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英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

作者:sorano
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プロローグ 後篇〜合同捜査隊『エースキラー』〜後篇

~オルキスタワー・34F・皇帝執務室~



「………………………………」

「……また随分と”色々な意味で豪華なメンバー”を集めたものね………」

部屋の4人の人物の内3人を知っていたロイドは口をパクパクさせ、ルファディエルは困った表情を浮かべて呟いた。

「クク、その意見には同感だが”天使”のテメェにだけは”イロモノ”呼ばわりされる言われはねぇぜ、”叡智”。」

「クスクス、ルバーチェの若頭に4年前に色々と”やらかしはった風の剣聖”に当代の”(イン)”と、こんなにも様々な”裏”に属する人達を投入する事を決めた”黄金の戦王”はんの思い切った決断力には感心しますわ~。」

「……………俺が犯した罪を否定するつもりはないが、貴女にだけは言われる筋合いはない。」

「アハハ……」

漆黒のスーツを身に纏った大男――――――かつてのクロスベル最大のマフィアだった”ルバーチェ商会”の若頭であるガルシア・ロッシは不敵な笑みを浮かべ、黒いヴェールで顔を隠して全身も漆黒のドレスの女性は可笑しそうに笑い、女性の言葉を聞いた黒髪の長髪の男性――――――元A級正遊撃士にして4年前ゼムリア大陸を”激動の時代”へと変えた切っ掛けとなった”クロスベル異変”を起こした元凶の一人である”風の剣聖”アリオス・マクレインは女性の言葉に反論し、豊満な胸の持ち主である紫髪の女性――――――ロイドの恋人の一人にして東方の伝説の暗殺者”銀”の”当代”であるリーシャ・マオは苦笑していた。



「リーシャ!?それにガルシアにアリオスさん!?陛下、これは一体どういう事なんですか……!?」

一方我に返ったロイドは驚きの表情で声を上げた後ヴァイスに視線を向けて疲れた表情で問いかけた。

「どういうも何も、そちらのメンバーが今回の”合同捜査隊”のメンバーとして”適正”だからだと思ったからだが?」

「て、”適正”って一体どんな理由で……リーシャは旧カルバード共和国の出身だから、地元を良く知っているという理由という事は何となくわかりますが……」

ヴァイスの答えを聞いたロイドは表情を引き攣らせながら呟いた後疲れた表情で溜息を吐いた。

「アリオスは遊撃士時代旧カルバード共和国に何度も出張で訪れているとの事だからリーシャのように土地勘はあるだろうし、ガルシアもリーシャ程ではないにしても旧共和国の”裏”の知識についてもある程度知っているだろうからな。――――――今回の”合同捜査”は”表”だけでなく、”裏”方面からも探る必要はあると判断して”裏”に詳しいメンバーも用意したという訳だ。」

「り、理屈はわかりますが……―――――というか服役中のアリオスさんとガルシアを捜査に協力させるとか様々な別の問題が発生すると思うのですが……」

ヴァイスの説明を聞いたロイドは疲れた表情で呟いた後更なる疑問をヴァイスに問いかけた。



「少なくても二人が”逃亡”や更なる罪を犯す事はありえないから、そんなに心配する必要はないぞ。」

「本人達の目の前でそんな確信を持った言い方をするという事は二人と何らかの”取引”をして今回の”合同捜査隊”に加わる事になったのかしら?」

「へ。」

ヴァイスの話を聞いてある事に気づいたルファディエルの推測を聞いたロイドは呆けた声を出した。

「ああ。ガルシアはマルコーニを含めた現在服役中の”ルバーチェ”全体の”減刑”や服役中のマルコーニ達に対する待遇改善、アリオスも同じく服役中のグリムウッド元弁護士の”減刑”を条件に今回の”合同捜査”に協力する事を了承してもらっている。」

「ガルシアはマルコーニ達、アリオスさんは自分ではなく、イアン先生の………―――――って、そもそも”服役中の人達と司法取引”をしている事自体が問題だと思うのですが……」

ガルシアとアリオスが協力している理由を知ったロイドは複雑そうな表情を浮かべたがするにある事に気づくと疲れた表情で指摘した。

「フッ、”リベールの異変”の時にもかつて祖国であるリベールに対してクーデターを起こしたリシャール達が”剣聖”カシウス・ブライトの采配によって異変解決に貢献した事を理由に全員釈放されたという”前例”があるのだから、そんなに大した問題じゃないだろう?」

