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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第10章】カナタとツバサ、帰郷後の一連の流れ。
   【第2節】新暦90年の出来事。(後編)


 次に、この年の5月には、なのはとフェイトとはやてがまた地球を訪れ、アリサやすずかとともに「友だち結成25周年(四半世紀!)」を祝いました。
 地球では、令和8年・西暦2026年の5月22日(金曜日)のことですが、例年よりもだいぶ季節が早くなったのは、主に「アリサとすずかの仕事の都合」のせいです。
 二人はゴールデンウィークにも働き詰めだったので、この金土日にはようやく個人的に三連休を取得していたのでした。

 なお、ちょうど良い機会なので、はやてはブラウロニアたちにも「自分の故郷」を一度ぐらいは見せておくことにしました。
 地球の暦では5月20日のことで、折り良く八神家の一同も揃って休暇中です。
 昨年に八神家に加わったばかりのフユカとハルナも、ヴィータたちの指導の甲斐(かい)あって、ようやく『外に出しても一応は大丈夫』と言える状況になっていたので、はやてはまず、八神家の9人(守護騎士4人、デバイス娘3人、竜族の血を引く幼女2人)をブラウロニア艦長が率いる高速艦〈グラーネ〉に乗せて、正午(ひる)過ぎにミッドから〈外97地球〉へと向かわせました。
 一等航路4本を合わせると、ほぼ680ローデにも届くほどの距離なので、通常の巡航速度ならば4日と6時間ほど、150%の速度で飛ばしても2日と20時間はかかります。
〈グラーネ〉の地球到着も、三日後の朝(日本では、5月23日の土曜日の朝)となる予定でした。

 一方、ヴィヴィオとアインハルトも、なのはとフェイトに誘われて、今回の地球行きに同行することになりました。
(補佐官のシャーリーとマルセオラとパルディエには、ミッドで三日ほど「月末休暇」を取らせることにします。)
 そして、翌朝、はやては高町家の四人とともに即時移動で地球へ飛びました。管理局の暦では、5月28日の四曜日。日本では、5月21日の木曜日のことです。
 その日は、アリサとすずかにもまだ仕事があったので、五人はリンディの家の「駐在員詰所」を出ると、まずお隣の高町家を(たず)ねました。
 平日なので、美由希とロベールは当然に喫茶翠屋でお仕事中。中学1年生の美琴と小学4年生の奏太も当然ながら学校です。しかも、今日は二人とも、友人づきあいやクラブ活動で少し遅くなるそうで、家にいるのは士郎と桃子だけでした。
 ある意味では、魔法関係の話なども普通にできる、気楽な状況です。

 士郎「何だ。今日は、カナタとツバサは連れて来てないのか?(不満そう)」
 なのは「二人とも、もう学校よ。夏休みになったら、また連れて来てあげるから」
 そんな会話の後、お隣のリンディとアルフも呼んで、9人で昼食会になりました。

 士郎「ところで、アインハルト君は、うちのヴィヴィオと結婚してもう2年になると思うんだが……」
 アインハルト「はい。(何だろう?)」
 士郎「私の曽孫(ひまご)はまだなのかな?」
 アインハルト(ええ……。)
 ヴィヴィオ「すいません、グランパ。二人して、仕事とかいろいろあるものですから、もうしばらく気長に待っていてやってください。(困惑苦笑)」
 桃子「ごめんなさいね。この人ったら、還暦を過ぎたら、めっきり自制心が無くなっちゃって。最近はもう『ふと思いついたこと』を何でも口にしちゃうのよ。(苦笑)」
 士郎「おいおい。そんな言い方は無いだろう。(笑いつつも、やや不本意)」
 アインハルト「いや。まあ、言葉に(うそ)(いつわ)りが無いのは、良いことだと思いますよ。(精一杯のフォロー)」

 昼食後は、五人で海鳴市のあちらこちらを散策しました。北山の海鳴神社や駅前の商店街にも足を伸ばし、最後は翠屋(みどりや)にも顔を出して、夕刻には五人でハラオウン家の方に戻ります。
 高町家の方では寝具の数が足りないので、五人はそのまま「現地駐在員として」来客用の準備も万端(ばんたん)なハラオウン家の方に()まり込みました。
 翌22日(金曜日)には、いよいよ三人だけで、(おさな)馴染(なじ)みのアリサとすずかに会いに行きます。
(一方、ヴィヴィオとアインハルトは、その日もまた海鳴市内をぶらぶらと()り歩き、久しぶりに「二人きりのデート」を堪能(たんのう)しました。)

