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八条学園騒動記

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第七百三十一話 密林の生きもの達その二

「食あたりなどだ」
「起こらなかったですか」
「そうだった、食い合わせはな」
 このことはというと。
「本当にな」
「迷信でしたか」
「そのことを実際に行った日本人もいた」
 そうだったというのだ。
「それも十九世紀にな」
「千数百年前にですね」
「板垣退助という人物だ」
 幕末の志士そして明治の軍人であり政治家であった人物だ、この時代の日本でも偉人の一人として讃えられている。
「竹を割った様な潔い人物だったが」
「私もその人物の名前は聞いたことがあります」
 上等兵もこう答えた。
「日本の民主主義の確立に貢献したそうで」
「その功績があるな」
「そうですね」
「この人物が土佐藩にいた頃だ」
 身分は上士であり藩主の傍にもいた。
「若い頃に領民達の前でだ」
「その食い合わせをですか」
「実際に食べてみせてだ」
「何もなく」
「迷信であることを証明してみせた」
 自分がそうしてみせてというのだ。
「そうだったのだ」
「あの人物はそんなことをしていましたか」
「そうだったのだ」
「啓蒙的な人物だったのですね」
「子供の頃貧しい者に家の服をあげたりもしたしな」
「優しさも備えていましたか」
「そうした人物だった」
 上等兵にこのことを話した。
「創作によっては碌でもない輩になっているが」
「そこまでの人物をそう書くのですか」
「坂本龍馬を主人公にするとな」
「幕末日本屈指の英傑ですね」
 この時代でもそう言われて日本人の誰もが知っていて讃えている、日本史全体でもその人気は織田信長に匹敵するまでだ。
「そういえばあの御仁は土佐藩で」
「身分の低い者だった」
「そうでしたね」
「その彼を主人公にするとな」
 そうすると、というのだ。
「上士であった彼はだ」
「対比されてですね」
「身分にあぐらをかいてだ」
「連合で特に忌み嫌われているそれに」
 ここからエウロパを常に全否定している程嫌っている。
「それだけで悪役になりますね」
「連合ではな、そしてだ」
 そのうえでとだ、大尉はさらに話した。
「そこから身分の低い坂本龍馬や仲間達をいじめ虐げる」
「邪悪な悪役ですね」
「そう書かれる場合もある」
「全くの嘘ですね」
「創作は創作だ」
 事実とは違うというのだ。
「実は二人は会ったことがない」
「同じ土佐藩にいても」
「そうだった、身分が違うと住む場所も違うな」
「はい」
 それはとだ、上等兵も答えた。エウロパではそうであるので彼もその話は即座に頷くことが出来た。 
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