「………………………………」

「ふふっ、確かに反乱を起こしたリベールの旧情報部の人達と”風の剣聖”はん()の罪を比べれば、旧情報部の人達の方が重いどすな~。――――――おっと、”風の剣聖”はんに関しては旧情報部の人達の罪よりも重いかもしれまへんな。」

「………”執行者”である貴女にだけはそれを言われる筋合いはないと思うが。」

静かな笑みを浮かべて呟いたヴァイスの答えを聞いたロイドが冷や汗をかいて表情を引き攣らせて黙り込んでいる中女性は静かな笑みを浮かべて呟いた後意味ありげな笑みを浮かべてアリオスに視線を向け、視線を向けられたアリオスは厳しい表情で答えた。



「た、確かに……じゃなくて!?何でルクレツィアさんまでここに……!?」

アリオスが女性に向けたある言葉を聞いて苦笑しながら同意したロイドだったがすぐにある事に気づき、困惑の表情で女性を見つめ

「フフ、久しぶりやなぁ、初代特務支援課のリーダーのお兄はん。こうして顔を合わせるのは空の女神(エイドス)はんらの”お別れ会兼親睦会”の時以来やなぁ。」

女性――――――元結社”身喰らう蛇”の執行者No.Ⅲ”黄金蝶”ルクレツィア・イスレはロイドの反応を面白そうに見つめながら軽く挨拶をした。

「レティは結社崩壊後フリーの傭兵兼諜報員に転向していてな。戦闘能力が高くかつ諜報も行える彼女の能力には重宝している。」

「クスクス、こちらこそ異名に同じ”黄金”が付く者同士としてヴァイスの旦はんとは良いビジネス関係を結ばせてもらって、うちもヴァイスの旦はんにはお世話になっているわぁ。」

「……お互いに愛称を呼び合っている様子から察するに、随分と前から彼女と”ビジネス関係”を結んでいたようね。」

ルクレツィアの事を説明するヴァイスとヴァイスの説明を捕捉したルクレツィアの説明を聞いたルファディエルは呆れた表情でヴァイスを見つめた。

「あ、頭が痛くなってきた…………――――――というか、結社の関係者と協力関係を結んでいるなんて陛下もディーターさん達の事は言えないじゃないですか……」

頭痛を抑えるかのように頭を抱えたロイドは疲れた表情で指摘したが

「心外な。レティの場合はディーター達と違って”身喰らう蛇という組織との協力関係ではなく、ルクレツィア・イスレ個人との協力関係”だ。第一ロイド、”警察に所属しているお前が東方の伝説の暗殺者と恐れられている銀であるリーシャを仲間として受け入れた上、更には恋人同士にもなったお前”も俺の事は言えないんじゃないか?――――――おっと、リーシャの場合は”ロイド自身の手でリーシャを叩きのめしてリーシャの身柄を強引にもらった”のだったな。」

「う”っ。」

「フフ、懐かしい話ですね。」

ヴァイスの反論とからかいの意味も込めた指摘に唸り声を上げ、リーシャはかつての出来事を思い返して苦笑していた。

「それにヨシュアにレーヴェ、”神速”を始めとした”鉄機隊”の面々に”告死線域”、結社の最高幹部の”蛇の使徒”だった”鋼の聖女”に”蒼の深淵”と今までお前が関わった大事件を解決する事ができたのは元結社の”執行者”に加えて最高幹部である”蛇の使徒”の協力もあったのだから、クロスベル皇帝である俺が元結社の”執行者”の一人と協力関係を結んでいる事なんて”今更”じゃないか?」

「うぐっ…………」

「まあ、”国を動かす為政者”には”清濁併せのむ”事は必須とよく聞くものね……」

更なるヴァイスの指摘に反論できない再び唸り声を上げ、ルファディエルは疲れた表情で呟いた。

「クク、”国の為”なら俺やマクレインを戦力として利用する為の”取引”をする事も躊躇わない柔軟な考えを持つ皇帝殿だぜ。俺達がムショを出た後も皇帝殿が現役ならルバーチェの復興も夢じゃねぇかもしれねぇな。」

「………………………………」

「冗談でもそんな絶対に実現して欲しくない悪夢は言わないでくれ!?――――――それよりもリーシャも本当にこの合同捜査に協力していいのか?長期になるこの合同捜査にリーシャも協力すれば、アルカンシェルのアーティストとしての活動もしばらく休む事になると思うんだが……」