 その日、バニングス邸では、アリサの私室で五人だけになると、早速、すでに二児の母となっていたアリサとすずか(34歳)の「人妻ぶっちゃけエロトーク」が炸裂してしまったのですが……それはまた別のお話です。(笑)

【さて、アリサとすずかには、この時点ですでに二人目の子供がいる訳ですが……その男の子たち(リンダの弟と、とよねの弟)に関しては、その父親たちと同様、特に設定はありません。当然ながら、全員、魔法とは縁の無い人たちです。】

 また、土曜日には場所を月村家の屋敷に()えて、二次会(?)となりました。
〈グラーネ〉もようやく地球に到着したので、はやては早速、すずかの了承を得て、八神家一同とブラウロニアの計10名を月村家の広々とした中庭に転送で上陸させます。
 今日は、ヴィヴィオとアインハルトもこちらに参加したので、すずかとアリサも含めると、総勢17名もの大集会となりました。
 すずかやアリサにとっては、初めて会う人物が何人もいて、実に楽しい一日となったようです。
(午後には、仕事帰りの恭也と忍もチラッと顔を出してくれました。)

 さて、明日は25日の日曜日ですが、管理局の暦では6月1日となります。
『月末に何日かまとまった休暇が取れただけで、月明けからはまた仕事だ』という者もおり、残念ながら、高町家の四人に加えて、今も小規模部隊の隊長をしているシグナムとヴィータも、土曜日の晩のうちにハラオウン家の「駐在員詰所」から即時移動でミッドに帰りました。

 そして、日曜日は、残る11人でまたゆっくりと街中(まちなか)をブラついたりもしました。
 はやてとアリサとすずかが先に立ち、『この辺りは、当時とそれほど変わってないよね』などと昔話に花を咲かせる一方、シャマルとザフィーラとブラウロニアは後方で「それとなく」周囲に目を光らせます。
 また、そんな両者の間では「外見は8歳前後」のリインとアギトとミカゲが、交代で「外見は6歳前後」のフユカやハルナとしっかり手をつないでいました。
 傍目(はため)には、『年長の少女たちが、年少の幼女らの手を引いてあげている』みたいな微笑(ほほえ)ましい状況にも見えるのでしょうが……実際には、この幼女らが何かをやらかさないように、三人がかりで『ゆるく拘束している』にも等しい状況です。
 はやては木曜日にも来たばかりでしたが、午後にはまた全員で石段を(のぼ)り、海鳴神社に参拝しました。帰りは、北山を螺旋(らせん)状にぐるりと一周する「傾斜の(ゆる)い遊歩道」を全員でゆっくりと(くだ)って行きます。
 山の北側斜面に回り込むと、そこから真北には奥峰(おくみね)が見えました。
(そう言えば、アインスはあそこから昇天したんやったなあ……。あれが、もうほとんど四半世紀も前のことになるんか……。)
 はやては、遊歩道の途中でふと足を止め、そんなことを思い起こしたのでした。

 こうして、日曜日の夕方、はやてたち一行は月村家の屋敷に戻り、そこで夕食を取ってから、すずかやアリサと別れ、9名そろって〈グラーネ〉に転送されました。
 フユカとハルナはまだバリアが上手く張れないので、即時移動もできません。それで、はやても復路(かえりみち)は「娘たち」と一緒に〈グラーネ〉で、ゆっくりと時間をかけてミッドに帰ることにしたのです。
 小型艦なので船室も少々狭苦しい代物でしたが、はやてはそれを苦にする様子も無く、みずから「双子と同室」の状況を選択しました。最近では『自分はこの子たちの母親なのだ』という感覚もだいぶ身について来たようです。
「おかあさん、おかあさん。きいて、きいて」
「うん。何かな?」
「あのね。うみなりでね……」
 そんな感じで、フユカとハルナは三日間、()きもせずに、海鳴市で気づいたいろいろなことを、はやてに語って聞かせてくれたのでした。


