらった居間に入る前にだ、ケージにいるモコに挨拶をした。
「モコお休みなさい」
「ワン」
「あんたも元気で何よりよ」
「練馬はどうなんだ」
 父はリビングで牛乳を飲みつつ聞いてきた。
「そっちは」
「別に何もないわよ」
「そうだといいけれどな」
「というかお父さんお酒飲まないのね」
「母さんから聞いただろ、血圧高くなってな」
「飲む量減らしてるのね」
「ああ、今日は飲まないよ」
 こう言うのだった。
「それで健康的にな」
「牛乳なのね」
「これ飲んでな」
 そうしてというのだ。
「歯を磨いてな」
「寝るのね」
「そうするよ」
「そうなのね、花も牛乳よく飲むわ」
「子供だからな」
「どんどん飲んでもらって」
 そうしてというのだ。
「健康になってもらうわ」
「それも子育てだな」
「食育でね。好き嫌いもこれといってないし」
「それはいいな」
「このままね」
「育ってもらうか」
「そうするわ、じゃあね」
 咲は父に言った、服はもうパジャマになっている。
「寝るから」
「よく寝ろよ」
「ええ、ただ実家なのに」 
 このことは苦笑いで話した。
「お客さんみたいよ」
「結婚して別の場所に住んでるとな」
 父はそれならと話した。
「そっちが本来の家になるからな」
「だからなのね」
「実家でもな」
 生まれ育った家でもというのだ。
「自然とな」
「そうなるのね」
「そんなものだ、家族といる場所がな」
 父は優しい笑顔で話した。
「自分の家なんだ」
「そうなのね」
「だからな」
「実家でもなのね」
「今の先はお客さんに感じるんだ」
 そうなるというのだ。
「どうしてもな」
「そうなのね」
「それが自然だからな」
「おかしくないのね」
「ああ、だからな」
「うちの人と咲は」
「二人共大事にするんだぞ」 
 こう娘に言った。
「いいな」
「わかったわ」
 咲は確かな声で答えた。 
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