口元に笑みを浮かべて呟いたガルシアの言葉を聞いたアリオスは目を細めてガルシアに視線を向け、疲れた表情で声を上げたロイドはリーシャにある事を訊ねた。



「はい、アルカンシェルの方はロイドさんもご存じかとは思いますが蒼の深淵――――――いえ、”蒼の歌姫(ディーバ)”であるクロチルダさんとの共演による大きな舞台がちょうど終わった所でアルカンシェル自体は長期休み期間に入ったばかりですし、イリアさんに事情を話したら『心残りがあったら練習や次の舞台にも支障が出るでしょうからさっさと心残りを解決してきなさい』って言われて送り出されましたから……」

「ハハ、イリアさんらしいな……」

リーシャの話を聞いたロイドはある人物―――――アルカンシェルのトップスターである”炎の舞姫”の異名で呼ばれているイリア・プラティエを思い浮かべて苦笑し

「あ、それと『カルバード州にしばらく滞在するんだったらお土産としてアンタやシュリに続く新人も見つけてきなさい!』とも言われました。」

「ハ、ハハ……リーシャやシュリクラスの新人アーティストを見つけるなんて容易じゃないと思うんだが……」

「フフ、中々厳しい”お土産”を要求されたわね。」

リーシャが口にした更なる話を聞くと冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ルファディエルは苦笑した。



「……話を戻すけどクロスベル側の”合同捜査隊”のメンバーはこれで全員なのかしら?」

「あー……そのことなんだが……」

そして気を取り直したルファディエルがヴァイスに訊ね、訊ねられたヴァイスが答えを濁したその時扉が勢いよく開けられた。

「へ。」

「あら……」

勢いよく開けられた扉の音に気づいてその場にいる者達と共に扉に視線を向けたロイドは部屋に入ってきた新たな人物を目にすると呆けた声を出し、ルファディエルは目を丸くし

「ようっ!お前さん達が名高いあの”初代特務支援課”のリーダーと知恵袋だよな?オレ様もアルマータとかいうクソ野郎共をぶっ潰す為にお前達に力を貸す事になったから、よろしくな!」

部屋に入ってきた人物―――――仮面を付け、赤い鎧を身に纏っている大柄な男性はロイドとルファディエルに親し気な様子で話しかけた。

「な、な、な……ッ!?」

「……一体これはどういう事なのか、説明して欲しいのだけど?」

男性に話しかけられたロイドは驚きのあまり口をパクパクさせ、ルファディエルは疲れた表情でヴァイスに問いかけた。



「どういうも何も”某バカ王”の思い付きによって、そこの”バカ”もクロスベル側の合同捜査隊のメンバーになった。――――――それだけの話だ。」

「い、いやいやいやいや……ッ!?何でギュランドロス陛下――――――クロスベル皇帝直々が合同捜査隊のメンバーの一人なんですか!?”総督”のリィン以上に色々な意味で大問題じゃないですか!?」

呆れた表情で答えたヴァイスの答えを聞いたロイドは疲れた表情でヴァイスに突っ込んだが

「んー?確か名前はロイドだったような?その様子だとお前はこのオレ様と誰かと間違えているんじゃないか?オレ様とお前達は”初対面”だぜ?」

「へ……しょ、”初対面”も何も貴方はギュランドロス陛下なのでは?」

大男に指摘されると呆けた様子で訊ね返した。

「惜しいッ!我が名はランドロス・サーキュリーだ!二つ名は”仮面の紳士”!よろしくな!」

「え、え~と………ギュランドロスへ、いえ、ランドロスさん、でしたか?二つ程伺いたい事があるのですが……」

そして大男――――――ランドロスの答えにその場にいる多くの者達同様冷や汗をかいて表情を引き攣らせたロイドは困惑の表情でランドロスに問いかけた。



「おう、何でも聞いてくれ!」

「その………ランドロスさんの二つ名は本当にそれでいいんですか?」

「”仮面の紳士”か?ハハァッ、いいに決まってんだろ。」

「完全に貴方の本来の二つ名ではありませんけど、それでいいんですか?」

「かっこいいだろ!」

ロイドの質問に対してランドロスは胸を張って自慢げに答え、ランドロスの答えを聞いたロイド達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「そ、そうですか。では最後に………その、あえて合同捜査隊のメンバーに入った理由は聞きませんけど、顔は仮面で隠したからいいとして、服装くらいは変えようと思わなかったのですか?」