 一方、この春から魔法学校の初等科の1年生となったロデリア・ペルゼスカ(7歳)にとって、目下(もっか)の心配事は、『4月には自分の入学をあんなに喜んでくれていた母親が、5月からは随分と意気消沈してしまっている』ということでした。
 何かと早熟な子なので、理由はすでに見当がついています。
 だから、6月になって、必要以上に広い「官舎」で二人きりの夕食の際、母親がおずおずと話を切り出した時にも、ロデリアはいささかも狼狽(うろた)えませんでした。

「要するに、ママは、パパと離婚するのね?」
 疑問と言うよりも、ただ単に確認を取っているだけ、という感じの冷静な口調です。
 一人娘の、あまりの「物わかりの良さ」に、マギエスラ提督(30歳)は一瞬、愕然とした表情を浮かべました。
(私の態度って、そんなにもバレバレなモノだったのかしら?)
 マギエスラはそんな一抹(いちまつ)の恥ずかしさを覚えながらも、またおずおずとした口調で一人娘に問いかけます。
「うん。そうなんだけど……私たちが離婚したら、あなたは……」
「もちろん、ママの側につくよ!」
 7歳児は母親にみなまで言わせず、そう即答しました。母親が当惑した表情を浮かべると、声には怒りすら込めて、さらにこう言葉を続けます。
「だって、悪いのは、パパの方なんでしょ? 結婚式では『死が二人を(わか)つまで』と誓って婿入りしたのに、その約束を一方的に破って、他の女に走ったんでしょ? 悪いことをした人がその罪に相応の罰を受けるのは、当たり前のことだよ!」

 主張そのものは、決して間違ってはいません。
 しかし、「決して自分と仲が悪い訳ではない実の父親を『悪い人』と言い切ってしまう7歳児」というのも、マギエスラには何やら(すえ)恐ろしい気がしました。
「大丈夫だよ、ママ。私は何があっても、ママの味方だから! 必要なら、私、法廷で証言だってしちゃうよ!」
(ええ……。この子は、人前で一体何を言うつもりなの……。)
 マギエスラは内心でおののきながらも、一人娘には素直に感謝の言葉を伝えます。
「ありがとう、ロデリア。……でもね。多分、この話は裁判にするまでも無く、示談で片が付くと思うの。実は、個人的に探偵を雇って、もう証拠は押さえてあるのよ」
「だったら、もう浮気男なんかのために、ママがわざわざ悩んであげる必要なんて、ゼンゼン無いんじゃない?」
 ロデリアは、自分の実の父親に関して、冷たくそう言い放ちました。
【これは、確かに「末恐ろしい7歳児」です。(笑)】

 そんな会話の後、翌7月には、無事に離婚が成立しました。
そして、マギエスラは、もう「嫌な思い出」しかない官舎を引き払い、娘ロデリアを父ザドヴァン(55歳)の家に預けて仕事に戻りました。
 ロデリアは、就学早々に転校を余儀なくされてしまう形となりましたが、幸いにも、ザドヴァンやその家族との人間関係はなかなか良好なようです。
 そのおかげで、マギエスラ提督は安心して職務に(はげ)むことができました。

【ただし、ロデリアは同年の末には学校を()めてしまい、通信教育に切り替えて残り5年あまりで義務教育課程をすべて修了しました。その後は、13歳の春に士官学校の空士コース(二年制)に入学して、在学中に空戦AAランクを取得します。そして、卒業後は新暦98年に15歳で准尉となり、同時に「遊撃要員」として某小型艦に配属されることになったのでした。
 その(ふね)では、ベルネとフユカとハルナが彼女のチームメイトとなり、また、別の同型艦には、カナタとツバサほか二名が「遊撃要員」として配属されることになるのですが……要するに、そうした小型艦の遊撃要員たちが「次回作」の主人公です。(笑)】