「何が言いたいのか良くわからんが、赤とこの鎧には深~いこだわりがあってだなぁ………」

「…………あの、ヴァイスハイト陛下?」

自分の質問に対して答えたランドロスの答えに再び冷や汗をかいたロイドはヴァイスに話を振ったが

「――――――ちなみにだが、そいつの”お目付け役”は”クロスベル側の合同捜査隊のリーダー”であるロイド。お前だから、”色々な意味”で頑張れよ。」

「ええっ!?」

「…………一応聞いておきたいのだけど、そちらのランドロスと名乗る男の決断について貴方を除いた他の”六銃士”の面々は知っているのかしら?」

ヴァイスはロイドの問いかけを無視するかのように真剣な表情でロイドにとって驚愕の事実を口にし、その事実にロイドが驚いている中頭痛を抑えるかのように頭を抱えていたルファディエルはヴァイスに訊ねた。



「当然知っているし、止めるつもりも毛頭ない。――――――あのバカ王の思い付きや行動は気にするだけ時間の無駄というのが”俺を含めた六銃士全員の判断だ。”正直付き合いの長い俺達ですらも、未だにあのバカ王の考えや行動原理はわからんからな。」

「………………」

呆れた表情を浮かべて答えたヴァイスの答えを聞いたロイドは冷や汗をかいて表情を引き攣らせて黙り込み

「本当ならランディあたりにそいつの”お目付け役”を任せる事も考えたんだが、トールズ士官学院に派遣中で、しかもアームブラストの代わりに”Ⅶ組”の担任を任された今のランディには無理だからな。――――――ちなみにランディ本人もその話を知った時は笑顔を浮かべて『あの無茶苦茶かつ非常識なオッサンのお目付け役、頑張れよ、ロイド!』という伝言をお前に伝えるように言われたぞ。」

「ランディ……」

ヴァイスの話を聞いてロイドはある人物を思い浮かべて疲れた表情で溜息を吐いた。

「おいおいおいおい、何を暗くなっていやがる。何を勘ぐっているのか知らねぇが、オレ様は以前オレ様が惚れて力を貸した男が新たに建国した国で悪さをしているクソ野郎共をぶっ潰す事ができる人材を探しているって聞いて興味を持ったから、山から下りてきたんだぜ。これからはあんた達の同僚として、全力で働くからよろしく頼む、なっ♪」

「わ、わかりました……納得したくはありませんが、一応よろしくお願いします、ギュランドロスへ――――――いえ、ランドロスさん……」

(クカカ!さすがのロイドも驚きの連続で突っ込むのを諦めちまったようだな♪)

ポンポンと馴れ馴れしく肩を叩いてきたランドロスの言葉にロイドが疲れた表情で答えている中、その様子をロイドの身体の中から見守っていた悪魔族の男――――――ギレゼルは陽気に笑っていた。



「ロイド達は引き継ぎの関係、アリオスやガルシアは戦いの”勘”を取り戻す為の訓練である程度の日数は必要だろうからお前達が実際に現地入りしてもらうのは来月の1週目の週末の予定だ。」

「了解しました。」

「それとお前とルファディエルにはこれを渡しておく。」

「これは一体……?」

ヴァイスが手渡した書状をロイドは不思議そうな表情で見つめながら訊ねた。

「”皇帝勅命捜査令状”だ。」

「”皇帝勅命捜査令状”……?」

ヴァイスが口にした初めて聞く言葉にロイドは不思議そうな表情を浮かべ続けたが

「―――――察するに”違法捜査”を許可する為の”捜査令状”じゃないかしら?」

「なっ!?」

静かな表情で呟いたルファディエルの推測を聞くと信じられない表情で声を上げた。



「その通り。お前達もよく知っているように本来ならば盗聴やハッキング、捜査令状がない状態での家捜し等と言った”違法”となる手段で得た証拠物件は法的な証拠能力を認められない。だが、その”皇帝勅命捜査令状”があれば話は別だ。」

「………クロスベル帝国を統べる”皇”である貴方とギュランドロス皇帝による”勅命”になると”クロスベルの領土内での違法捜査によって得た証拠物件も法的にも認められるかつ捜査令状の発行手続きを省略する事も可能”……という事か。」

「クスクス、エレボニアの皇帝――――――おっと、今は”国王”やったな。その国王のユーゲント三世と違って”絶対権力”があるヴァイスの旦はんと”暴君”はんの勅命は”クロスベル帝国領内だとクロスベル帝国法のあらゆる法よりも優先されることになる”から、当然”皇帝の勅命ならば違法捜査も認められる”という事やな。」

「クク、”民間人の保護”を建前にある程度の無茶を平気で実行している遊撃士協会(ギルド)も真っ青になるような令状だぜ。」

「ア、アハハ……また随分と思い切った事をしましたね……」

ヴァイスの説明に続くようにアリオスは静かな表情で推測を口にし、ルクレツィアは可笑しそうに笑いながら呟き、ガルシアは口元に笑みを浮かべ、リーシャは冷や汗をかいて苦笑していた。



「な、な、何を考えているんですか、陛下っ!?”違法”を取り締まる治安維持組織である”警察”の俺達に”違法による捜査の許可”をするなんて大問題である事も当然ですが、GIDや現地の警察にも喧嘩を売っているようなものじゃないですか!?この令状の存在によってカルバード州で後に様々な問題に発展しかねない可能性がある事もそうですが、最悪この令状を持つ俺達に反感を抱いた彼らが”A”の捜査に非協力的な態度を取る事も考えられるんですよ!?」

一方我に返ったロイドは口をパクパクさせた後真剣な表情を浮かべてヴァイスに指摘した。

「その時はそれこそ、その”皇帝勅命捜査令状”を盾に捜査協力を要請すればいいだけだ。彼らもカルバード州のそれぞれの”真の主である皇帝の俺とギュランドロス、そしてシルヴァン皇帝の勅命が絶対”である事くらいは理解しているし、そもそも彼らにも前もってお前達がその”皇帝勅命捜査令状”を保有している事はグラムハートとサフィナ総督を通じてそれぞれ伝えてある。」

「クク、エレボニア同様”宗主国”である事を理由にクロスベルでの様々な”違法行為”を揉み消してきたカルバードの連中にとってはこれ以上ない皮肉過ぎる令状だな。」

「彼らも”ルバーチェ”の若頭である貴方にだけはそれを言われる筋合いはないと思うでしょうね……ちなみにその口ぶりだとメンフィル側の合同捜査隊のメンバーもこれと同じものを保有しているのかしら?」

ロイドの指摘に対して答えたヴァイスの話を聞いて不敵な笑みを浮かべて呟いたガルシアに呆れた表情で指摘したルファディエルは気を取り直してヴァイスにある事を訊ねた。



「ああ。メンフィル側はリィンとリアンヌ、リーヴェルト少佐に渡している。――――――わかっているとは思うが、その令状は”使い所”を見極めて使ってくれよ。あまり乱用していたら、さっきお前も言ったように後に様々な問題が発生する可能性が考えられるからな。」

「そもそもこの令状の存在自体が大問題ですよ!?陛下達もそうですが、メンフィル帝国も一体何を考えてこんな大問題な令状の発行を……」

ヴァイスの指摘に対して疲れた表情で声を上げて答えたロイドは困惑の表情で自分とルファディエルが持っている令状に視線を向けて呟き

「恐らく”正攻法”――――――要するに警察や遊撃士のやり方では、”A”に辿り着く道のりは険しいと判断して、この令状の発行もそうだけど、合同捜査隊のメンバーにガルシアやリーシャを始めとした”裏のやり方”を熟知している人達を多めに入れたのではないかしら?」

「!!」

「フッ、やはりお前には見抜かれたか。――――――今回の”A”の件、俺個人としては4年前のD∴G教団――――――いや、クロイス家による”クロスベル異変”やエレボニアの”黄昏”のような”災厄”に発展しかねないと思っている。」

ルファディエルの推測を聞くと目を見開き、口元に笑みを浮かべたヴァイスは表情を引き締めて答えた。

「な―――――」

「そう思うって事は何か根拠でもあるのかしら?」

ヴァイスの説明を聞いたロイドは絶句し、ルファディエルは真剣な表情で訊ねた。



「そちらのレティの調べによると、どうやら”A”の幹部クラスに庭園(ガーデン)の”管理人”達が存在しているとの事だ。」

「”庭園(ガーデン)”の”管理人”………?」

ヴァイスの口から出た初めて聞く言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情で首を傾げた。

「レティ、説明を頼む。」

「ふふ、わかったわぁ。――――――元々、結社に入る前のウチは別組織の人間でなぁ。14年前、メンフィルによって暗殺された”蛇の使徒”の一人の”破戒”の旦さんやあんさん達もよく知っているクルーガーと一緒に”結社”とやり合って軍門に下ったんよ。ただ”結社”は基本、少数精鋭みたいな所やから”他の團員(だんいん)”らの扱いにはずっと困ってなぁ。そのうち、とある掃討作戦で壊滅しかかってた”別組織”の残党とその團員たちを――――――今は亡き破戒の旦さんが”合流”させたんよ。」