 また、この年の7月には、『オルセアの内戦が終結する』という歴史的な大事件がありました。エルドーク・ジェスファルード提督らの二十年余に及ぶ地道な活動が、ついに実を結んだのです。
 そもそもの内戦勃発から数えれば、実に160年。あの〈マリアージュ事件〉から数えても、すでに12年もの歳月が流れ去っていました。
 最後の「首都包囲戦」では、どの陣営にも莫大な数の犠牲者が出ましたが、その中には「ルネッサ・マグナス」の名前もあったそうです。

【なお、この7月には、カリム総長が再び「かなり深刻な内容の予言詩」を得たのですが……その話は「第二部の主題」となりますので、また、そちらの方で詳しくやります。】


 そして、8月の下旬、ミッドの内海(うちうみ)では、季節外れの大嵐がありました。有名な豪華客船が、日没後に座礁して傾き、危うく沈没しかけてしまいます。
 しかし、そこへ特別救助隊が駆けつけ、目覚ましい活躍をしました。
 スバルも大活躍の末、嵐の中で夜の海に落ちた7歳児をも無事に救出しました。普通、海の中では魔力素不足のために魔法はろくに使えないものなのですが、さすがはISホルダーの戦闘機人です。
(この頃には、スバルもようやくいろいろと吹っ切れていました。)

 スバルが救出した少女は、名をヴォナリエ・ハグディと言いました。
 訊けば、魔法学校の初等科の1年生で、夏休みの家族旅行で両親や二人の妹たちと一緒にこの船に乗っていたのだそうです。
 すぐに駆け付けた彼女の両親、ノーザ(30歳)とザミュレイ(28歳)も、スバル(30歳)には大いに感謝しました。
(この頃のザミュレイは「全く日常的に」メイクで鼻先の黒ずみを消し、眉もしっかり()いて、髪も上手に整えていたので、十代の頃とはまるで違って「それなりの美人」に見える風貌となっていました。なお、今はもう二度目の妊娠をしており、年明けにはまた「ノーザの子供と合わせて四人目の」子供が生まれるようです。)
 この一件によって、ヴォナリエも「生みの(おや)」であるノーザと同じく、スバルの熱烈なファンとなったのでした。


 なお、同年の9月の末には、エクリプス事件の終結から丸9年を経て、トーマ(24歳)のリンカーコアもようやく自然回復しました。
 そして、この頃から、トーマはまた少しずつ魔法が使えるようになっていったのですが、やはり、なかなか「完全に元どおり」という訳にはいかなかったようです。


 また、この年の10月には、〈管10ルーフェン〉のアイリンお嬢様から『レイ・タンドラ老師(86歳)が(やまい)に倒れた』と聞かされて、ノーヴェは大急ぎでお見舞いに駆けつけました。
「11年前(新暦79年)に、現地でお世話になったメンバー」にはひととおり声を掛けてみたのですが、アインハルトとコロナは局の仕事で来られませんでした。
 結果として、ミッドからノーヴェに同行したのはヴィヴィオとミウラだけでしたが、現地の次元港では意外にも、カルナージから(ちょく)で来たジークリンデが三人に合流します。彼女をルーフェンに呼んだのも、やはりアイリンお嬢様でした。
 ノーヴェたち四人が列車で現地に向かうと、その駅までお嬢様と彼女の執事クレアが車で迎えに来てくれています。
 こうして、六人は一団となって老師の病室を(たず)ねたのでした。

 幸いにも、命に別状は無い様子でした。老師も笑って見舞客に対応しましたが、さすがに、もう昔ほどの覇気はありません。今では本当に「どこにでもいそうな」好々爺(こうこうや)といった感じです。
 実のところ、ミウラには『もしかしたら、病室ではリオに会えるのでは?』という期待もあったのですが、やはり、現実はそれほど甘くはありませんでした。
 帰り際に、リンナ(老師の孫娘で、リオの従姉)から聞いた話では、『リオは五年前から、消息不明のまま。多分、本当はテロ組織に潜入捜査をしているのだろうけれど、表向きは行方不明あつかい。三年ほど前からは、タオも姿を消している』とのことです。

 四人は「取りあえず、今回は大事なかったこと」に安堵しつつ、それぞれにミッドチルダとカルナージに帰ったのですが……。
 この段階では、まさか『これからわずか二年後に、老師がこのまま亡くなってしまう』などとは、誰にも想像できてはいなかったのでした。 


 
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