「”合流”………――――――ちょ、ちょっと待ってください!”14年前のとある掃討作戦で壊滅しかかっていたとある組織”というのはまさか――――――!」

「D∴G教団か?」

ヴァイスに説明を促されて説明を始めたルクレツィアの話を聞いたロイドは呆けた後ある事に気づくと血相を変え、アリオスは目を細めて問いかけた。



「ふふ、正解やぁ。”風の剣聖”はん()もよくご存じの大陸中で災厄を振りまいた”悪魔”を崇めていた宗教団体や。――――――その生き残りの残党と、ウチらがいた暗殺組織――――――”月光木馬團”を合流させて”好きにやらせてみたんよ。”そうして立ち上がったのが、他に類を見ない育成システムを編み出した”庭園(ガーデン)”という暗殺者達の組織や。」

「つまりその”破戒”とやらの”蛇の使徒”によって最悪の組織同士が混ざり合った事で”最悪の化学反応”が起こったという訳ね……」

「フン、その”庭園”という組織を作る切っ掛けとなった”破戒”とやらは教団のクソ野郎共をも超えるとんでもねぇ外道のようだったな。」

「ハッ……噂でしか聞かなかったが、その”破戒”とやらは例の結社とやらの中でも噂以上の”最悪”の部類になる野郎だったみてぇだな。」

「何てことだ………――――――という事は”正確に言えばD∴G教団はまだ完全には壊滅していないって事じゃないか”……!?」

ルクレツィアの話を聞いたルファディエルは目を細め、ランドロスとガルシアは鼻を鳴らした後それぞれ不愉快そうな表情を浮かべ、ロイドは厳しい表情で声を上げた。

「―――――ちなみにこれは余談やけど、1年半前の”ヘイムダル決起”の件であんさん達が終盤共闘した勢力――――――”新帝国解放戦線”を名乗っていた4人の内の2人はその”庭園”を裏切って”庭園”から逃亡している元構成員達やで。」

「!”新帝国解放戦線”の4人――――――ルーファス公子達という事は、既に”出自”が判明しているルーファス公子とラピスは省く事になるから、スウィンとナーディアがその”庭園”という組織の……」

「………………」

ルクレツィアの指摘を聞いて心当たりを思い出したロイドはある二人の人物を思い浮かべて真剣な表情で考え込み、リーシャはロイド同様ある二人の人物を思い浮かべて複雑そうな表情を浮かべて黙り込んでいた。



「―――――これで理解しただろう?”アルマータ”という組織があの結社よりも危険かつ凶悪な組織へと成長しつつかつ、”最悪”は14年前のD∴G教団による災厄――――――いや、4年前のエレボニアの”黄昏”のような”災厄”を引き起こす可能性も十分に考えられる事が。」

「その”災厄”を未然に防ぎ、かつ対抗する為には”正攻法”――――――”表”のやり方だけでなく、”非合法”――――――”裏”のやり方を利用する事もそうですが”裏”に詳しい人達の力を借り、かつ時には”法を捻じ曲げる絶対権力”も利用する強引なやり方で挑まなけばならないという事ですか……」

(ロイドさん………)

真剣な表情を浮かべたヴァイスの指摘に対して複雑そうな表情を浮かべながら答えたロイドをリーシャは心配そうな表情で見守っていた。

「………わかりました。”クロスベル中央警察”に所属している者の一人として”法”を捻じ曲げ、今も必死に”A”を捜査しているGIDやカルバード州の地元の警察の人達にとっては”色々と思う所がある”であろうこの”皇帝勅命捜査令状”を乱用するつもりは毛頭ありません。本当に必要だと思った時にだけ使わせてもらいます。――――――ルファ姉、念のために言っておくけどこの”皇帝勅命捜査令状”を乱用しないでくれよ。」

「どうしてそこで私に念押しをするのよ……」

(クカカ!そんなのまさに”言わずもがな”じゃねぇか!)

溜息を吐いて頷いたロイドはルファディエルに視線を向けて指摘し、ロイドの指摘にルファディエルが呆れた表情で溜息を吐いている中ロイドの身体の中にいるギレゼルは腹を抱えて笑っていた。

「いや、俺達に黙ってチキさん達と繋がっていた件といい、リーシャを脅迫していた件といい、ルファ姉には”前科”があるし。」

「ルファディエルさんにこんな強権を発動できる令状を渡したら、その令状を盾に”A”の構成員達を”拷問”したり、現地の半グレの人達を”A”を調べる”鉄砲玉”にしてもおかしくありませんものね。」

「貴方達ね……私を何だと思っているのよ……特にリーシャ、まるで私を鬼か悪魔のような言い方じゃない。」

疲れた表情で答えたロイドとリーシャの話を聞いたルファディエルは顔に青筋を立てて呟いた後リーシャに視線を向けて指摘し

「ふふっ、”ルファディエルさんに脅された事のある当事者”の一人として、実際その時のルファディエルさんは”天使の姿をした鬼か悪魔”に見えましたので。」

「フフ、言うようになったわね、リーシャ……」

(ハハ、脅された件について実は結構根に持っていたんだな、リーシャは……)

笑顔を浮かべて自分の指摘を返したリーシャをルファディエルは威圧を纏った微笑みを浮かべ、その様子を見たロイドは冷や汗をかいた後苦笑した。



「おっと、一つ伝え忘れていた。この”合同捜査隊”には別の名前があるから、カルバード(むこう)に行ってからはその名前を名乗れば、GIDや現地の警察の者達もお前達の所属についてすぐに理解する。」

「”別の名前”というと……”特務支援課”や”灰獅子隊”のような”名前”ですか?」

ヴァイスの話を聞いてある事に気づいたロイドはヴァイスに訊ね

「ああ。――――――”エースキラー”。それが”合同捜査隊”につけられた別の名前だ。」

「”エースキラー”――――――A(エース)をキラー(ころす)とは連合がA(アルマータ)を徹底的に潰す事を意識した名前ね。」

「アハハ……名前負けしないように今回の”A”の件、全力で挑まなければなりませんね。」

ヴァイスの答えを聞いたルファディエルとリーシャはそれぞれ苦笑していた。



「フッ………――――――ロイド達と違って他の者達はそれぞれの”思惑”もあるだろうが、我が国とメンフィルの領土となったカルバードでのお前達の活躍、期待している。――――――勿論、活躍具合によっては”ボーナス”を与えるから、各自積極的にロイド達に協力してやってくれ。」

「ハッ、期間限定とはいえ、久々の娑婆での生活に加えてかつてのルバーチェにとって厄介な連中だったマクレイン達との共闘、せいぜい堪能させてもらうぜ。」

「―――――4年前ゼムリア大陸を混迷の時代へと変える切っ掛けを作った愚か者の一人としての罪を償う為……そして今は亡き(ガイ)に代わり、今もなお別の形で存続しているD∴G教団を今度こそ全て叩き潰す為にも、”A”の捜査の件、全身全霊を持って挑ませてもらう。」

「クスクス、”結社”が潰されて以降ご無沙汰やった”面白い行事”、ウチもたっぷりと楽しませてもらうなぁ。」

「ククク……このメンツやオレ様に加えて名高いあの”灰の剣聖”を始めとしたメンフィルとエレボニアの英傑達もアルマータのクソ野郎共をぶっ潰す捜査に加わるのだから、グラムハート達も心強く思うだろうなぁ――――――だぁっはっはっはっはっ!!」

ヴァイスの激励に対してガルシアは鼻を鳴らした後不敵な笑みを浮かべ、アリオスは決意の表情を浮かべ、ルクレツィアは可笑しそうに笑いながら、ランドロスは口元に笑みを浮かべた後豪快に笑ってそれぞれ答えた。



こうして……メンフィル・クロスベル連合によるA(アルマータ)という犯罪組織(マフィア)を本格的に捜査・撲滅する為の合同捜査隊――――――”エースキラー”が結成された。



そして”エースキラー”結成の数時間前、”力天使(ヴァーチャーズ)”メイヴィスレインとの協力契約を結んだ少女――――――アニエス・クローデルがイーディスの旧市街にある”とある事務所”を訊ねる時より”終焉を超えたゼムリア大陸の新たなる物語”の幕が開く――――――

 
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